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意外と知らない人が多い、産前産後の保険料の仕組みとは?

意外と知らない人が多い、産前産後の保険料の仕組みとは?

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著者名

岡崎 隆宏

岡崎 隆宏

社会保険労務士、1級FP技能士、CFP

社会保険労務士・1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®。 1児の父親として育児に携わりながら、妻の妊娠・出産に立ち会う中で、妊娠・出産における社会保障制度についてどうあるべきかについて真剣に考える。 現在は、社会保障とお金の関係について講演やブログで情報を発信することで、一人でも多くの人にお金と社会保障について正しい認識を持ってもらうための活動を行っている。 得意分野は「妊産婦等の社会保障制度」「年金」「ワークライフバランス」「家計見直し」など。

この記事のポイント

  • 産前産後休業期間中の保険料免除制度の仕組みを理解する
  • 育児休業期間中の保険料免除制度の仕組みを理解する
  • 具体的な保険料免除額から、家計への影響をイメージすることができる

社会保険は毎月決まった保険料を支払わなけれなばりません(基本的には、会社との折半負担となります)が、妊娠・出産の時期や、育児休業中などのように、支払うことが困難な状況もあります。そんな場合には、保険料を免除する規定があります。

毎月給料等から控除されている保険料の額は、1月づつでは大きな金額ではないのですが、年間にすると大きな金額になってきます。そう考えたときに、保険料が免除される規定があるのであれば、賢く利用したいと思う人が多いと思います。

今回は、保険料が免除される代表的な時期である「産前産後休業」と「育児休業」のそれぞれの期間における保険料の免除等に関する仕組みなどについて解説していきます。

 

産前産後休業期間中は保険料の負担が免除されます

産前産後休業期間中は、事業主が保険者等に対して、申し出を行うことで保険料の負担が免除とされます。なお、産前産後休業を開始したあとからでも、申し出を行うことで、保険料については期間をさかのぼって免除することが出来ます。

 

産前産後休業期間中の取り扱い

産前産後休業期間中の保険料については、産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、保険者等(協会けんぽ・健康保険組合などのことです。以下同じ)に申し出をすれば、その被保険者が「産前産後休業を開始した日の属する月からその産前産後休業を終了した日の翌日の属する月の前月までの期間」について、保険料が免除されます。

つまり、産前産後休業期間中の健康保険の保険料免除については、被保険者本人が直接保険者等に保険料免除についての申し出を行うのではなく、会社が保険料免除についての申出を行うことになり、その上で、被保険者が「産前産後休業を始めた日の属する月」から「産前産後休業が終わった日の翌日の属する月の前月までの期間」の保険料について免除される仕組みとなります。

  • 【具体例】7月1日から産前産後休業を開始し、10月31日に終了した場合

産前産後休業を開始した7月1日の属する月である「7月分」から、産前産後休業が終了となる10月31日の翌日である11月1日の属する月の前月(つまり「10月分」)までの「7月・8月・9月・10月」の4か月分については、保険料が免除されるという仕組みとなります。

 

産前産後休業期間中の保険料免除の注意点

産前産後休業期間中の保険料免除に関する規定については、基本的に健康保険・厚生年金保険共通ですが、以下の点については注意が必要です。

  • 健康保険については、任意継続被保険者(会社等を退職して、健康保険の被保険者ではなくなったが、その後も継続して健康保険に任意で加入している人のこと。以下同じ)等である人は、保険料免除はされない。
  • 事業主の申出が産前産後休業開始よりも遅くなったとしても、産前産後休業開始日の属する月から保険料免除が適用される。
  • 保険料免除を受ける場合、被保険者の支払う分だけでなく、事業主の負担する分も免除となる。

 

育児休業中の世帯であれば、最長で3歳になるまでの期間の保険料が免除となります

育児休業等を取得している場合は、その育児休業等をしている期間の保険料が免除されます。

法令では、「育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出をすることで、育児休業をしている期間中の保険料は免除される」と規定されています。

つまり、産前産後休業の保険料免除の規定と同様に、お勤めの会社から保険者等に申し出をする事で、その対象となっている被保険者期間に係る保険料が免除されます。

育児休業中の保険料が免除される期間については、育児休業を開始した日の属する月から、育児休業を修了した日の翌日が属する月の前月までの期間とされています。

【育児休業期間中の保険料免除の規定に関する注意点】

  • 保険料免除対象となる「育児休業等」とは、育児・介護休業法に規定する育児休業、育児休業に準ずる休業等をいい、子が3歳に達するまでの育児のための休業を言います。
  • 任意継続被保険者等については、育児休業期間中の保険料免除の規定は適用されません。(健康保険のみ)
  • 事業主の申出が遅れた場合であっても、実際に育児休業を開始した時点から保険料免除に関する規定は適用されます

【具体例】平成28年6月5日から育児休業等を開始し、平成29年6月30日まで育児休業等を修了した場合

育児休業等が開始した日が6月5日となるため、6月5日の属する月である「平成28年6月」から、育児休業等の終了日である平成29年6月30日の翌日である平成29年7月1日が属する月の前月である「平成29年6月」までの期間が育児休業期間中の保険料免除期間となります。

 

具体的に免除されている保険料の目安はどれくらい?

産前産後休業期間、育児休業期間のそれぞれの期間における保険料免除の規定の適用要件や内容について確認しましたが、実際にはどれくらいの保険料が免除されることになるのでしょうか?

 

産前産後休業の場合

【前提条件】

標準報酬月額:30万円

産前産後休業の期間:平成28年12月5日~平成29年3月31日

保険料率:(健康保険)10%・(厚生年金保険)18.3%

  • 保険料免除対象期間:平成28年12月分~平成29年3月までの4か月分
  • 健康保険の保険料免除額(給料等から控除される分):30万円×10%×1/2=15,000円/月
  • 厚生年金保険の保険料免除額(給料等から控除される分):30万円×18.3%×1/2=27,450円/月
  • 1月当たりの保険料免除総額:15,000円+27,450円=42,450円/月
  • 産前産後休業の保険料免除総額:42,450円×4ヶ月分(平成28年12月~平成30年3月の4か月分)=169,800円

 

育児休業等の休業期間の場合

【前提条件】

標準報酬月額:30万円

育児休業期間:平成28年9月15日~平成30年8月31日

保険料率:(健康保険)10%・(厚生年金保険)18.3%

  • 保険料免除対象期間:平成28年9月分~平成29年8月分までの12月分
  • 健康保険の保険料免除額(給料等から控除される分):30万円×10%×1/2=15,000円/月
  • 厚生年金保険の保険料免除額(給料等から控除される分):30万円×18.3%×1/2=27,450円/月
  • 1月当たりの保険料免除総額:15,000円+27,450円=42,450円/月
  • 産前産後休業の保険料免除総額:42,450円×12ヶ月分(平成28年9月~平成29年8月の12か月分)=509,400

 

まとめ

産前産後休業期間中や育児休業期間中のように、保険料の支払いが困難になる状況においては、保険料を免除する規定はあります。しかし、実際に免除の規定の適用を受けようとする場合、被保険者本人が保険料免除の規定の手続きをするのではなく、会社から申し出を行わなければならないという点で、他の制度とは異なります。

また、実際に申出をした時期が休業開始時期を過ぎてから行った場合(いわゆる、「事後報告」)となっても、期間をさかのぼって、保険料免除が受けられますので、出産予定日が早まったことで、産前産後休業を開始した時期が早まってしまった場合であっても、育児休業を開始した時期よりも会社が育児休業期間の保険料免除の申請の申出を行った時期が遅かった場合であっても、問題ないということです。

実際のところ、会社もその期間分の保険料を負担しなくてもよいという意味では、メリットが大きいため、産前産後休業や育児休業の取得をしようとする場合には、早めに連絡するように言われることが多いと考えられます。

言い換えてみると、これらの申出を行うことで得られる双方のメリットはかなり大きいので、忘れずに手続きをすることが望まれます。

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