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年金手帳がない場合に困ることとは?年金手帳の役割&再発行する方法をFPが解説

年金手帳がない場合に困ることとは?年金手帳の役割&再発行する方法をFPが解説

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著者名

西岡 秀泰

西岡 秀泰

社会保険労務士、FP2級

生命保険株式会社に25年勤務し、FPとして保険・年金販売を関わってきました。現在は、社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険に関する企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所・相談員をしています。社会保険労務士は公的な保障制度により、FPは私的な保険を活用して「ひと」が抱えるリスクに対応します。両者の経験・知識、また関連する税金や金融商品についてお役に立つ情報をお届けします。

この記事のポイント

  • 年金手帳は国民年金に加入している証明であり、公的年金への加入から年金受給するまでの手続きに必要。
  • 基礎年金番号で行っていた各種届出・申請が、マイナンバーで代用できるようになった。
  • 入社時の年金手帳提出などマイナンバーカードで代用できないこともあるので、紛失したら再発行の手続きをする。
  • 再発行の際は「年金手帳再発行申請書」を、会社員なら会社へ届出・自営業者は年金事務所などで手続きをする。

大学を卒業し会社に就職したときや転職したとき、必ずといっていいほど「入社手続きに年金手帳を持ってきて」と言われます。普段使わないだけに、どこにしまったか忘れて大慌てで探す人も多いと思います。

今回の記事では、年金手帳がないと困ることを中心に、年金手帳の役割と再発行する方法について解説します。

 

国民年金と年金手帳

国民年金と年金手帳

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は全員、国民年金に加入しなければなりません。年金手帳が必要な理由は、日本年金機構が、年金手帳に書かれた基礎年金番号を使って国民年金加入者を管理しているからです。

 

国民年金と基礎年金番号

国民年金の被保険者(加入者のこと)には、下記の3種類があります。

対象者 保険料の納付
第1号被保険者 学生、自営業者など 国民年金保険料を自分で納付
第2号被保険者 会社員、公務員など 厚生年金保険料を給与天引き
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養される配偶者 保険料の支払いなし

第2号被保険者は、国民年金と厚生年金(公務員は共済年金)の両方に加入していることになり、「2階建ての年金に加入している」などと表現されることもあります。

また、第1号被保険者と第3号被保険者を「国民年金」、第2号被保険者を「厚生年金(共済年金)」と分けて呼ぶ場合も多く、紛らわしく感じるかもしれません。

 

基礎年金番号

国民年金の加入者全員には基礎年金番号が付番されていて、一生涯変更せずに使われます。基礎年金番号が導入されたのは平成9年1月からで、それ以前は加入する年金制度によって厚生年金番号と国民年金番号が付番されていました。

そのため、複数の年金番号を持つ人がいて個人の年金記録を1つの基礎年金番号にまとめようとした際、誰のものかわからない年金記録が約5000万件も発生しました。これが「消えた年金問題」で、当時の社会保険庁が責任を取って解体に追い込まれました。

 

年金手帳とは

年金手帳とは、国民年金に加入している証明であり、また基礎年金番号や年金記録を確認するためのものです。

 

年金手帳の記載内容

年金手帳には下記の内容が記載されています。

  • 基礎年金番号(または、厚生年金番号や国民年金番号)
  • 氏名・生年月日・性別
  • 住所
  • 保険料納付記録(年金の加入記録)

保険料納付記録は、以前は国民年金や厚生年金保険の加入記録が記載されていましたが、事務手続きの簡略化のため現在は記載されていません。自分で記入もできますが、毎年送付される年金定期便での確認がおすすめです。

 

年金手帳の種類

年金手帳は発行時期によって名称や色が異なりますが、現在年金保険料を支払っている人のほとんどは、下記のオレンジかブルーの手帳になります。

年金手帳の種類

厚生年金保険被保険者証と国民年金手帳は昭和49年10月以前発行のもので、この年金手帳を持っている人のほとんどは年金受給者です。

ブルーの年金手帳は、基礎年金番号がスタートした平成9年1月以降のもので基礎年金番号のみが記載されています。また、オレンジの手帳は平成8年12月以前の発行で、厚生年金番号や国民年金番号が記載され、「基礎年金番号通知書」が添付されています。

 

基礎年金番号通知書

基礎年金番号通知書は、基礎年金番号導入時にすでに厚生年金番号や国民年金番号が記載された年金手帳を持っている人に対し、基礎年金番号を知らせるために作成されたものです。年金手帳の再発行はせずに、各自の年金手帳に通知書を添付する形となっています。

また、公務員などの共済年金加入者には年金手帳を発行しないので、基礎年金番号通知書によって基礎年金番号を通知します。

基礎年金番号通知書

 

年金手帳の役割

年金手帳の役割

年金手帳は、公的年金への加入から年金受給するまでのあいだのさまざまな手続きに必要です。主な役割は下記のとおりです。

  • 公的年金加入や変更、保険料支払い手続きの必要書類
  • 公的年金の受給手続きの必要書類
  • 年金加入状況の確認資料
  • 身分証明書としての役割

 

 

公的年金加入や変更、保険料支払い手続きの必要書類

年金手帳を最もよく使うのが、年金制度への加入手続きで基礎年金番号を確認するために使用します。

  • 大学を卒業し会社に入ったときや転職したとき
  • 会社を辞めて国民年金に加入するとき
  • 第3号被保険者になったとき(結婚して会社員の被扶養者になったとき)

そのほか、国民年期保険料の支払い手続き(前納や保険料免除の手続きなど)や年金の相談をするときにも必要となります。

以前は名前や住所を変更した場合、第1号被保険者は市役所や年金事務所で手続きが必要でしたが、現在は原則的には手続き不要です。マイナンバーと基礎年金番号が紐づけされ、住民票が変更されると年金記録に反映されるようになりました。

 

第2号被保険者と第3号被保険者の手続き

第2号被保険者と第3号被保険者(会社員とその被扶養配偶者)は、会社が手続きをするので会社に届出しましょう。

また、平成30年3月5日から基礎年金番号で行っていた各種届出・申請がマイナンバーでできるようになったため、マイナンバーカードがあれば年金手帳がなくても手続き可能となりました。ただし、会社への年金手帳提出は基礎年金番号の確認が目的なので、マイナンバーカードで代用できません。

 

公的年金の受給手続きの必要書類

公的年金の受給手続きをするときには、年金手帳が必要となります。目的は基礎年金番号の確認と、年金記録に漏れがないかを確認するためです。

公的年金は老後を保障する老齢年金だけでなく、自分が障害状態になった場合に受け取れる障害年金、生計の主体者がなくなった場合に遺族に支払われる遺族年金などがあり、受給手続き時に年金手帳の提出が求められます。

年金制度への加入手続きなどと同様、マイナンバーカードを使って手続きすることができます。

 

年金加入記録を確認する資料

年金手帳には、保険料納付記録(年金の加入記録)の記入欄があります。

前述のとおり、以前は国民年金や厚生年金保険の加入記録が記載されていましたが、現在は記入欄はあっても加入手続きの際にその記録が追記されることはありません。自分で記入するか、毎年送付される年金定期便で年金記録の確認をするように変更されました。

平成9年1月以降に発行されたブルーの年金手帳は年金加入記録の確認資料としては役に立ちませんが、それ以外の年金手帳は自分の年金記録に漏れがないかを確認するための重要資料ですから、大切に保管しましょう。

 

身分証明書としての役割

年金手帳には、身分証明書としての役割もあります。官公庁や金融機関での手続きのほか、日常生活のさまざまな場面で本人確認を求められるケースがあります。

本人確認書類は免許証やマイナンバーカード、パスポートなど写真付きの証明書が原則ですが、写真のない年金手帳や健康保険証なども本人確認書類として認められるケースがあります。

 

年金手帳と年金証書の違い

年金手帳と間違われやすいものに、年金証書というものがあります。年金証書は、老齢年金や障害年金、遺族年金の手続きをして受給資格が認定されると交付されます。

年金証書は「年金受給権者の身分証明書」ともいえるもので、受給権発生日や年金種類、年金額などが記載されています。

年金証書が年金受給を開始した後に使用するのに対し、年金手帳は受給前の年金保険料支払い期間に使用し、受給が始まると不要になります。公的年金を受給しながら年金保険料を支払っている人は、年金手帳と年金証書の両方が必要です。

 

年金手帳がないとどうなる?

年金手帳がないとどうなる?

年金手帳がないと、前述の「年金手帳の役割」で解説した各種手続きなどができません。年金手帳がなくてもマイナンバーカードで代用したり、必要なときに再発行したりという方法もありますが、下記のような事態が発生すると困ったことになります。

 

入社時に会社への提出が間に合わない

従業員を採用すると、会社は5日以内に厚生年金の加入手続きをするよう義務づけられています。厚生年金の加入手続きには従業員の基礎年金番号が必要になるため、入社時に確認資料として年金手帳の提出が求められるのです。

年金手帳を紛失した場合は年金事務所に行って再発行します。再発行手続きができるのは平日の営業時間内なので、たとえば会社への年金手帳提出が月曜までの場合、金曜の夜まで紛失に気づかなかったら提出に間に合わないケースも考えられます。

入社早々に「提出期限が守れない人」というレッテルを張られると困りますので、早めに確認・準備をしましょう。

 

年金記録が確認できない

年金定期便を見たときや年金受給手続きのとき、自分が加入していた年金記録に漏れや誤りが見つかるケースがあります。前述の「消えた年金問題」が主な原因です。このような場合、年金事務所に行って記録の訂正を依頼しましょう。

記録を訂正するときには、年金記録に誤りや漏れがあることが確認できる証拠が必要になるケースがあります。たとえば「A会社で厚生年金に加入していたのに、自分の年金記録に反映されていない」場合、A会社のときの年金手帳があればA会社で厚生年金に加入していたことを証明できます。

また、年金手帳に記載された年金番号で、本人も気づかなかった年金記録の漏れが発見されることもあります。

 

そのほか年金手帳を持っていないと困る場合

上記のほか、下記ケースでも基礎年金番号がわからないと手続きができずに困ることがあります。

 

「ねんきんネット」の登録

「ねんきんネット」は、自宅のパソコンやスマートフォンで、年金の加入記録や将来の年金見込額などを確認できるサービスです。「ねんきんネット」の登録には基礎年金番号が必要です。基礎年金番号がわからないと手続きができません。

 

「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」の加入

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の加入にも基礎年金番号が必要です。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は税制優遇のある個人型年金制度で、支払った掛金を自分で運用して老後資金を蓄えることが特徴です。老後資金への不安の高まりや、手厚い税制優遇で注目を集めています。

 

年金手帳の再発行手続き

年金手帳の再発行手続き

年金手帳を紛失したときは、再発行手続きをしましょう。再発行に手数料は不要で、年金事務所の窓口で手続きすれば申請日当日に再発行できます。

 

 

再発行の申請先

再発行の申請先は、加入する年金制度により異なります。

  • 第1号被保険者:住所地の市区町村役場、または最寄りの年金事務所
  • 第2、3号被保険者:会社の所在地を管轄する年金事務所

第2、3号被保険者の再発行手続きは、会社経由で行うことが一般的です。

 

再発行の必要書類

年金手帳の再発行に必要な書類は「年金手帳再発行申請書」のみです。窓口で手続きするときは本人確認書類が必要です。

再発行申請書の記入例は下記リンクを参照ください。ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。

参考:日本年金機構|年金手帳再発行申請書(記入例)

再発行の必要書類

 

再発行の申請方法

年金手帳の再発行申請は、窓口での提出のほかに郵送や電子申請(e-Gov)でも可能です。電子申請(e-Gov)を行うには、事前に電子証明書の取得が必要です。

 

年金手帳がない場合に起こること&再発行手続きに関するまとめ

年金手帳は、国民年金に加入している証明であり、基礎年金番号や年金記録を確認するためのものです。公的年金への加入から年金受給するまでの間のさまざまな手続きに必要となります。

マイナンバーカードがあれば年金手帳がなくても可能な手続きがあり、必要なときに再発行するという方法もありますが、「入社時に会社への提出が間に合わない」など不測の事態に備えて、紛失が判明したら再発行手続きしましょう。

再発行手続きについて、第2、3号被保険者は会社へ年金手帳を紛失したことを届出しましょう。第1号被保険者は市区町村役場でも手続き可能ですが、即日再発行できる年金事務所に行くことをおすすめします。

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