- 申告書の提出や代筆(入力)であれば配偶者や親族などが代わりに行える。
- 具体的な税額の計算や申告書の作成を任せられるのは税理士または税理士法人のみ。
公開日:2020年1月28日
年が明けると確定申告の時期がやってきます。忙しい人ほど経理処理が複雑になり、申告の負担は大きくなりやすいもの。申告手続きを代わりにやってもらいたいと思っている人も多いのではないでしょうか。
本人以外でも確定申告書の作成や提出などの手続きができるのか。この記事では確定申告の代理手続きについての疑問を解決します。
目次
税理士法第52条には、「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない」と規定されています。
税理士業務とは、他人から依頼を受け、業として「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」のいずれかを行うことをいいます。「税理士(税理士法人)以外が行えない税理士業務(税理士法第2条)」は以下の通りです。
【税務代理】
税務官公署に対する申告等、またはその申告や税務官公署の調査・処分について税務官公署に対して行う主張・陳述の代理・代行すること(税務書類の作成に留まるものを除く)
【税務書類の作成】
税務官公署に対する申告等を行うための申告書等を作成すること
【税務相談】
税務官公署に対する申告等、申告や税務官公署の調査・処分について税務官公署に対して行う主張・陳述または申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応じること
確定申告書の作成は税理士業務における「税務書類の作成」に該当するため、税理士(税理士法人)以外に作成してもらうことはできません。
帳簿や申告書の書き方、仕訳の方法など、一般的な内容についての相談であれば構いませんが、具体的な仕訳や税額計算などについての相談は「税務相談」に該当するためNGです。
報酬を支払わなくても、税理士でない人に申告書を作成してもらうのはNGです。税理士業務に該当するのは、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」を「業」として行う場合。「業」として行うとは「反復継続して行う」ことをいい、有償・無償は関係ないとされています。
税理士法で禁止されている税務書類の「作成」に該当するのは、依頼を受けた人の判断で申告書を作成した場合です。納税者自身が所得の計算や申告する控除内容などをすべて決定しており、その決定・指示に基づいて、別の人が申告書を代筆(入力)すること自体は問題ありません。
税理士(税理士法人)以外に申告書の作成を丸投げするのはNG。単なる代筆であればOK。
税理士以外が他人の申告書を作成した場合、作成を依頼した人(申告者)ではなく、作成した人が処罰される可能性があります(2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。知らなかったでは済まされません。
確定申告書の提出だけであれば、本人以外の代理人が行っても構いません。申告書を代わりに提出する行為は、代理人の意思で申告を行うものではないため、代理というよりは代行にあたります。
委任状は法律上の代理行為を行うために必要な書類であるため、代理人が申告書を提出するだけなら不要です。
代理人が申告書を提出する場合には、申告書が申告者本人の意思で作成されたものであると税務署に認めてもらわなければなりません。代理人であることの証明が面倒なことから、税理士等を除く親族以外の人を代理人にするのは避けたほうがよいでしょう。
家族や親族が代理人として申告書や添付書類などを税務署へ提出するケースは多く、問題なく受理してもらえる可能性が高いと言えます。申告書の「作成」も代理で行ったと思われないよう、「提出」の代理であることを税務署の人に伝えるようにしましょう。
提出の際には代理人の本人確認書類(運転免許証・保険証など)を持参しましょう。申告者本人と住所が違っていたり、結婚などで苗字が違っている場合などには、申告者の親族であると証明できるものを持参しておくと安心です。
友人や知人、自分の会社の従業員など親族以外の人(法人も含む)を代理人にした場合、その理由をしっかり税務署の人に説明できなければなりません。
親族ではない第三者が申告を行うことは一般的ではなく、本人の意思で行われた申告であるか、税務署としても慎重に判断せざるを得ないからです。
本人の意思による申告であることの証明に時間を要したり、場合によっては申告書が受理されなかったりと、スムーズに申告できない可能性が高いことから、親族以外の人を代理人とするのは好ましくありません。
申告書は税務署の窓口に直接提出するほか、郵送や税務署のポストに投函しても構いません。本人が税務署に行けない場合で、不備の確認や相談、納税をその場で済ませたいといった希望がないのであれば、わざわざ窓口まで提出に行ってもらう必要はないでしょう。
ネット申告(e-Tax)であれば、自宅から申告書のデータを送信して提出することもでき、この場合には申告書の印刷自体が不要です。
国内の会社で働く会社員(給与所得者)が1年以上の予定で海外転勤する場合、日本国内に住所がない「非居住者」となります。転勤後に海外で得た収入には、転勤先の国で課税され納税を行います。
一方、出国前に一定の所得がある場合や、国内に保有する賃貸物件などの家賃収入(不動産所得)がある場合、国内にある資産を譲渡して収入(譲渡所得)を得た場合には、日本で確定申告が必要になることがあります。
日本で確定申告が必要な場合には、納税管理人を定め、「所得税の納税管理人の届出書」を納税管理人の納税地を管轄する税務署長に提出します。
納税管理人
非居住者に代わって納税申告書の提出・納税など国税に関する次の手続きを行う人。国内に居住する個人・法人を指定できる。
・国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の作成ならびに提出
・税務署長等が発する書類の受領
・国税の納付および還付金等の受領
年の途中で出国した場合の申告期限は、出国までに納税管理人の届出書を提出しているかどうかで違います。
その年の1月1日から出国までに生じたすべての所得と、出国日翌日からその年の12月31日までに国内で生じた所得(源泉分離課税となる所得を除く)をあわせ、翌年の2月16日から3月15日までの間に納税管理人が確定申告と納税を行います。
出国日までに勤務先の給与以外の一定の所得がある場合、その年の1月1日から出国日までに生じたすべての所得について、出国時までに申告しなければなりません。
出国日以降、その年の12月31日までに国内で生じた所得(源泉分離課税となる所得を除く)がある場合には、出国時までに申告した所得を含め、翌年の2月16日から3月15日までの間に改めて確定申告を行う必要があります。
1月1日から3月15日までに出国する場合で前年分の確定申告も必要な人は、出国時までに前年分の確定申告書も提出する必要があります。なお、出国までに勤務先の給与しか受け取っていない場合には、勤務先が年末調整を行うため確定申告は不要です。
売上や仕入・経費の計算が複雑、帳簿や申告書を作成する時間がない、作成や申告の方法がわからないなど、自分では手に負えない状況であれば、税理士(または税理士法人)に依頼したほうがよいでしょう。
税理士に依頼するには費用がかかりますが、売上や経費の領収書、申告に必要なマイナンバーなどの情報を提供すれば、帳簿の作成から税額計算、申告書作成・提出まで、確定申告に関する手続きをすべてやってもらえます。
経費として認められるかどうかの判断などもしてもらえ、より確実な申告ができます。
税理士へ依頼する場合の相場としては、帳簿は自分で作成し申告手続きだけを依頼する場合で3万円程度から。売上や経費などの仕訳、会計ソフトへの入力まで行ってもらうには、月1万円(年間12万円)程度からとなっています。
確定申告の手続きをすべて税理士に任せるのであれば、最低15万円程度はかかると考えておきましょう。
申告書の提出や代筆(入力)だけであれば配偶者や親族などに任せることができます。しかし具体的な税額の計算や申告書の作成など、申告に関する手続きを任せられるのは税理士(税理士法人)だけ。
その違いをよく理解した上で、どこまで自分で行い、どこから人に任せるかを判断するようにしましょう。
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