- 産前産後休業についての法的な規定を理解する
- 育児休業についての法的な規定を理解する
- 産前産後休業や育児休業を取得するうえでの注意点とは?
公開日:2018年12月23日
働く女性にとって、妊娠・出産・育児は人生における大きなライフイベントとなります。そのため、妊娠・出産・育児における、法制度がどのようなものがあるのかを把握したうえで、今後のライフイベントにおける影響に対する備えをすることが重要になってきます。
近年の法制度は、働く女性を意識した内容へと改正が進んでおり、これからのライフイベントを考えていくうえでも、押さえておいてほしい内容が増えてきました。
今回は、妊娠・出産・育児について、具体的な法制度を説明したうえで、今後のライフイベントに向けてどのように備えるべきかについて解説します。
労働環境から見た「妊娠・出産・育児」にまつわる法制度は、労働環境の変化などにより進化しています。そのため、常に新しい情報を確認したうえで、今後のライフプランを計画していくことが必要となります。
妊娠・出産・育児を理由として会社を休む場合は、会社の規定にもよりますが、無給(つまり、「休んでいる間は給料は出ない」ということ)のところが多く、有給休暇として扱われるところもあったりしますが、これらについては、会社の「就業規則」等の規定を確認してください。
妊娠・出産に関する規定は、主に「休業に関する規定」「各種保険料の取り扱いについての規定」「給付に関する規定」などが規定されています。具体的な規定の内容については以下の通りになります。
労働環境に関する法的な制度としては、労働基準法があります。労働基準法は労働に関する基本的な原則部分について規定されているもので産前産後休業についても規定があります。
労働基準法では、基本的に「産前6週間から産後8週間の期間については働かせてはならない」(労働基準法65条)と規定されており、産前産後期間においては労働をさせることはできないとされています。
しかし、産前産後休業期間中の賃金等に関する規定は労働基準法には明確な規定がありません。そのため、会社の就業規則などに準拠した形で取り扱われることになります。
産前産後休業期間中の社会保険の保険料負担は、非常に大きな負担といえます。そこで、この期間における経済的負担を軽減するために、出産に関する給付や保険料の免除といった制度が規定されています。
健康保険法については、給付に関する規定として「出産手当金」「(家族)出産育児一時金」があります。また、保険料に関する規定では、「産前産後休業期間中の保険料は免除される」という規定(厚生年金保険法での同様の規定があります。)があり、妊娠・出産に関する経済的な負担を軽減する規定が設けられています。
育児に関する規定は、育児休業の制度に関する規定や保険料の免除など、育児休業をしている期間に受けることが出来るメリットの規定も多く、また、労働に関する規定などもあります。
育児休業の基本的な考え方については、労働基準法では明確な規定はされていませんが、別で法的に明確にしたものが「育児介護休業法」です。
育児介護休業法は、育児休業・介護休業に関する規定が定められています。育児休業に関しては、この育児介護休業法の内容をベースに制度が定められているため、この制度をしっかりと理解することが、育児休業を有効に取得し、活用することにもつながります。
また、育児介護休業法では、育児を行っている人に対する労働環境の改善を図るために、労働時間の短縮措置を行うことについても規定されています。この規定は、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、会社が一定の要件に該当する者を除き、対応しなければならない規定となっています。
育児休業に係る給付制度としては、雇用保険や児童手当法などで規定されています。
雇用保険法では、育児休業中の被保険者について、「育児休業給付金」という給付を行う制度があります。これは、育児休業中の所得補償を行うことで、育児休業後の社会復帰を容易にすることを趣旨とした制度とも言えます。
児童手当法では、15歳に達した日後最初の3月31日までにある子(つまり、中学卒業までの子のこと)がいる場合に、その子の人数に応じて児童手当を支給することで、家計の経済的負担の軽減を図るようにしています。
産前産後休業の場合と同様に育児休業期間中においても、健康保険・厚生年金保険の保険料を免除する規定があります。育児休業期間中については、一定の要件を満たした場合であれば、最長で子が3歳になるまでの期間の保険料について免除されます。
産前産後休業・育児休業は、法律上規定された公的な制度ですが、これらを取得する際に注意しなければならない点があります。例えば、「休業している期間中の収入をどうするのか?」「いつまでに会社に申告をしなければならないのか?」といったことがあります。
産前産後休業については、産前休業と産後休業では、法的な規定に若干違いがあるため、取得するうえで注意が必要な部分があります。
産前休業は出産予定日から6週間前の期間から取得することが出来ますが、会社は必ず休業を取得させる必要がない(休業を義務付ける規定ではないということ)ため、自身の申出をしなければ産前休業が出来ません。(実際のところ、申し出がなくても産前休業を予定日の6週間よりも前から取得させる会社もあります)
産後休業については、出産の日から6週間の期間については必ず休業させなければならないとされている点で、産前休業とは大きく違います。また、産後休業について、産後6週間を経過した日後については、医師の診察等を受けたうえで、労働をしても支障をきたさないという意見がもらえた場合には、職場復帰をすることも可能です。(原則としては、産後8週間は労働させてはなりません。)
育児休業についても、産前産後休業の場合と同様に、取得をするうえで注意しなければならない点があります。
育児休業は原則として「最長1年間まで」とされていますが、これは「産後休業期間」と「育児休業期間」の合計が1年まで育児休業を取得することが可能とされていますので、育児休業のみで1年間取得することが出来るわけではない点に注意が必要です。
父親が育児休業を取得した場合についても、原則として、育児休業期間は「最長で1年」となります。ただし、父親の育児休業の取得時期が「(母親の)産後休業期間」が終わった後に、母親が先に育児休業を取得している場合は、例外的に「子が1年2か月になるまでの期間内」であれば、育児休業の取得可能となります。(育児休業の取得可能期間は最長で1年です)
妊娠・出産・育児に関する制度は、労働環境自体を改善するために規定や、保険料免除や給付の支給などによる経済的負担の軽減を図る規定など、様々な規定があります。
しかし、実際に育児休業を取得している人の割合は「女性が約90%、男性が約1%」と圧倒的な差が出ています。しかし、近年では男女共働き世帯が増えてきていることもあり、育児休業自体を取得する人が減少しているようにも感じます。
これらの制度を理解することで、一人でも多くの人が快適なワークライフバランスを実現できるようになることが大切だと考えます。