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離婚裁判の費用はどれくらいかかる?弁護士費用の相場から訴訟の注意点までFPが徹底解説

離婚裁判の費用はどれくらいかかる?弁護士費用の相場から訴訟の注意点までFPが徹底解説

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森本 由紀

森本 由紀

行政書士、AFP(日本FP協会認定)、離婚カウンセラー

行政書士ゆらこ事務所・離婚カウンセリングYurakoOffice代表。法律事務所勤務を経て、2012年に行政書士として独立。メイン業務は協議離婚のサポート。養育費、財産分与など離婚の際のお金の問題や離婚後の生活設計に関するアドバイスなど、離婚する人の悩みを解決するためトータルなサポートを行っています。法人設立や相続に関する業務にも力を入れています。

この記事のポイント

  • 離婚裁判で弁護士に払う着手金の相場は20~30万円、報酬金の相場は20~50万円。
  • 裁判に勝っても弁護士費用は自己負担。
  • 弁護士費用については法テラスの立て替え制度がある。

離婚したいのに相手が応じてくれない場合、裁判になったら費用がかかるのが心配でしょう。

ここでは、離婚裁判でかかる費用の相場や費用が用意できない場合の対処法について説明します。

裁判費用が払えないという理由だけで離婚をあきらめることのないよう、知識を持っておきましょう。

 

【離婚裁判の費用①】離婚で裁判になるケースはどれくらい?

離婚で裁判になるケースはどれくらい?

日本では、話し合いによる協議離婚が大半で、裁判になるケースはかなり少なくなっています。

 

離婚で裁判になるのは3%未満

厚生労働省の人口動態統計によると、平成29年度の離婚件数の総数は21万2,262件で、離婚の種類別の内訳は次のとおりです。

離婚の種類 件数 割合
協議離婚 18万4,996件 87.2%
調停離婚 2万902件 9.8%
審判離婚 772件 0.4%
和解離婚 3379件 1.6%
認諾離婚 9件 0%
判決離婚 2204件 1%

上記の表からわかるように、日本では離婚の約9割は協議離婚です。また、裁判する前に調停を経なければならない「調停前置主義」が採用されているため、調停までで離婚が決まるケースが多く、協議離婚と調停離婚で全体の97%を占めます。

なお、審判離婚とは調停で合意できない場合に、裁判所が職権で離婚を決める手続きです。離婚に合意しているものの一部の条件で折り合いがつかないようなケースでは、調停から審判に移行され審判離婚となることがあります。

離婚裁判になるのは、協議離婚が不可能で、調停や審判でも決着がつかなかった場合ですから、全体の3%にも満たないということです。ほとんどの場合、調停をすれば離婚問題は決着します

 

裁判になっても和解離婚となるケースが多い

離婚裁判になった場合でも、判決まで行くケースはむしろ少数で、裁判上の和解により離婚が成立するケースが多くなっています。平成29年度のデータでも、判決離婚は1%であるのに対し、和解離婚は1.6%となっています。

ちなみに、認諾離婚とは、裁判になった後、被告が原告の要求を全面的に受け入れて離婚が成立することですが、まれなケースです。

 

【離婚裁判の費用②】離婚裁判でかかる費用の種類とは?

離婚裁判でかかる費用の種類とは?

離婚裁判でかかる費用は、大きく分けると、裁判所に払う費用と弁護士費用の2つになります。そのうち大半を占めるのが、弁護士費用です。

 

裁判所に払う費用

裁判所に訴状を提出するときに、次のような費用がかかります。

 

収入印紙代

裁判所に訴えを提起するときには、法律で定められた手数料を収めなければなりません。手数料の額は訴訟で争う内容や請求する金額によって変わります。

離婚裁判では、離婚のみを請求する場合には、手数料の額は1万3,000円です。財産分与を請求する場合には1,200円、養育費を請求する場合には1人につき1,200円が加算されます

離婚と同時に慰謝料を請求する場合には、慰謝料の金額に対応する手数料と離婚の手数料(1万3,000円)のうち多い方に、財産分与や養育費の分を加算する扱いになります

手数料は、収入印紙を訴状に貼って納付します。

 

郵便切手代

訴状と一緒に、裁判所からの連絡用の郵便切手(予納郵券)も提出する必要があります。予納郵券の切手の種類や組み合わせ、枚数は裁判所ごとに決まっており、金額も多少違いますが、概ね6,000円程度です。

 

弁護士費用

離婚裁判を進めるためには専門的な知識が欠かせませんから、弁護士に依頼した方がよいでしょう。弁護士に払う弁護士費用は、着手金と報酬金の2つに分かれます。現在、離婚の弁護士費用に統一基準はなく、依頼する弁護士によって費用は変わります。

 

着手金

弁護士に事件を依頼したときに払う費用です。裁判で敗訴になった場合でも、着手金は返金されません

日弁連が2008年に行ったアンケートによると、弁護士に離婚訴訟から依頼した場合に払った着手金は30万円前後という回答が52.7%、20万円前後が26.4%となっています。

 

報酬金

成功報酬とも呼ばれるもので、事件終了時に、成功の程度によって支払う費用です。報酬金は、固定された金額に、慰謝料や財産分与で獲得した金額に応じた額を上乗せした形で請求されるのが一般的です。

日弁連のアンケートでは、離婚訴訟からの依頼で払った報酬金は、30万円前後が37.1%、20万円前後が20.1%、50万円前後が17.1%、40万円前後が16.5%と、ばらつきがあります。

 

その他の費用

交通費や通信費などの実費を負担しなければなりません。弁護士に遠方の裁判所などに出張してもらう場合には、交通費とは別に日当を請求されることもあります。

裁判所に払う費用も、通常は弁護士に立て替えてもらうことになるため、請求されたら払う必要があります。

 

離婚裁判でかかる費用の総額

たとえば、離婚裁判で、離婚と財産分与、子2人分の養育費を請求する場合の収入印紙代は、次のようになります。

  • 1万3,000円(離婚請求)+1,200円(財産分与)+1,200円×2(養育費)=1万6,600円

これに予納郵券代約6,000円を足すと、裁判所に払う費用は約2万3,000円です。

弁護士費用として、着手金30万円、報酬金30万円を払うとすると、かかる費用の総額は約63万円となります。

 

【離婚裁判の費用③】離婚裁判の訴訟費用・弁護士費用はどっちが負担する?

離婚裁判の費用はどっちが負担する?

裁判費用というのは安くはありませんから、相手のせいで離婚になった場合には、裁判費用も相手に請求したいでしょう。離婚の裁判費用の負担については、次のようなルールがあります。

 

 

裁判に勝てば訴訟費用は相手に請求できる

一般に、弁護士が訴訟を提起するときには、被告に対して、本来の請求に加え、訴訟費用の請求もします。これを受けて、原告が勝訴した場合には、「訴訟費用は被告の負担とする」という判決が出るのが通常です。

訴訟を提起する時点では勝ち負けはわかりませんから、訴訟費用も一旦は自分で払わなければなりません。裁判に勝った場合には、後で相手に訴訟費用を請求できます

 

弁護士費用は自己負担

裁判で相手方に請求できる「訴訟費用」には、弁護士費用は含まれません。相手方に請求できるのは、裁判所に払った収入印紙代や郵便切手代などにとどまります。裁判で勝っても、自分が依頼した弁護士に払う弁護士費用は自己負担です。

 

【離婚裁判の費用④】離婚裁判の弁護士費用が払えないならどうする?

離婚裁判の費用が払えないならどうする?

お金がないからと言って、裁判をあきらめる必要はありません。まとまった費用が用意できなくても、離婚裁判をすることは可能です。

 

弁護士費用は分割払いできることも

離婚裁判で、裁判所に払う手数料は、分割払いできません。一方、弁護士費用については、少数ですが、分割払いに応じてもらえる事務所もあります。

弁護士費用の分割払いの可否については、ホームページに記載されていないこともありますから、直接問い合わせてみましょう。

 

法テラスで弁護士費用を立て替えしてもらえる

法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕がない人のために、弁護士費用の立て替えを行っています。収入や資産などの要件をみたしていれば、着手金、報酬金、必要な実費を法テラスに立て替えてもらえます

法テラスに立て替えてもらったお金を返すときには、月5,000円から1万円程度の分割払いが可能で、利息や手数料はかかりません。

離婚事件の場合には、配偶者の収入や資産が加算されないので、要件をみたすケースが多くなります。弁護士費用が用意できない場合には、法テラスに相談してみましょう。

なお法テラスの立て替え制度が利用できるのは、法テラスと契約している弁護士に依頼した場合のみです。どの弁護士でも立て替えてもらえるわけではありませんので注意しておきましょう。

 

離婚裁判の費用に関するまとめ

離婚裁判をすれば、高額の費用がかかります。離婚するときには、早めに弁護士などの専門家に相談し、裁判になる前の解決を目指しましょう。

離婚裁判になった場合、弁護士費用の支払いが困難なら、法テラスの立て替え制度を利用する方法もあります。

弁護士費用を払っても、裁判をした方が慰謝料や財産分与で受け取れる金額が多くなることもありますから、あきらめないようにしましょう。

 

離婚問題で困ったら専門家に相談することが大切

親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。

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