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出産育児一時金って何?制度を上手に活用して出産に備えよう

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岡崎 隆宏

岡崎 隆宏

社会保険労務士・1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®。 1児の父親として育児に携わりながら、妻の妊娠・出産に立ち会う中で、妊娠・出産における社会保障制度についてどうあるべきかについて真剣に考える。 現在は、社会保障とお金の関係について講演やブログで情報を発信することで、一人でも多くの人にお金と社会保障について正しい認識を持ってもらうための活動を行っている。 得意分野は「妊産婦等の社会保障制度」「年金」「ワークライフバランス」「家計見直し」など。

この記事のポイント

・出産育児一時金は誰がもらうことが出来るのか?を把握すること。

・出産育児一時金はいくらもらえるのかを理解することで、出産に備えるきっかけをつくる。

・出産育児一時金の支払い方法にはどのようなものがあるかを理解する。

・会社を辞めてしまった人でも、要件を満たせばもらうことができる事を理解する。

出産育児一時金は、健康保険法等に基づく保険給付として、健康保険や国民健康保険などの被保険者またはその被扶養者が出産したとき、出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度です。

出産に関する保険給付には、他にも「出産手当金」がありますが、出産育児一時金は出産の為、仕事を休んだことに対する所得補償を行うことを趣旨とした制度ですので、出産にかかる費用の軽減を図るものとは異なります。

 

出産手当金の説明はこちらをご覧ください。

 

今回は「出産育児一時金」とはどのような制度かについて、他の制度との関係性などを踏まえて、解説していきます。

 

出産育児一時金の特徴と金額

出産育児一時金の特徴として「支給は1回のみ」「出産をした人であれば、扶養親族の人でも支給される」といった特徴があります。つまり、支給されるのは1回だけで、健康保険に加入している人とその人の扶養親族となっている人が出産育児一時金(扶養親族の人が出産をした場合は「家族出産育児一時金」と名称が変わりますが、内容は同じです。)を受け取ることが出来るということです。

ここでいう「出産」とは、妊娠85日(4カ月)以後の出産・早産・流産・人工中絶などをいいますが、出産育児一時金は、これらのすべての出産について、支給対象となります。

 

出産育児一時金の金額と支給方法

支給金額

出産育児一時金は、原則として42万円産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合、または、在胎週数22週未満の分娩の場合は40.4万円となります。)支給されます。

なお、双子等の出産の場合については、胎盤数に関わらず1産児排出を1出産と認め、胎児数に応じて出産育児一時金が支給されます。つまり、双子であれば、出産育児一時金の金額は2児分の金額(42万円×2胎児=84万円)となるということです。

なお、出産にかかる費用の金額が、出産育児一時金の金額より少なかった場合は、差額分については被保険者(被扶養者)に支給されます。

 

支給方法

出産した本人にではなく、その出産をした医療機関等に直接支払われる方法で支給されます。

 

産科医療保障制度とはどういった制度?

産科医療保障制度とは、医療機関等が加入する制度で、加入医療機関で制度対象となる出産をされ、万一、分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合、子どもとご家族の経済的負担を補償するものです。

産科医療保障制度の加入分娩機関の医学的管理下において、在胎週数が22週に達した日以後の出産(死産を含む)がなされたと認められた場合には、出産育児一時金(原則:40.4万円)に3万円を超えない範囲内で保険者が定める金額(現在は1.6万円)の加算が行われます。

そのため、以下のような場合については出産育児一時金に1.6万円の加算が行われません。

  • 加入分娩機関の医学的管理下以外における出産
  • 加入分娩機関の医学的管理下にあった場合で、在胎週数が22週未満(流産、人工妊娠中絶を含む)の場合

 

出産育児一時金の支払い方法

出産育児一時金の支給方法は大きく「直接支払制度」と「受取代理制度」の2通りに分かれます。それぞれどのようなものなのかについて説明します。

 

直接支払制度とは?

直接支払制度とは、出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、協会けんぽや健保組合などから出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組みを「直接支払制度」といいます。

直接支払制度は、被保険者が本来もらうべきである出産育児一時金を、出産を行った診療所や病院などへ支払う出産にかかった費用として支払う形で支給する形式となるため、出産時にまとまった費用を被保険者があらかじめ準備する必要がない点が大きな特徴といえます。

被保険者の選択によっては、医療機関へ支払う出産費用として出産育児一時金を支払うのではなく、保険者自身が出産育児一時金をもらうための手続きを協会けんぽや組合健保に請求する方法を選択することも可能です。

 

受け取り代理制度とは?

受け取り代理制度とは、一定の要件を満たした診療所や助産院などの医療機関において、厚生労働省へ届け出ることで、医療機関等が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取ることが出来る制度です。

ここでいう「一定の要件」とは、直接支払制度では、事務的負担や資金繰りへの影響が大きいと考えられる施設で、「年間の分娩件数が100件以下」または「収入に占める正常分娩にかかる収入の割合が50%以上であること」が目安とされています。

 

出産費用の貸付制度

出産育児一時金を支給されるまでの間に、一定の要件を満たす人については、出産育児一時金の8割相当額までを限度に資金を無利子で貸し付けることが出来る制度(出産費貸付制度)があります。

 

出産費貸付制度を利用することが出来る人とは?

出産費貸付制度を利用することが出来る人は、健康保険の被保険者または被扶養者で、出産育児一時金の支給が見込まれる人のうち、出産予定日まで1ヵ月以内の方、または妊娠4ヵ月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方です。具体的には、妊婦検診にかかる費用などで、自治体から保障される範囲を超えて支出する場合の支出した費用などが該当します。

出産費貸付制度による資金の貸付の申込を希望される人は、出産費貸付金貸付申込書に必要な書類等を添えて保険者に申請します。(記載している内容は協会けんぽの場合のものです。組合健保については、それぞれの組合健保の規約等によって申請方法が異なりますので、確認が必要となります。)

 

資格喪失者の出産育児一時金

会社を退職した等によって、健康保険の被保険者資格を喪失した者が出産した場合についても、出産育児一時金は支給されますが、一定の要件に該当している必要があります。

 

資格喪失者に出産育児一時金を受給するための要件

以下のいずれも該当していることが必要です。

  • 被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者(健康保険の被保険者)であったこと
  • 被保険者の資格を喪失した日後(喪失した日の翌日から)6月以内に出産したこと

簡単に言うと、会社を辞めた日(被保険者ではなくなった日)において、健康保険に継続して1年以上加入している人(つまり、会社を辞める1年以上前の日以前から健康保険に加入している事)が、会社を辞めた日の翌日から6カ月以内に出産をした場合に、出産育児一時金を受給することができるということです。

 

資格喪失後に被扶養者となった場合

結婚等を機に会社を退職した直後に出産をした場合など、資格喪失者の出産育児一時金の受給要件と家族出産育児一時金のいずれも受給する要件を満たす場合については、その者がいずれか一方を選択して受給することになります。

つまり、出産育児一時金として受給するか、家族出産育児一時金として受給するかは、その人が選択して手続きを進めていく必要がありますが、いずれの場合でも支払われる金額は同じですので、手続きの煩雑性を考えると、家族出産育児一時金として受給される人が多いです。

 

まとめ

出産育児一時金は、出産にかかる費用の一部を保障する制度です。そのため、受給できる者の範囲も被保険者と被扶養者となっている点で、出産手当金とは大きく異なります。

また、出産育児一時金は出産に係る医療機関によっては直接支払制度になるか、受け取り代理制度を適用しているかによって、手続きが異なりますので、あらかじめ、出産を予定している医療機関等に確認を取ることも併せて行うことが大切です。

会社を辞める等によって、健康保険の被保険者資格を喪失した場合についても、継続して1年以上被保険者として加入していたのであれば、出産育児一時金は支給されますので、仮に辞めてから1年以内に出産を予定しているのであれば、その点も考慮することをお忘れないようにしてください。もちろん、出産育児一時金だけでなく、出産手当金についても同様のことがいえます。

出産に関する保障制度を有効活用して、最低限度の支出に押さえることためにも、出産育児一時金制度はしっかりと活用していきましょう。