- 産前産後休業期間中の保険料免除制度の仕組みを理解する
- 育児休業期間中の保険料免除制度の仕組みを理解する
- 具体的な保険料免除額から、家計への影響をイメージすることができる
公開日:2018年12月24日
社会保険は毎月決まった保険料を支払わなけれなばりません(基本的には、会社との折半負担となります)が、妊娠・出産の時期や、育児休業中などのように、支払うことが困難な状況もあります。そんな場合には、保険料を免除する規定があります。
毎月給料等から控除されている保険料の額は、1月づつでは大きな金額ではないのですが、年間にすると大きな金額になってきます。そう考えたときに、保険料が免除される規定があるのであれば、賢く利用したいと思う人が多いと思います。
今回は、保険料が免除される代表的な時期である「産前産後休業」と「育児休業」のそれぞれの期間における保険料の免除等に関する仕組みなどについて解説していきます。
産前産後休業期間中は、事業主が保険者等に対して、申し出を行うことで保険料の負担が免除とされます。なお、産前産後休業を開始したあとからでも、申し出を行うことで、保険料については期間をさかのぼって免除することが出来ます。
産前産後休業期間中の保険料については、産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、保険者等(協会けんぽ・健康保険組合などのことです。以下同じ)に申し出をすれば、その被保険者が「産前産後休業を開始した日の属する月からその産前産後休業を終了した日の翌日の属する月の前月までの期間」について、保険料が免除されます。
つまり、産前産後休業期間中の健康保険の保険料免除については、被保険者本人が直接保険者等に保険料免除についての申し出を行うのではなく、会社が保険料免除についての申出を行うことになり、その上で、被保険者が「産前産後休業を始めた日の属する月」から「産前産後休業が終わった日の翌日の属する月の前月までの期間」の保険料について免除される仕組みとなります。
産前産後休業を開始した7月1日の属する月である「7月分」から、産前産後休業が終了となる10月31日の翌日である11月1日の属する月の前月(つまり「10月分」)までの「7月・8月・9月・10月」の4か月分については、保険料が免除されるという仕組みとなります。
産前産後休業期間中の保険料免除に関する規定については、基本的に健康保険・厚生年金保険共通ですが、以下の点については注意が必要です。
育児休業等を取得している場合は、その育児休業等をしている期間の保険料が免除されます。
法令では、「育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出をすることで、育児休業をしている期間中の保険料は免除される」と規定されています。
つまり、産前産後休業の保険料免除の規定と同様に、お勤めの会社から保険者等に申し出をする事で、その対象となっている被保険者期間に係る保険料が免除されます。
育児休業中の保険料が免除される期間については、育児休業を開始した日の属する月から、育児休業を修了した日の翌日が属する月の前月までの期間とされています。
【育児休業期間中の保険料免除の規定に関する注意点】
【具体例】平成28年6月5日から育児休業等を開始し、平成29年6月30日まで育児休業等を修了した場合
育児休業等が開始した日が6月5日となるため、6月5日の属する月である「平成28年6月」から、育児休業等の終了日である平成29年6月30日の翌日である平成29年7月1日が属する月の前月である「平成29年6月」までの期間が育児休業期間中の保険料免除期間となります。
産前産後休業期間、育児休業期間のそれぞれの期間における保険料免除の規定の適用要件や内容について確認しましたが、実際にはどれくらいの保険料が免除されることになるのでしょうか?
【前提条件】
標準報酬月額:30万円
産前産後休業の期間:平成28年12月5日~平成29年3月31日
保険料率:(健康保険)10%・(厚生年金保険)18.3%
【前提条件】
標準報酬月額:30万円
育児休業期間:平成28年9月15日~平成30年8月31日
保険料率:(健康保険)10%・(厚生年金保険)18.3%
産前産後休業期間中や育児休業期間中のように、保険料の支払いが困難になる状況においては、保険料を免除する規定はあります。しかし、実際に免除の規定の適用を受けようとする場合、被保険者本人が保険料免除の規定の手続きをするのではなく、会社から申し出を行わなければならないという点で、他の制度とは異なります。
また、実際に申出をした時期が休業開始時期を過ぎてから行った場合(いわゆる、「事後報告」)となっても、期間をさかのぼって、保険料免除が受けられますので、出産予定日が早まったことで、産前産後休業を開始した時期が早まってしまった場合であっても、育児休業を開始した時期よりも会社が育児休業期間の保険料免除の申請の申出を行った時期が遅かった場合であっても、問題ないということです。
実際のところ、会社もその期間分の保険料を負担しなくてもよいという意味では、メリットが大きいため、産前産後休業や育児休業の取得をしようとする場合には、早めに連絡するように言われることが多いと考えられます。
言い換えてみると、これらの申出を行うことで得られる双方のメリットはかなり大きいので、忘れずに手続きをすることが望まれます。