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個人事業主が法人化する方法とは?条件・手続きの流れをFPが徹底解説!

個人事業主が法人化する方法とは?条件・手続きの流れをFPが徹底解説!

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著者名

河野 雅人

公認会計士、税理士、CFP

東京都新宿区に事務所を構え活動中。大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。年間約10件、セミナーや研修会などの講師としても活躍している。趣味はスポーツ観戦。

この記事のポイント

  • 法人化のメリット:個人事業として利益が増えていけば、法人化したほうが税金面で有利。
  • 法人化のデメリット:会計や業務面で事務作業が増える。
  • 社長といえど、会社のお金は自由に使えない。

この記事は約7分で読めます。

個人事業主として、事業を運営しながら、いつか自分の会社を持ちたいと考えている方も多いでしょう。実際に、いつ法人化するのがベストなタイミングかという相談は非常に多いです。

法人の設立は、事業継続はもちろん、その人の人生においてもターニングポイントとなる大きなイベントです。メリットやデメリットをしっかり理解しておかなければなりません。

今回は個人事業主が法人化する方法やそのメリット・デメリット、さらにその手続きなどについて詳しく解説していきます。

 

法人化の方法・手続き

法人化の方法・手続き

法人化とは?

法人化(法人なり)とは、個人事業主として事業を運営していた者が、事業の拡大や節税などを理由に法人(一般的に株式会社)を設立し、その法人に事業を引き継ぐことをいいます。

 

(1)会社を設立する

個人事業主が法人化する場合、新会社を設立しなければなりません。会社の形態には、株式会社や合同会社などがあります。どの会社形態にするかは、設立費用や必要な社会的信用力に応じて決めましょう。

実際には、取引拡大を目指して株式会社を設立するケースが多いのではないでしょうか。そして、個人事業主自身が発起人となって、新会社設立の手続きを行います。個人事業主は、株主となって新会社に資本金を出資し、そのまま新会社の代表取締役に就任することになります。

会社の定款や発起人の実印、印鑑証明書など必要な書類を揃えたうえで、法務局で設立登記を行い、新会社が誕生します。

 

(2)事業用の資産・負債の引継ぎ、名義変更

法人化するときには事業にかかわるすべての資産・負債を新会社に移さなければなりません。法人化することによって、主体が“個人”から“会社”になるわけですから、取引先との契約も個人名義から会社名義への変更が必要になります。では、名義変更などが必要になる契約を見ていきましょう。

  • 預金通帳
  • 得意先や仕入先などに対するあいさつ、契約内容の変更など
  • 店舗、事務所などの賃貸借契約
  • 車両
  • 水道光熱費、通信、リース契約などの事業経費
  • 借入金
  • 関係官庁への届出

 

①預金通帳

会社名義の預金口座を開設し、新会社での入出金や振込処理などは会社名義の預金口座で行うようにしましょう。

 

②得意先や仕入先などに対するあいさつ、契約内容の変更など

取引先に対して、会社を設立した旨を直接お伺いして伝えるか、あるいは、あいさつ状などを送付してお知らせしておいた方がよいでしょう。また、取引先と取引上の契約を交わしている場合には、契約主体を個人名義から会社名義に変更するようにしてください。

 

③店舗、事務所などの賃貸借契約

事業用の店舗や事務所、駐車場などについて賃貸借契約がある場合には、個人名義から会社名義への変更手続きをしましょう。

 

④車両

個人名義の事業用車を新会社が引き継いで利用する場合には、車の名義変更をしましょう。あわせて、車両保険の名義変更も必要になります。

 

⑤水道光熱費、通信、リース契約などの事業経費

事業用の電気やガス、水道、さらにインターネットや各種リース契約、そのほかの支払経費などについては、会社名義に契約変更する必要があります。

 

⑥借入金

個人事業主として金融機関から事業用資金の借入をしていた場合、金融機関に対して、個人から会社への名義変更を申し入れましょう。

 

⑦関係官庁への届出

新会社の設立手続きが完了したら、税務署および都道府県税事務所に「法人設立届出書」などの届出が必要になります。あわせて、「個人事業の廃業届出書」を税務署に提出します。また、許認可が必要な事業を行っている場合には、監督官庁に所定の届出書を提出します。

 

法人化の条件・タイミング

法人化の条件・タイミング

では、どのような条件・タイミングで法人化をするのが有利といえるのでしょうか。

 

個人事業主として所得(利益)が800万円を超えると法人化が有利

個人事業主の場合、所得税の税率は5%~45%で、所得が増えれば増えるほど税率が高くなり、これに住民税10%も課されます。一方、法人税の税率は、利益が800万円以下なら15%、それ以上なら23.2%です。これに地方税まで含めると法人の税率は36%くらいになります。

このことから、個人事業主として利益を伸ばしていき、ある一定の利益を超えると法人化したほうが税金を安くすることができるといえます。

具体的には、所得税の税率は所得が900万円を超えると33%となるので、個人事業主としての利益が800万円~900万円くらいになれば、そのタイミングで法人化をしたほうが有利といえるでしょう。

 

会社設立後に注意すべきポイント

会社設立後に注意すべきポイント

上で述べた名義変更や関係官庁への届出等の手続きを完了したら、いよいよ会社として事業を行っていくことになります。会社として事業を行っていく上で、お金に関しては特に取扱いに注意しなければなりません。

 

生活費は給与からまかなわければならない

個人事業主では、事業用の現金や預金はすべて個人のものなので、自由にお金を使うことができました。その使いみちが仕事に関する経費であろうとプライベートでの買い物であろうと、特に問題にはならないでしょう。

しかし、会社の現金や預金残高はあくまで会社のものであり、個人のものではないのです。したがって、会社のお金を勝手に引き出して、そのお金で個人の生活費に充てるということは認められません。つまり、会社のお金と個人のお金をきちんと分けて管理するようにしなければなりません。

新会社の代表取締役に就任した事業主は、会社から”役員報酬”という形で毎月の給料を受け取ります。個人の生活費その他プライベートな支出に関しては、受け取った給料の中からまかなっていくことになります。

 

法人化のメリット

法人化のメリット

 

 

(1)税金を抑えることができる

個人事業主の場合は、事業が軌道に乗り、所得(利益)が上がってくると、その所得に対して所得税・住民税が発生します。所得税は、所得に応じて税率が5%から45%まで段階的に増えていき、さらに住民税が10%加わります。

最高税率は所得税・住民税を合わせて55%になり、所得の半分以上を税金として納めなければなりません。

<所得税率表>
課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円~330万円以下 10% 9万7500円
330万円~695万円以下 20% 42万7,500円
695万円~900万円以下 23% 63万6,000円
900万円~1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円~4.000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

一方、法人の場合は、利益に対しては法人税がかかります。この法人税の税率は個人の所得税と違い、ほぼ一定率となっています。

<法人税率>
利益水準 法人税率
400万円以下 約21.4%
400万円~800万円以下 約23.2%
800万円超 約34.3%

それぞれの税率の違いから、個人事業主の場合にかかる所得税率が法人税率よりも高くなれば、法人化したほうが税金面で有利ということになります。前述のように、目安として個人事業主での所得が800万円を超えるようになると、法人化を検討したほうがいいでしょう。

 

(2)社会的な信用力が上がる

会社の中には、取引の相手が法人でないと取引量を制限することもあり、また、そもそも取引自体を行わないとしているところもあります。大企業になるほどこの傾向は強く、取引相手の信用力を非常に重視しています。

そのような会社が新規の取引先として相手の信用力を確認する際、個人事業の場合では決算書や確定申告書で確認することになります。しかし、個人の確定申告書は信用力を判断するには情報量に乏しいため、判断できないのが現実です。

一方、法人の場合は、「登記簿謄本」によって公的にその存在が確認できます。登記簿謄本には「商号」「目的」「本店所在地」「設立年月日」「役員の氏名」などが記載されており、会社の重要な情報が一目で確認できます。

また、決算書や確定申告書についても個人事業者よりも情報量が多く、信用力を判断するに十分な情報を得ることができます。

 

(3)社会保険へ加入でき、従業員を確保しやすい

法人化することで社会保険が強制加入となり、新たなコストが発生します。これはデメリットといえるかもしれません。しかし、社会保険に加入することによるメリットもあります。

社会保険に加入していることで福利厚生が充実し、社員の採用や離職率の低下につながり、人材の確保が有利になることがあげられます。また、事業主(社長)本人にとっても、老後の年金が増えるというメリットがあります。

厚生年金保険に加入することによって、厚生年金保険料の負担が発生します。保険料の負担だけを考えると、個人事業の場合に支払っていた国民年金保険料よりも厚生年金保険料のほうが負担は大きいのが一般的です。

しかし、老後は国民年金からの老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金も受給できるようになり、年金収入が増えることになります。

また、国民健康保険には事業主が病気で仕事ができなくても保障はありませんが、健康保険には病気で休業した場合でも収入保障にあたる傷病手当金の給付などがある点もメリットといえます。

 

法人化のデメリット

法人化のデメリット

(1)赤字でも税金の支払いがある

法人化すると、事業が赤字だったとしても「法人住民税の均等割」の支払い義務があり、年間7万円の納税をすることになります。(※資本金の額によって、支払金額が異なります。)

 

(2)社会保険への加入が必須

法人化した場合、法律(健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条など)によって社会保険への加入が義務づけられています。役員・従業員の人数には関係なく、社長が一人しかいない会社であっても、報酬が発生すれば加入しなければなりません。

これら社会保険の加入手続きは煩雑となりやすく、加入後の保険料の支払いも会社の負担となり得ます。しかし、社会保険の加入には上で述べたようなメリットがあるのも事実です。

 

(3)会計や事務手続きが増える

法人化をすると、個人事業主として営業していたときよりも、会計や税務関係の事務作業が格段に増え、その部分にかかるコストも増えることになります。たとえば、会計処理も複雑になり、決算書や法人税申告書の作成を税理士に依頼することになれば、報酬を支払わなければなりません。

 

個人事業主の法人化に関するまとめ

個人事業から法人化とすることで、会計処理や事務処理に加えて社会保険料の負担が増えるなど、個人事業よりも費用面・業務面で負担は大きくなると思われます。

しかし、規模が大きくなればなるほど、法人化することによるメリットは大きいのではないでしょうか。その1つが節税メリットです。法人化して社会的な信用力を高めることで、事業拡大につながるということも大きなメリットといえます。

個人で事業をしているうちから、いつ、どのタイミングで法人化するかを考えながら事業を進めていくようにしましょう。

 

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