- REITの投資対象の用途は「オフィス・商業施設・住宅・物流施設・ホテル・ヘルスケア」の6つ。
- 銘柄を選ぶ時は、分配金利回り・格付け・時価総額・NAV倍率を参考にして決める。
公開日:2019年11月30日
REITは不動産の投資信託です。10万円前後と少額から不動産投資できることや、複数の物件に分散投資できるので、リスクを抑えた運用ができます。
また、分配金利回りも3%台と株式の配当金より高いのも魅力です。しかし、どの銘柄を選べばいいのかわからない人も多いのではないでしょうか?今回は、REITの銘柄の選び方やおすすめの銘柄について解説します。
国内のREIT(J-REIT)には、単一用途に特化して投資する「単一用途型」、2つの用途の不動産に投資する「複数型」、3つ以上の用途、または用途を限定しない「総合型」に分けられます。
単一用途型REITのタイプは、以下の6つです。
国内REIT(J-REIT)の保有不動産の用途別比率は以下の通りです。
出典:不動産証券化協会
REITは1960年に米国で初めて導入されました。現在では世界20以上の国・地域にREIT市場があります。日本のREITは米国などと少し仕組みが異なるため、J-REIT(JAPAN Real Estate Investment Trust)と呼ばれています。
それでは、それぞれの用途の詳細を、銘柄選びのポイントと合わせて解説します。
オフィスは、国内REITでメインの投資先。物件の数が多く、投資機会が多いからです。オフィス特化型REIT選びのポイントは、空室率と平均賃料です。とくに、投資先が最も多い都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の状況を確認しておく必要があります。
オフィスビル仲介大手の三鬼商事が2019年10月に発表した都心5区の9月の空室率は1.64%となり、過去最低水準となりました。
また、都心5区の平均賃料は3.3平方メートル当たり2万1855円となり、前月比で71円上昇。平均賃料の上昇は69カ月続いており、旺盛な需要が賃料水準を押し上げています。
都心オフィスの平均賃料は、2008年のリーマンショックの影響で下落し、2014年ごろを底に回復しています。
ですから、2010年頃に入居したテナントの賃料は現在の相場より安いので引き上げやすく、仮にテナントが退去しても新しいテナントが入れば、現在の賃料水準の法が高いので収入が増えることになります。
商業施設特化型REITは、一般消費者向けの施設なので景気感応度が高いことが特徴です。商業施設とは、ショッピングモールや飲食施設などの施設が集まった建物・地域の総称です。
商業施設のリスクの1つがインターネット通販の台頭です。近年では、店舗数を縮小するショッピングモールも珍しくありません。投資を検討する時は、このようにリスクも考慮するようにしましょう。
住宅特化型REITは主に賃貸住宅物件に投資し、分配金が安定していることが魅力です。賃貸物件の契約期間は基本的に2年と短く、入居者の入れ替えも頻繁なので収益の安定性に不安を感じる人もいるかもしれません。
しかし、賃貸住宅の賃料は他のアセットに比べて「変動しづらい」といわれています。つまり、安定した分配金が望めるのです。
物流施設は私たちの生活に密接な関わりを持っています、たとえば、多くの人が利用しているインターネット通販の到着の早さに驚いている人もいると思います。
これは、物流施設の発展が大いに寄与しているのです。現在の物流施設は、単にモノを保管するだけでなく、モノの梱包や流通加工といった先進的な機能を有するまで発展していて、配送の効率性向上につながっているのです。
さらに、物流施設は長期固定で賃貸契約を結ぶことが多いので、景気が悪化してもすぐに影響を受けることは少なく、分配金も安定しています。
今後インターネット通販などのEC(電子取引)市場が発展するとともに、ますますニーズが高めると予想されます。
ホテルは景気に敏感です。景気が上昇する局面では、物流施設や住宅よりも高い成長と利回りが期待できます。加えて、旺盛なインバウンド(外国人訪日観光客)による影響を強く受けます。
東京オリンピック・パラリンピックの2020年までは、景気・インバウンドのどちらから見ても、ホテル市況は底堅いと考えられます。
最近は空き家や空き部屋を提供する「民泊」の影響で、ホテル市況が悪化するのではないかという懸念もあります。2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」で、民泊が正式に解禁されたからです。
しかし、年間営業日数の上限が設けられたり、家主には届け出の義務が課せられたりするなど、民泊を運営するための条件は厳しくなりました。違法民泊が淘汰される動きになればホテル特化型REITにはプラスになります。
高齢化の進む日本では、ヘルスケアは他の物件よりも需要が高まると予想されます。ヘルスケア施設とは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、病院などです。
施設を保有するヘルスケア特化型REITは、施設のオペレーター(事業運営社)と賃貸借契約を結び、そのオペレーターが入居者や利用者の募集・契約を行います。
ヘルスケア特化型REITは、オペレーターから受け取る賃料を主な収益源としていて、諸経費などを控除した後の利益を投資家に分配するのです。
今後の市場の成長が期待できるヘルスケア特化型REITですが、介護士の不足から新しい物件の取得が難しい面もあります。とくに高齢者向け住宅の人手が足りていません。
ただ、社会的ニーズや将来性は間違いない分野なので、介護士の問題さえ解決できれば非常に魅力的な投資先です。
2つの用途の不動産に投資する「複合型REIT」や、3つ以上の用途に投資する「総合型REIT」は、分散投資しているので単一用途型REITよりもリスクが低くなります。
REIT投資のリスクを下げたい人や、REIT初心者におすすめです。ただし、特定分野の値上がりや賃料の上昇の恩恵を受けにくくなるというデメリットもあります。
また、一口に総合型REITといっても、物流施設と住宅だけのREITやオフィスや住宅・商業施設のREITなど中身がまったく異なる場合があります。実際にどのような物件に投資しているのか、中身をチェックするようにしましょう。
REITの投資先がわかったところで、次にREITを選ぶ際のポイントについて解説します。
REITを購入する投資家にとって、最大の関心事は分配金でしょう。2019年10月時点のREITの平均分配金利回りは3.42%。東証1部の配当金利回り2.36%を上回っています。
分配金の多さと安定性は、REITの運用状況を測る指標にもなります。同じ用途の不動産に投資するREITを比べた場合、分配金を多くだしている銘柄の運用状況が優れていると判断できるからです。
また、REITの分配金の原資は主に賃料ですが、物件を手放した時に発生する売却益によって分配金が一時的に増えることがあります。過去の分配金が将来も保証されるわけではありません。
過去の分配金の推移を必ずチェックし、安定的に高い分配金をだしている銘柄を選ぶようにしましょう。
REITを購入する時は、「格付け」もチェックしましょう。格付けとは、REITが債務不履行になる可能性を第三者である格付け機関が評価したものです。もっとも信用度が高いのが「AAA」や「AA+」です(格付け機関によって表記が異なります)。
格付けからわかることはREITの信用度だけではありません。格付けが高いREITほど低い金利で資金調達できるので、収益力の高さの指標にもなるのです。
また、日銀が金融政策の一環として買い入れるREITの格付けは「AA」以上です。AA以上の銘柄なら日銀の買いが期待できるので、相対的にリスクが低く、買い安心感が高い銘柄と考えられます。
時価総額とは、REITの資産を時価で評価してものです。
時価総額が大きいほど、多くの投資家がそのREITに投資していると考えられます。保有している投資家が少ないと、買いたい時に買えない、売りたい時に売れないという流動性リスクが高くなります。
明確な基準はないものの、時価総額1,000億円を超えていれば、値動きが安定している傾向にあります。
NAVとは、REITが持っている時価ベースでの純資産のことで、REITを解約して保有不動産をすべて売却、負債返済後の金額です。NAV倍率の計算式は以下の通りです。
NAV倍率が1倍より小さければ、純資産よりも投資口価格が安く割安な銘柄と考えられます。一方、1倍を大きく上回ると割高と判断します。
NAV倍率は株式投資のPBR(株価純資産倍率)と似た指標です。
それでは、REITのおすすめ銘柄を具体的に見ていきましょう(2019年11月時点)。
大和ハウス工業をスポンサーとする総合型REIT。用途別比率は以下の通りです。
中核資産は、物流施設・居住施設・商業施設およびホテルで、主に首都圏、中部圏、近畿圏の三大都市圏に投資します。大和ハウスグループとのコラボレーションによる物件の取得や管理・運営を行っています。
分配金利回りは3.7%とJ-REITの平均分配金利回り3.42%を上回っています。また、JCRからAA、R&IからA+という高格付けを取得しているので、日銀が投資口を保有している銘柄の1つです。
三井物産をスポンサーとする物流施設特化型REIT。物流施設特化型として最も早く、2005年5月に上場しました。
物流施設の取得競争が本格化する前に上場したことや、強固な財務基盤を背景に金融危機の時でも物件を取得できたことなどから、2019年7月時点のポートフォリオの含み益率が、41.2%とREITでもトップレベルの高さで評判が高いREITです。
JCRから「AA」、R&Iから「AA-」という高格付けを取得しており、日銀が保有している銘柄の1つです。物流施設は景気に左右されずに安定的な分配金が期待できるので、投資初心者でも手掛けやすいといえるでしょう。
ホテルの開発・運営に加えて再生事業にも強みを持つ星野リゾートをスポンサーとするホテル特化型REIT。
具体的な投資対象資産の選定には、国内の星野リゾートグループ運営物件だけでなく、グループ以外の運営物件および海外の星野リゾートグループ関与物件の情報を積極的に入手し、長期的かつ安定的なキャッシュフローの確保のために最適なポートフォリオを構築しています。
格付けについてはJCRからA-を取得しています。ホテル特化型REITなので、分配金利回りが4.52%と高いのも魅力です。
今回はREITが投資対象にする不動産の特徴と、銘柄の選び方について解説しました。REITが投資対象にする用途は、以下の6つです。
そして銘柄を選ぶ時は、分配金利回り・格付け・時価総額・NAV倍率を参考にします。上場REITの平均分配金は3.42%なので、その水準をひとつの目安とします。また、格付けはA格以上だと安心です。さらに、AA格以上の銘柄なら日銀の買いも期待できます。
時価総額は多いほど流動性に優れています。1,000億円を目安にするといいでしょう。
最後に、NAV倍率は1倍以下は割安と考えられます。ただ1倍割れの銘柄は多くないので、1倍を大きく上回っている銘柄を避けるようにすればいいでしょう。
また、今回はおすすめの銘柄を3種類選びました。REIT投資の参考にしてください。
REITなど資産運用を始めるには口座を開設する必要があります。銀行や証券など多くでREITなどの取扱いがございますが、一番のおすすめはSBI証券です。
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