- 住宅ローン減税は所得税と住民税の減税であり、そもそも納税していなければ還付は受けられない。
- 内法面積と壁芯面積の違いや、繰上返済により条件を満たさなくなることがないよう注意が必要。
- 中古住宅でも適用を受けられるが証明書などが必要となるため、事前に費用などを確認しておこう。
公開日:2020年7月23日
住宅ローン減税は、マイナス金利の導入により非常に低い金利を維持している住宅ローン金利に対し、さらに税金の還付を受けられるというもので、住宅取得を考えている方にとっては非常にうれしい制度です。
制度の適用要件自体はそこまで難しいものではないのですが、ちょっとしたことで適用を受けられなくなる場合がある点に注意が必要です。本記事では住宅ローン減税について、その仕組みや適用条件、手続き方法などをわかりやすく解説していきます。
まずは、そもそも住宅ローン減税とはどのようなものなのか、その仕組みや意味について解説していきたいと思います。
住宅ローン減税とは、一定の条件を満たしたうえで、住宅ローンを組んで住宅を購入した場合に利用できる制度で、「最大13年間、住宅ローン年末残高の1%、所得税と住民税から控除を受けられる」というものです。
住宅ローン年末残高の1%ですから、例えば住宅ローン年末残高が3,000万円あった場合には、3,000万円×1%=30万円分となり、30万円×13年間=360万円相当の税額控除を受けられます(ただし、4,000万円が上限)。
冒頭でお伝えしたように、日本ではアベノミクスにより異次元の金融緩和政策が取られており、金利はずっと低い水準を維持したままです。
特に、住宅ローンの中でも金利の低い変動金利では、金利が1%を切るものも多く、場合によっては利息を払うどころか、還付のほうが多い状況を生み出すこともできるようになっています。
所得税の計算において、住宅ローン控除以外にも医療費控除などいくつかの制度が用意されています。これら控除は所得控除と税額控除に分類されます。
税金の計算についてざっくりお伝えすると、収入から経費を差し引いた所得から各種控除を差し引いたものに税率をかけて、納税額を算出します。
所得控除の場合、収入から経費を差し引いた所得から控除しますが、税額控除の場合、税率をかけた後の課税所得金額から直接控除できるため、非常に納税額の軽減効果の高いものとなっています。
簡単に表すと、100万円の所得がある方に10%の税率で税金が課される場合、10万円の所得控除だと100万円ー10万円×10%=9万円が納税額となりますが、10万円の税額控除であれば100万円×10%ー10万円=0円と計算できるのです。
住宅ローン減税は所得税と住民税に対する減税のため、そもそも所得税や住民税を納めていなければ還付を受けることはできません。なお、住宅ローン減税はここ数年拡充がなされていますが、これは消費税の増税に対する、住宅取得者の負担緩和という側面があります。
住宅取得時には、住宅ローン減税以外にすまい給付金を受けることができますが、こちらは所得が高いほど給付額が小さくなっています。
つまり、すまい給付金の規定より所得が少ない方は、すまい給付金で消費税の増税分のカバーを受けることができ、一方で所得の高い方はすまい給付金を満額受けられない代わりに住宅ローン控除の恩恵を受けやすくなっているのです。
なお、住宅ローン減税では減税対象額について、最初に所得税から差し引いた後、なお残額がある場合には住民税から差し引かれますが、住民税からの控除額については13.65万円という限度額が設けられています。
例えば、3,000万円の住宅ローン年末残高がある方が、所得税10万円、住民税20万円納めている場合、減税を受けられるのは所得税10万円、住民税13.65万円となり、合計23.65万円しか減税を受けられない計算となる点に注意が必要です。
住宅ローン減税の適用を受けるには、適用要件を満たす必要があります。ここでは、住宅ローン減税の対象や適用要件を見ていきましょう。
住宅ローン減税の基本的な適用要件としては、以下のようなものが挙げられます。
いずれもそこまで難しい要件ではないといえるでしょう。しかし、注意しなければならないこともあります。
住宅ローン減税の適用を受けるには、取得した住宅に取得の日から6カ月以内に自ら居住し、引き続き年末まで住み続ける必要があります。このため、別荘やセカンドハウスの場合には住宅ローン減税を利用することはできません。
ただし、単身赴任の場合など、やむを得ない場合には申請すれば適用を受けられるという制度が設けられています。この場合、取得の日から6カ月以内に親族が住まなければならないことになっています。
床面積については壁芯面積と内法面積の違いについて理解しておく必要があります。壁芯面積とは、壁の中心線を結んだ部分の面積のことで、内法面積とは壁の内側を結んだ面積のことを指します。このため、壁芯面積は内法面積より広い面積で表されることになります。
注意しなければならないのは、登記簿謄本などでは内法面積で面積が記載されるのにも関わらず、マンションのパンフレットなどでは壁芯面積で記載されていることがあるということです。
住宅ローン控除の適用要件は内法面積で判断されるため、マンションのパンフレットに記載の壁芯面積では適用要件を満たしていたのに、実際には内法面積では50㎡を満たしていなかったということがないようにしなければなりません。
住宅ローンの借入期間については、控除を受けている間、ずっと借入期間が10年以上なければならない点に注意が必要です。
住宅ローンは借入の途中で繰上返済することができますが、繰上返済の結果、すでに返済した期間と残りの期間が合計で10年を満たさなくなると、その年以降の住宅ローン控除は受けられなくなってしまいます。
住宅ローン減税は新築だけでなく中古住宅も適用対象となります。ただし、中古住宅については「耐震性能を有している」必要があります。耐震性能を満たしているかについては、築年数が規定の年数以下となっているか、一定の証明書を取得している必要があります。
中古住宅で住宅ローン減税の適用を受ける場合、以下の条件を満たしておく必要があります。
上記を満たしていない場合、次の証明書を取得しなければなりません。
耐震性能を有していることを証する証明書には以下のようなものがあります。
いずれの場合も、証明書の取得には費用がかかることがあるため、事前にどの証明書を取得するとよいのか、また証明書を取得するための費用はいくらかを確認しておくことが大切です。
住宅ローン減税について注意しなければならないこととして、マイホームを売却したときの特例と重複適用できないということが挙げられます。
不動産を売却すると、その利益額に応じて税金を納める必要がありますが、マイホームを売却したときには3,000万円特別控除など、税額を安く抑えるための特例がいくつか用意されています。こうした特例と、住宅ローン減税は重複適用できないことになっています。
つまり、マイホームを売却して新しく住宅を購入するようなケースで、マイホームを売却したときの特例の適用を受けていた場合、新しく購入する住宅では住宅ローン減税の適用を受けられないのです。
マイホームを売却したときの特例の内、3,000万円特別控除は所得から3,000万円を差し引ける効果の高い特例となっているため、この特例の適用を受けるのと、住宅ローン減税の適用を受けるのとどちらを選べばよいかを慎重に判断する必要があるといえるでしょう。
住宅ローン減税の適用を受けるにはどのような手続きを取る必要があるのでしょうか?ここでは、住宅ローン減税の適用を受けるための手続きについて解説していきます。
住宅ローン減税の適用を受けるためには、住宅を取得した年の翌年2月16日~3月15日までの間に、税務署で所得税の確定申告の手続きをする必要があります。
特にサラリーマンの方の場合、毎年会社が源泉徴収されていることから、確定申告の手続きをどのようにすればよいか分からないと不安に思う方も多いようです。
とはいえ、会社から交付される源泉徴収票と、住宅ローンを組んだ金融機関から送付される住宅借入金等特別控除証明書を持って、税務署で手続きするだけなのでそこまで難しいものでもありません。
あらかじめ税務署でIDとパスワードを交付してもらえば、自宅でインターネットを使って確定申告することもできるようになりました。なお、自営業の方の場合、いつもの確定申告の金額から、住宅ローン減税の控除額を差し引くだけなので特に身構える必要もないでしょう。
ちなみに、所得税の確定申告をすれば、住民税の控除については自動で計算してくれます。
サラリーマンの方の場合、住宅ローンを組んだ翌年に確定申告してしまえば、後は毎年会社にお願いして源泉徴収で済ませてしまうことができます。ただし、源泉徴収を実施していない会社や自営業の方の場合、2年目以降も確定申告する必要があります。
住宅ローン減税の適用を受けるための条件や適用対象、注意点などをお伝えしました。
住宅ローン減税は非常にお得な制度であるだけに、うっかり条件を満たさない住宅を購入してしまったといったことのないよう、本記事の内容を事前によく確認しておくようにしましょう。
住宅ローンを新規検討する際は複数の金融機関を比較することが大切。数百万円単位での節約の可能性もございます。住宅本舗比較サービスは簡単な希望や条件を入力するだけで、80金融機関の中から比較、最大6銀行に一括仮審査申し込みができるのでおすすめです。
人生最大の買い物だからこそ、しっかりと比較検討しましょう。