- ウェルスナビは、原則として確定申告する必要はない。
- 外国税額控除や損失繰越を利用する場合は、確定申告が必要。
- DeTax機能で損失を繰り越し、税金負担を減らすこともできる。
公開日:2019年12月21日
ウェルスナビは資産運用を自動で行ってくれるサービスですが、確定申告は自分でしなければいけないのでしょうか。結論をいうと、「特定口座・源泉徴収あり」を選べば基本的に何もする必要はありません。
ただ、状況によっては確定申告をした方が有利になる場合があるので、どのような時に確定申告した方が有利になるのかを解説していきます。
まずはウェルスナビについて詳しく知りたい!という方はこちらをご覧ください。
目次
ウェルスナビは、2020年2月13日時点で預かり資産2,300億円を超え、一番の実績を持っているロボアドバイザーです。
ウェルスナビでは、世界水準の資産運用をすべて自動で行ってくれます。これまで世界水準のアルゴリズムは、機関投資家や一部の富裕層に限られていました。
しかし、テクノロジーの力で誰でも世界水準の資産運用をできるようにしたのが、ウェルスナビのロボアドバイザーなのです。
世界水準の金融アルゴリズムにより、手数料は預かり資産の1%と低コストで、最低投資金額は10万円と少額から始められるというメリットがあります。また、スマホで簡単に開始できるのも大きなポイントです。
6つの質問に答えるだけで、自分に合った運用プランをAIが提示。発注や積立、リバランス(資産のバランス調整)も、ウェルスナビがすべて自動で行います。人ではなくロボアドバイザーが投資をしてくれるので、相場環境に一喜一憂することもなくなります。
資産運用の王道は「長期・積立・分散」です。世界中の金融商品に分散投資しながら、世界経済の成長率を中長期で上回ることを目指します。
もちろん、世界経済はいい時も悪い時もあり、資産運用中にはリーマンショックなど大きな金融危機が起こることもあります。
しかし、「長期・積立・分散」投資を続けることで、そのような大きなショックが起こっても、長期で見ればプラスのリターンを期待できるのです。
たとえば1992年1月から2017年1月までの過去25年間の期間で、ウェルスナビの推奨ポートフォリオを用いて資産運用のシミュレーションを行うと、資産は2.4倍に成長し、1年あたりのリターンは6.0%という結果になります。
出典:ウェルスナビ
株や投資信託を売って利益が出たとき、利益の20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)が課税されます。ウェルスナビの売却益も同じです。
株や投資信託と同じく、ウェルスナビを含めたロボアドバイザーの売却益の税金も、申告分離課税に区分されるからです。
申告分離課税とは、株式や投資信託などの譲渡により所得が生じた場合、確定申告の段階で他の所得と合算せず、分離して課税する制度のこと。
株式等の譲渡による所得は、総合課税となる他の所得はもちろん、土地や建物などの譲渡による所得のような、他の申告分離課税の所得とも分離して課税が行われます。
たとえば、ウェルスナビを10万円で買って20万円で売ったときの利益は10万円ですが、20,315円(10万円✕20.315%)が税金として引かれるので、実際の手取りは79,685円(10万円-20,315円)となります。売却益は出金することもできます。
本来、税金は投資家本人が確定申告の書類に必要事項を記入したり、税務署に行ったりする必要があります。しかし日中忙しい人は、「面倒な手続きをしたくない」と考える人も多いでしょう。
次の項では、確定申告が不要になるポイントを解説します。
証券会社や銀行で口座を開く場合、「特定口座」か「一般口座」を選ぶ必要があります。両者の違いは、損益計算や税金の納め方です。
特定口座は、証券会社や銀行が年間取引報告書を作成してくれ、税金を本人に代わって納めてくれます(源泉徴収ありの場合)。一方、一般口座では税金の計算から確定申告、納税まで投資家自身がすべて行わなければいけません。
面倒な手間を省きたい人は「特定口座」を選ぶようにしましょう。特定口座を選べば、1年間の損益をウェルスナビが計算してくれます。
ただし、特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。「源泉徴収あり」を選べば、ウェルスナビが税金を納めてくれるので、確定申告の必要は原則ありません。
一方、「源泉徴収なし」の場合、投資家自らが確定申告して税金を納めます。
また、特定口座以外にも「一般口座」があります。一般口座の場合、ウェルスナビでは税金の手続きについて何もしません。損益の計算から確定申告、税金の納付まで投資家がすべて行わなければなりません。
資産運用を自動で任せられるのがウェルスナビのメリットですから、税金の手間も省ける「特定口座・源泉徴収あり」を選ぶようにしましょう。
手間が省けて便利な「特定口座・源泉徴収あり」ですが、「源泉徴収なし」を選んだほうがいい場合もあります。それは、投資による利益が20万円以下なら、所得税がかからないというメリットがあるからです。
ただし、住民税の申告は必要になるので、手間をかけたくない人は「源泉徴収あり」を選んだ方がいいでしょう。
ウェルスナビは海外のETF(上場投資信託)で運用を行っているので、配当は米国内で租税条約に基づいた税率(10%)で源泉徴収されます。さらに米国で課税された後の金額に対して、日本でも20.315%の税率で源泉徴収されます。
源泉徴収されているので確定申告は必要ありませんが、日米の二重課税を調整するための外国税額控除を適用したい場合は確定申告が必要になります。
外国証券投資(株やETFなど)による配当金や利子は、まず外国で課税され、さらに日本でも課税されることから二重に課税されることになります。この二重課税を調整するために、外国で課税された税額を日本の税金から差し引く制度です。
外国税額控除を受けるためには、確定申告をする必要があるので、必要書類を作成して期間内に税務署に提出します。外国税額控除に必要な書類は、以下の通りです。
ただし申告の際は、書類ややり方の詳細を税務署に問い合わせるようにしましょう。
配当の二重課税以外にも、以下のように確定申告をしたほうが税金がオトクになる場合があります。
確定申告すれば、他の証券会社の株や投資信託と損益通算できます。たとえば、ウェルスナビで利益が出ていて、株式で損失が出ている場合、損益通算することで支払う税金を減らせることができるのです。
特定口座で取引をしていれば、ウェルスナビが年間取引報告書を作成してくれます。年間取引報告書はウェルスナビのホームページで電子交付しているので、いつでもダウンロードが可能です。
株や投資信託と損益通算しても譲渡損失が残ってしまう場合、「譲渡損失の3年間繰越控除」の適用を受けるようにしましょう。適用を受けると、翌年以降3年間、翌年の譲渡益や配当金から繰り越した損失額を控除できます。
これによって、課税評価額がゼロまたはマイナスとなれば課税されません。ただし、損失を繰り越すには、3年間は毎年「損失の繰越控除」の申告をする必要があるので注意しましょう。
ウェルスナビで一般口座を開設していても、特定口座に変更可能です。「ウェルスナビのお問い合わせ」から「現在の口座を特定口座に変更したい」と申し込みましょう。
すると、ウェルスナビから口座変更申込書が送られてくるので、記入してマイナンバーなど身分証明書のコピーを同封して送り返せば完了です。
ただし、その年の売却益や分配金が発生している場合は、変更できないので注意しましょう。
たとえば、2019年度の口座を変更しようとしても、すでに売却益や分配金が発生している場合は、税金の計算が始まっているので年度内の変更はできません。翌年(2020年)まで待つ必要があるのです。
確定申告書をスムーズに作るためには、国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用すると便利です。
確定申告書作成コーナーを利用すると、画面の案内にしたがって入力していくことで、申告の目的や所得の種類に応じた申告書を作成できます。申告書はプリントアウトできるので、確定申告の書類を税務署に提出すれば終了です。
直接税務署に行き、職員に確認しながら作成する方がミスなくできますが、確定申告の期間は混み合い時間もかかるので、「確定申告書作成コーナー」を利用するようにしましょう。
DeTax(デタックス)とは、税金の負担を軽減(先送り)してくれるサービス。分配金の受け取りやETF(上場投資信託)の売却によって利益が出ると、税負担が生じます。
デタックスは、税負担が1万円を超える場合を目安に、税負担の一部または全部を翌年以降に繰り延べます。税負担を繰り延べなかった場合より運用できる金額が増えるため、投資効率の向上が期待できるのです。
具体的には、損益がマイナスになっている銘柄を売却して損を確定させます。そして、すでに利益確定している銘柄と利益を相殺させることにより、その年の利益を圧縮もしくはゼロにし、税負担を翌年以降に繰り延べるのです。
また、損益がマイナスになっている銘柄を売却すると同時に、同じ銘柄を「同じ数量・同じ価格」で買い戻します。これにより、ポートフォリオを維持したまま、税負担を軽くすることができるのです。
柴山CEOは、SBI証券とのインタビューで、DeTaxの機能で年間0.4~0.6%程度の負担減になるといっています。ウェルスナビの手数料は年率1%(預かり資産3,000万円まで)ですが、DeTaxにより半分程度のコスト負担になることが期待できるのです。
今回は、ウェルスナビの税金について解説しました。「特定口座・源泉徴収あり」をしておけば、何もする必要はありません。ただし、外国税額控除や株・投資信託と損益通算をしたい場合は、確定申告をする必要があります。
それでも資金が少ない間は、「特定口座・源泉徴収あり」を選んでいても問題ないでしょう。しかし、10年・20年と運用を続けて資産が大きくなった場合は、税金についてもきちんと考えるようにしましょう。