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奨学金の繰上げ返済が得になるケースとは?損しないために知っておきたい返還の仕組み

奨学金の繰上げ返済が得になるケースとは?損しないために知っておきたい返還の仕組み

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田中 英哉

田中 英哉

2級ファイナンシャルプランニング技能士、上級心理カウンセラー

2級ファイナンシャルプランニング技能士の有資格者。長年のライター経験の中で、お金に関する記事を執筆。日本最大級のソーシャルワークサイトにてプロクラウドワーカー TOPclass認定。ライター部門契約ランキング最高6位。難しいお金の話しを分かりやすく伝える記事は、読者から読みやすいと好評。

この記事のポイント

  • 奨学金の仕組みは、返済がいらない給付型と返済が必要な借与型があります。
  • 奨学金を繰り上げ返済すると、利息が減るなどのメリットがあります。
  • 奨学金の繰り上げ返済手続きは、インターネットや郵送、電話やFAXで行えます。

奨学金は学費を捻出してくれる有難い方法ですが、有利子の奨学金の場合は繰り上げ返済した方がお得です。この記事では日本学生支援機構の奨学金を例に、繰り上げ返済の仕組みと返還のポイントを紹介します。

また、繰り上げ返済の方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

【奨学金の繰上げ返済①】奨学金の仕組み

奨学金の仕組み

親の経済事情によって、大学や大学院、専門学校などへの進学を奨学金で賄う学生は多いです。日本学生支援機構(旧日本育英会)によると、奨学金利用率は37.2%(平成29年度)となっており、2.7人に1人が利用しています。

《平成29年度の貸与率》
大学・短大(通信除く) 37.5% 2.7人に1人
大学院 30.0% 3.3人に1人
高等専門学校 7.3% 13.8人に1人
専修学校専門課程 41.3% 2.4人に1人
合計 37.2% 2.7人に1人

そんな奨学金の仕組みについて以下内容を紹介します。おさらいとして確認しておきましょう。

  • 給付型と貸与型とは
  • 第1種奨学金と第2種奨学金がある
  • 繰り上げ返済すると返済期間短縮になる

 

給付型と貸与型とは

奨学金は大きく分けると「給付型」と「貸与型」があります。給付型は返済が不要である反面、給付してもらうための条件がシビアであるため、給付されない場合があります。

貸与型は幅広く利用可能である代わりに、返済が必要となります。多くの場合、「貸与が終了した月の翌月から数えて7カ月目」となっていますので、卒業した3月に貸与が終了し、7カ月目の10月から返済が必要となります。

つまり、社会人1年目から返済していかなくてはなりません。この記事は繰り上げ返済がテーマですので、貸与型の内容となります。

 

第1種奨学金と第2種奨学金がある

日本学生支援機構の例で言うと、貸与型には第1種奨学金と第2種奨学金の2種類があります。第1種奨学金は無利息で借り入れができるもので、第2種奨学金は利息が発生するものです。そのため、第2種奨学金は借入総額よりも返済総額が上回ります。

住宅ローンを借りる場合「固定金利」と「変動金利」がありますが、奨学金も同様に「利率固定方式」「利率見直し方式」が選べます。

利率固定方式は返済まで利率が固定されているもので、利率見直し方式は約5年ごとに見直されます。

 

繰り上げ返済すると返済期間短縮になる

繰り上げ返済とは返済前倒しのことです。奨学金の繰り上げ返済方法は2つあり、指定の月数分を返済する方法と、金額指定で返済する方法があります。

指定の月数分の返済とは「〇カ月分を返済します」というもので、金額指定とは「上限〇円を繰り上げ返済します」というものです。

ただし、気を付けなければならないことがあります。住宅ローンの繰り上げ返済では、月々の返済額を少なくする方法と返済期間を短くする2パターンがありますが、奨学金の繰り上げ返済は返済期間短縮のみとなります。

 

【奨学金の繰上げ返済②】繰り上げ返済で得するメリット

繰り上げ返済のメリット

繰り上げ返済をし、返済期間が短くなるとどのようなメリットがあるのでしょうか?ここではそのメリットとして以下の5つを紹介します。

  • 早期に返済できて利息が浮く
  • 住宅ローンが有利になる
  • ライフプランが立てやすくなる
  • 毎月貯蓄に回せる上限金額が増える
  • 気持ちが楽になる

繰り上げ返済をしようか迷っている場合には、ぜひ参考にしてください。

 

早期に返済できて利子が浮く

繰り上げ返済をすると返済総額が下がります。どうして返済総額が下がるかというと利息が浮くからです。奨学金に限らず、借金をした時には返済残高に利息がかかりますので、元本が減るほど利息の負担が軽くなります。

仮に200万円の借入をしている場合、本来であれば200万円に対して利息がかかりますが、50万円繰り上げ返済をした場合はこの50万円にかかるはずだった利息が浮くのです。

つまり、繰り上げ返済をしたタイミングが早いほど得ということになります。

 

住宅ローンが有利になる

奨学金の繰り上げ返済をしたほうが、住宅ローン審査で有利になる場合があります。住宅ローン審査では、返済負担率という項目があり、年収に対するローンの比率がチェックされています。

ほかのローンが多いほど返済の負担が高くなるため、住宅ローンの利用額が減ってしまうのです。

そのため、奨学金の繰り上げ返済で少しでもローンを減らしている方が、住宅ローンの借入がしやすいということになります。返済負担率は、年収の25%~35%程度が一般的です。

 

ライフプランが立てやすくなる

奨学金の繰り上げ返済をしている方が、ライフプランを立てやすくなります。先述の住宅ローンもそうですが、ほかにも結婚や子供の教育費、老後資金など、生きて行く上ではさまざまな資金の準備が必要となります。

これらの資金は貯蓄や投資で作ることになりますが、貯蓄も投資も期間が長いほど効果的です。奨学金の返済が遅くなるほど、ライフプランに関わる資金の準備が遅れてしまうため、早めに返済した方がその後の人生に有利なのです。

 

毎月貯蓄に回せる上限金額が増える

繰り上げ返済によって借金が減れば、毎月貯蓄に回せる上限金額が増えます。仮に毎月2万円返済していて、貯金は毎月1万円としていた場合、返済後は毎月3万円の預貯金ができることになります。

つまり、これまで奨学金の返済に充てていた額が丸ごと現在の預貯金にプラスされるため、預貯金が加速的に増えることになるでしょう。

もちろん、奨学金を完済したからと言って、生活水準を上げては意味がありません。これまで通りの生活水準を維持することが前提となります。

 

気持ちが楽になる

気持ちが楽になるというのも大きなメリットです。SNSの投稿をリサーチしてみると、借金によって何となく気持ちに負い目があると言う人は多いです。

その負い目によって自己投資できないケースもあるようです。本来なら出ておいた方が良いセミナーや、取得しておきたい資格なども、「まだ借金があるから」ということで先延ばしにしてしまうのです。

そのため、繰り上げ返済によって気持ちが楽になるということは、機会損失を回避することにもつながります。

 

【奨学金の繰上げ返済③】奨学金返還のポイント

奨学金返還のポイント

奨学金の繰り上げ返済は多くのメリットがあるものの、何も考えずに繰り上げ返済してしまうと、かえって損をする場合があります。また、損はしないまでも生活が成り立たなくなるリスクもありますので、慎重に検討する必要があります。

ここでは奨学金返還のポイントとして以下の内容を解説します。

  • このまま分割と一括返済とどっちが得か
  • 他のローンがある場合は優先順位が重要
  • 返済期間の猶予申請もアリ

 

 

このまま分割と一括返済とどっちが得か

奨学金は、今まで通り返済を続けた方が良い場合と、繰り上げ返済した方が得な場合があります。確かに繰り上げ返済をすると、返済総額が減ってお得ではあるのですが、返済するほどまとまったお金がある場合、投資した方が得となるケースもあります。

仮にですが、奨学金の年率が0.3%だったとします。あえて繰り上げ返済せずに、その分のお金を年率1.0%で資産運用できれば、0.7%分得となります。

いずれにせよ、返済や投資で貯蓄がゼロになると生活苦に陥る可能性もあるため、ゆとりのある資金が前提となります。

 

他のローンがある場合は優先順位が重要

他のローンがある場合は優先順位が重要となります。たとえば、18.0%の金利で借り入れしているカードローンと、8.0%の金利で借り入れしている自動車ローンがあったとします。

このような場合に返済原資が貯まったのであれば、奨学金から返してしまうと損となります。金利が高いカードローン、自動車ローンの順に返済し、最後に奨学金を返済しましょう。金利が高いものから優先順位を付けての返済が原則となります。

 

返済期間の猶予申請もアリ

奨学金は返済猶予期間という仕組みがあります。前年年収が300万円以下の給与所得者や、前年年収200万円以下の給与所得者以外の人の場合、1年間の返済猶予の申請ができます。

この仕組みを利用して、猶予期間中に返済原資を貯めれば、繰り上げ返済によって利息を浮かせることができます。返済猶予期間の申請が降りるのは、低年収や生活苦の場合ですので、知っておくといざという時の助けとなるでしょう。

 

【奨学金の繰上げ返済④】手続きの流れ&返済方法

奨学金繰り上げ返済の方法!手続きの流れを紹介

繰り上げ返済しようとした場合、具体的にはどのようにすれば良いのでしょうか?奨学金繰り上げ返済の方法は、以下の3通りがあります。

  • インターネットによる繰り上げ返済
  • 郵送での返済
  • 電話やFAXでの返済

手続きの流れは上記窓口から問い合わせるだけですので、至ってシンプルです。それぞれの内容について見て行きましょう。

 

インターネットによる繰り上げ返済

日本学生支援機構の奨学生は、公式サイトから繰り上げ返済が可能です。公式サイトの「スカラネット・パーソナル(スカラネットPS)」に登録すれば、奨学金の確認や変更が可能です。

インターネットであるため、24時間365日手続きができますので、いつでもどこでも行えます。

 

郵送での返済

郵送の場合は、繰り上げ返済の申し込み用紙を送るだけです。繰り上げ返済の申込書は日本学生支援機構の公式サイトからダウンロード可能です。プリントアウトして郵送しましょう。

送付先は「〒162-8412 東京都新宿区市谷本村町10-7 日本学生支援機構 奨学事務センター」となっています。

 

電話やファックスでの返済

電話やファックスでも手続き可能です。電話の場合は奨学金返還相談センターのナビダイヤル「0570-666-301」にコールして手続きしましょう。

ファックスの場合は公式サイトから申し込み用紙をダウンロードし、「03-6743-6683」に送信すると手続きができます。

 

奨学金の繰上げ返済に関するまとめ

奨学金は、返済がいらない給付型と返済が必要な借与型があり、貸与型には無利息なものと有利子なものがあります。利息がかかる奨学金は繰り上げ返済したほうがお得となります。

ただし、返済原資をより高金利で運用する場合や、返済の優先順位が高い借金がある場合には、奨学金の繰り上げ返済を後回しした方が良いでしょう。状況に応じての判断が重要となります。

奨学金の繰り上げ返済手続きは、インターネットや郵送、電話やFAXで行えますので、とても手軽に繰り上げ返済が可能です。

 

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