- 奨学金には返済しなくても良い「給付型奨学金」があります。
- 給付型奨学金は成績優秀な高校3年生や卒業後2年以内の人が利用できます。
- 給付型奨学金は、返済を求められる可能性があるというデメリットがあります。
公開日:2020年1月8日
進学する際の経済事情で、奨学金を利用する人は多いです。奨学金は学生の時に借りて、社会人になってから返済する仕組みであるため、社会人生活が経済的にマイナススタートとなります。
しかし、「給付型奨学金」という制度もあり、この場合は返済が不要です。この記事では「給付型奨学金」について詳しく解説します。
目次
終身雇用制や年功序列賃金が崩壊している日本社会において、大学進学の学費を奨学金に頼るケースが増えています。
しかし、奨学金は返済能力がない学生の間に融資を受け、社会人になってから返済していく仕組みであるため、苦しい社会人生活を送っている人もいらっしゃいます。
そんな奨学金は利息や返済など、条件によってさまざまなものがあります。まずは基礎知識として以下奨学金の種類を知っておきましょう。
日本学生支援機構(JASSO)が提供している第一種奨学金は、利息がかからない奨学金です。評定平均3.5以上の成績優秀な高校3年生(専門学生)や、卒業後2年以内の人が申し込めます。
利息がかからないという利用者に有利な奨学金であるため、成績優秀者というハードルを設けているのです。
融資される金額は国公立や私立、大学や短大、専門学校などによって異なり、自宅生と自宅外生でも変わります。詳しくは以下の表にまとめますのでご確認ください。
《第一種奨学金》 | 国公立 | 私立 | |||
---|---|---|---|---|---|
自宅生 | 自宅外生 | 自宅生 | 自宅外生 | ||
最高月額 | 大学 | 45,000円 | 51,000円 | 54,000円 | 64,000円 |
短大・専門学校 | 45,000円 | 51,000円 | 53,000円 | 60,000円 | |
その他月額 | 大学、短大・専門学校 | 30,000円 20,000円 |
40,000円 30,000円 20,000円 |
40,000円 30,000円 20,000円 |
50,000円 40,000円 30,000円 20,000円 |
第二種奨学金は有利子の奨学金で、およそ最大3%の金利となっています。第一種のような進学先や通学方法にかかわらず、月額2万円~12万円の間で希望金額を設定します。
第一種奨学金のような成績基準はありませんので、門戸が広く開放されています。具体的な内容は以下のとおりです。
《第二種奨学金》 | 大学 | 短大 | 専門学校 |
---|---|---|---|
月額 | 2万円~12万円のうち1万円刻みで選択可能(私立大学や医科大学、歯科大学などは4万円、薬学や獣医学などは2万円の増額ができる) |
奨学金は返済しなければならないものがほとんどですが、返還不要な奨学金が給付型奨学金です。返還が要らないということは、その分審査基準がシビアであると覚悟が必要ですが、利用できれば大きなメリットがあります。
企業や財団などが独自で給付型奨学金を提供していますが、日本学生支援機構も給付型奨学金を提供しています。
学生のうちから大きな借金をするのは、その後の人生で経済的不利となってしまいますので、可能であれば給付型奨学金を利用したいものです。
具体的な金額は後述しますが、給付型奨学金だけでは学費などを賄うことは困難です。不足分として第一種奨学金や第二種奨学金を考えるのは自然な流れでしょう。しかし、第一種奨学金と併用する場合には、制限が設けられているため想定しておく必要があります。
利用可能な金額は、第一種奨学金の貸与上限額から、授業料の減免上限額と給付型奨学金額の合計を差し引かれます。つまり「利用可能額=第一種奨学金貸与上限額-(授業料の減免上限額+給付型奨学金)」となりますので知っておきましょう。
では、給付型奨学金というのはどのような仕組みで、どのような人が利用できるのでしょうか?具体的な内容として以下について解説します。
給付型奨学金の申し込み条件は、大学や短大、専門学校に進学することが前提で、高校3年生や専門学校生のほか、それら卒業後2年以内の人が申し込めます。
また、高等専門学校第4学年に進級予定の同第3学年や修了後2年以内の人のほか、高校卒業程度認定試験合格者および出願者も申し込みできます。
その上で、家計について住民税非課税世帯、生活保護世帯、社会的養護を必要とする人が対象となっていますので知っておきましょう。
選考基準としては、人物や学力、将来性などが検証されます。人物や将来性については、学生生活全般で給付に値するかどうかが基準となります。態度の良さや将来設計が立っているか、社会貢献しうる人物かなどが見られます。
学力については、成績が優秀かどうか(高校生の場合は5段階評価で3.5以上など、大学生の場合は平均成績が上位2分の1の範囲であることなど)、進学後にも好成績を収められそうかどうかなどが見られます。
テストの点数や単位だけでなく、将来性も確認されることを知っておきましょう。
給付型奨学金は、国立、公立、私立によって異なるほか、自宅生か自宅外生によっても変わります。具体的な支給月額は以下の表のとおりです。
《給付型奨学金》 | 自宅生 | 自宅外生 | |
---|---|---|---|
国立 | 20,000円(授業料が全額免除となる場合は0円) | 30,000円(授業料が全額免除となる場合は2万円) | |
公立 | 20,000円 | 30,000円 | |
私立 | 30,000円 | 40,000円 |
在学している間にも、手続きをしなければならないタイミングがあります。毎年7月と10月の年2回、在籍報告が課せられています。
在籍報告は在籍状況や通学形態を報告しなければなりませんが、在籍している学校から連絡が入るので忘れる心配はありません。学校から連絡が来れば、インターネットで報告するだけですのでカンタンです。
これらの手続きをきっちりしておかなければ、奨学金の給付を止められてしまう可能性がありますので注意が必要です。
給付型奨学金を利用する場合には、メリットだけでなくデメリットも検証しておきましょう。両面を知らなければ、利用後に「こんなはずではなかった」ということになり得ますので、事前確認が必要です。
給付型奨学金のメリットは、何と言っても返さなくて良いというところです。経済面で信用力のない学生が数百万円の借金をすることは、金融取引として極めて異例です。
銀行ローンを利用する際にも、ノンバンクカードローンを利用する際にも、必ず安定収入がチェックされますが、奨学金にはその概念がありません。
結果的に社会人になってから安定収入が得られず、借金を焦げ付かせる人もいるため、返さなくても良いということは大きなメリットなのです。
給付型奨学金のデメリットは、借りれる金額が低いことと、返還を求められるケースがあることです。借りられる金額は先述のとおり低水準であるため、給付型奨学金だけでは不足することが多いです。
返還を求められるケースとしては、卒業延期、単位不足、学校処分(除籍、退学、停学)を受けた時などが挙げられます。
返還が不要だと思って借りたのに返還を要求されると、金策に苦しむことになり得ます。このようなことにならないよう気を付けましょう。
最初に奨学金の種類を紹介しましたが、そもそも奨学金を利用している人は多いのでしょうか?実は奨学金利用者は年々増加し、数多くの学生が利用しています。奨学金利用者の実態として以下を見て行きましょう。
日本学生支援機構のIR情報(平成31年3月)によると、奨学金利用者の数は右肩上がりに増加しています。たとえば、平成19年度に3.3人に1人(29.9%)だった大学・短大での奨学金利用は年々増え続け、平成29年に2.7人に1人(37.5%)と1.3倍になっています。
専修学校専門課程に至っては、平成19年度に4.3人に1人(23.4%)だったのが、平成29年に2.4人に1人(41.3%)と1.8倍になっています。
全体で見た場合も3.4人に1人(29.2%)から2.7人に1人(37.2%)へと1.3倍となり、多くの学生が利用している実態が分かります。
受給者増加の理由として、社会情勢が親の懐事情に影響を与えています。平均年収が右肩下がりとなっており、平成9年に460万円だったのが、平成29年には432万円となっています。
一方で、授業料や入学料は国立大学・私立大学ともに高止まりしており(私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額〈定員1人当たり〉の調査結果について〈文部科学省〉)、親の苦しい懐事情が見て取れます。
また、借りたは良いものの返せない人もいます。平成29年度末における延滞3カ月以上の延滞債権額は、2,398億円(要返還債権額に対して3.4%)で、このうち6カ月以上の延滞債権額は、1,811億円(同2.6%)となっています。
20代前半という若い間から数百万円の借金を背負っていることが、社会人生活に影を落としている実態が分かります。安定した会社に努められれば良いのですが、就職できなかったり失業した際には苦しい現実が待ち構えているのです。
もしも奨学金を返せなかった場合には、さまざまなリスクが生じます。延滞をしてしまうと個人信用情報機関に事故記録が記載されるため、その後の金融取引で不利となります。
具体的にはクレジットカードやローン審査で不利となるため、その後のライフプランを立て辛くなります。住宅購入や自動車購入、教育ローンなどの利用ができなければ、金策で苦しむ確率が上がるため、奨学金はきっちりと返済しなければなりません。
給付型奨学金を利用する場合には、いくつかの注意点があります。具体的な内容として以下について解説します。
給付型奨学金を利用する際には、学業に励まなければなりません。先述のとおり、学業を疎かにしてしまうと返還を求められる可能性があります。
奨学金によって学生生活を成り立たせている人は、アルバイトなどで不足分を賄っているケースがあり、結果的に学業が疎かになることもあります。
学びのために奨学金を借りて学業が疎かになれば本末転倒ですし、その上返還を求められれば目も当てられません。学業に専念するか、アルバイトとの両立を図りましょう。
貸与型の奨学金やほかの教育ローンとの併用には注意が必要です。これらの利用金額が負担となって、社会人になってから生活苦に陥る可能性も考えられます。
給付型奨学金がもらえるという油断が、借金返済意識を低下させるケースもありますので、常に計画性を持っておきましょう。
ちなみに、銀行の教育ローンは親が借金するものですが、消費者金融の教育ローン(学生ローン)は本人が借金するものです。その辺りの違いも踏まえ、借入れ時は慎重になりましょう。
給付型奨学金が得られたとしても、その分無駄遣いしていては意味がありません。しかし、奨学金を一定の収入だと錯覚して浪費してしまうケースもあるのです。
下手をすれば奨学金給付額よりも多くの浪費をし、自分で自分の首を絞めてしまうこともあるため、ちゃんと節約に励みましょう。学生の間から金銭感覚を養えれば、その後の経済がいやすくなります。
浪費を防ぎ、節約するコツとして、家計簿をつけると良いでしょう。家計簿はつけるだけでも節約意識が高まります。
奨学金には、貸与型だけでなく返済しなくても良い「給付型奨学金」があります。給付型奨学金は成績優秀な高校3年生や卒業後2年以内の人が利用できるため、条件に合う人は申し込みをおすすめします。
ただし、少額であることや、返済を求められる可能性があるというデメリットがありますので、あらかじめ想定しておくことが必要です。給付後はしっかりと学業に励み、無駄遣いしないよう気を付けましょう。
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