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【FP解説】高額療養費の確定申告手続き方法まとめ!医療費控除との違いも説明いたします。

【FP解説】高額療養費の確定申告手続き方法まとめ!医療費控除との違いも説明いたします。

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岡崎 隆宏

岡崎 隆宏

社会保険労務士、1級FP技能士、CFP

社会保険労務士・1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®。 1児の父親として育児に携わりながら、妻の妊娠・出産に立ち会う中で、妊娠・出産における社会保障制度についてどうあるべきかについて真剣に考える。 現在は、社会保障とお金の関係について講演やブログで情報を発信することで、一人でも多くの人にお金と社会保障について正しい認識を持ってもらうための活動を行っている。 得意分野は「妊産婦等の社会保障制度」「年金」「ワークライフバランス」「家計見直し」など。

この記事のポイント

  • 高額療養費とはどのような制度なのか?
  • 医療費控除とは、どのような制度なのか?
  • 高額療養費と医療費控除の確定申告の手続きの流れの違い。

毎年2月16日から3月15日までの期間は、確定申告書の提出期間となっていますが、今年は2月16日が土曜日となるため、2月18日(月)~3月15日(金)と若干提出期間が短くなっているので注意が必要です。

医療費が発生している人(一定の金額以上医療費が発生している場合に限る。)は確定申告を行わなければなりませんが、高額療養費の支給を受けた人については、高額療養費の金額については確定申告は不要となります。それ以外の医療費部分については、医療費控除として確定申告を行わなければなりません。

今回は「高額療養費とはどのようなものか?」を解説したうえで、なぜ「高額療養費に相当する部分が確定申告不要」なのか、そして「医療費控除との違い」について解説します。

 

高額療養費は健康保険から行われる給付の一つ

高額療養費は健康保険から行われる給付の一つ

そもそも、高額療養費は健康保険法に規定されている保険給付の一つです。高額療養費の金額の計算方法については、法令によって定められており、具体的には、被保険者の所得を基準とした標準報酬月額によって区分された自己負担額の上限額の算式を用いて高額療養費の計算を行うことになります。

 

高額療養費の金額の計算の仕方

高額療養費の金額の計算は70歳未満の者と70歳以上75歳未満の者では、計算方法や自己負担額限度額の計算区分が異なります。

 

70歳未満の者の自己負担限度額

標準報酬月額、報酬月額 自己負担限度額 多数回該当の場合
標準報酬月額が83万円以上の者、または、報酬月額が81万円以上の者 252,600円+(総医療費(10割負担の場合の医療費のこと)ー842,000円)×1% 140,100円
標準報酬月額が53万円~79万円の者、または、報酬月額が51.5万円以上81万円未満の者 自己負担限度額:167,400円+(総医療費ー558,000円)×1% 93,000円
標準報酬月額が28万円~50万円の者、または、報酬月額が27万円以上51.5万円未満の者 80,100円+(総医療費ー267,000円)×1% 44,400円
標準報酬月額が26万円以下の者、または、報酬月額が27万円未満の者 57,600円 44,400円
被保険者が市区町村民税の非課税者等 35,400円 24,600円

 

70歳以上75歳未満の者の自己負担限度額

所得状況 外来(個人) 外来・入院(世帯合算) 多数回該当の場合
①現役並み所得者(標準報酬月額が28万円以上で、かつ、高齢受給者証の負担割合が3割である者) 57,600円 93,000円 44,400円
②一般所得者(①と③以外の者) 14,000円 57,600円 44,400円
③低所得者:所得の状況によって2つの区分に分かれます Ⅰ(被保険者とその扶養家族すべての人の収入から必要経費等を控除した後の所得の金額が0以下になる場合) 8,000円 15,000円 なし
Ⅱ(市区町村民税が非課税とある者等) 8,000円 24,600円 なし

 

高額療養費の自己負担額計算ポイント

自己負担額の計算を行う際には以下の点に注意が必要です。

  • 自己負担額が21,000円を超える診療分が対象となります
  • 個人単位で計算を行います。
  • 診療を受けた医療機関ごとに計算します。
  • 入院分と外来診療分とは区別します。
  • 保険が適用される診療分が対象となります。

 

高額療養費の手続きの流れ

高額療養費の手続きの流れ

高額療養費支給申請書を保険者(協会の場合は協会けんぽ、組合の場合は健保組合)に提出することで、高額療養費の申請を行います。なお、ケガが原因の場合については「負傷原因届」の提出(協会けんぽの場合)が必要となります。また、住民税非課税区分に該当する場合は、被保険者の非課税証明書を併せて提出する必要があります。

 

高額療養費はいつまでに申請しなければならない?

高額療養費は月(1日から末日まで)ごとに計算されるため、申請することができる時期については、実際に自己負担額を支払った日の属する月ではなく、その翌月1日が申請開始時期となります。なお、高額療養費は時効により、自己負担額を支払った日の属する月の翌月1日から2年以内に申請する必要があります。

 

高額療養費の払い戻しの目安は?

高額療養費の払い戻しまでの時期の目安としては、保険者が実際に自己負担額を支払った医療機関のレセプト等を確認したうえで支給の決定を行うため、早くても2~3カ月後に払い戻しが行われることが多いです。

 

医療費控除と高額療養費との違い

医療費控除と高額療養費との違い

医療費控除とは、所得税の計算において合計所得金額(各種所得の合計額)から控除することができる所得控除の一つで、1年間に支払った医療費の合計額から一定額を控除したものです。

 

 

医療費控除の計算対象とは?

医療費控除の計算対象は、高額療養費とは違い、21,000円を超えるような診療分に限らずに、治療を目的とする診療に関する支払を行ったものが全て対象となりますが、予防や美容などに関する支出については医療費控除の対象となりません。(例)予防接種の費用、疲労回復のための栄養剤購入費用など

 

医療費控除の計算方法

医療費控除の計算方法は、1年間の総所得の金額によって以下のように計算式が変わります。注意してほしい点としては、総所得金額は、所得控除をする前の所得金額の合計であるということです。(つまり、サラリーマンであれば、「給与所得控除額を控除した後の所得金額」がこれに該当するということです)

総所得金額が200万円以下の場合 医療費総額 ー 保険金等で補てんされる金額 ー 総所得金額×5%
総所得金額が200万円超の場合 医療費総額 ー 保険金等で補てんされる金額 ー 10万円

 

高額療養費と医療費控除の確定申告手続き方法

高額療養費と医療費控除の確定申告手続き方法

高額療養費と医療費控除は併用することができます。確定申告の際に手続きを行わなければ、適用を受けることができないものとなりますので、確定申告の手続きについて、最低限抑えておいてほしいポイントについて説明します。

 

高額療養費の確定申告手続き方法

高額療養費は確定申告をする際には、なんら手続きは不要です。これは、高額療養費が健康保険により給付される保険金の一つであると考えるためです。

つまり、高額療養費は公的保険から出る保険金と扱われるため、医療費控除の計算においては医療費総額から控除されるものとなります。

また、高額療養費は先程も述べたように、公的保険の保険給付の一つとなるため非課税です。そのため、確定申告においては、非課税となる以上は手続きは不要となるわけです。

 

医療費控除の確定申告手続きの方法

医療費控除については、年末調整では処理が行われない為、確定申告を行う必要があります。

医療費控除を行う際に注意してほしい事としては、医療費控除の対象となる医療費の支出を証明できる領収書等を確定申告書に添付する必要があるということです。

つまり、複数回の医療費の支出があった場合であっても、それらの全てに関する領収書を添付する必要があるため、医療費控除の申告を考えている人は、その点に注意が必要となります。

 

高額療養費の確定申告手続き方法に関するまとめ

高額療養費と医療費控除は性格的には似ている部分がありますが、実態は全く異なる性質のものとなります。年末調整や確定申告が近くなるにつれて、こういった部分について気になる人が増えてくると思います。そのため、医療費の支出が高額療養費の対象なのか、それとも医療費控除の申告の対象となるのかをある程度明確に区分しておくことも重要になります。

また、医療費控除の申告については、領収書が添付されていることが必要となるため、1回あたりの医療費が少額のものであっても、回数が多かったり、診察に要する期間が長かったりするもの等がある場合については、領収証の保存に関してもしっかりと行う必要があります。

確定申告に関する内容について、不明な点がある場合は、国税庁のHPや税理士の先生に確認することを活用していくことが大切です。

 

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