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改正後70歳以上の高額療養費制度とは?自己負担限度額や適応区分などをご紹介

改正後70歳以上の高額療養費制度とは?自己負担限度額や適応区分などをご紹介

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著者名

岡崎 隆宏

岡崎 隆宏

社会保険労務士、1級FP技能士、CFP

社会保険労務士・1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®。 1児の父親として育児に携わりながら、妻の妊娠・出産に立ち会う中で、妊娠・出産における社会保障制度についてどうあるべきかについて真剣に考える。 現在は、社会保障とお金の関係について講演やブログで情報を発信することで、一人でも多くの人にお金と社会保障について正しい認識を持ってもらうための活動を行っている。 得意分野は「妊産婦等の社会保障制度」「年金」「ワークライフバランス」「家計見直し」など。

この記事のポイント

  • 70歳以上の者の高額療養費制度の改正点
  • 改正により変更された所得区分と自己負担上限額の内容
  • 所得区分ごとの高額療養費の算定の具体例

この記事は約5分で読めます。

平成30年8月から高額療養費制度について改正が行われました。今回の改正の大きなポイントとしては「70歳以上の者の高額療養費の所得区分の細分化」がおこなわれた点にあります。

従来の高額療養費制度では、70歳以上の者については、所得に応じて3つの区分に分けて高額療養費の計算を行っていましたが、今回の改正によって、70歳以上の者の高額療養費の所得の区分が6つに変更されました。具体的には、上位所得者に当たる人の所得区分を3つに細分化し、低所得者層も2つの区分に分けることになり、70歳未満の者の所得区分に近づける形に区分が改編されました。

今回は、70歳以上の者の高額療養費制度の仕組みを解説したうえで、改正によって大きく変化した所得区分について詳しく説明します。

 

平成30年度改正による高額療養費制度の変更点

平成30年度改正による高額療養費制度の変更点

まず、今回の改正によって70歳以上の者の高額療養費制度の何が変わったのかについて、詳細を解説していきます。

 

高額療養費の自己負担額の上限額の変更(現役並み所得者の区分による負担割合の細分化)

今回の改正によって、70歳以上の者の高額療養費の上限額についての所得区分が3区分(上位所得者・一般所得者・低所得者)から6区分(現役並み所得者Ⅰ~Ⅲ・一般所得者・低所得者Ⅰ・Ⅱ)に変更になりました。

これは、70歳以上の者についても、働き方の多様性により、現役並みの所得を有する人と現役並みではないが、就労していることで年金のみを受給している人よりも収入がある人が同じ区分で高額療養費の計算を行うことは、公平性に欠けるとの見方から3つの区分に分けることで、医療費負担の公平性を保つことが狙いといわれています。

 

平成30年8月以降の高額療養費の自己負担の上限額

被保険者の所得区分 自己負担限度額
外来 世帯合算
①現役並み所得者 現役並みⅢ
(標準報酬月額83万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
[多数該当:140,100円]
現役並みⅡ
(標準報酬月額53万~79万円で高齢受給者証の負担割合が3割の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
[多数該当:93,000円]
現役並みⅠ
(標準報酬月額28万~50万円で高齢受給者証の負担割合が3割の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[多数該当:44,400円]
②一般所得者
(①および③以外の方)
 18,000円
(年間上限14.4万円)
 57,600円

[多数該当:44,400円]

③低所得者 Ⅱ( 被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合)  8,000円 24,600円
Ⅰ(被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合)  15,000円

参考:全国健康保険協会HP「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」より

 

70歳以上の高額療養費制度の仕組み

70歳以上の高額療養費制度の仕組み

70歳以上の高額療養費計算の仕組みは、70歳未満の場合とは異なり、外来診療に支払った医療費についても、別で上限額を設けています。今回の改正により、従来の「現役並み所得者・一般所得者・住民税非課税等所得者」の3つの区分で判断されていたもののうち「現役並み所得者」と「住民税非課税等所得者」の区分が細分化されています。

 

70歳以上の者の高額療養費の計算の流れ

70歳以上の者の高額療養費の計算については、70歳未満の者の高額療養費の場合とは大きく異なり、外来診療に関する医療費の自己負担分について、別で上限額の設定がされています。

 

自己負担額の合計を世帯合算分と外来療養の支払い分とに区分する

70歳以上の高額療養費計算の流れとして、最初に「外来診療(個人単位)」にかかる自己負担分の払い戻し計算を行います。その上で、残る自己負担額と入院分の自己負担額を世帯単位で合算し、「入院(入院外来)・外来(世帯ごと)の自己負担限度額」から払い戻し額を計算します。

 

窓口負担を行う際の注意点

窓口負担を行う際に注意しなければならない点としては、改正が行われた平成30年8月以降に支払った医療費について、現役並み所得者Ⅰ・現役並み所得者Ⅱに区分される者については「限度額適用認定証」が発行されますが、それ以外の所得区分の者(現役所得者Ⅲ、一般所得者、低所得者Ⅰ・Ⅱ)については限度額適用認定証の発行は行われません

 

社会保険としての全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)や健康保険組合と国民健康保険の場合の自己負担限度額

社会保険としての全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)や健康保険組合と国民健康保険の場合の自己負担限度額

協会けんぽや健康保険組合が行う高額療養費の自己負担限度額と国民健康保険が行う高額療養費の自己負担限度額については、自己負担限度額は同じです。そのため、保険者が異なるからといって、高額療養費の自己負担限度額が異なるといったことはありません。また、計算方法についても、同様の方法で行われるため、高額療養費の金額に違いはありません。

 

70歳以上の者の所得区分による高額療養費算定基準額の具体例

ケース1:適用区分が現役並み所得者Ⅲの場合

(条件)

  • 被保険者の標準報酬月額:90万円
  • 自己負担割合:3割負担
  • 医療費の自己負担額:60万円(外来診療:20万円、入院等:40万円)

標準報酬月額が90万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅲ」に該当します。よって、自己負担限度額は「252,600円+(2,000,000円(60万円÷30%)-842,000円)×1%」=264,180円となります。これより、この者の高額療養費の金額は「600,000円-264,180円=335,820円」となります。

 

ケース2:適用区分が現役並み所得者Ⅱの場合

(条件)

  • 被保険者の標準報酬月額:60万円
  • 自己負担割合:3割負担
  • 医療費の自己負担額:45万円(外来診療:10万円、入院等:35万円)

標準報酬月額が60万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅱ」に該当します。よって、自己負担限度額は「167,400円+(1,500,000円(45万円÷30%)-558,000円)×1%」=176,820円となります。これより、この者の高額療養費の金額は「450,000円-176,820円=273,180円」となります。

 

ケース3:適用区分が現役並み所得者Ⅰの場合

(条件)

  • 被保険者の標準報酬月額:40万円
  • 自己負担割合:3割負担
  • 医療費の自己負担額:30万円(外来診療:5万円、入院等:25万円)

標準報酬月額が40万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅰ」に該当します。よって、自己負担限度額は「80,100円+(1,000,000円(30万円÷30%)-267,000円)×1%」=87,430円となります。

 

ケース4:適用区分が一般の所得者の場合

(条件):世帯(本人以外)の自己負担額合計が5万円であるとします。

  • 被保険者の標準報酬月額:20万円
  • 自己負担割合:2割負担
  • 医療費の自己負担額:8万円(外来診療:3万円、入院等:5万円)

標準報酬月額が20万円ですので、所得区分が「一般所得者」に該当します。一般所得者に該当するため、外来の自己負担分と世帯合算分とに分けて計算する必要があります。よって、外来の自己負担の払い戻し分は「30,000円ー18,000円=12,000円」となります。

次に、世帯合算分を含めて高額療養費の計算を行います。

世帯合算分の高額療養費は「(5万円+5万円)ー57,600円=42,400円」となります。

これより、高額療養費の金額は「12,000円(外来分)+42,400円(世帯合算分)=54,400円」となります。

 

70歳以上の高額療養費制度改正の変更点まとめ

平成30年8月の健康保険法の改正により、70歳以上の高額療養費の自己負担上限額の改正が行われました。今回の改正により、上位所得者といわれていた人の高額療養費計算の所得区分が70歳未満の者と同様の所得区分で計算されるようになり、世帯間における違いがなくなります。

また、今回の高額療養費の計算について改正により見直しが行われたことで、介護保険料や後期高齢者医療などの周辺の医療保険制度においても、少なからず影響が出るものと考えられますので、今後の改正情報には注意が必要です。

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