- 失業保険の受給資格を得るには、「退職する前の2年間に12か月以上雇用保険に加入している」ことが必要。
- 失業保険の給付(給付金額や給付日数)は、直近の賃金日額や雇用保険の加入期間、離職理由などで決まる。
- 退職時には、離職証明書に記載されている離職理由は必ず確認する。
- 失業認定申請は、事前に所定の求職活動を行い、必ずハローワークが指定した失業認定日に行う。
公開日:2020年9月14日
失業手当をもらうには、少なくとも3回はハローワークに行き、説明会の参加や手続きが必要です。また、失業中の活動内容によって失業保険がもらえないケースもあるため、手続きの流れをしっかり把握し、スケジュール通りに手続きを進めることが重要です。
今回の記事では、少しわかりにくい失業手当の手続きの流れや方法、受給の条件や給付金の額などを解説します。
雇用保険の失業手当とは、正式には「雇用保険の基本手当」のことで「失業保険」と呼ばれることもあります。会社に勤務して雇用保険を加入期間など一定の条件を満たした64歳以下の人が失業した場合に支給される雇用保険の給付です。
失業保険をもらうには、最初に失業保険の申込をした段階で「受給資格」があり、その後に決められた求職活動を行うなどの「支給条件」を満たす必要があります。
最初に失業保険の手続きをしたときに、ハローワークでは求職者に雇用保険の「受給資格」があるかを確認します。求職者が最初に行う失業保険の手続きを「求職の申込」、ハローワークが行う受給資格の確認を「受給資格の決定」といいます。
受給資格があるのは、下記の要件を満たした人です。
「失業状態」とは、仕事をする意思と能力があるにもかかわらず就職できない状態のことです。定年退職してしばらくゆっくりしようと考えてる人や、病気やけがで仕事をできない人は「失業状態」ではありません。
失業保険の支給を受けるには、「受給資格の決定」を受けた人がハローワークの指定する失業認定日(求職の申込日から4週間ごとに設定される)に失業認定申請を行う必要があります。この申請が認められるには下記条件を満たす必要があります。
この条件を満たしていても、アルバイト収入が多くて失業保険が無支給(または減額)になったり、「求職の申込日」以降に病気やけがで15日以上仕事をできなくなって失業保険の受給資格を失うケースもあります。
失業保険の給付は、直近の賃金日額や離職時の年齢、雇用保険の加入期間、離職理由などによって大きく異なります。
失業1日あたりの失業保険の給付金額を「基本手当日額」、失業保険を受給できる最大日数を「所定給付日数」、支給を受けられる期間を「受給期間」といいます。
失業1日あたりの給付金額「基本手当日額」は、退職前の6か月の賃金(賞与は含めません)と退職時の年齢で決まります。まず退職前の6か月の賃金を180日で割って、1日あたりの賃金(以下「賃金日額」)を計算します。
「基本手当日額」は、「賃金日額」の50%(60歳以上は45%)~80%で、賃金日額と年齢で決まります。年齢別の上限額と下限額があり、毎年8月1日に改定されます。
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
---|---|---|
29歳以下 | 6,850円 | 全年齢2,059円 |
30歳~44歳 | 7,605円 | |
45歳~59歳 | 8,370円 | |
60歳~64歳 | 7,186円 |
失業保険を受給できる最大日数である「所定給付日数」は、離職時の年齢や雇用保険の加入期間、離職理由により決まります。
離職時の年齢 | 被保険者期間(雇用保険の加入期間) | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30才以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35才以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45才以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60才以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
離職時の年齢 | 被保険者期間(雇用保険の加入期間) | ||
---|---|---|---|
1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
失業保険を受けられる期間である「受給期間」は、原則「離職日の翌日から1年間」です。ただし、所定給付日数の多い人は受給期間が1年より長くなります。
また、受給期間内に病気やけがなどで継続して30日以上働けない日があれば、働けなかった日数分、受給期間を延長できます。
失業保険の手続きは、下記の5つのステップを踏んで行います。
退職手続き時に注意したいのが下記の3点です。
雇用保険加入者が退職するとき、会社はハローワークに「離職証明書」を提出し、ハローワークは「雇用保険被保険者離職票」を発行します。
離職票は会社から退職者に送付されますが、送付が遅れると失業保険の申請ができません。そのため、ハローワークへの離職証明書の提出や、離職票の退職者宛て送付が迅速に行われるよう会社に確認することをおすすめします。
退職前に「失業保険の手続き予定ですが離職票はいつごろ受け取れますか」と照会するだけでもいいでしょう。
離職証明書に記載されている離職理由は必ず確認しておきましょう。
会社都合の退職と自己都合の退職では、所定給付日数が大きく異なります。会社から言われてやむなく退職したのに自己都合退職とされている場合は、会社がハローワークに離職証明書を提出する前に訂正依頼を行いましょう。
「雇用保険被保険者離職票」を受け取ったら、ハローワークに行き失業保険の申し込みをします。これが「求職の申込」です。「求職の申込」に必要な書類は下記の通りです。
「求職の申込」をすると、ハローワークは受給要件を確認して「受給資格の決定」を行ないます。また、「雇用保険受給資格者のしおり」を交付し、次のステップである「雇用保険受給説明会」の案内などをしてくれます。
雇用保険受給説明会では、雇用保険制度や今後の求職活動の進め方、失業保険の申請方法などについて説明があります。ハローワークで指定された日に、「雇用保険受給資格者のしおり」や印鑑、筆記用具等を持参して参加してください。
また、説明会時に「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付され、第1回目の「失業認定日」が通知されます。ハローワークによっては、求職の申込日に交付・通知される場合もあります。
失業保険をもらうためには、「失業認定日」の前日までに下記の求職活動をしなければなりません。
※単なる求人情報の閲覧や知人への紹介依頼だけでは求職活動にはなりません。
1回目の失業認定申請では失業認定日の前日までに1回以上の求職活動の実績、2回目以降の申請では2回以上の求職活動の実績が必要です。
また、自己都合で退職した場合は、1回目の認定日前日までに3回以上の求職活動の実績が必要となります。理由は、自己都合の退職者には給付制限があり、待期期間満了後3か月間は失業保険が支給されないので、認定日が3か月+4週間後となるからです。
失業認定申請とは、ハローワークが指定した失業認定日に「失業認定申告書」を提出して失業保険の支給申請をすることです。失業認定日は4週間ごとに設定されているため、4週間に1回失業保険の支給申請をすることになります。
失業認定申請の必要書類は「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」です。「失業認定申告書」は事前に前日までの求職活動の状況等を記入して持参します。主な記入内容は下記のとおりです。
失業認定申請を行うと、ハローワークは「失業の認定」を行ない失業保険の支給が決定します。失業保険は1週間程度で指定口座に振込されます。
失業保険をもらうには、離職前の雇用保険の加入期間などの「受給資格」と、所定の求職活動を行うなどの「支給条件」を満たす必要があります。
失業保険の手続きの流れは、「1.退職手続き」「2.ハローワークで求職の申込」「3.雇用保険受給説明会に参加」「4.所定の求職活動」「5.失業認定申請」です。説明会への参加や失業認定申請は、必ずハローワークが指定した日に行いましょう。