- ローン支払中でも売却可能な車なら財産分与の対象になる。
- 貯蓄性のある生命保険や学資保険は財産分与できる。
- 子供名義の預金は夫婦で築いたお金かどうかで判断。
公開日:2018年10月22日
離婚時には夫婦が共同で築いた財産を分けるため財産分与を行います。財産と言えば、不動産や預貯金を思い浮かべる人が多いと思いますが、他にも財産分与できる財産はあります。
本記事では、車、生命保険、子供名義の預金など、離婚時に財産分与の対象となり得るものについて説明します。
また、離婚の際のお金に関する問題については、以下記事を参考に読み進めるのもおすすめです。
目次
財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に築いた財産です。結婚前に購入していた車は財産分与の対象外ですが、結婚してから購入した車なら、基本的に財産分与できます。
なお、車というのは、購入後年数が経過すれば、資産的価値がなくなります。売っても値がつかない車は、財産分与できません。車に価値があるかどうかわからない場合には、買取業者などに査定してもらって判断します。
結婚してから車をローンで購入したけれど、離婚時にまだローン返済が終わっていないことがあります。ローンが残っている車は、財産分与できる場合とできない場合があります。
ローン支払中、購入者には車の所有権がないケースがあります。車の売主であるディーラーまたは同系列のクレジット会社などが、所有権留保という方法で、車を貸付の担保にしていることがあるからです。
所有権留保とは、売主が売買の目的物を買主に引き渡した後も、代金の支払い完了まで所有権を自らに残したままにする方法です。所有権留保しておけば、ローン返済が滞ったときにすぐに車を回収できますから、売主にとっては非常に都合がいい方法です。
車検証には車の所有者及び使用者が記載されていますが、車検証の所有者欄がディーラーやクレジット会社になっていれば、その車は所有権留保されているということです。
所有権留保されている車は、夫婦の財産ではなく、財産分与もできません。離婚後も車の使用者である人がそのまま車を引き継ぎ、ローン債務者である人がローンを払い続けるのが原則です。
車が所有権留保されていない場合には、車の査定価格とローン残高のどちらが大きいかで、財産分与の可否が分かれます。
たとえば、車の査定価格が120万円でローン残高が40万円の場合、売却の経費を考慮しなければ、売却してローンを完済しても80万円残ります。この80万円を夫婦で40万円ずつ財産分与することができます。車を一方が引き継ぐ場合には、他方に40万円の清算金を渡せば財産分与できます。
なお、ローン返済中の車は勝手に売却や名義変更ができないので、事前にローン会社に連絡して売却手続きするようにしましょう。
ローン残債が車の現在の価格を上回る場合には、車には財産的価値がありません。この場合、車は財産分与の対象とせず、残るローンについてはローン債務者である側が支払うのが原則です。
財産分与では離婚時ではなく、原則的に別居時が基準になります。別居後に購入した車については、購入資金が同居中に築いたものであるかどうかで、財産分与の対象になるかを判断します。
たとえば、夫が別居後に自分でローンを組んで購入した車は、夫固有の財産です。一方、妻が別居前からあった夫婦の貯金を使って車を一括払いで購入したような場合には、その車は夫婦の財産となり、財産分与の対象になります。
別居後にローンを組んだけれど頭金の一部を夫婦の貯金から出しているなど判断が難しいケースについては、専門家に相談して検討するようにしましょう。
生命保険にはいろいろな種類がありますが、財産的価値があり、財産分与できる生命保険もあります。
貯蓄性のある保険は、婚姻期間中に保険料を払っていれば、財産分与できます。掛け捨て型の保険は財産分与できません。
貯蓄性のある保険には解約返戻金があるはずですから、解約返戻金を分けます。解約せずに保険契約を維持する場合には、解約返戻金の額を調べた上で、契約を引き継ぐ側が解約返戻金の半分の清算金を他方に支払います。
夫や妻が受取人になっている生命保険の契約を維持するなら、受取人変更をしておきましょう。
生命保険の受取人になれるのは、原則として2親等以内の親族です。離婚した妻は他人になりますから、本来受取人になれません。万一のことがあったときに、保険会社から元妻に生命保険金が支払われたら、親族との間でトラブルになる可能性もあります。
財産分与できるかどうかに関係なく、離婚時には夫婦でお互いが受取人になっている生命保険がないかを確認し、必要に応じて子供などに名義変更しておきましょう。
学資保険は、将来子供にかかる教育費を準備するために加入するものです。学資保険に加入すれば、毎月保険料を払い続けることにより、子供の進学費用が必要な時期に満期保険金を受け取れます。
学資保険では、加入期間中万一のことがあり保険料を払えなくなったとしても、残りの保険料の支払いが免除されます。学資保険は貯蓄性のある生命保険の一種ですから、原則的に財産分与の対象になります。
学資保険には、契約者、被保険者、受取人の3者が関与しています。学資保険の場合には、被保険者(保険の対象となる人)は子供となり、受取人(満期保険金を受け取る人)は子供の進学費用を支払う親になります。
学資保険の契約者とは、保険料を支払う人です。契約者が子供の親、すなわち夫婦のどちらかである場合には、保険料を夫婦で払ってきたことになるため、学資保険は財産分与の対象になります。この場合には、上記の貯蓄性のある生命保険と同様、解約返戻金を基準に財産分与します。
契約者が親以外の祖父母などである場合には、たとえ受取人が親であっても、学資保険は財産分与の対象になりません。
学資保険を途中で解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回ってしまうこともあります。学資保険はそもそも子供の進学費用にあてるために準備しているものですから、離婚時に財産分与で分けるのではなく、養育費の一部として子供の親権を持つ側が引き継ぐのがおすすめです。
学資保険の契約者・受取人が夫であり、子供の親権を持つのが妻である場合には、契約者・受取人とも妻に変更しておきましょう。夫が契約者、妻が受取人とすると、満期保険金の受取時に贈与税を課税されることがあります。
夫が学資保険の保険料を払う場合には、毎月の養育費に上乗せして妻に渡し、妻が保険会社に支払う形にした方がよいでしょう。
離婚時に子供名義の預金があることも多いと思います。子供名義の預金であっても、財産分与できることがあります。
財産分与の対象になる財産かどうかは、名義がどうなっているかではなく、実質的に夫婦共同で築いた財産なのかを基準に判断します。
たとえば、毎月の給料の中からいくらかを子供名義の預金口座に移し替えていたような場合、その預金は子供名義であっても実質的には夫婦のお金で、財産分与の対象になります。
預金の目的が進学費用など子供のためのものであっても、進学費用を出すのは親であるため、夫婦の財産となります。夫婦間で合意すれば、子供名義の預金は養育費にあてるとして、親権を持つ側が引き継いでもかまいません。
子供が親戚からもらったお年玉などを子供名義の口座に預金している場合、そのお金は夫婦で築いた財産ではなく、子供自身が贈与を受けた財産です。
子供自身が贈与を受けた財産は、子供固有の財産です。また、子供がアルバイトをして自分で稼いだお金も子供固有の財産です。預金が子供固有の財産である場合には、財産分与の対象にはなりません。
中学卒業までの子供がいる家庭では、児童手当をもらっていると思います。児童手当は、子供の保護者に対して支給されるものですから、子供固有の財産ではありません。通常は夫婦の財産ということになり、財産分与の対象になります。
なお、別居後に子供と同居している親に対して支給された児童手当については、財産分与の対象にならないと考えられます。
離婚時には、不動産や預金以外にも、車や生命保険の財産分与ができる場合があります。また、預金については子供名義になっていても、実質的に夫婦のお金であれば、財産分与可能です。
財産分与は離婚後2年を経過すると請求できません。特に、財産をもらえる側は、離婚時に財産分与できるものがないかどうかをよく見直してみましょう。
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