- 外貨預金のメリットは「円預金よりも高い金利、為替差益が狙える、普段使っている銀行で始められる、資産を分散できる」こと。
- 為替変動で円ベースでの損失が出ることもあるので、複数の通貨に分散投資するようにする。
- ペイオフの対象外なので、金融機関も複数に分けた方が安心。
公開日:2020年2月5日
低金利が続いているので、国内の銀行に預けてもお金はほとんど増えません。そこで注目されているのが「外貨預金」。今回は、投資初心者でもわかりやすいように外貨預金の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
外貨預金とは日本円ではなく、外国の通貨で預金をすることです。かつては、日本でも預金金利が5%を超える時代もありました。100万円を5%の金利で1年間預ければ、5万円の利息がもらえたのです(税引前)。
しかし、現在の大手銀行の定期預金(1年)は0.01%。100万円を1年間預けても、利息は100円しかつきません。ATMでお金を引き出したら、1年分の利息が吹き飛んでしまうのです。
しかし、海外には金利の高い通貨があります。そうした通貨にお金を預ければ、国内よりも多くの利息が期待できるのです。
それでは、各国の政策金利を見てみましょう(2019年12月時点)。政策金利とは、各国の中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を与えます。
このように、世界には日本よりも金利の高い国があります。日本の低金利と経済の停滞が続く中、外国への投資や資産運用が増えているのです。日銀の資金循環統計によると、個人(家計)の外貨資産の残高は、2019年6月末時点で7兆2,314億円と過去最高の水準です。
そして、外貨建ての金融資産の中でも気軽に始められるのが「外貨預金」です。いつも利用している国内の銀行で取り扱っているので、海外口座を開く必要はありません。また、あくまでも「預金」だという点が安心感になっているのです。
銀行によって取り扱っている通貨は異なりますが、米ドル・ユーロ・豪ドルを中心に、英ポンド・ブラジルレアル・南アフリカランドなど、さまざまな国の外貨預金があります。
基本的な仕組みは円預金と同じですし、普段利用している国内の銀行ですぐに始めることが可能です。そして外貨預金にも、「普通預金」と「定期預金」があり、あくまでも預金なので預けたお金(元本)は保証されています。
ただし、元本が保証されているのは「外貨建ての元本」であることに注意が必要。預けるときと引き出すときの為替レート次第では、実質的な元本割れが生じることもあります。
それでも外貨預金をする人が増えているのは、「円預金よりも高い金利が得られる」「為替レートの動きでも利益が狙える」といったメリットが期待できるからです。
それでは、外貨預金のメリットについて詳しく見ていきましょう。
通貨によって異なりますが、国内の円預金よりも外貨預金の方が金利は高めです。また、金融機関によってはキャンペーンをしていることもあるので、対象期間中に預ければより高い金利を得られます。
また長期での運用を考える場合は、「複利型」の外貨預金を選びましょう。外貨預金には、単利型と複利型の2種類があります。
単利型は元本(預け入れた金額)のみに金利が発生しますが、複利型は元本とその利息を合算したものに金利が生じるので、長く預ければ預けるほど、より多くの金利をもらえるというメリットがあるのです。
特に元本が大きい場合や長期での運用を考えている場合は、単利型に比べて利益が大きくなるのでおすすめです。
為替(外国為替)とは「ある国の通貨」と「別の国の通貨」を交換することです。そして、その交換比率を「為替レート」といいます。
為替レートは、日々の為替取引の中で変化します。米ドルよりも日本円が欲しい人が増えれば「円高・ドル安」になりますし、円よりもドルが欲しい人が増えれば、「円安・ドル高」になるのです。
国内の円預金にないメリットが、為替差益です。たとえば、100万円を米ドルで預けたとします。預けるときの為替レートが「1ドル=100円」であれば、預金残高は1万ドルです。
この後、為替レートが変動して「1ドル=110円」の円安・ドル高になったとします。1万ドルの預金を解約して日本円に戻すと、110万円が手元に残ります。つまり、10万円の為替差益を手に入れたことになるのです。
外国株式を始める場合、証券会社に口座を開く必要があります。書類のやりとりをしたり、個人情報を提供したりという手間がかかります。しかし、外貨預金なら普段使い慣れている銀行で気軽に始められるというメリットがあるのです。
為替レートは日々変動しています。もし日本円が世界の中で価値の低い通貨になってしまった場合、円資産の価値が下がってしまい、大きな損が出る可能性があるのです。また、食料や衣類など普段の生活に欠かせない品の多くは、海外から輸入されています。
円の価値が下がると、こうした品物の調達コストが上がり、国内の物価も上昇してしまいます。そのとき外貨を保有していれば、為替差益を得られるので物価上昇の影響を軽減できますが、円しか保有していなければ、家計は大きなダメージを受けてしまう恐れがあるのです。
外貨預金を保有することで通貨を分散させ、日本だけでなく他の国にもリスクを分散できるのです。
外貨預金のリスクとデメリットについても確認しておきましょう。
為替レートが円安に進めば為替差益が出ますが、円高に進むと為替差損が出ます。先ほどの例でいうと、100万円を預けたときのレートが「1ドル=100円」だったのに、それが「1ドル=90円」になると、円換算で90万円まで目減りしてしまいます。
外貨預金は外貨建では元本が保証されているものの、日本円に換算すると損をしてしまう場合があります。外貨を日本円に換算するときは、為替レートをチェックするようにしましょう。
外貨預金をするときは、金利や為替差益ばかりに目が行ってしまいがちですが、手数料もきちんと確認する必要があります。手数料は金融機関によって大きく異なるからです。
インターネットを活用してコストを抑えている銀行もあれば、対面のサービスを重視する銀行もあります。米ドルの手数料を確認してみましょう(2020年1月時点)。
為替手数料(1ドル) | |
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GMOあおぞらネット銀行 | 0.02円 |
住信ネット銀行 | 0.04円 |
ソニー銀行 | 0.15円 |
三菱UFJ銀行 | 0.25円(インターネット)、1円(窓口) |
三井住友銀行 | 0.5円(インターネット)、1円(店頭) |
GMOあおぞらネット銀行(0.02円)と三菱UFJ銀行の窓口(1円)では、50倍もの差があります。ただ、為替手数料が安ければいいというわけではありません。為替の情報量が不足していたり、ホームページが不親切だったりすると、余計な手間がかかります。
為替手数料はサービスの対価として考え、アクセスの良さやサービスの質なども含め、トータルで考えて金融機関を選ぶようにしましょう。
金利は%で表されるのに対し、為替手数料は「1ドルに対し1円」と表示されます。わかりにくいと感じる人も多いと思うので、具体例を見ていきましょう。
1ドル100円のとき、1万ドル(100万円)を年率2%で預けたとします。1年後に為替レートが同じ100円なら、受け取るのは元本+2万円、つまり102万円になります(税金は考慮せず)。
大手銀行の窓口だと、片道の手数料は1円ですから、往復の手数料として
を差し引くので、手取り金額は100万円になってしまいます。
しかし、もし為替手数料が1ドルにつき15銭だとしたら
となるので、手取りは101万7,000円になります。
外貨預金は「ペイオフの対象外」です。ペイオフとは、自分が預金している金融機関が破綻した場合に、その金融機関が預金保険機構の「預金保険制度」に加盟していれば、預けていた金額のうち1000万円とその利息等について保証されるという制度。
ペイオフの対象となる金融機関は、国内に本店のある銀行や信用金庫、労働金庫などです。普通預金や定期預金など大抵の預金は対象となるものの、外貨預金は対象外。つまり、外貨預金をしていた銀行が破綻してしまった場合、その預金は戻ってこない可能性があるのです。
ですから1000万円以上の資金がある場合、ひとつの金融機関でまとめて外貨預金するのではなく、複数の金融機関に分けておくようにしましょう。
円預金でも利息に対して税金がかかりますが、税金を引いてマイナスになることはありません。しかし、外貨預金は円換算時に元本割れしていても税金が引かれる場合があります。それは、外貨預金にかかる税金には「利息に対する税金」と「為替差益に対する税金」の2つがあるからです。
外貨預金を円に戻す時、円高に進んで為替差損が出ていても、利息にかかる税金は必ず引かれるのです。
利息にかかる税金は、20.315%(国税15.315%、地方税5%)が源泉徴収(自動的に差し引かれる)されますが、為替差益にかかる税金は雑所得として総合課税の対象になります。
総合課税は給与所得など他の所得と合算されて税率が変わる累進課税です。他の所得が多い人ほど税額が大きくなるので、注意が必要です。
外貨預金のリスクを軽減させる方法を、以下の記事で書いています。ご参考いただければ幸いです。
今回は、外貨預金の仕組みとメリット・デメリットについて解説しました。外貨預金は、円預金よりも高い金利が見込めることや、為替変動によって為替差益を得られるというメリットがあります。
しかし、外貨預金は円ベースでは元本が保証されていません。為替レートの動き次第では、元本割れのリスクもあるのです。なるべく一つの通貨にまとめて外貨預金をするのではなく、複数の通貨に分散投資してリスクを軽減させるようにしましょう。
また、外貨預金はペイオフの対象外なので、金融機関も複数に分けておいた方が安心です。