- 住宅ローンの審査に通過するには、信用情報に事故情報が登録されていないことが必要。
- 債務整理後少なくとも5年は事故情報が残っているので住宅ローンが組めない。
- 債務整理後に住宅ローンを申し込むなら事前に信用情報を確認。
公開日:2019年7月5日
債務整理をするとき、近い将来、住宅の購入を考えている人は注意しておきましょう。債務整理をすると、住宅ローンを組むときに影響が出てしまいます。
本記事では、債務整理後の住宅ローンについて説明します。住宅ローンの審査に通過するためには、何に気を付けておいたらよいかを知っておきましょう。
目次
住宅ローンの審査のカギになるのが、「信用情報」です。信用情報は、住宅ローンに限らず、あらゆる借入の審査に影響します。
信用情報とは、個人がローンやクレジット、キャッシングなどの信用取引(個人の信用にもとづきお金を貸してもらったり立て替えてもらったりする取引のこと)を利用した履歴のことです。
信用取引を一度でも利用したことがある人なら、信用情報機関に信用情報が登録されています。
信用情報機関は、個人の信用情報を集めて管理しているところです。消費者金融、クレジット会社、金融機関などは、信用情報機関に加盟することが義務付けられています。
信用情報機関には次の3つがあります。各信用情報機関に加盟している会社は、保有している契約者の信用情報を登録し、共有しています。3つの信用情報機関では情報交換や情報共有が行われており、他の信用情報機関の情報も入手できるようになっています。
主に、信販会社、クレジット会社が加盟しています。
主に、消費者金融が加盟しています。
銀行が加盟しています。
住宅ローンの申し込みをした場合、申し込みを受けた銀行等は、審査を行って貸付の可否を判断します。住宅ローンを利用できるのは、審査に通った申込者です。
住宅ローンの審査では、銀行等は信用情報機関に情報照会し、申込者の信用情報を確認します。このときに、信用情報にネガティブな情報が登録されていれば、審査で不利になってしまいます。
ブラックリストに載ると、金融機関などで借入ができなくなることはご存じの方も多いでしょう。ブラックリスト入りするのは、信用情報機関に事故情報が登録された場合です。
信用情報には、クレジットやローンを利用した後、支払いがきちんと行われたかどうかの記録が残されています。支払いの遅延(延滞)といった、利用者にとってマイナスになるような情報も登録されているということです。
こうしたマイナスの情報は、「事故情報」と呼ばれます。事故情報に該当するのは、延滞のほか、強制解約、債務整理などの情報です。
事故情報は、信用情報機関では「異動」と登録されるため、「異動情報」と言われることもあります。異動情報が登録される基準は、細かくは各信用情報機関で違いますが、大まかには次のようになっています。
事故の種類 | 内 容 |
---|---|
延滞 | 1回(1か月)程度の延滞では異動情報は登録されません。2~3か月以上の延滞で「異動」となります。 |
代位弁済 | 銀行カードローンなどでは、保証会社が付いているため、支払いが遅れると保証会社が代位弁済することがあります。代位弁済が行われると、「異動」となります。 |
強制解約 | 長期延滞などによりカード会社から強制解約された場合にも、「異動」の情報が登録されます。 |
債務整理 | 債務整理をし、契約どおりの返済ができなかった場合には「異動」情報が登録されます。 |
債務整理とは、法律上の手続きをとって、借金を整理することです。債務整理には、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4種類があります。
債務整理の種類 | 手続きの概要 |
---|---|
任意整理 | 個別の借金について、裁判外で債権者と交渉して支払条件の変更(毎月の返済額の減額や返済期間の延長)を認めてもらう方法です。 |
特定調停 | 個別の借金について、簡易裁判所の調停で債権者と話し合い、支払条件の変更を認めてもらう方法です。 |
個人再生 | 地方裁判所に申立をし、すべての借金について原則5分の1に圧縮してもらう方法です。再生計画を立てた上で、少なくとも3年間は返済が必要です。 |
自己破産 | 地方裁判所に申立をし、すべての借金を免除してもらう方法です。借金の返済義務はなくなりますが、手持ちの財産は換金して借金の返済にあてなければなりません。 |
金融事故を起こすと「ブラックリストに載る」と言われることがあります。ブラックリストに載るとは、信用情報機関に事故情報(異動情報)が登録されるという意味です。ブラックリストという名簿があるわけではありません。
信用情報機関に事故情報が登録されることは、「信用情報に傷が付く」「ブラックになる」等と言われることもあります。
どの方法で債務整理をしても、ブラックリストに載ってしまいます。ブラックリスト入りすれば、通常は住宅ローンの審査に通りません。
住宅ローンの審査では、申込者の年収や勤続年数のほかに、信用情報も確認します。事故情報はすべての信用情報機関で共有されているため、どこに住宅ローンを申し込みしても、必ずバレてしまいます。
信用情報機関に「異動」の情報があり、ブラックリストに載っている状態なら、住宅ローンの審査には通らないのが通常です。
住宅ローン返済中に債務整理をする場合には、住宅ローンへの影響を考慮しておきましょう。債務整理の種類によっては、住宅ローンも整理する必要があります。
住宅ローンには金融機関の抵当権が設定されているため、住宅ローンが整理の対象となってしまうと、住宅をとり上げられてしまいます。
任意整理や特定調停の場合には、整理する借金を選べます。住宅ローン以外の借金だけ整理すれば、住宅ローンに影響はありません。
個人再生ではすべての借金が対象になるため、住宅ローンも整理するのが原則です。ただし、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用して個人再生の申立てを行った場合には、住宅ローンを除外して借金を整理できます。
自己破産の場合には、住宅ローンを含むすべての借金が免除になりますから、住宅もとり上げられてしまいます。
住宅ローンは長期間返済を続けるものですから、金利や月々の返済額の見直しのため、途中で借り換えをしたいことも多いと思います。住宅ローン返済中に債務整理をした場合、債務整理後には住宅ローンの借り換えができなくなる点にも注意しておきましょう。
借り換えの際には、信用情報の照会が行われます。事故情報が登録されていれば審査に通らないため、借り換えは困難です。
債務整理をした後、永久にブラックリストに載っているわけではありません。ブラックリストに載っている期間は限定されており、その期間が過ぎると住宅ローンを組めるようになります。
事故情報の保有期間は各信用情報機関で違います。しかし、債務整理をした場合には、どの信用情報機関でも少なくとも5年は事故情報が保有される可能性があります。
各信用情報機関の事故情報保有期間は、次のとおりです。
任意整理 | 特定調停 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|---|
CIC | 5年以内 | 5年以内 | 5年以内 | 5年以内 |
JICC | 5年以内 | 5年以内 | 5年以内 | 5年以内 |
全銀協 | 5年以内 | 5年以内 | 10年以内 | 10年以内 |
債務整理をした後は、5年程度信用情報機関に事故情報が登録されます。全銀協については、個人再生・自己破産をすると最長10年程度事故情報が残ります。
事故情報が登録されている間に住宅ローンの申し込みをしても、審査には通りません。債務整理後の住宅ローンは、信用情報機関から事故情報が消えてから申し込む必要があります。
任意整理では、債務整理後も借金を支払いますから、完済すればそれでブラックリストから外れると考えがちです。しかし、任意整理をした事実がある以上、完済時期にかかわらず、一定期間はブラックリストに載ることになります。
債務整理の中でも、裁判所を通さずに簡易迅速に手続きできる任意整理は、最もおすすめの方法です。任意整理では、債権者である貸金業者と交渉が必要です。そのため、通常は法的知識を持った弁護士等の専門家に依頼して手続きします。
任意整理は、借金の残額が大きい場合にはできません。しかし、利息を除けば3~5年程度で分割返済できるくらいの借金であれば、任意整理で解決します。
任意整理では借金がなくなるわけではありません。利息はカットしてもらえますが、元本は全額払わなければならないのが原則です。
任意整理では、手続きした後、3~5年かけて借金を返す必要があります。借金を完済すれば任意整理は成功ですが、完済時点で事故情報が削除されるわけではありません。
任意整理で事故情報が登録された場合、登録期間は原則として任意整理をしたときから5年です。3年で借金を完済しても、そこから2年くらいは事故情報が残っている可能性があります。
任意整理の借金を完済したら、すぐに住宅ローンが組めるわけではありません。住宅ローンを申し込むには、任意整理から5年程度待つ必要があります。
債務整理をした後に住宅ローンを申し込む場合、申し込む時期によっては審査に通らないことがあります。事前に信用情報を確認してから住宅ローンを申し込むようにしましょう。
信用情報機関に事故情報が登録されていれば、住宅ローンに申し込みしても審査に通りません。住宅ローンの申し込みをする前に、信用情報を確認しておきましょう。
信用情報には開示請求の制度があります。開示請求とは、信用情報がコンピュータ上でどのように登録されているかを知らせてもらえるものです。
信用情報が登録されている本人は、本人確認書類を提示して、情報の開示請求を行うことができます。開示請求はいずれの信用情報機関でもできますが、開示請求の方法は少しずつ違いますので、各信用情報機関のサイトで確認しましょう。
住宅ローンの中でも、さまざまなメリットのあるフラット35は人気です。債務整理後にフラット35を申し込む場合に、気を付けておきたいことも知っておきましょう。
フラット35は、住宅金融支援機構が民間の金融機関と協力して提供している住宅ローンです。フラット35を利用すれば、最長35年の全期間固定金利で貸付が受けられるほか、保証人不要、繰上返済手数料不要などのメリットもあります。
フラット35の審査では、総返済負担率の基準があります。総返済負担率とは、年収に占めるすべての借入の割合です。
すべての借入には、住宅ローンのほか、自動車ローン、教育ローン、カードローン、クレジットカードのキャッシング枠、クレジットカードの分割払いやリボ払いなど信用取引に関するものすべてが含まれます。
フラット35では、総返済負担率が次の基準を満たしていなければなりません。
年 収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
---|---|---|
総返済負担率の基準 | 30%以下 | 35%以下 |
総返済負担率を計算するときには、カードローンやクレジットカードのキャッシング枠については、借入残高ではなく借入枠全体(利用限度額)が基準になります。実際には使っていなくても、カードを持っているだけで総返済負担率が上がってしまうことがあります。
カードをたくさん持っているとフラット35の審査に影響することがあるので、事前に使わないカードは解約しておきましょう。
フラット35取扱金融機関は多数ありますが、金利は各社さまざまです。その中でも、楽天銀行のフラット35(買取型)の金利は最低水準。また、申込書の請求から融資まで来店不要で完結するのでお忙しい方にもぴったりです。
債務整理後は信用情報機関に事故情報が登録され、ブラックリストに載った状態になります。ブラックリストの情報が消えるまでは少なくとも5年程度かかるので、その間は住宅ローンの審査に通りません。
住宅ローンを申し込むなら、信用情報機関の事故情報が消えているか確認してからにすると安心です。
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債務整理の手続きは複雑で難しいため、債務整理のプロへ相談することが賢明です。まずは相談料無料で債務整理に強い弁護士事務所に相談してみるのがいいでしょう。
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