- 不労所得とは労働によらず得られる収入(所得)のこと。
- 不労所得は主に、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、雑所得」に区分される。
- それぞれの区分によって所得金額と税額の計算方法に違いがある。
- 確定申告に備え、不労所得に関する収支はしっかり記録しておく。
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これまで年末調整で税金の手続きを済ませていた人も、不労所得を得れば、多くのケースでは自身で確定申告を行い、所得の申告と納税を行わなければなりません。これから不労所得を作っていこうと考えている人は、どのような税金がかかるのかもしっかり確認しておきましょう。
不労所得とは、労働によらず得られる収入(所得)のことであり、預貯金の利子や株式の配当金、所有している不動産からの家賃収入などが該当します。
自身で作成したコンテンツ(ブログ、YouTube、書籍、イラストなど)から得られる広告収入や印税収入などは、最初の作成段階で労働(労力)を必要としますが、一度作成すれば継続的に収益をあげられるという意味では不労所得といえます。
また、公的年金や失業保険からの給付、宝くじの当選金なども不労所得に含まれます。
無職で不労所得だけで生活している人もいますが、不労所得で生活ができるほどの収入を得るのはそう簡単ではなく、本業を持ちながら不労所得を得ている人が一般的です。
不労所得も所得であるため、その金額に応じて税金がかかります。収入から税金が天引き(源泉徴収)される場合を除き、原則確定申告により自身で所得の申告と納税を行う必要があります。
どのような方法で不労所得を得たかによって所得の区分(種類)が変わり、税金の計算方法が違ってきます。主な不労所得が該当する所得区分としては次の5つがあります。
金融機関にお金を預けて受け取る利息や、国債や社債などの債券から得られる利子、公社債投資信託から得られる分配金などは、そのまま「利子所得」に該当します。
公社債投資信託
公社債のみで運用を行い、投資対象に株式を一切組み入れないことが約款に定められている証券投資信託のこと。実際の株式の組み入れの有無にかかわらず、株式を組み入れられる投資信託は「株式投資信託」にあたります。MMFやMRFなどが公社債投資信託の代表的な商品です。
預貯金の利息については、20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかりますが、受け取り時点で天引き(源泉分離課税)されるため、確定申告はできません。
国債や社債などの債券(特定公社債)から得られる利子、公社債投資信託から得られる分配金などについても、支払時に20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。
ただし、この所得は後述する上場株式等の配当と同じく申告分離課税の対象になり、確定申告を行うか、申告不要制度を利用して確定申告を行わないかを選択する必要があります。
出典:国税庁
個人が個人または法人にお金を貸して利息を受け取った場合、その利息は利子所得ではなく、「雑所得」または「事業所得」となります。事業所得に該当するのは、貸し手側が事業として反復継続的に貸し付けを行う場合、それ以外は雑所得です。
事業として行うには貸金業の登録が必要であり、無登録で行えば違法となり、処罰されます。いずれにしても源泉徴収は行われないため、原則確定申告が必要です。
保有している株式から得られる配当金や、株式投資信託の分配金などは「配当所得」に該当します。
配当所得=収入金額−株式などを取得するための借入金の利子
配当所得にかかる税金は、配当支払時に天引き(源泉徴収)されます。源泉徴収される税額は、上場株式等の配当とそれ以外の配当では次のように違います。
上場株式等の範囲
・金融商品取引所に上場している株式、ETF、REIT
・公募投資信託(公募株式投資信託・公募公社債投資信託)
・特定公社債(国債・地方債・外国国債・公募公社債)
配当所得は、「申告分離課税」「総合課税」「確定申告不要制度」の3つの方法があります。確定申告を行う場合、計算された税額が源泉徴収税額よりも多ければ差額が還付されます。
出典:国税庁
申告分離課税では税率は一律20.315%です。
総合課税では、配当所得を給与所得などの所得をあわせた総所得金額をもとに税額を計算します。住民税は一律10%ですが、所得税は課税所得に応じて5%から最高45%まで段階的に税率が高くなっていく超過累進税率が適用されるため、所得が多い人ほど税率が高くなります。
この税率の違いにより、おおむね課税所得が695万円以下の人は総合課税のほうが税負担が少なくなります。ただし、株式などの譲渡損失や繰越損失と損益通算できる場合など、申告分離課税を選択したほうが有利な場合もあります。
また、総合課税を選択した場合には課税所得が増え、扶養や配偶者控除、国民年金保険料などに影響するおそれもあるため注意も必要です。このような点を考慮した上で、総合課税と申告分離課税を比較し有利なほうを選択するとよいでしょう。
保有する不動産(家屋・土地など)を貸して得られる家賃収入、地代収入などは「不動産所得」に該当します。
不動産所得=総収入金額−必要経費(※)
(※)固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費など
不動産所得は、給与所得などほかの所得とあわせ、総合課税により課税されます。
保有する不動産の貸付けによる所得は、原則「不動産所得」に該当しますが、社会通念上、事業といえる規模で行われていると判断された場合には、所得金額を計算する際の取り扱いに違いが生じます。
建物の貸付けの場合、いわゆる「5棟10室基準」を満たしている場合には、原則事業として行われているものとされます。
5棟10室基準
独立した家屋の貸付けは、おおむね5棟以上である場合、貸間・アパートなどの貸付けは、独立した室数がおおむね10室以上である場合に、貸付けが事業として行われているものと取り扱われる。
事業として行われている場合 | それ以外の場合 | |
---|---|---|
賃貸用の固定資産を取り壊したり取り除いたりした場合の資産損失 | 全額を必要経費に算入 | その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入 |
賃料などの回収不能による貸倒損失 | 回収不能となった年分の必要経費に算入 | 収入に計上した年分までさかのぼり、回収不能になった所得がなかったものとして所得計算をやり直す |
青色申告の専業専従者給与、白色申告の事業専従者控除 | 適用あり | 適用なし |
青色申告特別控除 | 最高55万円(要件を満たす場合、最高65万円) | 最高10万円 |
アフィリエイトやブログ、YouTubeなどからの広告収入や、書籍や楽曲などの自身で作成したコンテンツからの印税収入、シェアリングサービスなど自身の持つモノを貸し出して得た収入などがあり、かつそれが事業として継続的に行っていると認められる場合には、「事業所得」に該当します。
事業として認められない場合は「雑所得」とされます。
事業所得=総収入金額(※1)−必要経費(※2)
(※1)事業から生ずる売上金額、その他経済的利益、自家用消費、受け取った保険金など
(※2)収入を得るために直接必要な売上原価、販売管理費、その他の費用
事業所得は、給与所得などほかの所得とあわせ、総合課税により課税されます。
事業所得と雑所得は、いずれも収入から必要経費を差し引くことができ、総合課税により課税されるという点は共通しています。ただし、事業所得は次のような仕組みが利用できる点で、雑所得にはないメリットがあります。
事業所得として所得を申告するには、その事業を自身が独立して行い、利益を得て継続反復的に行われていることが客観的に認められなければなりません。
事業実態があることはもちろん、個人事業開業届の提出、帳簿(売上や経費などの収支)の正確な記録は少なくとも行っておくべきでしょう。事業所得と雑所得のどちらで申告するかは、あらかじめ税務署や税理士などに相談しておくと安心です。
前述の事業所得と認められなかった収入や、公的年金などは「雑所得」に該当します。
公的年金等の雑収入=収入金額−公的年金等控除額
そのほかの雑所得=総収入金額
雑所得は、給与所得などほかの所得とあわせ、総合課税により課税されます。FXや先物取引による所得も雑所得に該当しますが、これらの所得はほかの雑所得とは別に、「申告分離課税」により課税されます(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)。
不労所得も所得である以上、基本的には税金がかかります。ただし、次のような不労所得には税金がかかりません。
預貯金の利子所得など源泉徴収によって税金の手続きが完了する場合や、サラリーマンなど年末調整の対象となる人で、給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告不要です。これ以外の場合で不労所得を得ていれば、自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告の手続き自体はそれほど難しいものではありませんが、不労所得による収入とそれを得るためにかかった必要経費などを自身で正確に計算しなければなりません。
いくら収入を得て、そのためにいくら必要経費がかかったのか分からないと、その計算ができなくなってしまいます。後で困らないよう、収支の記録は帳簿などにしっかり残しておきましょう。
確定申告は原則、不労所得を得た年の翌年2月16日から3月15日までの間に、確定申告書と必要書類を税務署の窓口または、郵送やe-Taxによる電子申告により提出して行います。確定申告書は国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」から作成できます。
詳細な手続きについては、次の記事を参照ください。
どのような方法で不労所得を得たかによって、税金がかかるかどうか、確定申告が必要になるかどうか、所得金額や税金の計算方法が違ってきます。確定申告が必要となる場合には、計算がスムーズに行えるように収支はしっかりと記録しておき、期日を守って忘れずに手続きを行いましょう。
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