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医療費の支払いに限度額はある?知っておきたい高額療養費制度の基礎知識をFPが解説

医療費の支払いに限度額はある?知っておきたい高額療養費制度の基礎知識をFPが解説

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婚活FP山本

婚活FP山本

CFP®、一級FP技能士

山本FPオフィス代表。商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て2008年8月、山本FPオフィスを設立し、同代表就任。 現在は日本初の「婚活FP」として、婚活パーティを開催しながら婚活中の方や結婚直後の方など、主に比較的若い方のご相談を承っています。また「農業FP」としても活動をはじめ、独立10年を機に「後輩育成」にも力を入れています。詳細は「婚活FP」でご検索を。

この記事のポイント

  • 医療費は「高額療養費制度」という限度額がある。
  • セットで使いたい「限度額適用認定証」。
  • 使えるなら「高額介護合算療養費制度」も使おう。

こんにちは、婚活FP山本です。意外に知らない人もいるのですが、実は医療費の支払いには「限度額」があります。知らない人は病気やケガとは無縁の人生を歩んでいるでしょうが、病気やケガは誰がいつなっても不思議はありません。

誰かが教えてくれるとは限りませんから、自分でも相応に正しく知っておくことが大切です。そこで今回は、医療費の限度額である高額療養費制度について詳しくお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。

 

医療費の自己負担額には一応の限度額がある!

医療費の自己負担額には一応の限度額がある!

まずは、医療費の限度額についての基本をお伝えします。結論からいえば、医療費の自己負担額には「一応の」限度額があるのが実情です。「一応の」というのは、この限度額とは後述する健康保険などの「高額療養費制度」が使える範囲に限っての話という意味合いになります。

簡単にいえば、「保険の対象にならない費用」については青天井で必要です。とはいえ、保険の対象にさえなれば限度額がありますから、かなり嬉しい制度といえます。高額な医療費が気になって病院へ行くことを控えていた方には、ぜひ利用してほしい制度です。

ただし、医者によっては「あえて保険適用外の治療や手術」を勧めてくることもあります。その意図はさまざまですが、経済的に厳しい場合は、その旨を伝えて保険適用の範囲で治療してもらいましょう。

 

自動的には免除されず、社会保険上の手続きが必要!

たとえ限度額を超える医療費が発生したとしても、差額が自動的に減額・免除されるわけではありません。差額を減額・免除してほしい場合は、社会保険上の手続きが必要です。このような制度があることを知らなかった方は、それだけ損をすることになります。

本当に今は、「知っているか否か」で大きく違ってくる時代です。限度額を超えるほどの大金であれば、なおさらといえます。まずはしっかりと、このような制度があるということを知っておきましょう。

 

医療費の限度額とは「高額療養費制度」のこと!

医療費の限度額とは「高額療養費制度」のこと!

次に、医療費の限度額である「高額療養費制度」についてお伝えします。細かくは健康保険と国民健康保険で少し違いますが、理屈はほぼ同じです。健康保険の場合は、以下の表で計算した金額が「自己負担限度額」になり、差額についてはあとで戻ってくることになります。

高額療養費制度
被保険者の所得区分 1ヶ月の自己負担限度額
標準報酬月額83万円以上 25万2600円+(総医療費-84万2000円)×1%
標準報酬月額53~79万円 16万7400円+(総医療費-55万8000円)×1%
標準報酬月額28~50万円 8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%
標準報酬月額26万円以下 5万7600円
住民税非課税者など 3万5400円

なお、総医療費とは「保険適用される診察費用の10割総額」のことです。そして上記の表からも分かる通り、おおむね医療費の限度額とは「25万円少々」になり、収入が少ないほどに限度額もさらに小さくなります。

この限度額を見ても「十分に高い」と感じる方もいるかもしれませんが、制度がなければ青天井で医療費が必要なのですから、嬉しいはずです。医療費が高額な場合は、ぜひ高額療養費制度を活用していきましょう。

 

上限金額を超えた部分は手続きすれば戻ってくる

あくまで高額療養費制度そのものは、「自己負担限度額を超えて支払った医療費を、あとで清算する」という制度になります。つまり、病院での窓口では普通に全額を支払うことが必要です。そして、上限金額を超えた部分は手続きすれば戻ってくることになります。

この制度だけでは、結局は大金を動かす必要があるという点には注意が必要です。貯金がなくて大金を動かせない……という方は、並行的に後述するさらなる制度の活用をしていきましょう。

 

申請方法は健康保険組合や役所に申請書を送るだけ

申請方法は健康保険組合や役所に申請書を送るだけ

今度は、高額療養費制度の申請方法についてお伝えします。この申請方法は実に簡単で、健康保険組合や役所に「高額療養費支給申請書」を送るだけです。なお、基本的に「年収区分や本人を確認できる書類(時には病院の領収書も)」も合わせて添付することになります。

たったこれだけで、限度額を超えた医療費が返ってくるのが高額療養費制度です。強いていえば、高額療養費は「診察を受けた月の翌月の初日から2年」で時効になります。この制度を知っていれば2年も放置することはないでしょうが、一応の注意は必要です。

また逆にいえば、過去2年以内に制度の対象になるような医療費を支払ったことがあれば、今から申請することもできます。ちょっと過去を思い返してみましょう。

 

申請してから3ヶ月程度もかかる点がネック

高額療養費制度のネックは、「申請してから支払いまで3ヶ月程度もかかる」という点です。最終的には戻ってくるのですから嬉しい限りではありますが、中には「そんなに待てない」という方もいるかもしれませんね。別の急な支払いが発生することも往々にしてあります。

そのような場合は、後述する「高額療養費貸付制度」が使えるかもしれません。ひとまず、このような時間への感覚を持って、高額療養費制度を使っていきましょう。

 

「高額療養費貸付制度」なら8割相当を無利子で借りられる

「高額療養費貸付制度」なら8割相当を無利子で借りられる

今度は、先ほど触れた「高額療養費貸付制度」についてお伝えします。すでにお伝えした通り、高額療養費制度は極めて嬉しい制度ではあるものの、「支払いまでに3ヶ月程度もかかる」という点がネックです。このネックを穴埋めするためにあるのが、高額療養費貸付制度になります。

この高額療養費貸付制度とは、高額療養費の支給見込み額の8割相当を無利子で借りられる制度です。利子がいらない訳ですから、実質的に「お金を受け取れる時期を早められる」といえます。

ただし、この制度も利用するには別の申込書が必要ですし、振り込みに2~3週間はかかる点には注意が必要です。

また、返済は高額療養費との相殺になりますが、高額療養費のほうが少ない場合は差額を返納しなければなりません。ちょっと注意も必要ですが、必要に応じて利用してみましょう。

 

特に入院・手術をするときには健康保険組合に確認しておこう

一般的に、高額な医療費が必要になるのは「入院や手術をするとき」です。一方で、健康保険組合などは組織によって少しずつ違いがあります。「高額療養費制度がない」などの大掛かりな違いはないでしょうが、それでもあとで「想像と違った」となれば大変です。

このため特に入院や手術をするときには、事前に健康保険組合などに確認をしておいたほうが無難といえます。後述する「限度額適用認定証」の件もあるのでなおさらです。ぜひ賢く立ち回りましょう。

 

 

合わせて知っておきたい「限度額適用認定証」とは?

合わせて知っておきたい「限度額適用認定証」とは?

ここからは、高額療養費制度に関係する補足情報についてお伝えします。まずは、「限度額適用認定証」についてです。高額療養費制度は、「あとで清算する」という制度なので、一旦は大金が必要という点がネックでした。この点を解消するのが限度額適用認定証です。

この限度額適用認定証とは、簡単にいえば「病院での支払いそのものが高額療養費制度の限度額までになる」というものになります。つまり、一旦は必要だった大金が不要になるという証書です。貯金が乏しいという方には、極めて嬉しい証書といえるのではないでしょうか。

この認定証を手に入れる方法は、高額療養費制度の申請と同じく、健康保険組合や役所に「限度額適用認定申請書」を送るだけです。ただし、すでに支払った医療費には適用できません。入院や手術を受ける前に余裕を持って、この限度額適用認定証を手に入れましょう。

 

窓口で保険証と一緒に提出するだけ!

限度額適用認定証の使い方は、病院の窓口で保険証と一緒に提出するだけです。これだけで、あとは病院のほうで限度額以内の支払いになるよう計算してくれます。またこの認定証を使った場合は、すでに限度額以上の支払いがなくなった訳ですから、高額療養費の申請も不要です。

強いて言えば、「病院側がこの認定証の存在を知らない」という可能性があります。そのような場合は事情を説明しつつ、健康保険組合などに確認の連絡をしてもらい、対処してもらいましょう。

 

自己負担額は個人単位のほか世帯合算もでき、多数該当もある

自己負担額は個人単位のほか世帯合算もでき、多数該当もある

次に、高額療養費制度の応用についてお伝えします。そもそも高額療養費制度上の療養費とは、「同一月」の医療費の総額です。この医療費の総額というのは、一人暮らしの方なら個人単位になりますが、家族がいる場合は世帯で合算して計算することもできます。ただし、70歳未満の方の合算できる医療費は、2万1000円以上のものだけです。

また高額療養費制度には、「多数該当」という制度も用意されています。これは診察を受けた月以前の一年間に、3回以上の高額療養費を受けた場合、4回目からはさらに自己負担限度額が下がるという制度です。病気がちな人にとっては、実に嬉しい朗報ではないでしょうか。

ちなみに多数該当は、先ほどの限度額適用認定証を使って限度額を負担した場合もカウントされます。それほど病院に行くようなケースは避けたいところですが、行かなければならなくなったら、せめて医療費については抑えられるよう努めていきましょう。

 

健康保険と国民健康保険で少し違うが、どちらでも使える

高額療養費制度は、健康保険にも国民健康保険にもある制度です。限度額適用認定証や多数該当なども同様になります。自己負担限度額の計算式もほぼ同じですが、「被保険者の所得区分」が少し違う点には注意が必要です。

一方で、どちらにも高額療養費制度はあるからこそ、利用できるときはしっかり利用することが大切といえます。長い人生、ほかのことにもお金は必要です。使えるときは、ありがたく制度を使わせてもらいましょう。

なお、「ほかのこと」が気になる方は以下記事も参考にどうぞ。

 

ついでに知っておきたい「高額介護合算療養費」とは?

ついでに知っておきたい「高額介護合算療養費」とは?

今度は、高額療養費制度と似て非なる「高額介護合算療養費制度」についてお伝えします。高額介護合算療養費制度とは、簡単にいえば「医療保険とともに介護保険も使っている場合の自己負担限度額を定めた制度」です。要件に当てはまれば、高額療養費制度と同じくあとで費用が返ってきます。

なお、その肝心の要件とは健康保険なら以下のとおりです。医療費用と介護費用を合算した自己負担額が以下の限度額より高ければ、差額をあとで清算してもらえます。ただし、高額療養費制度とは違って「年額で」です。

高額介護合算療養費制度
年収区分 70~74歳 70歳未満
標準報酬月額83万円以上 212万円 212万円
標準報酬月額53~79万円 141万円 141万円
標準報酬月額28~50万円 67万円 67万円
標準報酬月額26万円以下 56万円 60万円
住民税非課税者など 31万円または19万円 34万円

上記の自己負担額とは、高額療養費制度や何らかの助成制度で給付を受けた場合、それらを差し引いて計算します。正味の自己負担額が世帯として苦しいときには、ぜひ利用しましょう。

 

比較的新しい制度なので知らない人も多いかも

この高額介護合算療養費制度で計算する一年とは、基本的に「8月1日から翌7月31日」です。またこの制度は、平成18年の制度改定で始まったので、比較的新しい制度といえます。もしかしたら、知らずに使っていない方も相応にいるかもしれません。

高額療養費制度と同じく、自動的に限度額が適用されるわけではないからこそ、しっかり知ったうえでの手続きが必要です。使えそうな方は、まずは健康保険組合などに相談してみましょう。

なお、医療費控除のほうが気になる方は以下記事も参考にどうぞ。

 

 

保険料を滞納している方は、それも含めて相談しよう

保険料を滞納している方は、それも含めて相談しよう

最後に、国民健康保険について大切なことをお伝えします。会社員が加入する健康保険なら、加入も保険料の納付も強制です。しかし国民健康保険の場合、厚生労働省の2018年度調査によると、実に対象世帯の約15%、約269万もの世帯が保険料を滞納しています。

保険料を滞納したままでは、高額療養費制度が使えないどころか、10割負担になるかもしれません。一般的に保険料を滞納する人は、非正規労働などで保険料を支払うのが困難なことが多いですが、だからといって支払わないと最終的に困るのは自分自身です。

どうしても保険料を支払うのが困難だったり、保険料を滞納したりしている人は、高額療養費制度と同じく「まずは相談する」ことが大切といえます。救済制度がある可能性もありますから、しっかり自発的に動きましょう。

なお、傷害保険のほうが気になる方は以下記事も参考にどうぞ。

 

「何もしない人」が一番損をする社会!

高額療養費制度もそうですが、知らなければ使えません。そして知るためには、自分で調べたり、誰かに相談したりする必要があります。今は、「何もしない人」が一番損をする社会です。自発的な行動は、この情報化社会に必須といえます。

お金がなければ生活できませんが、お金を稼ぐ労働には「健康」が必要です。その健康を維持するための「国民健康保険」の維持にも、今後は気を使いましょう。

 

医療費の限度額は「教えてもらえるとは限らない」

日本は国民皆保険制度があり、そして医療費の自己負担も高額療養費制度によって限度額があります。ただし、自動的に限度額に抑えてもらえるわけではなく、病院などから教えてもらえるとも限りません。

知っているか否かだけで大違いですから、ぜひこの機に高額療養費制度のことを知っておきましょう。

 

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