- 高額療養費とはどのような制度なのか?
- 高額療養費の算定基準額はいくらなのか?
- 高額療養費の申請の流れはどのように行うのか?
公開日:2019年9月29日
病院などにおいて手術を受けたり入院をした場合、高額な料金の支払いをすることがありますが、その支払った代金の一部が返金される制度があります。この払いすぎた医療費が返還される制度のことを「高額療養費」といいます。
高額療養費は、健康保険・国民健康保険のいずれの制度に加入している人であっても利用することが出来る制度ですが、制度が複雑であるため、なかなかイメージが出来ないことが多いかと思います。さらに、平成28年より法改正が行われて、高額療養費制度の区分が細分化されました。
今回は、高額療養費制度の具体的な仕組み、どのような場合に申請することが出来るかといったことについて、近年改正が入りより細分化されたため、その点を踏まえて解説します。
高額療養費とは、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合において、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとから払い戻される制度です。
なお、70歳未満の人については、医療費が高額になることが事前にわかっている場合(長期入院が必要な病気やケガなどをしてしまった場合など)については、「限度額適用認定証」を提示することで高額療養費の請求をすることが出来ます。
70歳未満の場合の高額療養費については、基本的には外来診察等で支払った医療費と入院等で支払った医療費の自己負担分の合計額が、自己負担額の上限額を超えている部分について高額療養費の支払いが行われる仕組みとなっています。
つまり、同一月における医療費について、外来診療で支払った自己負担分と入院などで支払った自己負担分を合算した自己負担分が自己負担分の上限額を超えるかどうかで、高額療養費の支給が行われるかが判定されます。
なお、1年間に4回以上高額療養費の支給が行われる場合は多数回該当といい、4回目以降の高額療養費の自己負担額の上限額の基準が変わります。
70歳以上75歳未満の者の場合の高額療養費は、70歳未満の人の場合とは異なり、外来診療などで支払った自己負担額と入院などで支払った自己負担額を分け上限額が設定されています。そのため、医療費の自己負担額が外来診療によるものなのか?それとも、入院などによるものなのかで、自己負担額の上限額が異なります。
高額療養費の算定基準となる金額は、標準報酬月額(保険料の算定の基準となる報酬月額)や報酬月額(実際の総支給額の給与や賞与などの合計を12で除して得た金額)がいくらになるかによって区分が異なります。
70歳未満の場合、自己負担額の上限の区分は、標準報酬月額や報酬月額によって、大きく5つの区分に分かれています。
標準報酬月額、報酬月額 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 |
---|---|---|
標準報酬月額が83万円以上の者、
または、報酬月額が81万円以上の者 |
252,600円+(総医療費(10割負担の場合の医療費のこと)ー842,000円)×1% | 140,100円 |
標準報酬月額が53万円~79万円の者、
または、報酬月額が51.5万円以上81万円未満の者 |
167,400円+(総医療費ー558,000円)×1% | 93,000円 |
標準報酬月額が28万円~50万円の者、
または、報酬月額が27万円以上51.5万円未満の者 |
80,100円+(総医療費ー267,000円)×1% | 44,400円 |
標準報酬月額が26万円以下の者、
または、報酬月額が27万円未満の者 |
57,600円 | 44,400円 |
被保険者が市区町村民税の非課税者等 | 35,400円 | 24,600円 |
70歳以上75歳未満の場合、自己負担額の限度額も70歳未満と同様に所得状況によって区分されていますが、大きく4つの区分に分かれています。
なお、自己負担限度額の計算は、外来分のみの場合については個人の自己負担額の合計で判断されますが、外来の自己負担額と入院等の自己負担額を合算した場合は、世帯全体で自己負担限度額の判定を行う仕組みになっているので注意が必要です。
つまり、外来診察等で支払った医療費については、個人の支払額の合計額で判断されるが、入院等の費用が発生した場合については、世帯家族全体の医療費の自己負担額の合計で自己負担限度額を判断することになります。
所得状況 | 外来(個人) | 外来・入院(世帯合算) | 多数回該当の場合 | |
---|---|---|---|---|
①現役並み所得者(標準報酬月額が28万円以上で、
かつ、高齢受給者証の負担割合が3割である者) |
57,600円 | 93,000円 | 44,400円 | |
②一般所得者(①と③以外の者) | 14,000円 | 57,600円 | 44,400円 | |
③低所得者:
所得の状況によって2つの区分に分かれます |
Ⅰ(被保険者とその扶養家族すべての人の収入から、
必要経費等を控除した後の所得の金額が0以下になる場合) |
8,000円 | 15,000円 | なし |
Ⅱ(市区町村民税が非課税とある者等) | 8,000円 | 24,600円 | なし |
高額療養費の申請方法には「事前申請」と「事後申請」の2通りあります。いずれの方法であっても、申請先が保険証に記載されている保険者(協会けんぽであれば全国健康保険協会、健康保険組合であれば、保険証に記載されている健康保険組合)となります。
事前申請の場合は、保険者に健康保険限度額適用認定書申請書(協会けんぽの場合)を提出することで、「限度額適用認定証」の交付を受けます。
その後、医療機関等で医療費を支払う際に限度額適用認定証を提示することで、自己負担額の上限までの支払いを行い、超える部分については支払わなくてもよいという流れとなります。(つまり、事前に自己負担額の上限がいくらですという証明書を発行することで、後から払い戻しの手続きに関する手間と時間を省略することができます
事後申請の場合は、いったん医療機関で医療費(10割)の支払いを行い、その後、高額療養費支給申請書と必要な書類(実際に支払った金額が証明できるものなど)を保険者に提出することで、払いすぎた部分の金額の償還払い(払い戻し)を行う手続きを行う方法です。
つまり、事後申請の場合は先に医療費の支払いを行った後で、払いすぎた部分の金額については、事後精算という形で払い戻しが行われる方法で高額療養費の支払いが行われます。
また、事後申請の場合、医療機関のレセプトの審査等を経て、通常であれば約3ヶ月後に払い戻しが行われるため、事前申請に比べると高額療養費が支払われるまでに時間がかかります。
高額療養費制度は、入院などをしたことにより高額な医療費の支払いにおいて、自己負担額を抑えることができる制度です。申請の方法については、現在加入している健康保険の保険者によって異なるため確認をしたうえで申請を行うようにしてください。
高額療養費は事前申請をする場合と事後申請をする場合とでは、申請の流れが異なるだけでなく、実際に医療機関の窓口で支払う金額にも大きな差が出ます。
そのため、医療費が高額になることが事前に予測できるようであれば、事前申請をすることで、自己負担限度額までの負担で済むため、経済的負担を軽減することも可能です。なお、高額療養費の対象になる医療費の支払いと対象にならない医療費の支払いがあり、年齢や所得状況によって、自己負担額の上限額が異なります。
高額療養費は仕組みが複雑な部分が多いため、基本的な部分については上記に記載した内容を確認していただければ充分対応できるようになっていますので、しっかりと確認の上、制度を有効に活用することが重要になってきます。
また、将来に備えておきたいがん保険と高額療養費制度の関係については以下記事も参考にどうぞ。