- 確定申告のときに支払調書は添付する必要はない。
- 支払調書を税務署に提出するのは報酬を支払った側の義務。
- 支払調書が手元になくても確定申告はできる。
公開日:2021年2月4日
確定申告の時期が迫ると届き始める『支払調書』。発注者であるクライアントから送られるもので、個人事業主やフリーランスにはおなじみの書類です。
しかし、「確定申告のときに提出しなければいけないのかわからない」「支払調書を送ってくれないクライアントがいる」「手元に支払調書がないので確定申告ができない」と悩んでいる人は多いようです。
そこでこの記事では、個人事業主やフリーランスが受け取る『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』と確定申告の関連性について解説していきます。確定申告のときも慌てずに対処できるように、わかりやすくお伝えさせていただきます。
目次
支払調書とは、企業や特定の個人がフリーランスや個人事業主に対して報酬を支払ったことを証明する法定調書のこと。法定調書とは法律により税務署に提出が義務づけられている資料で、以下のようなものがあります。
結論から申しますと、報酬の支払いを受けた側、つまり仕事を受注した個人事業主やフリーランスは、支払調書の提出や確定申告書への添付は必要ありません。提出が必要なのは、『報酬を支払った側』です。
支払調書には、もとから添付義務はありません。提出や添付を迷う理由のひとつとして『源泉徴収票の添付義務』が挙げられます。源泉徴収票と支払調書は、ともに支払額や源泉徴収額が記載されているという点が似ており、混同している人が非常に多いのです。
詳しくは後述しますが、現在は源泉徴収票の添付も不要となっています。ちなみに支払いを受け取った側が確定申告時に支払調書の提出や添付をしても、メリットはまったくありません。
確定申告に必要な帳簿書類は、確定申告書の提出期限の翌日から5年間ないし7年間保存する必要があります。代表的な帳簿書類は以下のとおりです。
それに対して支払調書はこれらの帳簿書類に該当しませんので、保存義務はありません。ただ、その年の収支記録を残すという意味で、他の帳簿書類と一緒に保存しておくことをおすすめします。
支払調書は報酬を支払った側、つまり発注者である企業や個人事業主が発行します。報酬、料金、契約金及び賞金を支払った側の法人や個人事業主のことを、『支払調書の提出義務者』といいます。提出義務者は、支払調書の原本を翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。
支払調書には以下の内容を記載することが定められています。
提出義務者によって支払調書が税務署に提出されると、「この企業は〇〇という人に報酬を支払っている」ということを税務署が知ることになります。
それは報酬を受け取った人の住む市区町村にも共有され、この情報をもとに住民税が計算されます。会社には内緒で副業を行っている人は、副業分だけ増えた住民税からバレることがあるので注意が必要です。
支払調書と源泉徴収票は、ともに金銭の支払額や源泉徴収額を証明するための法定調書です。これらの違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
支払調書にはいくつか種類がありますが、個人事業主やフリーランスにとって身近なものが『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』です。
提出義務者は支払調書を税務署に提出する義務がありますが、報酬を受け取る側のために発行する義務はありません。支払調書を送ってくれるのは、じつは先方のご厚意や親切心によるところが大きいのです。相手によって支払調書をくれるところとくれないところがあるのはそのためです。
源泉徴収票は、提出義務者である雇用主が、従業員の給与などの支払額や源泉徴収した所得税額を証明するための法定調書です。源泉徴収票として一般的に知られているのが『給与所得の源泉徴収票』です。
給与の支払いをする雇用主は同じものを二部作成し、支払いを受け取る従業員と税務署に発行する義務があります。よって支払調書とは異なり、源泉徴収票は支払いを受けた側が必ずもらわなければならないものなのです。
国税庁の発表によると、2019年(平成31年)以後に提出する確定申告については、源泉徴収票の添付が不要になりました。国税に関する手続きの簡素化と納税者の利便性向上を図ることが目的で、平成31年度税制改正において制定されました。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して申告書などを送信する場合も同様に提出は不要です。
支払調書は提出が不要なので、支払調書がなくても確定申告はできます。しかし、報酬額や源泉徴収額がわからないと税金を納めすぎて損をしてしまうかもしれません。そこで、支払調書がなくて正確な金額がわからないときに試してみるべき対処方法を3つご紹介します。
契約を結ぶときの契約書は、書面の他に最近ではメールやPDFなどの電子契約も増えています。ほとんどの場合は契約内容のほかに報酬額や源泉徴収額についての記載があるはずですので、そちらで確認しましょう。
なお、契約書には保存義務があります。納品済だからといってすぐに破棄してはいけません。
「報酬額は覚えているけれど源泉徴収の額がわからない」という人は自分で計算してみましょう。源泉徴収は報酬の種類によっては差し引かれない場合もあります。また、報酬額によって計算方法も変わります。
報酬を支払う側が企業または2人以上の従業員を雇用している個人事業主で、受け取る報酬が以下に当てはまる場合は源泉徴収が差し引かれています。
源泉徴収額の税率は、受け取った報酬額によって変わります。報酬から差し引かれる源泉徴収額を表にまとめました。
報酬額 | 源泉徴収額 |
---|---|
100万円以下の場合 | 支払われる報酬額×10.21% |
100万円超の場合 | (支払われる報酬額‐100万円)×20.42%+102,100円 |
例:150万円の報酬を受け取ったとき
報酬額がわかっているならば、銀行振込の場合は上記の計算式を利用して入金記録から源泉徴収額を算出することができます。しかし、手渡しで受け取りの記録が残っていないときは、そもそも源泉徴収がされていない場合もあります。その場合は支払先に直接確認してください。
支払調書を紛失してしまったときは、再発行を依頼するという手段もあります。しかし本来ならば、支払調書は報酬を支払った側のご厚意でいただけるもの。こちらの不手際をきちんと謝罪したうえで、再発行をお願いするようにしましょう。
確定申告のときに支払調書はいらないことの理由について解説させていただきました。支払調書は報酬を支払った側に提出義務がありますが、報酬を受け取る側に添付の必要はありません。
また、報酬を受け取る側のために発行する義務もありません。支払調書が発行されず手元にないときは、契約時の内容を控えておきましょう。
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