- マンションは購入時だけでなく購入後にも税金がかかる
- 居住用住宅の税金には負担を軽減する控除・特例がある
- 控除・特例の適用を受けるための申請手続きを忘れずに
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マンションを購入するのであれば、税金は避けては通れない問題。住宅にかかる税金には負担を軽減する控除や特例も多く、税金で損をしないためにはその理解が欠かせません。この記事では、マンションに関連する税金と控除について解説します。
マンション購入時にかかる税金は以下の4種類です。
印紙税とは、印紙税法で定められた課税文書を作成する際にかかる税金のこと。マンション購入においては、物件購入のための「売買契約書」、住宅ローンを利用する場合の「金銭消費貸借契約者」が課税文書に該当します。納付は印紙を契約書等に貼り付けて行います。
登録免許税とは、不動産登記にかかる税金のこと。マンション購入に関係する登記には、「所有権保存登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」があります。
登記申請書に税額相当分の収入印紙を貼り付けて納付します。登記手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士に報酬とあわせて登録免許税相当額を支払うのが一般的です。
不動産取得税とは、不動産を取得した際にかかる税金のこと。不動産取得後6ヶ月〜1年半程度の間に都道府県から納税通知書が届き、それを使って金融機関で納付します。
消費税は、日本国内で事業として有料で行われる資産やサービスの取引にかかる税金のこと。ただし土地の売却や購入など消費税のかからない取引もあります。
個人がマイホームとして所有していたマンションを購入する場合、事業としての取引に該当しないため、建物購入代金にも消費税はかかりません。
消費税は2019年10月1日から10%へ引き上げられます。通常は引き渡し時点における税率が適用されますが、契約から引き渡しまでに長期間を要することの多い住宅では、6ヶ月前(2019年3月31日)までに契約が完了していれば、引き渡しが2019年10月1日以降となっても8%の税率が適用される特例があります。
マンション購入後にかかる税金は以下2種類です。
固定資産税とは、固定資産(土地や建物など)に課せられる税金のこと。その年の1月1日時点の所有者に納税義務があります。
都市計画税とは、市街化区域内にある固定資産に課される税金のこと。その年の1月1日時点の所有者に納税義務があります。
固定資産税と都市計画税の納税通知書は、ともに毎年4月頃に市町村(東京23区は都)から届き、年4回または1年分を一括して金融機関で納付します。
印紙税は契約書の種類と契約書記載の契約金額により、以下のように決まります。2020年3月31日までに作成される不動産売買契約書(不動産譲渡契約書)については軽減措置が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 | |
---|---|---|---|
10万円超 | 50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超 | 100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円超 | 500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超 | 1000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1000万円超 | 5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5000万円超 | 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超 | 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
(以下略) |
契約金額 | 本則税率 | |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | |
1万円超 | 10万円以下 | 200円 |
10万円超 | 50万円以下 | 400円 |
50万円超 | 100万円以下 | 1千円 |
100万円超 | 500万円以下 | 2千円 |
500万円超 | 1000万円以下 | 1万円 |
1000万円超 | 5000万円以下 | 2万円 |
5000万円超 | 1億円以下 | 6万円 |
1億円超 | 5億円以下 | 10万円 |
(以下略) |
参考:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで(国税庁)
登録免許税は、所有権の保存(新築時)・移転ついては固定資産税評価額、住宅ローンにかかる抵当権設定については債権金額(借入金額)に税率をかけて税額を計算します。
2020年3月31日までに個人が新築または取得する住宅用家屋は、一定の要件を満たせば軽減税率の対象となります。住宅用家屋に関する軽減措置の適用を受けるには、登記申請書に建物所在地の市区町村長の証明書(一定の要件を満たす旨の証明)を添付し、当該建物の新築または取得後1年以内に登記を受ける必要があります。
【家屋要件】
- 個人が自己居住用のために取得(新築)したものであること
- 住宅面積が家屋全体の90%を超えること
- 新築後または取得後1年以内に登記を受けるものであること
- 床面積が登記簿上50㎡以上あること
- 区分所有家屋(マンション等)の場合は、耐火建築物・準耐火建築物・低層集合住宅のいずれかに該当すること
上記のほかに、次の要件があります。
(所有権保存登記)
- 取得した家屋が建築後使用されたものでないこと
(所有権移転登記の場合)
- 取得の原因が「売買または競落」のいずれかであること
- 耐火建築物の場合は、取得の日から25年以内に建築された家屋であること(石造・れんが造・コンクリートブロック造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造)
- 耐火建築物以外の場合は、取得の日から20年以内に建築された家屋であること(木造・軽量鉄骨造)
登記種類 | 課税標準 | 本則税率 | 軽減税率 | |
---|---|---|---|---|
所有権保存登記 (新築時) |
固定資産税 評価額 |
0.4% | 0.15% (0.1%) |
|
所有権移転登記 | 土地 | 2.0% | 1.5% | |
建物 | 2.0% | 0.3% (0.1%) |
||
抵当権設定登記 (住宅ローン) |
債権金額 (借入額) |
0.4% | 0.1% |
*カッコ内は特定認定長期優良住宅、認定低炭素住宅等の条件を満たす場合の税率。土地の所有権移転登記の軽減措置は2021年3月31日まで(2019年税制改正)
不動産取得税にも住宅用家屋の取得における特例が設けられています。特例を受けるには取得日から60日以内に、「不動産取得税課税標準の特例適用申告書」を都道府県税事務所に対して提出し、申告が必要です。
土地 | 税額=(土地の固定資産税評価額×1/2×税率3%)-控除額 |
||
---|---|---|---|
控除額(いずれか大きいほう) ア)4万5千円 イ)(土地の固定資産税評価額×1/2÷地積)×住宅床面積の2倍(上限200㎡)×住宅の持分×3% |
|||
建物 | 新築 (築後1年以内の未使用住宅) |
税額=(住宅の固定資産税評価額-控除額)×税率3% |
|
控除額 1200万円 |
|||
中古 | 税額=(住宅の固定資産税評価額-控除額)×税率3% | ||
新築日 | 控除額 | ||
1981年7月1日〜1985年6月30日 | 420万円 | ||
1985年7月1日〜1989年3月31日 | 450万円 | ||
1989年4月1日〜1998年3月31日 | 1000万円 | ||
1998年4月1日以後 | 1200万円 |
固定資産税・都市計画税は、課税標準となる固定資産税評価額に税率をかけて税額を計算します。要件を満たす住宅用地・家屋は、市町村(東京23区は都)に申告することで課税標準軽減の特例措置を受けられます。
固定資産税 | 都市計画税 | ||
---|---|---|---|
【税額】 | 固定資産税評価額(課税標準) ×税率1.4%(標準税率) |
固定資産税評価額(課税標準) ×税率0.3%(上限) |
|
住宅用地 | 小規模住宅用地 (200㎡までの部分) |
課税標準を1/6に軽減 | 課税標準を1/3に軽減 |
一般住宅用地 (200㎡超の部分) |
課税標準を1/3に軽減 | 課税標準を2/3に軽減 | |
【要件】 | ・専ら人の居住の用に供する家屋の敷地に供されている土地
・その上に存在する家屋の総床面積の10倍までの土地 |
||
家屋 | 築5年まで(*1) | 床面積120㎡までの部分について、 税額を1/2に軽減 |
軽減なし(*3) |
築6年以上 | 軽減なし | ||
【要件】 | マンション(区分所有建物)の場合 床面積(*2) 50㎡以上280㎡以下 |
(*1)3階建て以上の耐火・準耐火建築物(マンション)の場合。3階建て以上の耐火・準耐火建築物である認定長期優良住宅については築7年まで、そのほかの建物については築3年まで。
(*2)専有部分の居住部分の床面積に、廊下や階段など共用部分の床面積を按分して加えた床面積。
(*3)市区町村によって条例で軽減措置を設けている場合もあります。
住宅ローンを利用して新築マンションを購入する場合、要件を満たせば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)により所得税が控除されます。
住宅ローン控除を受けるには、新築または未使用の住宅を取得し、次の要件をすべて満たす必要があります。
上記の要件を満たせば、永住権のない外国人なども住宅ローン控除を受けることができます。
住宅ローン控除が適用されると、下記の控除額がその年の所得税から差し引かれ、所得税が源泉徴収されている場合には税金の還付が受けられます。
所得税から控除しきれない場合には、翌年度分の住民税からも控除できます。ただし住民税から控除できるのは、前年分の所得税課税総所得金額の7%相当額(上限136,500円)までです。
各年の最大控除額:年末時点のローン残高等(*4)×1%
(*4)住宅ローン残高又は住宅の取得対価(上限4000万円)のうちいずれか少ないほう。認定長期優良住宅等に該当する場合の上限は5000万円。
控除期間は入居年から10年間。適用要件を満たしていない年については、控除期間内であっても控除を受けることはできません。
控除期間:入居年から10年間(2019年9月30日までの入居)
消費税率10%が適用される住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までに入居した場合には、負担軽減措置として控除期間が3年間延長されます。
各年の最大控除額 (2019年10月1日から2020年12月31日までの入居) |
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---|---|
1年目〜10年目 | 年末時点のローン残高等(*4)×1% |
11年目〜13年目 | ①年末時点のローン残高等(*4)×1% ②建物の取得価格(*5)の2%÷3 ①②いずれか少ないほうの金額 |
参考:消費税率引上げに伴う住宅に関する経過措置(国土交通省)
(*5)認定長期優良住宅等に該当する場合の上限は5000万円。
住宅ローン控除の適用を受ける最初の年には、控除を受けるために必要な書類を準備した上で必ず確定申告を行わなければなりません。
認定長期優良住宅等に係る特例の適用を受けるには、さらに「長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し」など要件を満たすことを証明するための書類が必要となります。
年末調整で所得税の申告・納税が完了するサラリーマンなど給与所得者であれば、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。
年末調整で控除を受けるには、税務署から届く「住宅借入金等特別控除証明書」「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を、年末調整の書類とあわせて勤務先に提出すればOKです。
住宅ローン控除は支払っている所得税等を控除する仕組みであり、収入が低いほど効果が小さくなってしまう欠点があります。
この欠点を補うものとしてすまい給付制度があります。自ら居住する建物を取得し、収入が一定以下などの要件を満たす方を対象に、およそ10〜30万円(消費税10%適用後は10〜50万円)が支給されます。
(*6)夫婦(妻は収入なし)及び中学生以下の子供が2人のモデル世帯において住宅取得する場合の夫の収入額の目安(参考:すまい給付金(国土交通省))
給付を受けるには、住宅取得後に給付申請書に必要書類を添付し、「すまい給付金申請窓口への持参」または「すまい給付金事務局への郵送」による申請が必要です。
マンションにかかる税金は負担とはなりますが、控除・特例によってその負担を軽減できます。
また住宅ローン控除の適用を受ければ所得税・住民税の負担が軽減され、マンションを購入には一定の節税効果も期待できます。
適用を受けるには申請手続きが必要な控除や特例も多いため、忘れずに行うようにしましょう。