公開日:2020年9月27日
日本国民なら20歳になると国民年金に加入しなくてはなりません。すでに会社勤めなどをしている人なら労使折半で保険料を収めているはずですが、収入のない学生はどうしているのでしょうか。
保険料が払えないからと未納のままにしている人、もしくはしていた人も多いのではないでしょうか。学生時代に国民年金の保険料を払っていないと、将来の年金額に影響が及びます。
今回は、学生時代に年金の保険料を払わなかった場合の対処の仕方などについて解説していきます。
自営業者や学生、農業の人など国民年金の第1号被保険者のうち、保険料を支払うことが経済的に困難な方のために、保険料を免除したり猶予したりする制度があります。免除や猶予の手続きをすると、何も手続きを行わずに保険料を納付しない、単なる未納とは区別されます。
未納のまま放置すると、老齢年金の受給以外にも不利益を被ることがあります。そのため、免除や納付猶予の制度が利用できる場合はきちんと手続きをし、未納を避けるべきです。
国民年金保険料を免除や猶予の手続きをせずに未納のままにすると、どのようなデメリットがあるでしょうか。
未納の場合、保険料を払わないので「年金額が減る」というデメリットがあることは、難なく想像ができると思います。けれども、「全く受け取れなくなる」可能性もあることは想定外の人が多いのではないでしょうか。
老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)を受け取るには、保険料を納付済みの期間と、免除や猶予の期間の合計が10年以上であることが条件になります(受給資格期間といいます)。
未納の期間が長くて受給資格期間を満たせない場合、老齢基礎年金を1円も受け取ることができません。
一般に「年金」というと、上述した「老齢基礎年金」のように老後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いと思います。しかし公的年金には、亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」もあります。
障害年金、遺族年金を受給するためには以下のいずれか条件が必要です。
いずれの場合も、未納の期間が長いと受給資格を満たせなくなり、いざというときに障害年金や遺族年金が受給できなくなる可能性があります。
例えば、交通事故のケガで後遺症が残って働けなくなった場合などに障害年金が受け取れないのは、経済的なダメージも大きいはずです。
本人・世帯主・配偶者の前年の所得が基準額以下の場合、「保険料の全額、4分の3、半額、4分の1」のいずれかが免除されます。いくら免除されるかは前年所得額によって決定します。
免除を受けると年金の受給額は減額になりますが、半分は保証されます。
50歳未満の加入者で、本人と配偶者の前年の所得が基準額以下の場合に、納付を猶予してもらうことができる制度です。
納付猶予は免除とは違い、後から保険料を納めることを前提としています。そのため、年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入されますが、猶予期間分の年金の受給額には算入されません。
学生の場合は、納付猶予の特例で「学生納付特例制度」という制度を利用できます。
「学生納付特例制度」とは、学生で保険料を納めるのが難しい場合、本人の所得が118万円までであれば、年金保険料の納付を猶予する制度です。
この制度を利用すれば、保険料を納めなくても受給資格期間に算入されます。しかし、「猶予」とは「免除」と違い、保険料の後払いを前提としています。ゆえに、そのまま保険料を納めなければ、将来の年金額は減額されるので注意が必要です。
受給資格期間に含まれるか | 年金額に算入されるか | 障害年金・遺族年金の受給 | |
---|---|---|---|
保険料納付 | 〇 | 〇 | 〇 |
免除 | 〇 | △(半分は保証) | 〇 |
猶予 | 〇 | × | 〇 |
学生納付特例 | 〇 | × | 〇 |
未納 | × | × | × |
学生納付特例制度は、20歳になって「国民年金加入手続きのご案内」が送られてきたタイミングで申請するのが一般的です。
もし、そのタイミングで申請しそびれた場合、2年1か月まで遡って申請を出すことができます。この期間も過ぎてしまった場合は学生納付特例制度は使えず、その期間は未納ということになってしまいます。
学生時代に学生納付特例制度を利用してもしなくても、保険料を納めていないなら、将来の年金額が減ることには変わりがありません。
20歳から40年間、国民年金の保険料を払い込んだ場合に受け取れる年金額の年額は、2020年(令和2年)度で781,700円です。
仮に3年間の未納だとすると、将来の年金額は約60,000円(約8%)も減ります。国民年金は一生涯受け取る年金なので、長生きすればするほど、減額の影響は大きくなります。
そこで、納めていない保険料を後から納めて、将来受け取る年金を増やす方法について見ていきます。
保険料納付猶予制度や学生納付特例は、保険料の納付を先延ばしにして後で払うことが前提であると述べました。その「後払い」にあたる行為を「追納」といいます。
追納は、免除や猶予された期間の保険料を10年まで遡って納めることができる制度です。ただし、3年以上前の保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額(延滞利子のようなもの)が付きますので注意してください。
3年以上経ってからの年金保険料の追納は加算額が上乗せされるので、2年以内に追納したほうがいいということになります。ただ、ここでもう一つ考えるべきことがあります。
それは、追納した保険料は社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税が軽減される点です。所得税と住民税の節税効果は収入の高い人ほど大きくなります。
もし、追納によって所得税の税率が変わるような場合は、そのタイミングで追納するほうが、加算額を回避するより有利な可能性があります。学生納付特例を利用した人が社会人になったら、追納の保険料をいつ払うのがいいかを考えておきましょう。
日本学生支援機構の貸与型の奨学金を受けた場合、社会人1年目の10月から返済が始まります。ここで、年金保険料の追納と奨学金の返済が重なると、負担が重すぎる場合も考えられます。
その場合は、奨学金の返済を優先し、年金保険料の追納は生活が安定してからにしましょう。なぜなら、奨学金を返済しない場合のほうがリスクが高いからです。
学生納付特例も利用せず、保険料が未納だった場合は60歳以降で年金額を増やす方法があります。
会社員の場合、厚生年金は最長70歳になるまで加入できます。国民年金の保険料は60歳以降は納めないため、60歳以降に会社勤めをしている場合は国民年金の年金額は増やせません。
しかし、老齢厚生年金の経過的加算額は増えていきます。経過的加算額は厚生年金に3年加入して約60,000円増やすことができますので、3年間の未納で減った年金額をほぼ埋め合わせることができます。
国民年金が満額に足りない人は、60歳以降も65歳まで国民年金の任意加入をして国民年金保険料を納めることができます。60歳以降会社勤めをせずに厚生年金に加入しない場合は、この方法を利用すれば老齢基礎年金が増やせます。
学生納付特例を利用した場合は、10年以内に遡って「追納」をすることができます。追納の保険料は社会保険料控除の対象になります。
一方、学生納付特例を利用しなかった場合は、60歳以降に厚生年金の継続、または国民年金の任意加入で老後の年金を増やすことができます。
上記のように、学生時代の国民年金の保険料が未納のとき、学生納付特例を利用した場合としない場合で、老後に受け取る年金を増やす方法が異なるため注意しましょう。
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