- ボーナスが出ない会社は全体の約3割。
- 賞与を支給しなくても違法ではない。
- ボーナスは会社の業績に左右されるのでアテにし過ぎないほうがいい。
公開日:2020年8月25日
会社に勤める人にとって、ボーナスは働くモチベーションにつながるものです。しかし、ボーナスが出ない会社もありますから、特に就職や転職の際には気を付けておきましょう。
今回は、ボーナスが出ない会社の割合やボーナスをもらえない理由について説明します。
目次
ボーナスはどこの会社でも出るわけではなく、ボーナスが出ない会社も決して珍しくはありません。どのくらいの割合の会社でボーナスが出ないのかを見てみましょう。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、無作為に選んだ事業所から、夏季賞与(夏のボーナス)、年末賞与(冬のボーナス)の支給状況を調査しています。
毎月勤労統計調査では、2019年(令和元年)に夏のボーナスが支給された会社の割合は67.9%、冬のボーナスが支給された会社の割合は73.2%となっています。
夏と冬とで支給状況は違い、冬のボーナスのほうが支給されている会社は多いものの、全体で約3割程度の会社でボーナスが出ていないことがわかります。
なお、ボーナスが支給される場合の平均額については以下の記事をご参照ください。
ボーナスが出るかどうかは、業種によっても差があります。支給される会社が多い業種別ランキングは、次のようになっています。
順位 | 業種 | 支給される事業所の割合(%) |
---|---|---|
1 | 複合サービス事業 | 96.1 |
2 | 金融業・保険業 | 90.4 |
3 | 電気・ガス業 | 88.2 |
4 | 教育・学習支援業 | 78.0 |
5 | 医療・福祉 | 76.1 |
6 | 学術研究等 | 74.4 |
7 | 不動産・物品賃貸業 | 73.0 |
8 | その他のサービス業 | 73.0 |
9 | 製造業 | 72.7 |
10 | 運輸業・郵便業 | 71.1 |
11 | 情報通信業 | 67.4 |
12 | 卸売業・小売業 | 66.8 |
13 | 建設業 | 65.5 |
14 | 鉱業・採石業等 | 61.4 |
15 | 生活関連サービス等 | 51.0 |
16 | 飲食サービス等 | 46.6 |
出典:厚生労働省毎月勤労統計調査 令和元年9月分結果速報より筆者作成
順位 | 業種 | 支給される事業所の割合(%) |
---|---|---|
1 | 複合サービス事業 | 97.3 |
2 | 電気・ガス業 | 91.5 |
3 | 金融業・保険業 | 89.1 |
4 | 鉱業・採石業等 | 84.0 |
5 | 教育・学習支援業 | 82.8 |
6 | 医療・福祉 | 82.1 |
7 | 学術研究等 | 81.8 |
8 | 情報通信業 | 79.7 |
9 | 運輸業・郵便業 | 78.7 |
10 | 不動産・物品賃貸業 | 77.6 |
11 | その他のサービス業 | 76.8 |
12 | 製造業 | 76.5 |
13 | 建設業 | 76.4 |
14 | 卸売業・小売業 | 69.9 |
15 | 生活関連サービス等 | 55.6 |
16 | 飲食サービス等 | 53.8 |
出典:厚生労働省毎月勤労統計調査 令和2年2月分結果速報より筆者作成
上記のランキングを見ると、生活関連サービスや飲食サービスでは夏・冬ともボーナスが出る会社が少なく、半数程度しかボーナスが出ていないことがわかります。
ボーナスが出ない会社が3割というのは民間企業の話で、公務員の場合にはボーナスは必ず出ます。
公務員のボーナスは、期末手当・勤勉手当と呼ばれます。国家公務員の場合には法律で毎年ボーナスの金額が決まり、地方公務員の場合には国家公務員に準拠して条例によりボーナスの金額が定められます。
次に、会社の規模によるボーナスの支給状況の違いを見てみましょう。
事業所の規模別のボーナス支給状況は、次の表のようになっています。
事業所の規模 | 夏季賞与が支給される事業所の割合(%) | 年末賞与が支給される事業所の割合(%) |
---|---|---|
500人以上 | 96.4 | 97.8 |
100~499人 | 93.4 | 95.2 |
30~99人 | 89.4 | 91.3 |
5~29人 | 64.2 | 70.2 |
出典:厚生労働省毎月勤労統計調査 令和元年9月分結果速報、令和2年2月分結果速報より筆者作成
上記の表からは、規模が小さくなるほどボーナスが支給される会社の割合が少なくなっていることがわかります。
大阪シティ信用金庫が2020年6月に大阪府内の取引先中小企業(有効回答数991社)に対して行ったアンケート調査によると、2020年の夏季ボーナスを支給する企業の割合は50.4%となっています。
大阪府のみのデータになりますが、夏季ボーナスの支給企業の割合は、前年度の59.8%に比べて大幅に低下しています。2020年は新型コロナウイルスの影響により、中小企業が大きく打撃を受けていることがうかがえます。
出典:大阪シティ信用金庫「中小企業の2020年夏季ボーナス支給予定」より抜粋
なお、ボーナスを支給しない会社でも少額の手当を支給するところは多く、全く支給なしの会社は17.8%です。
コロナで営業自粛を余儀なくされた飲食店を含む小売業では、少額の手当も支給しない会社が49.2%となっており、前年度より23.1ポイント増加しています。
ボーナスが支給される会社で働いている人でも、全員が支給の対象になるわけではなく、ボーナスがもらえない人もいます。
ボーナスは勤務実績を評価して支給されるものです。一般に、10月~3月までの実績が夏のボーナスに、4月~9月までの実績が冬のボーナスに反映されます。
新卒1年目の夏のボーナスは、評価の対象となる期間がありません。ただし、寸志という名目で少額の支給が行われることが多くなっています。
産労総合研究所が行っている2020年度決定初任給調査によると、アンケートに回答した355社のうち85.6%の会社が、新入社員にも何らかの夏季賞与を支給しているという結果が出ています。支給額の平均は、大学卒が9万6,735 円、高校卒が7万4,307 円となっています。
出典:2020年度 決定初任給調査 新入社員の夏季賞与(産労総合研究所)
ボーナスの有無は、勤務形態によっても変わります。正社員はボーナスの対象になりますが、パートやアルバイト、派遣などの非正規雇用者は対象にならないこともあります。
なお、2020年4月より、「同一労働同一賃金」の制度が開始しました。今後は非正規でも正社員と同等の働き方をしている場合には、ボーナスの支給を受けられることになります。
同じ会社において、正規雇用で働いている人と非正規雇用で働いている人の間の不合理な待遇差の解消を目指す制度です。
従来のパートタイム労働法が、有期雇用労働者も対象に含んだ「パートタイム・有期雇用労働法」という形で改正され、次の1~3について整備されています。
ボーナスが出ないと、働くモチベーションも低下するという人が多いでしょう。ですが、ボーナスを支給しなくても法律違反にはなりません。
「賞与」も労働基準法でいう「賃金」に含まれます。しかし、賃金の中でも給与は月々の支払いが義務付けられていますが、賞与は支払い義務がありません。
賞与は支払い義務があるものではないので、会社の業績によってはボーナスが出ないこともあり得ます。利益が出ていないのに従業員にボーナスを払っていれば、会社が倒産してしまうことにもなりかねません。
会社が賞与を支給する場合には、就業規則で支給金額などについて具体的に定めておかなければなりません。
逆に言うと、就業規則で賞与について明確に定められているにもかかわらず、何の告知もなくボーナスがいきなり出なくなった場合には、会社側の契約違反です。このような場合には、就業規則を根拠に、会社側にボーナスを払ってもらうよう交渉しましょう。
ボーナスなしの会社も3割程度あることがわかりました。では、ボーナスが出ない会社とはどんな会社なのか、一般的な傾向を分析します。
ボーナス支給状況のデータからもわかるように、規模の大きい会社ほどボーナスが出ています。中小企業や個人事務所に勤務している場合には、ボーナスが出ないことも珍しくありません。
業種で言えば、飲食店や生活関連サービスではボーナスがあまり支給されていません。
飲食業界の場合、福利厚生の整っている大手飲食チェーンではボーナスの制度もあるのが普通です。一方、飲食業界には小規模な個人商店もたくさんあり、こうした店舗では福利厚生が整っていないことがあります。生活関連サービスでも同様です。
海外ではボーナスの習慣がありません。そのため、外資系企業ではボーナスなしのところも多くなっています。
外資系企業では、インセンティブの制度を設けているところがあります。インセンティブとは、個人の成績や目標の達成率に応じて支払われる報酬です。ボーナスのように、払うと決めたら全員に払わないといけないようなものではありません。
年俸とは年額で定められた給料という意味です。年俸制の場合には、1年間に払う給与を決定し、年間の給与を12分割して毎月払うことになります。年俸制の会社では、ボーナスは支給されません。
外資系の会社は年俸制が多いですが、日本の会社でも年俸制のところはあります。
上述のとおり、年俸制の会社ではボーナスがありません。年俸制のメリットとデメリットをチェックしておきましょう。
年俸制は、ボーナスも含んだ年収が決まっているようなものです。会社の業績にかかわらず一定の年収が確保されるため、長期的な計画が立てやすくなります。
一方、月給制の場合には、毎月の給料が決まっており、それとは別にボーナスが出ます。会社の業績が悪くなれば、期待していたボーナスがもらえず、想定していたよりも年収が少なくなる可能性もあります。
年俸制を導入している会社では、成果主義のところが多くなっています。成果が年俸に反映されることになるため、成果を出せなかった場合には年俸ダウンということもあり得ます。
また、年俸制では1年ごとに給料が決まるため、頑張った成果が反映されるのが遅くなってしまうというのもデメリットと言えるでしょう。
ボーナスは当然出るものと思っていると、ボーナスが出なくて慌てることになります。ボーナスをアテにしなくてもすむように、日頃からお金の管理をしておきましょう。
ボーナスはどこの会社でも当たり前に出るわけではありません。通常、求人情報でも賞与の有無は記載されていますので、忘れずに確認しておきましょう。
クレジットカードの買い物したときに、ボーナス一括払いにすると、手数料無料で支払い時期をボーナス時まで延ばすことができます。
ボーナス一括払いにしておけば、高額の買い物をしてもボーナスで払えるので便利です。しかし、ボーナスが予想よりも少なかったり、全く支給されなかったりした場合には、支払いができなくなってしまう可能性があります。
ボーナスは必ず出るものではないということを認識しておき、安易にボーナス払いにしないようにしましょう。
将来の目標のために、貯金しておくことは大切です。ボーナスがあれば貯金しやすいですが、ボーナスなしなら毎月の給料からコツコツと貯金しておかなければなりません。
毎月の給料を全部使ってしまい、全く手元に残らないという人は、お金の使い方を見直す必要があります。不必要な固定費を減らすなどして、ボーナスがなくても貯金できる状態にしておきましょう。
給料やボーナスの貯金の仕方については以下の記事に詳しく書いていますので、参考にしてください。
ボーナスは出るのが当たり前ではありません。ボーナスが支給される会社は7割程度で、業績不振により支給されないこともあります。
ボーナスは不確定なものですから、あまりアテにし過ぎることなく、お金の使い方を考えましょう。
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