公開日:2020年1月22日
個人の外貨預金の人気が高まっています。2019年の外貨預金の残高は7兆円を超え、過去最高水準を更新しました。国内の預金は低金利が続いているので、外貨預金に関心がある人も増えているのです。
今回は、外貨預金の5つのメリットについて解説します。
外貨預金とは、その名の通り「外国通貨建ての預金」。日本の銀行に日本円を預けている人は多いでしょうが、外貨(海外の通貨)を銀行に預けるのが「外貨預金」になります。
外貨建ての金融資産には、外国株式や外国投資信託などもありますが、外貨建て金融資産の経験や知識の浅い初心者でも始めやすいのが外貨預金です。日頃使っている銀行で始められることや、商品の仕組みがわかりやすいからです。
銀行によって扱う通貨は異なりますが、以下のようなさまざまな通貨の外貨預金があります。
外貨預金の基本的な仕組みは円預金と同じですし、いつも利用している国内の銀行で始めることができるというメリットがあります。
また、預金なので預けたお金(元本)は保証されています。ただし、あくまで外貨建ての元本保証なので、預けるときと引き出すときの為替レート次第で損失が生じるというリスクがあります。
米ドルの例で考えてみましょう。たとえば、預けたときの為替レートが1ドル(米ドル)=100円だったとします。1万ドル預ける場合、1万ドル✕100円=100万円必要です。その後、さまざまな要因によって日本円の価値が高くなり、1ドル=80円の円高になったとします。
その時に日本円に換算すると、1万ドル✕80円=80万円となり(金利等は考慮せず)、20万円の損失となってしまうのです。このようにある国の通貨と別の国の通貨を交換することを「外国為替」といい、その交換比率を「為替レート」といいます。
為替レートは平日24時間、刻一刻と変化します。常に円高になったり円安になったりということが起こり続けているのです。
外貨預金にも、日本円の預金と同じように「普通預金」と「定期預金」があります。外貨の普通預金は、預け入れたお金をいつでも引き出すことが可能です。また、年利◯%と決まっていて、日本円の普通預金よりも金利は比較的高めです。
一方、外貨定期預金は1カ月と短いものから数年と長いものがあり、1年定期は◯%、3年定期は◯%など預入期間に応じて金利が決まっていて、預け入れたときの金利がずっと適用されます。
銀行によって金利は異なりますが、日本円の定期預金よりも金利は高めの傾向があります。
円預金と外貨預金の違いをまとめると、以下の通りです。
円預金 | 外貨預金 | |
---|---|---|
種類 | 普通・定期 | 普通・定期 |
元本保証 | あり |
あり(外国通貨)
|
金利 | 比較的低い | 比較的高い |
為替の影響 | なし | あり |
外貨預金のメリットは、主に次の5つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
預けるときと引き出すときの為替レート次第では、元本割れが生じる可能性もある外貨預金ですが、多くの人が外貨預金をしているのは円の金利よりも金利が高い通貨が多いからです。たとえば、住信SBIネット銀行の外貨定期預金の金利(1年もの税引き前)は、以下の通りです。
大手銀行の定期預金の金利(1年)は0.01%なので、外貨預金の金利が高いことがわかると思います。
外貨預金を払い戻すとき、預け入れたときよりも円安になった場合、円で受け取れる金額が大きくなります。1ドル=100円のときに1万ドルの外貨預金をし、1ドル=120円のときに払い戻ししたら、以下の為替差益が得られます。
為替差益が狙えるというのも、外貨預金のメリットです。
外国株式や外国投資信託など他の外貨建ての金融商品を始めようとすると、証券会社などほかの金融機関に新しい口座を開かなければならない場合があります。
そうすると、書類のやり取りをしたり個人情報を提供したりと、ある程度の手間がかかります。外貨預金は普段使っている銀行でも気軽に始められるというメリットがあるのです。
資産運用の基本は「分散投資」。もし、日本円がとても価値の低い通貨になってしまった場合、円建ての資産しか保有していない人はどうなるでしょうか。資産の価値が下がり、大きな損失を被る恐れがあります。
また、食料や日用品の多くは海外から輸入されています。円の価値が下がると、調達コストが上がり、国内の物価も上昇。日本円しか持っていないと、家計は大きなダメージを受けてしまいます。
しかし、円資産だけでなく外貨も保有することで、為替差益によりそのようなリスクを軽減できるのです。ただし、為替相場では特定の通貨が突然暴落してしまう可能性もあります。ですから、外貨預金をする場合は一つの通貨だけでなく、複数の外貨にも分散投資しておくようにしましょう。
海外によく行き、外貨をそのまま現地で使うという人にも外貨預金に向いています。以下のようなメリットがあるからです。
日銀の資金循環統計によると、個人(家計)に占める外貨預金の残高は、6月末時点で7兆2,314億円と、1年で約5千億円増えました。値動きの小さい相場環境が続いているので、金利収入を目的とした外貨預金が手掛けやすくなっているからです。
2019年のドル円の年間値幅は7.94円で過去最低になりました。円高による目減りのリスクが減っているので、国内の預金より相対的に高い金利を狙える外貨預金の人気が高まっているのです。
ただし、外為市場の小幅な値動きが今後も続くという保証はありません。大きく円高に振れるリスクもあるので、外貨預金は必ず余裕資金で行うようにしましょう。
外貨預金は高金利で為替差益が狙えるというメリットがありますが、過度に期待しないようにしましょう。
まず金利に関しては、先進国で金融緩和が続いているので、ユーロやポンド建て預金の金利はかなり下がってきています。「外貨預金はすべて高金利である」というイメージはなくし、金利が高い通貨を選ぶ必要があります。
ただ、一部の金融機関が扱っている南アフリカランドなど新興国通貨の金利は高いものの、為替変動リスクが高いというデメリットもあるので、注意が必要です。
次に、為替差益について考えていきましょう。為替差益を得るためには、円高のときに預けて円安のときに引き出す必要があります。しかし、そう簡単に為替レートの動きを読むことはできません。逆の動きになると、為替差損がでてしまいます。
外貨預金では金利収入をメインに考え、為替差益はあればいいぐらいに考えておくようにしましょう。そうすれば、短期的な為替の動きに一喜一憂することなく、長期的な資産運用を続けることができます。
外貨預金は仕組みがわかりやすいので、初心者でも始めやすいといえます。しかし、外貨預金に躊躇する人もいるのではないでしょうか。
「英語が苦手で経済についても詳しくない」「外国の通貨で預金するなんて難しそう」「仕事が忙しいので為替レートを見る時間がない」といった理由からです。
たしかに、外貨預金をする上では、外国の状況を把握しておいた方がいいでしょう。世界各国の通貨に分散投資する場合は、情報収集にも時間がかかります。
しかし外貨預金では、FXのようにパソコンやスマホで常に為替レートをチェックしたり、毎日のように世界経済の状況を確認したりする必要はありません。あくまでも預金なので短期的なサヤ取りを狙う投機とは異なるからです。
米国や欧州など国や地域ごとの経済状況や、為替レートの推移などを定期的にわかりやすく説明してくれる資料がそろっている金融機関を選ぶと安心です。忙しくてレートチェックや情報収集ができないときは、為替レートが動いたり、ニュースが出たら連絡を来るように頼んだりすることもできます。
さまざまなメリットがある外貨預金ですが、「為替レートの動きが気になる」「まとまった資金がない」と考え、躊躇している人もいるでしょう。
そんな人は、外貨積立ができる金融機関を利用してみてはいかがでしょうか。たとえば、SBI住信ネット銀行では、最低500円から積立できます。さらに、すでに持っている円口座から、毎月自動的に一定額を引き落として米ドルや豪ドルなどに交換する「自動積立」もあります。
積立頻度を毎日、毎週、毎月など自由に選べるので、自分のペースに合った積立が可能です。自動積立サービスは、円高のときでも円安のときでも同じ金額を継続的に外貨に交換するので、為替レートを平均化できるというメリットがあります。
一回でまとめて購入するよりもリスクを抑えた運用ができ、日々の為替レートの変動を気にせずに外貨預金ができるのです。ただし、為替レートを平均化できるといっても、損失の可能性がゼロになるわけではありません。
リスクをより小さくするために、複数の通貨に分散するようにしましょう。
外貨預金には、以下の5つのメリットがあります。
ただし、円に換算した場合、為替レートによっては元本割れする場合もあるので、通貨を分散させるなどのリスク管理が大切です。また、「為替レートの変動が気になる」「まとまった資金が用意できない」という人は、外貨預金の積立サービスを利用するのもオススメです。
最近は為替レートが安定していることから外貨預金の人気が高くなっていますが、急激な円高などによって、思わぬ損失を被る恐れもあります。外貨預金は、余裕資金で行うようにしましょう。
株やFXなどの投資をしたことがない人も、外貨で預金するだけなら簡単なことです。最初は複数の金融機関に口座を開き、サービスを比べてから始めてみてはいかがでしょうか。