- 出産手当金をもらうこと為に必要な要件には、どのようなものがあるかを把握する。
- 出産手当金が健康保険にしかない制度である理由とは?国民健康保険の制度との違いから理解する。
- 出産手当金は具体的にいくらもらうことができるのか?具体例からイメージできるようにする。
公開日:2018年10月30日
出産手当金とは、会社に勤務している人が出産のために休んだ日について、健康保険から収入の保障を行う制度です。
※他の出産に関する保障制度とは異なる点が多く、間違った解釈をされている人が多い制度とも言えます。
今回は、この出産手当金について「支給要件」「支給額」など、他の医療保険制度との違いを踏まえながら、正しく理解をしていただけるように説明をしていきます。
目次
出産手当金は、健康保険の被保険者本人が以下の全てに該当する場合に支給されます。
また、会社を辞めた人についても以下の要件のいずれにも該当する人なら、出産手当金を受給することができます。
つまり、健康保険に加入している会社に1年以上勤めた人が、会社を辞めてから6カ月以内に出産していることが出産手当金を受給するための要件になるということです。
いずれの場合についても、出産手当金の支給を申請するときは「健康保険出産手当金申請書(全国健康保険協会の場合)」を提出しなければなりません。
出産手当金は健康保険の保険給付の一つで、出産により仕事を休んでいるために「給与を受けることができない日」について支給される給付です。つまり、出産手当金は「出産の準備のため会社を休んでいる人の所得保障をするための給付」ということになるわけです。
出産手当金は「健康保険の加入者が出産した場合でなければ、出産手当金をもらうことができない」という特徴があります。なぜそうなっているのかについて、この点について、他の社会保険制度との対比をさせた上で、この理由について説明していきます。
健康保険と国民健康保険は同じ制度だと思っている人が多いと思いますが、実際には制度の趣旨が少し異なっています。そのため、会社に勤めているのか、自営業者であるかによって、必要となる保障内容などが異なるため、加入できる制度も異なります。
健康保険は労働者とその扶養親族の疾病、負傷、出産又は死亡について、保険給付を行う制度です。具体的には、労働者の仕事中以外で発生した病気やけがなどについて保障を行うものとなっており、被保険者の扶養親族についても、保障の対象とされています。
これに対して、国民健康保険は自営業者やアルバイトなどのように、健康保険に加入できない人の疾病、負傷、出産又は死亡について、保険給付を行う制度となります。
このことからもわかりますが、健康保険は働いている人の世帯を保護することを目的としているのに対して、国民健康保険は自営業者などのように、健康保険に加入できない人を保護することを目的としています。
出産手当金は労働者(被保険者)が出産のために会社を休んでいる期間について所得保障を行う制度です。つまり、労働者(被保険者)自身が出産を理由に勤務する事が出来ないことで、収入を得ることができなくなることを防ぐための保障です。
そのため、健康保険の被保険者である労働者が出産手当金を受給する権利を有しているということになります。
なお、出産手当金が支給される期間は「出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日」までです。この期間内において、出産を理由として休業をした場合に、申請をすることで出産手当金を受給することができます。
労働基準法によると、「出産日以前6週間から出産後8週間の間については労働をさせてはならない」と規定されています。(労働基準法第65条)
つまり、労働基準法によって、産前産後の女性については出産日以前6週間から産後56日までの期間については、働きたくても働く事が出来ない為、別の規定によって所得保障をすることで、生活を保障する目的の為に出産手当金という制度があると考えられます。
なぜ、扶養親族等には「出産手当金」がないのか?という疑問が生じるかと思います。その理由は、出産手当金が「出産をした労働者」についてのみ支給される手当であることです。
扶養されている人は、基本的に被保険者によって扶養されている人であるため、自身の所得はほとんどない状態であることが多いです。そのため、所得補償を趣旨としている出産手当金の性質には合わないところがあると考えられているためです。
出産手当金は「支給開始日(最初に出産手当金が支給された日)以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で除した金額(この金額を「標準報酬日額」といいます)」の3分の2相当額が支給されます。
出産手当金をもらうことができるのは「出産日以前42日(出産日を含んで42日前)」から「出産日後56日(出産日の翌日から56日)」までの期間内で、実際に会社を休んだ日について支給されます。
つまり、出産手当金は(原則として)最大でも98日分(42日+56日=98日)までしかもらうことができないということです。なお、多胎妊娠の場合は154日分(98日+56日)が上限となります。
出産日については、出産予定日から遅れて出産した場合は実際の出産日まで産前休業の期間として含まれます。そのため、たとえば、出産予定日から5日遅れて出産した場合は、予定日から遅れた5日分についても出産日以前の期間に含めて出産手当金の計算を行うことになります。
つまり、出産手当金が支給される期間が出産予定日から遅れて出産した場合は、遅れた期間分だけもらえる期間が延びるということです。
出産手当金の金額は、原則として出産手当金の支給が開始された日以前継続して12か月間の標準報酬月額を基準に算定されるのですが、入社して間もない人などのように、継続して12か月を経過していない場合はどうなるか?という問題がでてきます。
この場合は以下のいずれかの金額のうち、いずれか少ない金額を基準として出産手当金の金額を計算することになります。
出産手当金は、被保険者が出産によって休業したことにより所得が得られないことを保障する制度です。そのため、健康保険の被保険者以外の人(被保険者によって扶養されている人など)については、出産手当金が支給されません。
他の給付と異なり、出産手当金は「所得補償」が趣旨とされている保険給付であるため、他の給付(高額療養費や療養の給付など)のように一度申請して支給をされたら終わりというものではないところが大きく異なります。
また、健康保険には「全国健康保険協会(協会けんぽといわれるもので、ほとんどの会社の健康保険はこちらです。)」と「健康保険組合(大企業などで組織されていることが多い)」の2種類あります。
それぞれに申請の際に必要な書類や支給額なども異なるところがあるため、現在、自分が加入している健康保険がどれに該当するかの確認も併せて行うことが大切になります。
なお、出産に関する高額療養費についてはこちらをご覧ください。