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減価償却を行う4つのメリットとは?基礎知識&注意点をFPが詳しく解説!

減価償却を行う4つのメリットとは?基礎知識&注意点をFPが詳しく解説!

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大西 勝士

大西 勝士

AFP、2級FP技能士

フリーランスの金融ライター。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆しています。得意分野は個人の資産形成。お金に関する疑問・不安を解消していただけるように、お金の知識をわかりやすく伝えることを心掛けています。

この記事のポイント

  • 減価償却とは、資産の取得価額を法定耐用年数にわたって費用化する手続きのこと。
  • 減価償却費の代表的な計算方法は「定額法」と「定率法」の2つ。
  • 減価償却には「節税効果が長く続く」「業績への影響が少ない」など4つのメリットがある。
  • 減価償却は会計処理や管理に手間がかかり、利益の減少要因となるのがデメリット。

この記事は約8分で読めます。

会社経営や個人事業を行うときに、欠かせない知識のひとつが「減価償却」です。減価償却は利益や税金に関わってくるため、基礎知識があると事業を有利に展開できます。

「会計処理や税務申告は税理士に任せている」という方も、減価償却について理解しておくことが大切です。今回は、減価償却を行う4つのメリットと基礎知識・注意点について解説します。

 

減価償却とは

減価償却とは

減価償却とは、事業用の資産(減価償却資産)の購入代金を取得時に全額経費に計上せず、使用可能期間にわたって分割して費用化していく手続きのことです。

たとえば、業務で使用する建物や機械装置は長期間使用できますが、一般的には時の経過によってその価値は減少していきます。取得価額をまとめて経費にすると、時の経過による価値の減少分が業績や税金計算に正しく反映されません。

そのため、減価償却資産を取得した場合は、減価償却によって取得価額を各年に必要経費として配分する必要があります。

 

減価償却の対象資産

減価償却の対象資産に該当するかは、取得価額や使用可能期間、資産の種類によって判断します。

原則として、取得価額が10万円未満で使用可能期間が1年未満の資産は、購入した年に全額必要経費に計上します。購入代金が10万円以上の場合は、減価償却資産に該当するかを確認するといいでしょう。

 

有形固定資産

有形固定資産とは、物理的な形を持ち、1年以上の長期間にわたって使用できる事業用資産のことです。減価償却の対象となる主な有形固定資産は以下のとおりです。

  • 建物および附属設備
  • 構築物
  • 機械装置
  • 工具器具備品
  • 車両運搬具

これらに該当する資産を取得した場合は、減価償却が必要になります。

 

無形固定資産

無形固定資産とは、1年以上の長期間にわたって使用できる、物理的な形を持たない事業用資産のことです。減価償却の対象となる主な無形固定資産をまとめました。

  • ソフトウエア
  • 特許権
  • 商標権
  • 実用新案権
  • 鉱業権

無形固定資産は目に見えませんが、法人や個人に利益をもたらす点で資産と言えるでしょう。

 

減価償却の対象外の資産

減価償却の対象外となる資産を知っておくと、減価償却に対する理解が深まります。

減価償却は、時の経過による資産価値の減少分を各年に必要経費として配分する手続きです。そのため、時間が経っても価値が減少しない資産は、減価償却の対象外となります。具体的には以下のとおりです。

  • 土地
  • 骨とう品

たとえば、不動産(土地・建物)を購入した場合、建物部分は減価償却の対象ですが、土地部分は減価償却の対象外となるので注意が必要です。上記のほかに、販売目的で保有する棚卸資産(商品・製品)や有価証券も減価償却の対象外となります。

 

減価償却と利益・節税の関係性

減価償却と利益・節税の関係性

減価償却は、利益や節税との関係性を考えると理解しやすいかもしれません。減価償却によって業績は変わりますし、税金計算にも影響を与えます。ここでは、減価償却と利益・節税との関係性について説明します。

 

減価償却が利益に与える影響

減価償却資産を購入したときに、取得価額を一括で必要経費にすると、金額によってはその年だけ大きな赤字が発生します。ひとりで事業をしているフリーランスなら、赤字が出ても現金があれば問題ないかもしれません。

しかし、金融機関から融資を受けている法人や個人事業主の場合、業績が悪化すると、融資の継続に影響が出る恐れがあります。また、新規の資金調達が難しくなり、取引先との関係に与える影響も大きいでしょう。

減価償却で取得価額を各年に経費として配分すれば、業績に与える影響を抑えられます。

 

減価償却で税金が安くなる理由

減価償却によって、資産の取得価額を少しずつ経費に計上すれば、毎年利益が減少します。利益が減少すれば課税所得も減るため、法人税や所得税、住民税などの節税につながります。

減価償却資産は購入時に代金を払っているので、計上時に現金の支出を伴わない経費です。そのため、手元に現金を残しながら毎年経費を計上して節税できます。

 

減価償却費(経費)の計上方法

減価償却費(経費)の計上方法

減価償却資産を購入したときは、減価償却費を計算して経費に計上する必要があります。ここでは、減価償却費の計上方法について説明します。

 

 

法定耐用年数に応じて費用化する

法定耐用年数とは、減価償却資産の使用可能期間のことで、資産の種類ごとに定められています。資産を購入したら、まずは法定耐用年数を確認しましょう。

法定耐用年数はかなり細かく分類されているので、資産の種類によっては判断するのが難しいかもしれません。その場合は、所轄税務署や顧問税理士に相談しましょう。

法定耐用年数は、国税庁のホームページに掲載されています。

 

定額法と定率法

減価償却費の代表的な計算方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。

  • 定額法:毎年一定額の減価償却費を計上する方法
  • 定率法:初めの年ほど多くの減価償却費を計上する方法(一定の年数を経過した後は毎年同額になる)

資産ごとに、定額法と定率法のどちらで減価償却するか(法定償却方法)は決まっていますが、資産の種類によっては別の償却方法を選択することも可能です。早い時期に多くの減価償却費を計上したい場合は、定率法を検討するといいでしょう。

 

定額法の減価償却費の計算例

定額法による減価償却費は「取得価額×定額法の償却率」で求められます。たとえば、取得価額300万円、法定耐用年数10年(償却率0.100)の場合、毎年計上する減価償却費は以下のとおりです。

  • 3,000,000円×0.100=300,000円

ただし、最終年(10年目)は備忘価格として1円残す必要があるため、10年目の減価償却額は299,999円(300,000円-1円)となります。

 

定率法の減価償却費の計算例

一方、定率法による減価償却費は「未償却残高×定率法の償却率」で求められます。ただし、この算式で計算した減価償却費が償却保証額を下回る年からは「改定取得価額×改定償却率」で計算します。

取得価額300万円、法定耐用年数10年(償却率0.200、改定償却率0.250、保証率0.06552)のケースについて、各年で計上する減価償却費をまとめました。

計上年 減価償却費の額
1年目 3,000,000円×0.200=600,000円
2~6年目 (3,000,000円-前年までの償却費の合計額)×0.200
7年目 786,432円(改定取得価額)×0.250=196,608円
(1)786,432円(前年までの未償却残高)×0.200=157,286円
(2)3,000,000円×0.06552=196,560円(償却保証額)
※(1)<(2)のため「改定取得価額×改定償却率」に変更
8~9年目 786,432円×0.250=196,608円
10年目 196,607円(前年までの未償却残高-1円)

上記のケースでは、7年目に調整前償却費が償却保証額を下回るため、7年目以降は「改定取得価額×改定償却率」で減価償却費を計算します。

 

減価償却の会計処理方法

減価償却の会計処理方法

減価償却費の計算方法について確認しましたが、どのように会計処理を行うかも気になるのではないでしょうか。ここでは、減価償却の会計処理方法について説明します。

 

直接法と間接法

有形固定資産の減価償却の会計処理(仕訳)方法には、「直接法」と「間接法」の2つがあります。

  • 直接法:固定資産から減価償却費を直接差し引いて仕訳を行う方法
  • 間接法:固定資産から減価償却費を直接差し引かず、減価償却累計額を用いて仕訳を行う方法

個人事業主や小さな会社は直接法、大企業は間接法を採用することが多いです。無形固定資産は直接法になり、間接法では仕訳できないのでご注意ください。

 

直接法の仕訳例

機械装置を300万円で購入し、減価償却費を50万円計上するケースについて確認しましょう。購入時の仕訳は以下のとおりです。

借方 機械装置 300万円
貸方 現金預金 300万円

減価償却費を計上するときは、直接法では以下のように仕訳します。

借方 減価償却費 50万円
貸方 機械装置 50万円

貸借対照表には「機械装置250万円」と帳簿価額のみ記載されます。

 

間接法の仕訳例

間接法の場合、購入時の仕訳は直接法と同じですが、減価償却費を計上するときは以下のように仕訳します。

借方 減価償却費 50万円
貸方 減価償却累計額 50万円

貸借対照表には「機械装置300万円 減価償却累計額▲50万円」と記載されます。直接法に比べると、間接法は記載される情報が多く、取得価額と費用化した金額の両方を把握できるのが特徴です。

 

減価償却を行う4つのメリット

減価償却を行う4つのメリット

減価償却には以下4つのメリットがあります。

  • 節税効果が期待できる
  • 経費を計上しても手元にお金が残る
  • 資産購入年度の業績への影響が少ない
  • 資産売却時に利益を得られる可能性がある

それぞれ詳しく確認していきましょう。

 

 

節税効果が期待できる

減価償却は、節税効果が長く続くのがメリットです。資産の取得価額を法定耐用年数にわたって毎年経費に計上できるので、法人税や所得税、住民税の節税につながります。

たとえば、「翌期以降は利益が出て税負担が増加する」と予想される場合、今期中に減価償却資産を購入しておけば、翌年以降に経費を計上して節税できます。

 

経費を計上しても手元にお金が残る

減価償却費は、計上するときに現金の支出を伴わない経費です。

資産を購入するときに支払いは終了しているので、経費を計上するときに支出は発生しません。適切な時期に資産を購入すれば、多くのお金を手元に残せます。

 

資産購入年度の業績への影響が少ない

減価償却は、業績への影響が少ないのもメリットのひとつです。

大きな投資を行っても、減価償却資産は法定耐用年数にわたって少しずつ費用化されます。資金繰りには注意が必要ですが、利益が出ていれば、資産購入年度に大きな赤字になることはありません。

 

資産売却時に利益を得られる可能性がある

毎年減価償却を行うと、年数が経過するほど帳簿価額は下がります。減価償却資産を売却するときは、帳簿価額と売却価額の差額が会計上の利益になるので、売却時に利益を得られる可能性があります。

本業の利益が少ない場合、状況によっては、保有資産を売却することで利益を確保できるかもしれません。

 

減価償却の4つのデメリット・注意点

減価償却の4つのデメリット・注意点

減価償却は先ほど紹介したメリットがある一方で、以下のようなデメリット・注意点もあります。

  • 会計処理や資産管理に手間がかかる
  • 資産購入年度の節税効果は期待できない
  • 利益の減少要因となる
  • 資産売却時に税負担が増える可能性がある

それぞれ詳しく説明します。

 

会計処理や資産管理に手間がかかる

減価償却は、会計処理や資産管理に手間がかかるのがデメリットです。少額の消耗品であれば、購入時に全額経費に計上するだけで会計処理は終了します。

しかし、減価償却資産は法定耐用年数にわたって減価償却しなくてはなりません。固定資産台帳を作成して未償却残高などを管理する必要もあるので、保有資産が多くなるほど管理は大変になります。

 

資産購入年度の節税効果は期待できない

事業で予想よりも利益が出そうな場合、節税するために「経費を計上して利益(課税所得)を減らしたい」と考えるのではないでしょうか。

しかし、減価償却は、資産の取得価額を法定耐用年数にわたって少しずつ費用化していくのが特徴です。購入したタイミングで全額を経費にできないため、購入年度の節税効果は期待できません。

 

利益の減少要因となる

減価償却によって資産の取得価額を毎年経費に計上すると、利益の減少要因となります。

減価償却費は節税効果が期待できる一方で、業績にはマイナスの影響があります。取引先や金融機関との関係で、毎年一定の利益を確保しなくてはならない場合はデメリットになるでしょう。

 

資産売却時に税負担が増える可能性がある

減価償却のメリットのところで、減価償却資産は年数が経過するほど帳簿価格が下がるので、売却時に利益を得られると説明しました。

しかし、資産売却で利益が出ると、課税所得も増えてしまいます。減価償却資産を売却する場合、タイミングによっては税負担が増える可能性があるので注意が必要です。

 

減価償却のメリット・デメリットに関するまとめ

今回は、減価償却の4つのメリットや基礎知識、注意点について説明しました。減価償却は利益や税金と大きく関わってくるため、会社経営や個人事業を行うなら必須の知識です。

会計処理や税金計算は、スタッフや税理士に任せても問題ありません。しかし、安定的に事業を行うためにも、減価償却のメリットや注意点については理解を深めておきましょう。

 

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