- 減価償却資産とは、時の経過により資産価値が減少する資産のこと。
- 減価償却資産は、法定耐用年数にわたって毎年少しずつ経費に計上する。
- 減価償却資産は節税効果が長く続き、業績への影響が小さいのがメリット。
- 減価償却資産は購入した年の節税にはつながらず、管理に手間がかかるのがデメリット。
公開日:2020年7月21日
法人や個人事業主として事業を営んでいる中で、「減価償却資産」という言葉を聞いたことはないでしょうか。事業では、会計処理や税務申告を行うときに、減価償却資産を取り扱う場面が出てきます。
減価償却資産は税金や業績に関わってくるので、安定した事業を営むには、減価償却資産について理解しておくことが大切です。今回は、減価償却資産の対象範囲や計上の仕方、メリット・デメリットについて解説します。
減価償却資産とは、取得価額が10万円以上で、時の経過により資産価値が減少する資産のことです。
事業のために購入した建物や機械、器具備品などの資産は長期間使用できます。しかし、長く使うほど劣化しますし、新しい商品も出てくるので、通常は年月が経過するほどその価値は減っていきます。
そのため、減価償却資産は、決められたルールに則って会計処理や税金計算を行う必要があります。
減価償却資産は、大きく「有形減価償却資産」「無形減価償却資産」「生物」の3つに分けられます。分類ごとに具体例をまとめました。
分類 | 具体例 |
---|---|
有形減価償却資産 | 建物および附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具など |
無形減価償却資産 | ソフトウェア、特許権、商標権、実用新案権など |
生物 | 牛、豚、かんきつ樹、りんご樹、茶樹など |
土地や骨とう品は、時間が経っても資産価値が減少しないため、減価償却資産には該当しません。また、棚卸資産(販売目的で保有している商品)や有価証券も、減価償却資産の対象外となります。
減価償却資産の取得価額は、使用可能期間にわたって少しずつ費用化していきます。この手続きを「減価償却」といいますが、減価償却を行う背景には以下2つの考え方があります。
建物や機械などを導入する場合、支出がかなり高額になることもあります。取得時に全額経費に計上すると、その年だけ大きな赤字が出てしまいますが、減価償却を行うことで業績に与える影響を抑えられます。
また、減価償却資産は長期間使用できるので、使用可能期間にわたって少しずつ費用化するほうが、経営状態(業績)は正しく反映されます。減価償却資産の考え方が理解できると、会計処理や税金計算の方法、メリット・デメリットも理解しやすくなるでしょう。
減価償却資産の対象範囲や考え方について確認しましたが、実際にはどのように処理をすればいいか気になると思います。ここでは、減価償却資産の計上の仕方について説明します。
減価償却資産は、購入時には固定資産として会計処理します。たとえば、事業用の車を200万円で購入したケースについて確認してみましょう。購入時に行う仕訳は以下のとおりです。
借方 | 車両運搬具 200万円 |
---|---|
貸方 | 現金200万円 |
車両運搬具は経費ではなく、貸借対照表に固定資産として計上されます。購入した資産が事業用の建物であれば「建物」、パソコンやプリンターなら「機械装置」といった勘定科目で同じように仕訳します。
法定耐用年数とは、減価償却資産の使用可能年数に当たるもので、資産の種類ごとに定められています。減価償却資産は、決算時に法定耐用年数に応じて減価償却します。
先ほどのケースにおいて、購入した車の法定耐用年数が4年(定額法:償却率0.250)の場合、減価償却費は50万円(200万円×0.250)となります。決算時の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 減価償却費 50万円 |
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貸方 | 車両運搬具 50万円 (減価償却累計額 50万円) |
この仕訳によって、取得価額200万円のうち50万円が経費に計上されたことになります。
法定耐用年数は、国税庁のホームページなどで確認できます。
減価償却費の代表的な計算方法は以下2つです。
定額法は毎年一定額の減価償却費を計上するのに対し、定率法は最初の年の減価償却費が最も多く、年とともに減少していくのが特徴です。
資産ごとに法定償却方法は決まっていますが、資産の種類によっては、所轄税務署長に申請書を提出することで、別の償却方法を選択することも可能です。早い時期に多くの経費を計上したい場合は、定率法を選択するといいでしょう。
減価償却資産のメリットは以下2つです。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
減価償却資産は、法定耐用年数にわたって減価償却費を計上できるので、毎年の利益が抑えられます。利益が抑えられると課税所得も下がるため、法人税や所得税などの節税につながります。
しかも、減価償却費は現金の支出をともなわない経費です。減価償却資産の購入時に代金の支払いは済んでいるので、手元に現金を残しながら、毎年経費を計上して節税できます。
減価償却資産は購入時に全額経費に計上するのではなく、貸借対照表の固定資産に計上し、法定耐用年数にわたって少しずつ費用化していきます。そのため、取得価額が高額でも、その期の利益が大きく減ることはありません。
事業で順調に利益が出ていれば、減価償却資産の購入で赤字になる可能性は低く、「業績悪化で金融機関から融資を断られる」といった事態を避けられます。
減価償却資産は、先ほど紹介したメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
減価償却資産は、購入時に支払った価格を一括で経費に計上できません。事業では「予想よりも利益が出てしまったため、少しでも課税所得を抑えたい」といった場面もあるでしょう。
しかし、期末に減価償却資産を購入しても一括で経費に計上できないので、その期の節税にはつながりません。業績への影響は小さいものの、すぐに利益を少なくして節税したい場合はデメリットになります。
減価償却資産は、会計処理や資産管理に手間がかかるのもデメリットです。
少額の消耗品や事務用品などは、購入時に経費するだけで会計処理は終わります。しかし、減価償却資産は法定耐用年数にわたって減価償却するため、固定資産台帳を作って取得日や償却方法、帳簿価額などを管理しなくてはなりません。
減価償却費は会計ソフトが自動計算してくれますが、多くの減価償却資産を所有するほど、固定資産台帳と実物資産の照合などの管理に手間がかかります。
減価償却資産は、資産の種類や金額によっては固定資産税がかかります。固定資産税とは、毎年1月1日現在所有している資産にかかる税金で、以下の2つがあります。
土地・建物を所有していると固定資産税がかかり、場所によっては都市計画税もかかります。マイホームにも固定資産税はかかるので、土地・建物についてはイメージしやすいかもしれません。
また、構築物や機械装置なども固定資産税がかかり、こちらは「償却資産税」ともいわれます。多くの減価償却資産を所有していると、固定資産税の負担が大きくなる恐れがあるので注意が必要です。
今回は、減価償却資産の対象範囲や計上の仕方、メリット・デメリットを紹介しました。
減価償却資産は難しいと感じるかもしれませんが、基本的な内容を理解しておくだけでも、事業を営むうえで役に立ちます。減価償却資産を購入する場合は、税理士などの専門家にも相談して、節税や業績向上につながるような購入方法を検討してみましょう。
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