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特別償却と税額控除はどちらが有利?それぞれの違い&選び方のポイントをFPが解説!

特別償却と税額控除はどちらが有利?それぞれの違い&選び方のポイントをFPが解説!

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大西 勝士

大西 勝士

AFP、2級FP技能士

フリーランスの金融ライター。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆しています。得意分野は個人の資産形成。お金に関する疑問・不安を解消していただけるように、お金の知識をわかりやすく伝えることを心掛けています。

この記事のポイント

  • 税制措置の適用対象となる設備投資を行う場合は、特別償却・税額控除といった税制優遇を受けられる。
  • 特別償却とは、普通償却限度額と併せて特別償却費を計上できる税制優遇のこと。
  • 税額控除とは、本来納めるべき法人税の額から一定額を控除できる税制優遇のこと。
  • 特別償却と税額控除は、基本的には税額控除を選ぶほうが有利。

この記事は約7分で読めます。

中小企業(法人)で事業を行っていると、設備投資を行う機会があるのではないでしょうか。税制措置の対象となる固定資産を購入すると、「特別償却」や「税額控除」といった税制優遇を受けられます。

税制優遇を活用して節税すれば、手元に多くの資金を残せるので、特別償却・税額控除について理解を深めておくことが大切です。今回は、特別償却と税額控除の違いやそれぞれのメリット・デメリット、どちらが有利かについて解説します。

 

特別償却と減価償却の関係

特別償却と減価償却の関係

まずは、特別償却の概要と減価償却との関係について説明します。

 

特別償却とは

特別償却とは、特定の固定資産を購入して事業で利用した場合に、通常の減価償却費と併せて特別償却費を計上できる制度です。購入年度に多くの減価償却費を計上できるので、節税効果が期待できます。

青色申告を行う中小企業が対象であることが多く、税制措置ごとに適用対象となる法人や年度、資産の種類が定められています。設備投資のために購入した機械装置などが税制措置の対象資産であれば、特別償却が利用できます。

 

即時償却・割増償却とは

特別償却と似た言葉に「即時償却」や「割増償却」があります。

  • 即時償却:固定資産の取得価額の全額を償却できる制度のこと
  • 割増償却:普通償却費に一定割合の償却費が割増される制度のこと

即時償却と割増償却はいずれも特別償却のひとつで、普通償却費に上乗せして減価償却できるのは同じです。産業政策上の観点から、税制措置として即時償却や割増償却が認められることがあります。

 

特別償却と税額控除の違い

特別償却と税額控除の違い

特別償却が認められる税制措置の多くは、特別償却と税額控除のどちらかを選択できます。ここでは、税額控除の概要や特別償却との違いについて説明します。

 

税額控除とは

税額控除とは、本来納めるべき税額から一定額を控除すること(差し引くこと)です。中小企業が設備投資をするときに、税制措置として法人税などの税額控除が認められることがあります。税額控除では、納めるべき税額から一定額が差し引かれるので、大きな節税効果が期待できます。

 

特別償却と税額控除の違いは税制優遇の仕組み

特別償却と税額控除は、どちらも税制措置の適用対象となるときに受けられる税制優遇です。特別償却は普通償却費と併せて特別償却費を計上できるのに対し、税額控除は本来納めるべき税額から一定額を控除されるため、税制優遇の仕組みに違いがあります。

 

基本的に特別償却と税額控除は選択適用

多くの税制措置において、特別償却と税額控除は対象固定資産を購入した事業年度1回のみの選択適用です。両方とも適用されるわけではないため、どちらか有利なほうを選択する必要があります。特別償却と税額控除を選ぶポイントについては、後ほど詳しく説明します。

 

特別償却・税額控除の計算方法と会計処理

特別償却・税額控除の計算方法と会計処理

特別償却や税額控除を活用する場合、計算方法や会計処理が気になるのではないでしょうか。業績や税金計算に影響が出る恐れがあるので、特別償却費や税額控除額を正確に計算し、適切に会計処理を行うことが大切です。

ここでは、特別償却・税額控除の計算方法と会計処理について解説します。

 

特別償却の計算方法

特別償却の場合、税制措置ごとに償却限度額が決まっているので、限度額の範囲内で特別償却費を計上します。たとえば、500万円の備品を購入して償却限度額が「取得価額の30%」の場合、特別償却費は150万円(500万円×30%)です。

即時償却が認められる場合は、取得した事業年度に500万円全額を償却できます。

 

特別償却の会計処理(仕訳)

特別償却を選択して特別償却費を計上する場合、仕訳は普通償却費と同じです。たとえば、500万円の備品を購入して特別償却費150万円を計上するときは、以下のように仕訳します。

借方 貸方
減価償却費 150万円 備品 150万円
(減価償却累計額 150万円)

特別償却費は、普通償却費と含めて仕訳しても問題ありません。本記事では詳しい説明を省略しますが、「特別償却準備金」という勘定科目を用いて仕訳することも可能です。

 

税額控除の計算方法

税額控除の場合、税制措置ごとに税額控除限度額が決まっています。たとえば、500万円の備品を購入し、税額控除限度額が「取得価額の7%」の場合、税額控除額は35万円(500万円×7%)です。

ただし、実際に法人税から控除できる金額には限度額(その事業年度の法人税の20%程度)が設けられていることが多いので注意が必要です。

 

税額控除は仕訳不要

税額控除を選ぶときは、納めるべき法人税から控除するので仕訳は不要です。税額控除額の計算を間違えないように、正確に計算しましょう。

 

特別償却のメリット・デメリット

特別償却のメリット・デメリット

特別償却のメリット・デメリットは以下のとおりです。

  • 購入年度の節税効果が高い
  • 期間全体では償却できる金額は変わらない

それぞれ詳しく確認していきましょう。

 

 

メリット:購入年度の節税効果が高い

特別償却は、普通償却額と併せて特別償却額を計上できるので、購入年度の節税効果が高いのがメリットです。利益が抑えられて課税所得が減るため、法人税の節税になります。

 

デメリット:期間全体では償却できる金額は変わらない

特別償却は、購入年度に特別償却費を計上できますが、減価償却期間全体で見ると償却できる金額は変わりません。たとえば、500万円で備品(法定耐用年数5年)を購入するケースについて確認しましょう。

  • 即時償却:購入年度に500万円を全額償却
  • 普通償却:5年で100万円ずつ償却(合計500万円)

即時償却と普通償却は償却期間に違いはあるものの、最終的に500万円償却するのは同じなので、長期的には節税効果に差はありません。

 

税額控除のメリット・デメリット

税額控除のメリット・デメリット

税額控除のメリット・デメリットは以下のとおりです。

  • 法人税が直接控除される
  • 利益(課税所得)が少ないと節税効果は低い

それぞれ詳しく説明します。

 

メリット:法人税が直接控除される

税額控除は経費に計上するのではなく、納めるべき法人税から一定額を直接控除できるのがメリットです。納付する法人税が安く済むので、手元に残せるお金が増えます。税額控除を選択しても普通償却はできるので、長期的には特別償却より節税効果は高くなります。

 

デメリット:利益(課税所得)が少ないと節税効果は低い

税額控除は、納めるべき法人税から一定額を控除するため、課税所得が少ないと節税効果は期待できません。利益がゼロで課税所得が発生しない場合は差し引ける法人税がないので、税額控除を選ぶメリットはないでしょう。

 

特別償却と税額控除はどちらが有利?選び方のポイント

特別償却と税額控除はどちらが有利?選び方のポイント

税制措置の対象となる固定資産を購入した場合、特別償却と税額控除のどちらが有利なのでしょうか。ここでは、特別償却と税額控除の選び方のポイントについて解説します。

 

基本的には税額控除のほうが有利

特別償却と税額控除では、基本的には税額控除のほうが有利です。特別償却は購入年度に多くの減価償却費を計上できますが、長期的には計上できる減価償却費が増えるわけではありません。

一方で、税額控除を選んでも普通償却は可能なため、長期的にみると税額控除のほうが節税額は多くなります。

 

適用対象の固定資産を購入したら専門家に相談する

ただし、税額控除が常に有利とは限りません。利益がゼロで納めるべき法人税がない場合は、税額控除を選択しても節税効果はないからです。特別償却と税額控除のどちらが有利かは、業績などによって異なります。自身で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

 

設備投資で特別償却・税額控除を活用できる主な税制措置

設備投資で特別償却・税額控除を活用できる主な税制措置

実際には、どのような場面で特別償却や税額控除を活用できるのでしょうか。ここでは、設備投資で特別償却・税額控除を活用できる主な税制措置を3つ紹介します。

 

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制とは、中小企業における生産性向上等を図ることを目的に、一定の設備投資について特別償却または税額控除の適用を認める税制措置です。適用期限は令和2年度末(2020年度末)で、概要は以下のとおりです。

対象者 中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)
従業員数1,000人以下の個人事業主
対象業種 製造業、建設業、農業など幅広く適用
対象設備 機械装置(1台160万円以上)
一定のソフトウエア(70万円以上)など
措置内容 個人事業主、中小企業(資本金3,000万円以下):30%特別償却または7%税額控除
中小企業(資本金3,000万円超):30%特別償却

 

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、一定の設備投資を行う場合に特別償却または税額控除の適用を認める税制措置です。適用期限は令和3年度末(2021年度末)で、概要は以下のとおりです。

対象者 中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)
従業員数1,000人以下の個人事業主
※経営力向上計画の認定を受けた事業者
対象業種 製造業、建設業、農業など幅広く適用
対象設備 機械装置(1台160万円以上)
ソフトウエア(70万円以上)
工具器具備品(30万円以上)など
措置内容 個人事業主、中小企業(資本金3,000万円以下):即時償却または10%税額控除
中小企業(資本金3,000万円超):即時償却または7%税額控除

 

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

商業・サービス業・農林水産業活性化税制とは、商業・サービス業を営む中小企業者等が経営改善指導等に基づいて一定の設備投資を行う場合に、特別償却または税額控除の適用を認める税制措置です。適用期限は令和2年度末(2020年度末)で、概要は以下のとおりです。

対象者 中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)
従業員数1,000人以下の個人事業主
対象業種 製造業、小売業、農業など幅広くに適用
対象設備 建物附属設備(1台60万円以上)
器具・備品(1台30万円以上)
措置内容 個人事業主、中小企業(資本金3,000万円以下):30%特別償却または7%税額控除
中小企業(資本金3,000万円以上):30%特別償却

 

特別償却と税額控除に関するまとめ

機械装置などの固定資産を購入する場合、特別償却と税額控除を活用して節税すれば、手元に多くの資金を残せます。設備投資を行う場合は、税制措置の適用がないかを確認しましょう。

基本的には税額控除を選ぶほうが有利ですが、状況によっては特別償却が有利な場合もあるので、どちらを選ぶか判断できない場合は税理士などの専門家に相談しましょう。

 

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