- 今の高齢者の実態を想像し、出来る事を直ぐに始める。
- 生活保護は誰でも受給できるものではない。
- 生活保護の調査は厳しく年々受給者は増加傾向にある。
公開日:2020年1月26日
今回の記事は少しテーマが重ためです。老後の生活を想像したときにお金は非常に重要な要素となりますが、実際のところはどうなんでしょう。ご自身が高齢者になって暮らす際、イメージはできますか?実際に体験しないと、想像することも難しいかもしれませんね。
そこで、今回は老後の生活の現状や、もしもの際の生活保護に関して解説していきたいと思います。
まずは現在の高齢者の生活実態に関して解説します。国の統計をとる総務省の調査では、2019年9月15日時点で高齢者(65歳以上)の数は全国で3,588万人となっており、総人口の28.4%を占めています。
これは7人に1人が65歳以上であることを示してもいます。そして過去最高の数字となっていることが分かっています。
男女別で見ると、男性が1,560万人、女性が2,028万人で、65歳以上の年齢を分析すると女性のほうが多くなっていることが分かります。また70歳以上の人口は2,715万人、75歳以上は1,848万人、80歳以上の人口は1,125万人であることが分かっています。
高齢者の数は年々増加しており、2040年までに高齢者の割合が35.3%に達すると推測されています。
他の国々と比較しても日本は世界で一番高齢者が多く、2019年時点では日本が28.4%に対し、次に多い国のイタリアで23.0%、ポルトガルの22.4%、フィンランド22.1%と続きます。
高齢者が増えるとその分年金の支払いも多くなることは明らかであり、加えて、社会保障を支える生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の数が少なくなっていることもあり、将来が不安視されるのは当たり前といえるでしょう。
平成21年に内閣府が60歳以上の男女5,000人を対象にアンケート調査を行ったところ、大変苦しいと回答したのが7.2%、やや苦しいと回答したのが19.2%、普通と回答したのは65.2%、ややゆとりありと回答したのは7.4%、大変ゆとりありの回答は1.1%でした。
10年前の調査ですので、今ではどんな回答になるか非常に興味はありますが、中でも大変苦しい、やや苦しいと回答した方の中で、相対的に多い回答を寄せた方は、健康状態が良くない方、未婚者、離別者、一人暮らし世帯だったそうです。
恐らくこの回答の結果は今でも当てはまると考えられます。また、大変苦しいと回答した内の49%もの方が「電気、ガス、水道の停止を経験した」と答えており、15.6%もの方が「食料が買えなかった」と回答していることが分かっています。
この調査には具体的な年金受給額の記載はなく、体感的に感じていることの調査です。しかし、生活に必要な食費・光熱費の支払いが困難になると、かなり節約を強いられることになりかねませんね。
では具体的な数字に関して触れておきます。生活資金として今どれくらい使っているのかを調査したところ、平均的な生活費は1ヶ月238,000円となっているようです。これは夫婦2人での生活費であり、単身者の方では1ヶ月142,000円の支出になっているとのことでした。
毎月の生活費は各ご家庭でさまざまですが、現在の日本国内の平均が上記の金額であるということが調査で判明していますので、皆さんの生活費が当てはまるかどうか、今の生活水準と比べてみて下さい。
次に高齢者の年金受給額について解説してきたいと思います。厚生労働省による調査で判明したことですが、国民年金と厚生年金とで受給額の平均値が分かりました。
改めて解説しておくと、国民年金は国民誰もが受け取ることのできる年金で、一般的に個人事業主で生計を立てている方などが該当します。厚生年金は国民年金の上乗せ部分にあたり、該当者はサラリーマンや公務員など会社勤めをしている方が対象となります。
では、いくらくらい受給しているのか見てみましょう。
国民年金は満額受給で1年間約78万円の年金額になります。1ヶ月に計算すると65,000円となりますが、調査で判明した平均値は1ヶ月55,000円であることが分かりました。
国民年金の方は稼ぐ金額も青天井ではありますが、逆に受け取る年金額が非常に少ないことが一つの事実でもあります。サラリーマンよりも稼げる・時間に自由があるなど制約を受けないメリットがありますが、稼げるときにしっかりと蓄えておきたいところですね。
厚生年金の方はこれまで支払ってきた期間や保険料、収入により受給額が変わりますので、一概には言えませんが、平均として145,000円であることが判明しています。これは1人分の受給額です。
男女でも平均受給額に差があり、男性の平均が166,000円、女性が104,000円であることが分かっています。
男女の平均合計であれば1ヶ月270,000円となり、税金を差し引かれても約250,000円になるでしょう。先程の生活費を差し引くと何とかプラスに転じることは分かりますが、決して余裕があるとはいえないでしょう。
それではここで、今の高齢者がどれくらい蓄えているのかを解説しておきたいと思います。老後の備えとして、皆さん何かしら蓄えをしているかと思いますが、平均してどれくらいなのでしょうか。こちらの図をご覧ください。
このグラフは平成29年度に内閣府が作成した高齢者白書より引用した資料です。60歳以上世帯の貯蓄平均額は2,396万円となっており、4,000万円以上の蓄えを保有している方は18.2%を占めていることが分かります。
これだけの蓄えがあれば老後の生活は安心だといえそうですが、対照的に、60歳以上で100万円未満の貯蓄額の割合が8%いらっしゃることも分かりました。
全ては貯蓄、定期預金、保険、投資信託、株などを含んでおり、準備している世帯や準備が困難な世帯などさまざまです。これから先の時代はこのグラフがどのような推移になるのか興味があるとともに、しっかりと将来を考えなければならないということが伝わってきますね。
それではここから、セーフティネットでもある生活保護に関して解説していきたいと思います。まずは受給するための条件から解説していきます。
生活保護は「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限の生活を保障し、その自立を助長する制度です」となっています。
憲法で保障されていることを忠実に守るための制度で、「資産や能力」とありますが、この点が受給条件に絡んできますので詳しく見ていきましょう。
生活保護を受給する要件に資産や能力の活用とありますが、具体的に解説すると次のようになります。
ほかにはこんな要件もあります。
そしてこのような要件もあります。
お分かりのように、生活保護は税金から支払われることになります。そして生活保護は本当の意味で最終手段になりますので、預貯金の有無や資産保有の有無、また負債の有無、親族への調査、健康状態の確認や就業の可否を判断するために役所から調査が入ります。
決して誰でも簡単に請求できるものではないということを知っておきましょう。
先ほど資産の活用について解説しましたが、原則として持ち家を所有している方の生活保護は認められません。まして、住宅ローンを抱えている場合は難しいでしょう。
理由として生活保護は税金からの支払いであり、国からの補助になります。国から補助を受けて住宅ローンを支払うということになりますので、このケースではまず認められません。
しかし、所有している自宅の資産価値にもよりますが、売却しても値が付かないなどは例外として認められる場合もありますので、一度自宅の資産価値を確認しておくことも大事です。
他にもマイカーなどを所有している場合は売却を勧められます。もちろん価格にもよりますし、車がなければ特別に困難な事由などがある場合は認められることもあります。
また預貯金など、多くの資産を保有している場合は認められません。この場合、市区町村によって最低生活費という金額が設定されています。この生活費を賄うための水準に達しているかいないかなどが調査されますので、隠すことがないようにしておいてください。
生活保護は高齢者だけに限った保障ではありません。中には病気などで、仕事をすることが困難な方や母子家庭なども該当します。しかし高齢者での受給割合は全体の半数を超えており、年々増加の傾向にあるようです。
年金だけでは生活できず、また病気、ケガが原因で働きたくても働けないなどの状況があるからです。もちろん年金といっても、生活できる水準以下の年金額では生活を維持することが困難なため、受給世帯が増加しているものと思われます。
ここからは私の私見を述べますので、参考にしていただければと思います。私の考えでは、これから先々生活保護を受ける割合は増えるのではないかと予想しています。
理由として、現在国民年金の免除者や未納者が増加していることが一つの要因ではないかと思っています。つまり国民年金の受給資格を満たすことができず、満額受給に届かないことで、老後の生活水準を割り込んでしまうことも考えられるからです。
実際に納付している割合は国民年金加入者の51%になっており、残りの未加入、免除者は49%にも上ります。将来の年金を悲観して支払わないといった理由もあるようですが、支払えるうちはしっかりと納めたいですね。
今回は老後の生活に関して、生活保護というテーマを絡めて解説しました。生活保護は最後の砦でもありますが、それ以上に生活する上で制約がかかることがあります。余裕ある老後を迎えるために、今からできることや改善できることを見つめ直したいですね。
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