- 住宅ローン返済途中で死亡してしまった場合は団信の適用を受けられる。
- 原則として団信の保障範囲が広いほど金利負担も大きくなる。
- 住宅ローンを組む時は保険の見直しを検討しよう。
公開日:2020年3月21日
住宅ローンは借入額が大きいこともあり、融資を受ける前にはいろいろな悩みが生まれるのではないでしょうか。そうした悩みのひとつに、住宅ローン返済中にもし自分が死んでしまったら…?というものもあるでしょう。
本記事では、住宅ローンの返済中に死亡してしまったらどうなるか、手続きや注意点を含めて解説していきます。
目次
住宅ローンの返済中に契約者が死亡してしまったらどうなるのでしょうか?
結論からお伝えすると、住宅ローンを組むときには通常団体信用生命保険に加入するため、住宅ローン支払い中に契約者が死亡した場合は残債を0円にすることができます。
なお、通常の団体信用生命保険の保険料は金利に含まれているとされ、追加で保険料等支払う必要はありません。
団体信用生命保険の内容は利用する金融機関によって異なりますが、一般的に、団体信用生命保険では契約者が「死亡」したときに加え、「高度障害状態」になったときに適用を受けられます。
高度障害状態とは、病気やけがで身体機能が重度に低下している状態のことで、例えば住宅金融支援機構の団信では以下のような状態を想定しています。
住宅ローンの返済途中で、配偶者など支払人本人以外が同じ状態になった場合はどうなるのでしょうか?
これについては、住宅ローンを連帯債務者として一緒に返済しているようなケースで、契約者本人以外の方も対象となる団体信用生命保険に加入していた場合は、適用を受けられます。
連帯債務者など契約者本人以外の方が団体信用生命保険の適用を受けられるかどうかは契約内容次第ですので、銀行に確認しながら進めるようにしましょう。
団体信用生命保険には、死亡や高度障害を対象とするもの以外に、以下のようなものもあります。
ガン団信は、死亡や高度障害以外に所定のがんと判断されたときに保険の適用を受けられます。
同じように3大疾病団信は「がん・急性心筋梗塞、脳卒中」を、8大疾病は3大疾病にプラスして「高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎」が対象となります。
ただし、所定の状態になったときに住宅ローンの残債が0円になるものと一定期間の返済額を補填されるものがあり、保険によって内容が異なるため事前に確認しておく必要があります。
なお、ガン団信や3大疾病、8大疾病を選ぶと住宅ローンの金利0.2%~0.5%加算されるのが一般的です。ただし、中には他の住宅ローンと差別化を図るため、金利負担なしで範囲の広い団体信用生命保険を利用できる金融機関もあります。
団体信用生命保険はどのような手続きが必要なのでしょうか?ここでは、「団体信用生命保険に加入する手続き」と、所定の状態になり「団体信用生命保険の適用を受ける手続き」の2つをお伝えします。
団体信用生命保険に加入する際の一般的な手続きは以下のようなものです。
告知書とは自分の健康状態について申告するもので、入院歴や服薬歴がある場合にはそれらを記入します。ただし、借入額が一定以上ある場合には別途、医師による健康診断結果証明書を提出しなければならないこともあります。
団信の規定する所定の状態になり、団信の適用を受ける際には融資を受けた金融機関に連絡して必要書類を提出する必要があります。例えば、不幸にも亡くなってしまった場合には以下のような書類を揃える必要があります。
書類を提出した後、団信を取り扱う生命保険会社が内容を審査し、問題なければ保険金の支払いがなされます。
団体信用生命保険については、以下のような点に注意しましょう。
団信は通常契約者本人のみが対象となるものです。
ところで、奥様が契約者本人になるような場合で世帯主がご主人といったケースや、ご主人が契約者本人であっても、勤め先の都合等により奥様を世帯主とするようなケースでは、団信の規定に影響があるのでしょうか?この点、特に世帯主かどうかは団信の内容に関わりありません。
実は団体信用生命保険は若い程損をして、年配者程得をする設計となっています。
一般的な生命保険であれば年齢が若い内に加入した生命保険は保険料が安く、年を取ってから加入すると保険料が高くなってしまいます。これは、年を取っている方が健康を害したり、死亡してしまったりする可能性が高いからで、至極当然のことだといえるでしょう。
一方、団体信用生命保険は年齢に関わらず、加入者全員で同じだけ負担することになります。このため、民間の生命保険と比較すると、団信は年の若い方ほど損をする仕組みとなっているのです。
20代の方などは、フラット35など団信への加入が任意の住宅ローンを利用して、団信を利用せず、同額の保険を民間の生命保険で探すとお得です。この場合、住宅ローンの残債が下がるごとに保険金を下げるよう、「低減型生命保険」への加入を検討するとよいでしょう。
団信は申込時に告知書を提出する必要があり、過去の病歴等によっては団信の審査で承認を得られないことがあります。
住宅ローン利用時に金融機関が団体信用生命保険をつけているのは、「仮に債務者が死亡してしまった場合でも、保険で残債を回収できる」からです。このため、通常は団信の承認を得られない場合には住宅ローンの審査承認も得られません。
年を重ねると必然的に病気になる可能性が高くなってしまうため、住宅購入を考えている方はなるべく早く動いたほうがよいといえます。
ちなみに、住宅金融支援機構のフラット35であれば団体信用生命保険への加入が任意となっているため、健康に問題がある方は必然的にフラット35の利用を考えるというケースが多くなります。
また、民間の金融機関であっても、一定以上資産があるケースや年収が十分に高い場合には、団体信用生命保険の加入なしで融資を受けられるケースもあります。
団体信用生命保険について注意しなければならないことは、住宅ローンの借り換え時にも団体信用生命保険の審査は行われるということです。
最初の借入時には健康上の問題がなかった方でも、借り換えするまでの間に何らかの病気を経験していた場合には団信の承認を得られず、借り換えできないケースがあります。ある意味、住宅ローンと健康はセットに考えていたほうがよいといえます。
住宅ローンを利用する前に民間の生命保険に加入していた方は、団信に加入することで民間の生命保険と保険内容が重複してしまうケースがあります。
例えば、3,000万円の住宅ローンで団信に加入する場合、3,000万円の逓減型生命保険に加入しているのと同じだといえます。
仮に、融資を受ける前にすでに3,000万円の定期保険に加入していたようなケースでは、死亡時に2つの保険を併せて6,000万円分の保険金を受け取れることになります。
もちろん、多く受け取れることは悪いことではありませんが、必要以上の保険に加入すると保険料の負担が大きくなってしまいます。こうしたこともあり、既に民間の生命保険に加入されている方が新しく団信に加入する場合には、一度保険の見直しをすることをおすすめします。
住宅ローンは通常団信とセットですが、任意加入のフラット35で団信に加入しない選択をしたようなケースで、実際に死亡してしまった後はどうなってしまうのでしょうか?
団信に加入していなかった方が死亡してしまった場合、後は相続の問題となります。
相続人が住宅ローンを引き継ぐかどうかの判断を行い、引き継ぐ場合には亡くなった方と同様に毎月住宅ローンを返済していかなければなりません。なお、相続放棄する場合には以下の順で相続順位が移っていくことになります。
常に相続人 | 配偶者 |
---|---|
第一順位 | 子や孫 |
第二順位 | 父母や祖父母 |
第三順位 | 兄弟姉妹 |
相続放棄の判断は、相続の開始があったことを知ってから3カ月以内にしなければなりません。もちろん、相続放棄を選択すると資産である家も相続を放棄することになります。
基本的には、同居していた配偶者の方や子供が相続人になるケースが多いでしょう。相続人となった場合には、相続開始から10カ月以内に相続税の支払いもしなければならない点に注意が必要です。
ちなみに、この辺りの手続きは団信に加入していた場合でも、住宅ローンの残債がないというだけで基本的には同じ流れとなります。
相続手続きとは別に、相続人となった方は住宅ローンを引き継ぐ手続きも進めなければなりません。相続人となった方は、金融機関に対して以下のような書類を届ける必要があります。
住宅ローンを組んでいる方が死亡したらどうなるかについてお伝えしてきました。ここでは、番外編として住宅ローンを組む前、つなぎ融資の段階で死亡してしまったらどうなるのかについてお伝えしたいと思います。
住宅を購入するにあたり、一から住宅を新築するケースでは、建物の新築請負契約から住宅ローン実行までの間につなぎ融資を受ける必要があります。
住宅ローンは、原則として完成した建物を対象に融資を行うものです。一方、建物の新築工事では建物完成前に請負価格のそれぞれ3割程度を「着工金」や「中間金」として支払わなければなりません。これらの資金を対象として融資を受けるのがつなぎ融資です。
例えば2,000万円の住宅を建てるにあたり、着工金として600万円、中間金として600万円必要なのであれば、これら1,200万円分をつなぎ融資で借りて、建物完成後に住宅ローン2,000万円を実行することでつなぎ融資を完済する、という手続きを取ります。
上記と同じ例で、例えば1,200万円のつなぎ融資を受けてから、建物完成までの間に契約者が死亡してしまった場合はどうなるのでしょうか?
この場合、相続人となる方が住宅ローン2,000万円分について審査承認を受けられるだけの年収があれば、その方が引き継げば問題はありません。
折角の住宅新築にあたり親族を亡くしてしまったという大きな悲しみはあるものの、つなぎ融資分1,200万円分について住宅ローン2,000万円で完済してしまえば手続きは終了です。
一方、配偶者やお子様等に住宅ローンを組むだけの十分な年収がない場合、つなぎ融資分1,200万円分についてどのように返済していくかを金融機関と話し合わなければなりません。場合によっては新築工事もストップしなければならないでしょう。
ただし、実はつなぎ融資にも団信がついているものがあります。
団信がついている場合、すでに融資を受けた1,200万円分について団体信用生命保険の適用を受けることができ、残り800万円について住宅ローンを組むかどうかの問題となります。
住宅ローンを組む場合は、当初より借入額を少なくできるため、少ない負担で返済していくことができるでしょう。
一方、住宅ローンを組まない選択をする場合、新築工事をストップして解体してもらう必要があるでしょう。すでにかかった工事費用と解体費用とを合わせて1,200万円以上かかっている場合には差額を支払わなければなりません。
このため、実際にはほとんどの場合住宅ローンを組む選択をすることになります。
つなぎ融資には団信がついているものとついていないものがあります。団信がついているとやや金利負担が大きくなることがありますが、数か月の間とはいえ何が起こるか分かりません。つなぎ融資を利用する際には、できるだけ団信のついたものを利用することをおすすめします。
住宅ローンの返済途中に死亡してしまった場合の手続きや注意点等、主に団信についてお伝えしました。
住宅ローンを組むときにあまり将来死んだときのことは考えないという方もいらっしゃるかもしれませんが、何十年にも及ぶ返済期間中は何があるか分かりません。しっかり団信の内容を理解したうえで住宅ローンを組むことをおすすめします。
住宅ローンを新規検討する際は複数の金融機関を比較することが大切。数百万円単位での節約の可能性もございます。住宅本舗比較サービスは簡単な希望や条件を入力するだけで、80金融機関の中から比較、最大6銀行に一括仮審査申し込みができるのでおすすめです。
人生最大の買い物だからこそ、しっかりと比較検討しましょう。