- 80歳以降ももらえる遺族年金は「遺族厚生年金」。
- もらえる年金額は生前の給料によって変動する。
- 場合によっては寡婦加算や労災年金の上乗せもあり。
公開日:2020年3月10日
日本の長寿化は世界的にも注目されており、特に女性の長寿化は年々目を見張るものがあります。世界の最新データによると、男女合わせた平均寿命は日本で83.98歳、アメリカで78.69歳、中国で76.25歳とのこと。
更に日本の内訳として、男性の平均寿命は81.25歳、女性はさらに長く87.32歳となっています。男性と女性ではおよそ6歳の開きがあり、一般的に考えると「日本の女性は世界的にも長生きである」という事になります。
ちなみに現在の日本の最高齢女性は福岡県にお住まいの方で117歳とのこと!素晴らしいですね。
さて今回のテーマは《80歳以降の遺族年金について》です。データ上はほとんど女性が遺族となる場合が多いうえに、女性は長生きですので、高齢となった妻が遺った場合の【遺族年金】についてまとめていきます。
今現在20代30代の女性の方は、80歳以降の話は気が遠くなるくらい先の話だと思いますが、誰にでも老後はやってきますので、その時の参考までに、どうぞ最後までお付き合いくださいね。
目次
【遺族年金】は、いつから、いつまでもらえるのでしょうか?最初に紹介したデータのように、日本の長寿化が更に進み、長生きしていても年金はずっと続くものなのでしょうか。長生きしても入ってくるお金が無いと不安ですよね。
簡単に言うと「【遺族年金】をもらえる条件に当てはまった時から、対象外になる時まで」ということです。以下、具体的に見ていきましょう。
いつから年金スタートなのか?というと【遺族年金】の受給要件を満たして、さらに認定を受けた時からです。故人が生前どの年金に加入していたかによって、故人が満たすべき要件、遺族の要件、お子さんがいる場合はお子さんの年齢も調査対象となります。
初回の【遺族年金】を実際にもらえるまでには、一般的に手続き開始から約3~4か月かかると言われています。結構長い時間がかかりますが、これはしっかり調査をした上で、間違いなく支給するために必要な時間だと思ってくださいね。
いつからもらえるのか、具体的な要件に関してはこちらの記事も合わせて参考になさってください。
一度もらい始めた【遺族年金】に関して、年金がもらえなくなる状態にならない限りは一生受け取ることが出来ます。
【国民年金】に加入していた場合、遺された家族に【遺族基礎年金】が支給されますが、ここでポイントなのが【遺族基礎年金】をもらえる範囲は【子】または【子のある配偶者】です。つまり、お子さんがいらっしゃらない場合、【遺族基礎年金】はもらえません。
今回のテーマである《80歳以降の遺族年金》について検討してみると、子のある配偶者に該当しませんので、おおよそ80歳以降ではどなたも【遺族基礎年金】はもらえないということです。
遺族年金制度全般(基礎・厚生どちらも)において、子供の概念は「18歳に到達した年の年度末まで」となっています。
18歳になった年を含む年度末が過ぎたら、制度上の「子」は居ないことになり、「子のある配偶者」として【遺族基礎年金】をもらっていた人も、もらえなくなるという事です。
故人が社会保険加入であれば、年金は厚生年金に加入していたことになります。
以前は公務員など一部の業種に対して【共済年金】制度がありましたが、今は【厚生年金】に一本化されているので、【共済年金】加入だった方は【厚生年金】に関する記述を参考になさってくださいね。仕組みなども含めて、全て【厚生年金】制度に移行されています。
【厚生年金】に加入していた場合は、生前の加入期間や給与に応じて【遺族厚生年金】が支給されます。
《80歳以降の遺族年金》についてですが【遺族厚生年金】に上乗せで【経過的寡婦加算】ももらえる場合があります。【経過的寡婦加算】は【中高齢寡婦加算】を受給していた人が対象の加算です。それぞれの加算について、以下にポイントをまとめます。
遺族厚生年金には【中高齢寡婦加算】【経過的寡婦加算】という制度もある。
以下の要件のいずれも該当すれば【中高齢寡婦加算】を受給できます。
なお【中高齢寡婦加算】の支給時期は40歳から65歳までです。今回のテーマである《80歳以降の遺族年金》については直接的には関係しませんが、この後の【経過的寡婦加算】の受給要件に関連してきますので、並行して確認しておくと理解が深まりますのでオススメです。
以下の要件に該当する場合には【経過的寡婦加算】を受給できます。
経過的寡婦加算に該当すれば《80歳以降の遺族年金》に加えて受給できるという事です。
【遺族年金】といえば、加入していた年金制度に応じた基礎または厚生のいずれかの年金を受け取る場合がほとんどです。しかし、お亡くなりになった原因が業務上の理由(通勤中も含む)の場合は労災保険からも遺族補償年金を受けられることになっています。
国などから労災であると認定された場合に限ります。
労災保険は、雇い主が全額負担で必ず従業員にかけなければならない保険なので、実際に働いている人から徴収するものではありません。労災年金に関しての詳細は、厚生労働省ホームページ内に関連のページがあるので、そちらも合わせてご確認いただくと良いでしょう。
【遺族年金】の対象になっている遺族の中で【遺族年金】をもらえる第一順位であるのは《配偶者》です。
この記事の冒頭でも少し平均寿命に関するデータを紹介しましたが、女性の方が長生きであり【遺族年金】を受給できるのは女性であるというイメージは大いにあると思います。
確かに、以前の【遺族年金制度】の配偶者の範囲は「妻のみ」に限定されていました。ところが家族スタイルの多様化から、2014年より、夫や妻という分け方ではなく、一律「配偶者」という括りに変更されました。
【遺族厚生年金】をもらうためには、前提条件として「亡くなった方と生計維持関係にあった」妻、子、夫などです。
生計維持関係とは、少々難しいワードですが、要は家族を養っていた方が亡くなった場合に、世帯全体の収入が無くなってしまっては困るので、せめてもの生活費代わりとして年金をもらえるようになる、というイメージでも良いでしょう。
夫が【遺族厚生年金】を受け取る為にはさらに条件が二つあり、このいずれかに該当しなくては受給できません。
まず一つ目に【子のある55歳以上の夫】です。もう一つは【子の無い55歳以上の夫】です。つまり子供がいてもいなくても、死別した当時に夫が55歳以上ではないと【遺族厚生年金】は全くもらえないという事です。
逆に言うと、お子さんがいらっしゃらなくても、奥様が亡くなった時点でご主人が55歳以上であれば、その後は継続的に【遺族厚生年金】をもらえるという事です。
ちなみに、55歳以上の夫が妻の分の遺族厚生年金を実際に受け取ることが出来る時期は、夫が60歳以降になってからです。
この後に詳しく書きますが、日本の年金制度は「ひとり一年金」が原則です。異なる理由の年金を二つ同時に受け取ることは出来ません。
しかし例外的にいくつかの併給が認められており、遺族年金の範囲であれば、ご自身の【老齢基礎年金】と【遺族厚生年金】であれば同時に受け取ることが出来ます。
専業主婦の妻が亡くなったら、遺された夫はなにももらえないと思っている方が多いのではないでしょうか。
実は、専業主婦の方が亡くなった時にも【遺族年金】をもらえることがあります。もちろん全ての方がもらえるわけではありません。
では、どのような場合に遺族である夫に支給されるかというと、妻が亡くなった時点で専業主婦であったとしても、生前会社員や公務員としてお勤めをされていた場合です。
その加入していた厚生年金の加入期間や、本来老齢年金として妻がもらうはずだった老齢年金額に応じて、夫に支給される場合があります。
その場合の要件として【年金加入期間(または受給資格期間)が300月以上ある場合】が必須となっています。また、一つ上の項目でも紹介した通り、夫が妻の分として【遺族厚生年金】を受け取る場合には【妻が死亡時に夫が55歳以上であること】が条件です。
夫が55歳以上で受給権が発生し、実際に【遺族厚生年金】がもらえるのは60歳以降になってからです。近年、随分制度改正などが行われていますが、遺族補償としてはまだまだ妻の方が手厚い印象ですね。
基本的には「ひとり一年金の原則」がありますから、何かしらかの年金をもらっている間に、並行して他の年金をもらうことは出来ません。ただし【老齢年金】と【遺族年金】の受給権が発生した場合の例外として【遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給可能】です。
また、今回のテーマである80歳以降の年金の話から少し外れますが、【特別支給の老齢年厚生年金】と【遺族厚生年金】は一緒にもらうことはできません。どちらか一つを選ぶことになります。
【特別支給の老齢厚生年金】とは、生年月日や性別に応じて段階的にもらうことが出来る【老齢厚生年金】です。もらえる期間は60~64歳です。
ここまで【遺族基礎年金】【厚生年金】についてまとめてきましたが、結局いくらくらいもらえるのかというところは一番重要ですよね。
故人が国民年金のみ加入していた場合の【遺族基礎年金】に関して、80歳以降にご遺族が【遺族基礎年金】としてもらえる金額はゼロということです。この場合は、ご遺族ご自身の【老齢基礎】【厚生年金】のみの受給ということになります。
では故人が厚生年金に加入していた場合【遺族厚生年金】はどうなるかというと、故人の生前の給与に対して所定の倍率を掛けたものが支給されますので、一律にいくら、と金額を申し上げることはできません。
80歳以降の遺族年金=《遺族厚生年金》+《経過的寡婦加算》+《労災保険からの遺族補償年金》
遺族厚生年金の支給額は、生前故人が働いていた時期の給与に応じて変動します。平均標準報酬月額や平均標準報酬額といった数字を基にして計算しますが、既に退職して時間が経っている場合などは分かりづらい場合もあるかと思います。
そのような場合は、日本年金機構のねんきんネットの活用や、Web上に無料で遺族年金シミュレーションを利用できるサイトもあります。
詳細な平均標準報酬月額などがわからなくても、だいたいの年収(または月収)などや、年金加入期間などがわかれば、簡易的に試算をすることもできます。シミュレーション以外でも、年収をいくつかに分けて遺族年金の早見表を公開しているサイトもあります。
いずれも簡易的ではありますが、だいたいどのくらいの遺族年金をもらうことが出来るのかを目安として知ることが出来ます。
現在、遺族厚生年金の平均標準報酬月額の上限は30等級の62万円です。その中でも故人が生前公務員だった場合の「遺族共済年金」から遺族年金を受け取る場合が、現行の遺族厚生年金制度での最高額と考えて良いでしょう。
なおかつ《80歳以降の遺族年金》について考えた場合は、配偶者のみ受給のパターンになりますので、その場合の支給額は概算で年額約1,174,800円とのことでした。
いかがでしたか。【遺族年金】は貴重な生活費であることは間違いありません。いつからいつまでもらえるのか、自分の【老齢年金】と一緒にもらえるのか、という部分はどなた様も気になるところだったかと思います。
80歳以降でも【遺族厚生年金】と【老齢基礎年金】が合わせてもらえる、という内容は本記事でも是非覚えていただきたいポイントです。2つの年金を受け取ることが出来れば、老後の生活費としてかなり安心材料になるのではないでしょうか。
今後、日本はますます長寿化に突入します。民間の生命保険でも、長生きのための保険が新発売され、途端に売れ筋となっているそうです。それだけ皆さんの意識が「長生きへのリスク」に向いているという事でもありますよね。
医療の進歩などから、病気は治る時代になってきました。つまり、まだまだ私たちは長生きする確率が高いという事です。パートナーと死別した後の人生が必然的に長くなってしまうことも十分にあり得ます。
今回のテーマである「80歳以降の遺族年金」に関しても、予め概算で良いので金額を把握しておけば、その過不足に対して予め預貯金や生命保険などで備えて準備しておくことができます。
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