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転職したら住民税はどうなる?3つの徴収方法&注意点をFPが徹底解説!

転職したら住民税はどうなる?3つの徴収方法&注意点をFPが徹底解説!

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著者名

棚田 健大郎

棚田 健大郎

行政書士、国土交通大臣指定 マンション管理士、ファイナンシャルプランナー

大手人材派遣会社に正社員として入社。 主要取引先であったJASDAQ上場(当時)の株式会社エイブルへ出向。 その後ヘッドハンティングされ、完全に移籍。およそ3,000人の社員の中で、トップセールスを記録するなどして活躍。 その後管理職として複数年勤務後、独立。 行政書士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し、棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

この記事のポイント

  • 住民税には普通徴収と特別徴収の2種類の徴収方法がある。
  • 転職する場合、再就職先が決まっていれば事前に伝えておくことで、特別徴収のまま引き継ぐことも可能。
  • 再就職先が決まっていない場合は、普通徴収に切り替わるので納税資金に注意が必要。

仕事を辞めて転職するとなると、心機一転ステップアップというタイミングかと思いますが、手続き面において複雑なものもあるので注意しなければなりません。

特に住民税については、転職のタイミングで徴収方法を選択して処理しなければならないので、取り扱いについて理解しておくことが大切です。そこで本記事では、転職した際の住民税の取り扱いについて詳しく解説します。

 

住民税の徴収方法

住民税の徴収方法

企業で働いているサラリーマンについては、住民税を自分で払っているという自覚は少ないのではないでしょうか。なぜなら、住民税は勤めている会社が給与からじかに差し引いて支払っているからです。

私も会社員として働いていたことがありましたが、自分の住民税のことは全く無頓着で計算したことなんてありませんでした。ただ、会社を辞めたり転職をしたりするとなると、改めて住民税について考える必要性を感じたことを覚えています。

ここでは、住民税の徴収方法や納付方法について詳しく見ていきましょう。

 

会社員は特別徴収による天引き

個人事業主であれば、自分で納税通知書を使って納税するので自分自身の住民税についてよく把握されていると思いますが、会社員の方については控除の計算や手続きについてすべて会社がやってくれるので、深く理解することが難しいかもしれません。

このような会社が行う徴収方法を特別徴収といい、本人は基本的に何もしなくても自動的に納税されます。ただ、勤めている会社を何らかの理由で辞めて次の仕事を探すとなると、そのタイミングで住民税の処理について手続きをしなければならないので注意が必要です。

 

個人事業主は普通徴収で控除手続きする

個人事業主の場合は、確定申告によって自分自身で所得を申告すると、税務署から住民税の納税通知書が届き、それによって納税をする普通徴収という方法がとられます。

支払いは一括で支払う方法と、4分割で支払う方法があります。特別徴収の場合は毎月天引きされているので、期間としては12回の分割払いのような感じになりますが、個人事業主の場合は最大で4分割です。

 

副業をしている場合の住民税の納付方法

最近では会社員でも副業をする人がいますが、この場合の住民税はどうなるのでしょうか。住民税は、その人の総所得から控除などを差し引いた課税所得に応じて課税されるので、副業の確定申告による所得も含めて計算されます。

市町村は前年のその人の所得をもとに、所得割と均等割を計算して住民税の決定通知を勤務先に郵送するのです。

そして勤務先は、その決まった住民税の金額を給与から天引きするので、基本的に副業の分の住民税も含めて天引きされます。よって、副業分の住民税だけを普通徴収で納税する必要はありません。

ちなみに、住民税の増加によってその人の収入がアップしたことが会社に知られるため、内緒で副業をやっている場合はこの時点でバレることになります。

 

転職において、会社とのやりとりで注意すること

転職において、会社とのやりとりで注意すること

このように会社員の場合は通常特別徴収をされているので、住民税について何か手続きをすることはありませんが、退職して再就職するとなると、その間の住民税の納付方法が問題となります。特に気をつけなければならないのが、正社員で再就職した初年度の住民税です。

 

転職した場合の住民税の額

ヘッドハンティングされて転職した場合、収入が大幅にアップする可能性もあるでしょう。住民税の所得割部分は収入金額に応じて増額するため、年収が上がれば住民税も上がります。

ただし、転職したタイミングでいきなり住民税が値上がりするわけではありません。住民税はあくまで前年の所得をベースにして決まっているので、当年の年収が増額したとしても、直ちに住民税に反映されることはないのです。

住民税の金額自体は変わらないのですが、徴収方法については次の点に注意が必要です。

転職した場合の住民税の額

 

転職直後は普通徴収になることも

仕事を転職すると、前職の会社が住民税を天引きできるのは最後に支払う給与までです。それ以降は支払うものがない以上、前職の会社で住民税を天引きすることはできません。

となると、今度は転職先の会社が支払う給与から住民税を天引きしてもらうことになるのですが、ここの引き継ぎがポイントになります。

通常、転職先の会社で住民税の天引きを開始するには、転職してから2ヶ月程度かかることがあるため、その間の住民税が未納になってしまうことがあるのです。

また、退職してから再就職するまでの期間が空いている方については、特別徴収自体ができなくなるので、放置していると住民税が納税できない状態のままになってしまいます。

この場合、特に何も手続きをしなければ住民税は普通徴収に切り替わります。前職の会社に特段指示をしていなければ、前職の会社は普通徴収に切り替えてしまうので、以降の住民税については役所から住民税の納税通知書が送られてくることになるのです。

その後、転職して転職先の会社の特別徴収が可能になった時点で、普通徴収から切り替わることになります。ただ、このやり方では、すでに再就職先が決まっている人からすると、普通徴収で支払うことが面倒に感じるかもしれません。

 

前職の会社に協力してもらう

すでに再就職先が決まっている場合は、新たにその会社で特別徴収を開始できる期日がわかるはずです。その期日を前職の会社に伝えて、最後に支払う給与からまとめて住民税を天引きしてもらうのです。

前職の会社に協力してもらう

例えば、1月に退職して4月から再就職先で住民税の特別徴収が開始できるとします。この場合、前職の会社に頼み、1月分の給与から1・2・3月分の住民税をまとめて控除してもらうのです。

そうすれば、4月分からは再就職先で特別徴収が開始されるので、結果として普通徴収に切り替えることなく引き継ぎができることになります。

おすすめのやり方ではありますが、このやり方には重大な問題点があります。それは、再就職先が決まっていることを前職の会社に知られるということです。

退職する人の中には、再就職することを告げずに別の理由を作って退職する人もいるでしょう。このやり方をお願いすると、再就職先が決まっていることばバレバレなので、退職理由を隠したい場合にはあまりおすすめできません。

 

再就職先が未定の場合に必要な手続き

再就職先が未定の場合に必要な手続き

このように、退職する際に再就職先が決まっている人については特別徴収をつなげることができるので、住民税の手続きをスムーズに行うことができます。

ですが、再就職先が決まらないまま退職するという方もいるでしょう。その場合、退職時の住民税については、退職したタイミングに応じて次のやり方で納付しなければなりません。

 

 

6月1日~12月31日の期間に退職した場合

退職した月の住民税については、最後の給与から天引きして納付をします。再就職先が決まっていないので、それ以降の住民税については特別徴収から普通徴収に切り替え、納税通知書を使って納税をしなければなりません。

退職する際に会社の人に申し出れば切り替えは簡単に可能です。ただ、このやり方が面倒で収入面に余裕がある方は、事前に会社に申し出ることで、最後の給与から来年の5月までに発生する住民税をまとめて計算して天引きしてもらうこともできます。

最後の給与の手取りが大幅に減ることになりますが、普通徴収に切り替えて納税する必要がなくなるので楽です。来年5月までの間に再就職先が決まって特別徴収が開始できれば、普通徴収期間は生じなくなります。

 

退職金によって住民税の負担が増えることも

仮に再就職先が決まらないまま翌年6月を迎えた場合、それ以降に課税される住民税は前年の退職したところまでの収入をベースに計算されるため、住民税の金額自体は下がります。ただ、ここで注意しなければならないのが退職金です。

退職金も所得になるので、住民税の課税対象所得となります。まとまった退職金が出ると、それに課税される住民税は翌年の負担として重くのしかかるのです。

そのため、退職金が出たからといっていきなり高級車を買うと、翌年の納税資金に苦労することになります。退職金が支払われる人で再就職先が決まっていない人は、住民税の請求がくるまでの間はできるだけ退職金を残しておくことをおすすめします。

 

1月1日~5月31日の期間に退職した場合

この期間に退職した場合は、普通徴収に切り替えるのではなく、最後の給与から5月分までの住民税についてまとめて天引きされることになります。
6月から前年の所得をもとに計算した住民税に切り替わるため、それまでの期間についてはまとめて精算したほうが楽なのです。

ただし、まとめて住民税を天引きしようとしても、給与や退職金の金額のほうが低くて天引きすることができない場合は、特別徴収から普通徴収に切り替えてもらって納税通知書で支払うことになります。

入社後すぐに退職するような場合は、この状況になる可能性がありますので注意しましょう。

 

思わぬ出費に注意

思わぬ出費に注意

今回転職に伴う住民税について詳しく解説した一番の理由、それは退職後の資金繰りに注意してほしいからです。おそらくほとんどの方が住民税について何も手続きをしないまま、会社任せで退職することと思います。

そうすると、特別徴収から普通徴収に切り替わってしまうため、突然自治体から納税通知書が届いて焦ることになるのです。退職するケースでは、そもそも給与が途切れる可能性が高いので、ただでさえ生活費に余裕がない時期だと思います。

そんなときに予期せず住民税の納税通知書が届いたら、かなりの痛手となります。退職をするときは自分の住民税がいくらであり、退職することでいつ・いくらの納税通知書が届くのかを必ず確認した上でやりくりしましょう。

また、次の就職先が決まっている方については、前職の会社に申し出ることで、普通徴収に切り替えることなく特別徴収のまま引き継ぐ方法も検討しましょう。

 

転職時の住民税に関するまとめ

退職する際に住民税の精算を退職する会社任せにしていると、再就職先の総務や経理に迷惑がかかることもあります。サラリーマンの方は住民税を他人事のように思っているケースがよくありますが、本来は自分で計算することも大切です。

退職、転職、再就職する際には、その間の住民税についてどうやって納税すればよいのか、まずは興味を持って確認する意識を持つことがとても大切です。

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