- 遺族年金の試算をしておくと、過不足についてあらかじめ備えることが出来る。
- 遺族基礎年金は一律の額なので計算しやすい。
- 遺族厚生年金は計算が複雑な為シミュレーションの活用がオススメ。
- 遺族年金には他に寡婦に対する加算が2種類ある。
- 遺族年金は金額に寄らず全て非課税。
公開日:2020年2月13日
配偶者を亡くし遺族年金を受け取ることになった場合、ご遺族がご本人だけなのか子供がいるのかによって支給額が変わります。
他にも、配偶者が国民年金に加入していた場合にももらえる「遺族基礎年金」か、会社員や公務員などの給与所得者で厚生年金に加入していた場合にもらえる「遺族厚生年金」なのか、あるいはそのいずれも貰える場合があるのか、など遺族年金の受給には様々なパターンがあります。
本記事では、どのような状態に該当すれば、どこの年金からいくらもらえるのか、受給要件や計算方法も含めて解りやすく解説していきます。なお、遺族年金制度全般に関しては【日本年金機構】ホームページ内の遺族年金に関するページにて、解りやすくまとめられています。
あわせて、遺族年金制度全体の概要についてこちらの記事も是非お読みください。
遺族年金をもらえるようになるための要件は【亡くなった方の要件】と【ご遺族の要件】の2種類があります。このどちらも満たすことで初めて年金の受給権が発生します。
該当する遺族年金が基礎・厚生いずれの場合でも共通する要件として、「亡くなった配偶者と生計維持関係にあること」「生計維持関係にある遺族の年収が850万円に満たないこと」があります。そこから更に基礎・厚生で要件が違いますので、ここからは基礎と厚生に分けて解説します。
ご遺族が遺族基礎年金をもらうということは、亡くなった配偶者が自営業やフリーランスなどで国民年金に加入している(していた)場合です。加入義務のある国民年金は、誰でも加入しなければならないので、会社員などで厚生年金に加入している人でも、この基礎部分の条件も満たせば厚生年金と併せて貰えることになります。
よく「二階建ての年金」と言われますが、一階部分は国民全員が支払う義務のある【国民年金(基礎年金)】です。二階部分は、給与所得者が更に上乗せで加入している【厚生年金】です。つまり、厚生年金加入者は一階にも二階にも該当すればどちらも貰えるという事になります。
亡くなられた方の要件として、下記要件などのどれか一つに該当しなければなりません。
遺族の要件として、18歳到達の年度末を迎えるまでの子と、その子のある配偶者(夫でも妻でも可能)です。子の要件として、もう一つ【20歳到達未満で、障害等級1級・2級に該当する子】という条件もあります。お子さんが、この内いずれかに該当すれば対象となります。
亡くなられた方の要件として、下記要件などのいずれかに該当する必要があります。
また、特例として【2026年3月末までに65歳未満で亡くなった場合、亡くなった付きの前々月までの1年以内に保険料の未納がなければ良い】というものがあります。
遺族の要件としては、基礎年金よりも更に範囲が広がり【妻】【55歳以上の夫(60歳以降に受給開始)】【子】【父母、孫、祖父母】の順で、順位が高い人に要件を満たす人が居れば、その方が受給できる人ということになります。
遺族厚生年金は、子供の有無に寄らず《妻》が受給権者の第一順位となっています。ただし、お子さんのいない妻が30歳未満である場合は、5年のみの有期年金となります。
配偶者と死別した段階では、上記のような要件にいずれも該当しており年金を受給していたとしても、途中で打ち切りになる場合もあります。
主なものでは、【遺族である配偶者が新たなパートナーを得て再婚する場合】や【基礎年金の場合の受給要件である「子」が18歳を迎えた年度末を経過し、遺族年金の制度上における「子」に該当する人がいなくなった場合】などです。
他にも途中で年金打ち切りとなる場合がいくつかありますので、詳細はこちらの記事でご確認ください。
遺族年金の詳細な金額については受給額が決定してみないとわかりません。ただし、日本年金機構ホームページ内でも計算式が公表されていますので、概算については決定前にご自身で割り出すことも可能です。
受給決定前に試算することのメリットとしては、前もって受給額の概算を知っておくことで、それに対しての過不足を予め備えておくことが出来ます。
例えば自営業者の配偶者の場合などで、生活費としての遺族年金が思っていたよりも少ない、またはそもそも要件に該当せず年金をもらえない場合などは、民間の生命保険や預貯金などで備えておく必要があります。試算をすることで、遺族補償を考えるきっかけになればと思います。
国民年金に加入していた方の計算方法は、金額が一律であるため比較的シンプルでわかりやすい内容です。基本となる加算額+該当者が何人いるかの合計ですので、遺族基礎年金に関してはご自身でも一度計算してみると良いでしょう。
780,100円+子の加算(第2子までは各224,500円・第3子以降は各74,800円)
厚生年金の加入者だった方の遺族厚生年金を試算する場合、基準となるのは《平均標準報酬月額》や《平均標準報酬額》です。報酬比例部分と言われるもので、その名の通り《報酬(給与)に比例して額が変わる》という性質のものです。
ですから、算定基準がどなたも一律である遺族基礎年金の場合と違って、遺族厚生年金に関しては全く同じ金額を受け取っている方は日本中でもかなり少ないと言えます。計算式はかなり複雑ですが、こちらも日本年金機構にて計算式が公表されているものですので、参考までにご紹介します。
〈平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数〉×3/4
遺族厚生年金をご自身で試算するには、まず《平均標準報酬月額》や《平均標準報酬額》、各期間における加入月数を調べておく必要があります。
毎年誕生日頃に届く《ねんきん定期便》や《ねんきんネット》などで把握することはできますが、これらが活用できない場合、ご自身ではなかなかはっきりした試算が出来ないのではないでしょうか。
そのような場合には、インターネット上で簡単に遺族年金の額を試算できる無料のシミュレーションの活用をおすすめします。あくまでも目安の金額ではありますが、だいたいいくらくらいもらえるのかの参考にはなります。
いくつかの項目について、簡易的に入力するだけで概算がわかりますので利用されてみるのも良いのではないでしょうか。
遺族厚生年金には、試算して割り出す受給額とは別に、該当者に特別に加算される金額があります。【中高齢寡婦加算】【経過的寡婦加算】です。ここでは、どのような条件に当てはまれば加算があるのかポイントを解説します。
この加算はいずれも《妻》だけが対象となっている点は注意が必要です。残念ながら現行制度ではまだ《遺族である夫》は該当しません。
注意点として、遺族年金について基礎と厚生のどちらも受け取っている方は該当しません。
お子さんが居ない、または18歳を超えたため制度上の子が居ないことになり基礎年金を受け取れない遺族厚生年金の受給者で、夫の死亡時に40歳以上65歳未満の場合に【中高齢寡婦加算】があります。加算額は以下の通りです。
中高齢寡婦加算の額=585,100円
経過的寡婦加算の要件として《昭和31年4月1日以前に生まれた妻》で、妻が65歳以降になれば妻の生年月日に応じて一定の金額が加算されます。
この【経過的寡婦加算】は、昭和31年4月2日以降に生まれた妻には支給されませんのでご注意ください。経過的寡婦加算の額は以下の通りです。
経過的寡婦加算の額=19,500~585,100円の間の所定の額(生年月日により額は変動する)
遺族年金はご遺族の大切な生活費としての側面があり、2カ月に一度の振込額も決して少額ではないことから、精神的な支えとしても金額的にも大きな収入です。しかし、遺族年金(基礎・厚生いずれも)は全額非課税です。
一般的に「年金」と呼ばれるのは、退職後のシニア層が受け取る「老齢年金」のことですが、この老齢年金は雑所得として課税対象となります。
一方遺族年金や障害年金に関しては、年齢によらず条件を満たせば受給対象者となりますが、これらは年金年額や受給対象者の年収など一切関係なく全額非課税です。
遺族年金の税務に関しては、こちらの記事も是非ご参考にされてください。
遺族年金は、配偶者を亡くした方やそのご家族を支える大切なお金です。
生きている限り何かしらの出費はありますが、配偶者の死去により入ってくるお金が大幅にダウンしてしまうことが考えられ、この遺族年金は全ての収入の内で大きな割合を占めることになります。それだけ意味のあるお金だという事です。
本記事でご紹介した遺族年金の受給額を知る方法は、あくまでも目安であり確定の金額ではありません。遺族年金に関するご相談やお尋ねは、お近くの年金事務所や市町村の年金窓口、社会保険労務士などの専門家に直接お尋ねください。
ただし、詳細までは解らないにしても、概算としてお知りになる方法は本記事にて紹介していますので是非ご活用ください。
誰でも利用できる年金シミュレーションも上手に取り入れながら、万が一に備えて、遺族年金以外の遺族補償も備えておくためのひとつの目安にしてはいかがでしょうか。
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