- 退職金にも税金がかかるが、極めて割安!
- 退職金を年金形式でもらうと損しやすい!
- 退職金だけでは老後資金に足りない!
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こんにちは、婚活FP山本です。退職金といえば、サラリーマンにとっては数少ない大金を得られる機会といえます。しかしだからこそ、退職金にも税金がかかるのかどうかが気になる方も実に多いです。
「退職金があるから老後も大丈夫」と考えている方も多いですから、ぜひ事前に実際のところを知っておきましょう。そこで今回は、退職金と税金の関係や計算方法、受け取り時の注意点についてお伝えします。あなたの人生に、お役立てくださいませ。
目次
まずは早速、退職金と税金の関係についてお伝えします。結論からいえば、残念ながら退職金も税制上、税金の課税対象になる収入です。税金がかかると知るだけで残念に思う方も多いかもしれませんが、そういうルールですから、しっかり税金が必要なら納めましょう。
ただ、退職金というのは国から見ても「長年の勤労に対する報償的給与」と捉えているため、多額の税金を課すのは不適当とみなしています。だからこそ、多額の税金がかからないように複数の対策が講じられているのが実情です。
とはいえ、税金が発生するのは変わりません。可能であれば、少しでも事前に何らかの対策を取っておいたほうが安心です。まずは、このような基本について、しっかり知っておきましょう。
退職金にかかる税金とは、所得税と住民税です。そして、令和元年分の所得税の税率表は以下のようになっています。一度この税率表をもとに、事前に税金額や退職金の受取額などをシミュレーション計算しておくと、心の準備に繋がるのでおすすめです。
課税退職所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) |
---|---|---|
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
※計算方法はA×B-C
ちなみに退職所得はほかの所得と分離して課税されますから、それだけ税額も割安になり、税金計算も簡単といえます。計算が苦手な方も、ちょっとだけ励んでみましょう。
次は、具体的な退職金の税金計算の方法についてお伝えします。退職金の税金計算においては、最初に以下の公式で「退職所得控除額」を計算することが必要です。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
なお、1年未満の勤続年数の端数は、たとえ1日でも1年に切り上げて計算します。また障害者になったことで退職した場合は、上記の計算結果に100万円を加えた金額が退職所得控除額です。そして、控除しきれなかった残額の「半分」が、課税退職所得金額になります。
ほかの所得とは分離して計算でき、大きな所得控除が使え、しかも課税する場合も半分だけ……これが退職金の税制です。実際には、税金がかからないというケースも多いといえます。あとは先ほどの税率表をもとに、実際の税額と受取額を計算してみましょう。
先ほどの表を見ると分かるとおり、退職金は勤続年数が長いほどに所得控除が増えて課税対象額は小さくなります。また勤続年数が20年を超えると、さらに所得控除額が増額される設計です。これは、定年までの終身雇用が当然の、一昔前の常識がもとになっています。
だからこそ、今後この退職金に関する税制は見直される可能性が高いです。とはいえ、見直されるまではこのようなルールのままですから、しっかり覚えておきましょう。
ここからは、退職金の受け取りに関する注意点をお伝えします。まずは、退職金を「年金形式で」受け取る場合です。最近では大手企業を中心に、退職金を年金形式で受け取れる会社が増えています。そして年金形式のほうが、総額が増えることが多いので一見するとお得です。
しかし年金形式で受け取る場合は、先ほどお伝えした「退職所得控除」が使えなくなります。代わりに「公的年金等控除」が使えるものの、退職年金の金額によっては控除しきれないのが実情です。厚生年金と重なるころには、税金が増えてしまうこともあります。
このため、退職金を年金形式で受け取ると損になりがちです。選べる場合は、できれば退職金は一時金で受け取り、その後は自分で何らかの運用をしていきましょう。
退職年金と厚生年金が重なってしまうと、所得税や住民税などの税金だけでなく、社会保険料も上がってしまう可能性があります。「総額が増える」というのは確かに魅力的に映る人もいるでしょうが、税金なども含めて考えれば損になる可能性がある点には注意が必要です。
一方で、急に大金が入ってきたことで気が大きくなり、「使ってしまうリスク」が上がる点には注意が必要といえます。自己管理には気を付けて、退職金を有効活用していきましょう。
今度は、退職金に関係する書類についてお伝えします。これは必ず必要というものではありませんが、できれば事前に提出しておきたいのが「退職所得の受給に関する申告書」です。これを会社に提出しておけば、税金のことは源泉徴収で終了し、確定申告が不要になります。
この申告書を提出していない場合は、退職金の額面金額から一律に20.42%もの所得税(と復興特別所得税)が源泉徴収されますから、後が大変です。正確な税金額で清算するために確定申告が必要になりますから、できれば退職金を受け取る前に申告書を提出しましょう。
なお、良識のある会社なら事前に指導や指示があるでしょうが、そのような会社ばかりではありません。自分の身を守るためにも、自分でもしっかり知っておきましょう。
退職所得の受給に関する申告書を提出してもしなくても、最終的な税率や税額は変わりません。しかし一般的な会社員は、税金や確定申告に不慣れな方も多いといえます。そういう方なら、会社が代わりに税金額の計算や手続きをしてくれるほうが断然ラクなはずです。
退職金を受け取るということは、文字どおり会社を退職することになります。ということは、ほかにもさまざまな手続きが必要です。できれば少しでも労力を減らせるよう対処していきましょう。
今度は、当人の死亡にともなって受け取る退職金についてです。勤め先によっては、本人が亡くなったときには残される遺族に死亡退職金が支払われることがあります。そしてこの死亡退職金には、通常の退職金で必要だった所得税などはかかりません。
ただ、代わりに「相続税の課税対象」になります。ただし、「500万円×法定相続人の数」までは非課税となる扱いです。なお、生命保険も同様の非課税扱いがありますが、あくまで別枠となります。それぞれで、「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。
当人が亡くなったということは、以後の収入が不安定になる可能性が高いです。最大限に死亡退職金を活用して、その後の生活を安定させていきましょう。
保険料や想像への抵抗感などから、「死亡時対策」をしていない方も意外に多いといえます。幸運にも死亡退職金がもらえたとしても、その後の生活には全然足りないということも多いです。独身者ならともかく既婚者、特に子供がいる夫婦は要注意といえます。
死亡時対策の代表格は、先ほど触れた「生命保険(死亡保険)」です。亡くなってから焦っても手遅れですから、万が一のことが起こる前になるべく備えておきましょう。
最後に、退職金に関係する大切な補足情報をお伝えします。結論からいえば、退職金だけでは「老後資金2000万円問題」を対処できないという点です。勤め先によっては2000万円程度の退職金がもらえることもありますが、それでも足りないことが多いといえます。
というのも、この問題の2000万円というのは「最初の目標数字」であることが多く、実際には倍の4000万円程度が必要ということが多いです。2000万円もの退職金がもらえないことも多く、仮に定年後に再雇用されても収入は半減することも多いといえます。
つまり、この老後資金問題は老後の直前になってから焦っても手遅れで、もっと前の段階から備えを続けることが必要です。理想としては「結婚直後の生活水準や子供の数を選べるころ」、もっといえば「結婚相手を選べる婚活中」から、未来を見据えて動きましょう。
なお、もっと老後資金について知りたい方は以下記事も参考にどうぞ。
そもそも時代は終身雇用が崩壊中です。「長年勤めあげる」ということが難しく、最近では大手企業でも40代でリストラされることもあります。このため、多くの場合で退職金をアテにした老後対策というのは、そもそも無理があるのが実情です。
一方で、最近では年収の低い非正規労働の方も多く、新型コロナによって正社員でも雇用を失いやすくなっています。このため、老後対策がしにくいというのも確かな現実です。しかし、しなくてもよいとはなりません。できる限り、将来や老後に対して備えていきましょう。
なお、人生全体のライフプランが気になる方は以下記事も参考にどうぞ。
退職金に対する税金計算は大切です。しかし一方で、退職金の増額や別の老後対策も重要になってきています。今は、ただ真面目に働いていれば生涯安泰が当たり前という時代ではありません。
働くことさえ新型コロナで難しい方もいるでしょうが、ぜひこんなときこそ、未来を見据えた行動を取るよう心掛けていきましょう。
なお、将来対策の一環として貯金が気になる方は以下記事も参考にどうぞ。
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