- iDeCo(イデコ)おすすめ商品を10の金融機関で比較。
- iDeCo(イデコ)の理論上のおすすめ商品は、どこの金融機関でも同じ。
- iDeCo(イデコ)で投資の主体にすべきは「株式クラス」。
公開日:2019年8月24日
目次
本記事では、iDeCo(イデコ)を取り扱う10社の金融機関でのおすすめ商品を考察してみたいと思います。本記事でのおすすめ商品とは、理論上、長期分散投資をする際に「合理的である」と考えられる投資信託を指しています。
投資信託とは:数十から数千などの多くの株式や債券などを入れることのできる金融商品の呼び名。分散投資に適している。基本的にどれを買っても、値下がりをする可能性は残る。毎年良い成績を残し続ける投資信託はない。投資信託の成績は良くなったり悪くなったりを繰り返すのが当たり前。
※本記事は特定の金融機関の銘柄に触れていますが、それらを勧誘・斡旋する意図はありません。理論を通じて合理的な投資に対する金融リテラシーを高めることが本旨です。また、名称や数値は、執筆時点のものです。
iDeCo(イデコ)に関する基本的な情報は以下記事をご覧下さい。
本記事で比較する金融機関名は、「楽天証券・SBI証券・松井証券・マネックス証券・ろうきん・イオン銀行・みずほ銀行・りそな銀行・野村證券・十八銀行」の10種類です。
このように種類が多いですと、投資の初心者の方からすると「どこが一番よいおすすめ商品を取り扱っている金融機関なのだろうか?知りたい!」と思われるかもしれません。
しかし、結論から言うと以下のポイントが抑えられているおすすめ商品なら、どこの金融機関で買っても基本的に同じです。
このポイントの詳細な理由につきましては、以下の関連記事に詳しく記しておりますので、より詳しくお知りになりたい方はご確認いただければ幸いです。
「どこで買ってもおすすめ商品が同じ」なんて投資初心者の方からすると意外かもしれません。なぜ、どこの金融機関でもおすすめ商品は基本的に同じなのでしょうか?それは投資信託という金融商品に理由があります。
投資信託は大きな風呂敷袋のようなものですので、色々な金融商品を入れることができます。ということは、同じ中身が入っているものを選べば「名前やコストが少し違うだけで、基本的な値動きは同じ」なのです。
つまり、中身が同じならどこの金融機関で買っても運用成績は同じなのです。そのため、「どこで買ってもおすすめ商品が同じ」となります。
投資信託は「市場の平均」が入っているだけのインデックス型投資信託(※1)がより合理的だと考えられます。なぜでしょうか?
(※1)市場平均の入っているインデックス型投資信託:投資信託は袋のようなもの。その袋の中に、市場平均(インデックスと言う)を入れたものがインデックス型投資信託。
それは、現代の市場はおおむね効率的であると考えられるから…というと、難しいので、別の言い方をします。
現代の市場はおおむね「おりこうさん」な人々によって管理されています。いわゆる金融機関のプロフェッショナルたちです。彼らが様々な手法を駆使して、割高な株式などを売り、割安な株式などを買います。
その結果として、市場の平均は非常に「おりこうさん」な状態になっている、と考えられるのです。別の言い方をしますと、おおむね適正価格になっていると考えられる、ということです。
そのため、投資対象を買うなら、市場平均が入っているインデックス型投資信託が合理的である、となります。
ですから、このインデックス型投資信託を購入すると、どこで買っても同じように下がりますし上がります。
別に運用成績が良いわけでも悪いわけでもありません(それでも理論上はその他のアクティブ型と呼ばれる投資信託はこのインデックス型投資信託に長期で見ると運用成績が劣ると考えられます)。
ただ単に市場の平均に連動する(コスト分だけ下回る)だけです。そのため、信託報酬と呼ばれるコストが0.5%以下(※2)であることが望ましいのです。
(※2)中身が同じインデックス型投資信託なら、名前や金融機関が異なっても、運用成績は同じ。ただし、信託報酬と呼ばれるコスト分だけ、運用成績が必ず押し下げられる。だからこそ、信託報酬は0.5%以下のものから選ぶ(低い方がより良い)ことが重要。
要は、「産地が同じ野菜の詰め合わせ」を買うなら、近所のスーパーでもお高い百貨店でも、ネット通販でも中身は同じ。それなら交通費や宅配料が安い方が良いよね、というお話。
ただ、金融機関ごとに異なる「口座管理手数料」と呼ばれるものがかかります。これは「高くても低くても運用成績に無関係。当然ながら低い方が良い」というものですので、特に理由がないのであれば、高いところは避ける方が賢明ではないでしょうか。
「口座管理手数料」がいくらなのか?にご興味のある方は、こちらの関連記事をご確認いただければ幸いです。
あえてiDeCo口座でおすすめを絞るのであれば、SBI証券か楽天証券です。業界屈指の格安手数料や、豊富なサービス・商品ラインナップを誇るネット証券業界最大手の2社です。
それでは、ここから、10種類の金融機関の理論上のおすすめ商品を見ていきましょう。ただ、先にお伝えした2つの選定基準だけですと、おすすめ商品が100以上に上ってしまい、逆に「よく分からない」ことになりかねません。
そこで、今回は、「国内株式」「先進国株式」「国内債券」「海外債券」の資産クラス(※3)毎に選定基準を加えます。
(※3)大きく資産の区分けが違うものを「資産クラス」と呼びます。学校でいうと、理系のクラスや文系のクラス、という具合です。ここでは、国内株式・先進国株式・国内債券・海外債券を4つの資産クラスとして分類します。
国内株式、先進国株式では、以下の市場平均(インデックス)が入っているかどうかを選定基準にします。まず2つです。
この2つです。
まず、一つ目のトピックス(または日経平均でも良い)とは、日本株式の市場平均を指しています。東証一部上場企業の全て(およそ2,000社)に分散投資をしたのと同じ状態です。
そのため、この市場平均(インデックス)が入ったインデックス型投資信託がまず一つ目です。
二つ目のMSCIコクサイ・インデックス(日本除く)とは、アメリカ・フランス・イギリスなどの日本を除いた先進国21か国程度の株式が入った先進国の市場平均(インデックス)が入ったインデックス型投資信託です。
これを保有すれば、先進国20か国を超える国々の主要な株式およそ1,300社程度に国際分散投資をしたのと同じ状態になります。
ちなみにMSCIとは「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」という企業名です。この企業が算出しているのですね。
上記2種類の投資信託を同時に保有するだけで、世界の先進国3,300社程度分散したのと同様の効果が、誰でもカンタンに手に入ります。すごい時代です。
大切なのは、なぜインデックス型投資信託の中でもこの2種類が重要なのか?ということです。なぜでしょうか?
投資の世界では、リスク(値動きの幅)とリターンはおおむね比例するという考え方です。そのため、長期での資産形成において「お金を大きくしたい」のであれば、ハイリスク・ハイリターンの株式が重要となります。
そのため、前述のトピックス(国内株式)とMSCIコクサイ・インデックス(先進国株式)が長期分散投資では重要です。
ただし、それはあくまでも長期で投資ができる方、という前提が付きます。なぜでしょうか?それは、株式主体ですとハイリスクです。そのため、金融危機時には6割、あるいはもっと下がる(損をしている)状態になります。
定年間際で来年から資産を取り崩さなくては生活できない方や、住宅のリフォーム費用でどうしても一気に取り崩さないといけない方にとっては、とてもではありませんがおすすめ商品ではありません。
そのような方にとってのおすすめ商品は、債券主体のインデックス型投資信託・・・と言いたいのですが、債券主体であってもリスク(値動きの幅)はあります。つまり損する可能性があります。
ですので、減ると困る場合のおすすめ商品は、元本割れの可能性のない預貯金タイプということになります。ちなみに、債券主体のインデックス型投資信託を選ぶ場合は、次の2つの指標(インデックス)が基本です。
これで、国内株式・先進国株式・国内債券・海外債券の4つの市場平均の名前が分かりました。
少し話が分かりづらくなってきました。ここでまとめてみましょう。長期分散投資で重要だと考えられるモノは次の4つです。
資産クラス | 代表的な指標(市場平均)の名称 | それに呼応する投資信託 |
---|---|---|
国内株式 | トピックス(または日経平均でも良い) | その指標に連動するだけのインデックス型投資信託 |
先進国株式 | MSCIコクサイ・インデックス(日本除く) | その指標に連動するだけのインデックス型投資信託 |
国内債券 | 野村BPI総合 | その指標に連動するだけのインデックス型投資信託 |
海外債券 | FTSE世界債券 | その指標に連動するだけのインデックス型投資信託 |
これらの上記の指標が入っている資産クラスのインデックス型投資信託であれば、どこで買っても基本的に値動きは同様です。もちろん、コストが高いものは、それだけ実質的な運用成果が押し下げられますので、コストが安い方が「マシ」になります。
投資信託の名称になると「ダイワ○○」や「三菱○○」など名称が異なりますが、対象とする市場平均が同様なら、同じ値動きをするわけです。
身近な例で例えましょう。ここに、世界的に有名なネズミのぬいぐるみがあるとします。これを袋に入れて、ダイワで売れば「ダイワネズミのぬいぐるみ」という名前になりますし、三菱が売れば「三菱ネズミのぬいぐるみ」になります。
中身は変わりません。ただ、売る場所によって名前とコストが違うだけです。
そうであるなら、コストが安い方が「マシ」です。このような感じで、対象の指標が同じインデックス型投資信託を買えば、同様の値動きになります。
それでは、以上を踏まえまして、楽天証券・SBI証券・松井証券・マネックス証券・ろうきん・イオン銀行・みずほ銀行・りそな銀行・野村證券・十八銀行の10種類でのおすすめ商品をそれぞれ2種類だけリストアップしてみます。
なお、同様の商品が複数ある場合は、よりコストの低い方を選ぶなどしています。
国内株式クラス | 先進国株式クラス | 国内債券クラス | 海外債券クラス | |
---|---|---|---|---|
楽天証券 | 三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド | たわらノーロード先進国株式 | たわらノーロード国内債券 | たわらノーロード先進国債券(為替ヘッジあり) |
SBI証券 | 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 三菱UFJ国際-三菱UFJ 国内債券インデックスファンド(確定拠出年金) | 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 先進国債券インデックス |
松井証券 | DIAM DC 国内株式インデックスファンド | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 三菱UFJ 国内債券インデックスファンド(確定拠出年金) | eMAXIS Slim 先進国債券インデックス |
マネックス証券 | DIAM DC 国内株式インデックスファンド | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 三菱UFJ 国内債券インデックスファンド(確定拠出年金) | eMAXIS Slim 先進国債券インデックス |
ろうきん | DCダイワ日本株式インデックス | 野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI | DCダイワ日本債券インデックス | DCダイワ外国債券インデックス |
イオン銀行 | DIAM DC 国内株式インデックスファンド | たわらノーロード 先進国株式 | たわらノーロード 国内債券 | たわらノーロード 先進国債券 |
みずほ銀行 | DIAM DC 国内株式 インデックスファンド |
たわらノーロード 先進国株式<為替ヘッジあり> | たわらノーロード 国内債券 | たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり> |
りそな銀行 | Smart-i TOPIXインデックス | Smart-i 先進国株式インデックス | Smart-i 国内債券インデックス | Smart-i 先進国債券インデックス (為替ヘッジあり) |
野村證券 | 野村DC国内株式インデックスファンド・TOPIX | 野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI | 野村DC国内債券インデックスファンド・NOMURA-BPI総合 | 野村DC外国債券インデックスファンド |
十八銀行 | 日経225 ノーロード オープン |
ダイワ投信倶楽部 外国株式 インデックス |
野村日本国債 インデックス ファンド (確定拠出年金向け) |
年金積立 インデックス ファンド海外債券 (ヘッジなし) |
※十八銀行のみ、HP上では信託報酬の数値が確認できず。
おすすめ商品:理論上のおすすめ商品とは、年齢や働き方によって異なることはない。投資対象の指標(インデックス)が同様なら、どこで買っても、基本的に値動きは同じ。当然ながら、景気低迷時などには大きく値下がりする。
では、上記4つの資産クラスのうち、どれをメインにすべきでしょうか?現実問題としては、個々の家庭の総資産額や、生活レベル、年齢や、老後の目標などにより、変わってきます。
そのため、誰にとっても「これがベスト!」という割合はありません。それをふまえた上で、非常に乱暴に分けます。
上記はあくまでも一例であり、経済状況によっても判断が変わります。また、上記がどうしてそうなのか?が本当にご自分で理解できていないと金融危機時などに「これは失敗だった」と安く売って損をすることにつながります。
ご自分が理解して、納得したものこそがベターな選択肢になるでしょう。
繰り返しになりますが、株式クラスはハイリスクです。2019年以降は景気循環という観点から見た場合、世界的に景気が足踏み傾向に入る可能性があります。
そのため、どのような投資信託を購入しても、今後は「損をしている状態」になるかもしれません。また、今後も景気が良く、株価などが上昇しても、やがてとても悪くなります。
これは、どの株式クラスの投資信託を買っても同様だと考えられます。このリスク(値動きの幅)にとらわれ過ぎると、積み立て投資が怖くなります。
特に金融危機時などの資産が半額になっているような「損をしている状態」の場合には「安値で売って楽になりたい」と考えがちです。投機的な手法で言いますと、損切りと呼ばれるものです。
しかし、「損をしている状態」は「安く買うチャンスの状態」でもあります。大きく下がっている時期にきちんと積み立て投資を行うことができた時に、初めて、合理的な投資を行えることになるのではないでしょうか。