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学生が知っておくべき「年金の猶予と免除」とは?基礎知識&メリットをFPが解説!

学生が知っておくべき「年金の猶予と免除」とは?基礎知識&メリットをFPが解説!

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松田 聡子

松田 聡子

群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー

群馬FP事務所代表。金融系ソフトウェア開発、国内生保に法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングで人生100年時代を生き抜くサポートをしています。

この記事のポイント

  • 収入のない学生は、保険料の納付を猶予する「学生納付特例制度」を利用することができる。
  • 「学生納付特例制度」は保険料の後払いを前提とするため、期間中は年金額への加算はない。
  • 「学生納付特例制度」の手続きをすることにより、老齢基礎年金の受給資格期間に算入される。

この記事は約5分で読めます。

日本国民であれば、20歳になったら国民年金に加入しなくてはなりません。それは、まだ働いていなくて収入のない学生も同様です。2021年(令和3年)3月までの国民年金保険料は16,540円(月額)ですが、もし保険料を支払うことができない場合はどうすればいいのでしょうか。

国民年金には単なる未納とは異なる、免除や猶予という制度があります。学生には、学生納付特例猶予があります。今回は、これらの制度の基礎知識についてお伝えします。

日本の年金破綻が心配な方は、こちらの記事をご覧ください。

 

 

大学生が利用できる国民年金の猶予制度「学生納付特例」とは?

大学生が利用できる国民年金の猶予制度「学生納付特例」とは?

「免除」と「猶予」は、経済的な理由で国民年金保険料を納めることができないときでも未納にならないための制度です。免除や猶予の手続きを行っておけば、その期間は受給資格期間に含まれます。

これらの制度を利用したのちに年金額を増やすためには、保険料の追納や、60歳以降も国民年金に任意加入するなどが必要です。

 

国民年金の免除制度とは?

免除制度は失業などの理由で国民年金保険料を納められない人が審査を受けて、その所得に応じた免除割合が決められます。そして、免除の割合によって将来受け取る国民年金が減額されます。

 

国民年金の納付猶予制度とは?

これに対し、納付猶予は学生やそれ以外の若年者(20歳以上50歳未満)といった、将来的に納付が可能な人に納付を猶予する制度です。免除制度では年金額への反映がされますが、猶予制度では猶予期間中の年金額は未納と同様に計算されません。

 

「学生納付特例制度」とは?

20歳以上で所得が一定以下の学生は、申請により国民年金保険料の納付猶予を受けることができます。所得は本人の所得のみが対象です。

 

所得基準

2020年(令和2年)度の所得基準は以下のとおりです。

  • 118万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除等

 

「学生納付特例制度」のメリット

「学生納付特例制度」のメリット

「学生納付特例制度」は国民年金保険料の支払いが猶予される、税金でいうところの「延納」のようなものです。よって、保険料を払わなければ年金額は減ってしまいます。

では、「学生納付特例制度」を利用した場合のメリットには、どんなものがあるのでしょうか。

 

手続きをしていれば受給資格期間に算入される

公的年金を受給するためには、年金保険料を支払った期間や保険料の免除期間の合計が一定以上必要です。その期間を「受給資格期間」といいます。現在、老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)の受給資格期間は10年です。

国民年金に限らず、厚生年金の保険料を支払った期間や免除期間も合算して10年以上であれば、老齢基礎年金を受給することができます。

 

受給資格期間

受給資格期間は以下の計算式で求めます。

  • 「国民年金の保険料の納付月数」+「若年者納付猶予制度の対象月数」+「国民年金の保険料の免除月数」+「学生納付特例の対象月数」

「学生納付特例の対象月数」は受給資格期間に含まれるため、単なる未納の場合に比べて有利になります。

 

「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」を受け取る権利ができる

公的年金は老後に受け取る老齢年金だけではありません。亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」があります。

「学生納付特例制度」の手続きをし、国民年金に加入した人は「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を将来受ける権利が生じます(ただし、障害を負った、または亡くなった時点で、障害基礎年金や遺族基礎年金それぞれの受給要件を満たしている必要があります)。

特に、万が一のときに障害基礎年金を受け取れないと経済的なダメージが大きいので注意が必要です。

仮に、交通事故などでケガをして身体障害者になってしまった場合、本来なら障害基礎年金の障害等級の1級や2級にあてはまる場合でも、未納では受け取ることができません。

公的年金は老後の年金だけではないことをきちんと理解して、学生納付特例の手続きを忘れずにしておきましょう。

 

追納によって減った年金額を満額にできる

「学生納付特例制度」を利用した場合、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が減額になります。

しかし、「学生納付特例制度」の承認を受けた期間の保険料については、後から納付(追納)することにより、老齢基礎年金の年金額を増やして最終的に満額にすることができます。また、社会保険料控除により、所得税・住民税が軽減されます。

「学生納付特例制度」を利用した期間が年金額に反映されないのは、「学生納付特例制度」が保険料の猶予であり、後払いを前提としているからだと考えられます。

 

追納するなら2年以内を目標にする

追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています。

「学生納付特例制度」を受けた期間の翌年度から数えて、3年目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額(延滞金のようなもの)が上乗せされます。追納するなら2年以内を目標にしましょう。

 

追納によって受給額はどれくらい増えるか

追納することで受給額はどの程度増えるのでしょうか。例えば、1カ月分の保険料を追納したら、「781,700円(令和2年度の満額)/480カ月≒1,629円」の年金を増額できます。1年分の追納の場合は、約19,542円の年金を増額できます。増額した年金は終身で受け取れます。

 

「学生納付特例制度」のデメリット

「学生納付特例制度」のデメリット

追納をしなければ年金額が減額になる

上記の追納の説明でも述べましたが、「学生納付特例制度」を利用した場合、追納をしなければ年金額が減額になります。

例えば、学生納付特例制度を2年間利用したとします。減額される年金額は以下のとおりです。

  • (781,700円×38年)÷40年=742,615円

満額との差額は以下のとおりです。

  • 781,700円-742,615円=39,085円

実に40,000円近い年金額のカットが、65歳以降一生涯続きます。学生時代にはありがたかった学生納付特例制度が、忘れたころに老後生活にネガティブな影響を及ぼすのです。

 

「学生納付特例制度」を申請する方法

「学生納付特例制度」を申請する方法

 

 

20歳になったら必要な国民年金の手続き

20歳の誕生日を迎えてから2週間以内に、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」という書類一式が、保険料の納付書とともに送られてきます。

通常は、毎月保険料を納めることになります。しかし、収入のない学生で保険料の支払いが難しい場合などは、これまで解説してきたとおり「学生納付特例」を利用することになります。学生納付特例制度の申請書は「国民年金加入のお知らせ」の書類一式の中に入っています。

 

学生納付特例制度の申請場所

学生納付特例制度の申請は次の場所で受付けています。

  • 住民票のある市区町村の役所の国民年金担当窓口
  • 最寄りの年金事務所

なお、学生納付特例の申請は郵送でも受付けています。

 

手続きに必要なもの

窓口の申請の際には以下のものが必要です。

  • 国民年金保険料学生納付特例申請書
  • 年金手帳(※)
  • 学生証または在学証明書

※まだ年金手帳を持っていない人は身分証明書(運転免許証・パスポート・個人番号カード)を持参します。

 

学生の年金&猶予と免除の違いに関するまとめ

収入のない学生は、申請によって保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用できます。

「学生納付特例制度」は保険料の支払いを猶予する「後払い」を前提とした制度であるため、期間中の年金額には反映されません。10年以内に追納をすることにより、年金額を満額に近づけることができるようになっています。

また、「学生納付特例制度」の期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。

このように、単なる未納と手続きを踏んで猶予してもらうことには大きな違いがあるので、「国民年金加入のお知らせ」が届いたらくれぐれも放置をしないようにしましょう。

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