- 個人事業主の給与は経費扱いできない。
- 生活費は売上から経費と税金を差し引いた残りのお金から捻出する必要がある。
- 生活費を賢く管理するには毎月定額を給与とみなしてあらかじめ決めた日に口座から引き落とすか、法人化を検討しよう。
公開日:2020年4月19日
サラリーマンの場合、労働の対価として勤務先から給与を受け取りますが、個人事業主の場合、売上の中から生活費を捻出する必要があります。事業用の経費や設備投資などと重ねて考える必要があるため、よりしっかり管理しなければなりません。
本記事では、個人事業主の給与について、基本的な考え方や生活費の管理方法をお伝えしていきます。
サラリーマンの場合、労働の対価として会社から給与を受け取ることができます。受け取った給与は基本的に源泉徴収済のものであり、その中から住宅ローンの支払いや日々の生活費などを支払っていけば問題ありません。
一方、自営業の場合は、事業の結果得られる売上の中から事業のための各種経費を支払い、さらに生活費も捻出する必要があります。
個人事業主の生活費の考え方として重要なことに、個人事業主が生活費として使えるのは売上の利益部分のみであるということが挙げられます。
先述の通り、個人事業主が事業の結果得られた売上からは、新たに事業に取り組むための仕入れや設備投資等の各種投資を支払っていく必要があります。
また同様に、この売上から生活費を捻出する必要があるのですが、もう一つ大事なこととして税金の支払いが挙げられます。
サラリーマンの場合は基本的に会社が源泉徴収してくれるため、受け取った給与をそのまま使えますが、個人事業主の場合は税金の支払いも考慮しながら生活費を捻出していかなければならないのです。
個人事業主は事業における各種経費や税金を考慮したうえで、毎月の生活費を捻出していかなければなりません。このことを簡単に計算式にしてみると、以下のようになります。
生活費=売上ー各種経費ー税金
このため、個人事業主の方が生活費の適切な額を算出しようと思えば、経費の額と税金の額をある程度想定しておかなければなりません。
まず、経費については具体的にどんなことにいくら支払いをする必要があるのかを把握しておくようにしましょう。例えば、年金や健康保険の支払いなどは毎月発生するものなので、あらかじめ固定費として押さえておくようにしましょう。
事務所を借りている場合はもちろん、自宅の住宅ローンの支払いや、賃貸の場合は家賃の額も経費と考える必要があります。さらに、これら経費のうち、税金の計算上、経費として計上できるものとできないものがある点に注意が必要です。
次項で、個人事業主の税金について見ていきたいと思います。
税金計算上の経費を考えるにあたり、最初に押さえておきたいこととして、給与は経費にできません。
個人事業主には「給与」という概念がないため、売上から生活費を捻出していかなければなりません。しかし、経費として計上しないからといって帳簿に何もつけずに生活費として使ってしまうと、つじつまが合わなくなりますよね。
このため、個人事業主では生活費を「事業主貸」という勘定科目で計上することになります。事業主貸とは、事業上のお金を事業主に貸し出したということです。
もちろんですが、これは単なる帳簿をつけるためのルールであり、実際にはお金を借りた人とお金を貸した人は同一人物のため、返済する義務はありません。
一方、個人事業主の方で家族を従業員としている場合、家族に支払う給与は経費として計上できることになっています。そもそも個人事業主の方は従業員へ支払う給与は「給料賃金」という勘定科目で経費計上できることになっています。
一方、生計を共にする家族への給与については、通常は経費とできません。これを認めてしまうといくらでも経費にできてしまう可能性があるからです。
家族への給与を全額経費計上するためには、青色申告する必要があります。青色申告とは、複式簿記による方法で帳簿をつけるなど、一定の条件を満たした上で、事前に税務署に対して届出をしていることで受けられるもので、最大65万円の控除を受けられる青色申告特別控除などがあります。
ただし、家族への給与を全額経費計上するには、青色申告に関する届出とは別に「青色申告専従者給与に関する届出書」を提出する必要がある他、以下のような条件を満たさなければなりません。
個人事業主は、「事業所得」や「雑所得」として売上から経費を差し引いた額を計算し、その所得に対して税金が課されます。なお、所得税の税率は、所得が高くなればなるほど税率も高くなる累進課税制度となっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
さらに、住民税としておよそ10%の税率が課されます。所得税は1月1日~12月31日の間で得た所得を、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告して税金を納めます。納税期限は通常3月15日までですが、口座からの引き落としという形にすれば4月中旬頃になります。
個人事業主は毎月の売上が手元に残るため、勘違いしてしまいやすいのですが、この税金を納めて初めて、手元のお金が自由になるものだと考えておくとよいでしょう。
なお、住民税は5~6月頃に手元に届く納付書で3カ月分を4回に分けて支払っていくことになります。これら所得税や住民税の額については、上記税率を知っておくとある程度計算することが可能なので、把握しておくことをおすすめします。
生活費を賢く管理する方法としておすすめなのが、先ほどご紹介した方法で住民税と所得税の額をある程度想定しておき、想定される売上から経費と税金を差し引いたうえで、毎月同じ日に同じ額を給与のように生活口座に移すという方法です。
こうすれば、サラリーマンの給与のように扱うことができ、生活費を管理しやすくなります。ただし、毎月売上や経費が想定通りになるというわけではないので、順次調整していくことが求められます。
生活費を管理しやすくなる方法として、他に法人化することが挙げられます。法人化することで経営者への給与を経費にすることができ、会社のお金と個人のお金を明確に区分できるようになります。
ただし、個人事業主で売上が少ない内は法人化することで税金の負担が大きくなってしまう可能性があります。もちろん、法人化することで社会的信用が高まるなどのメリットがありますが、基本的には「売上が一定額以上になったとき」と考えるとよいでしょう。
一定額についてはケースバイケースのため必ずしもいくらとは言えませんが、一つのポイントとして、所得税の税率が高くなる「所得900万円を超える時」を目安としてみるといいでしょう。ただし、実際に判断する際には税理士に相談することをおすすめします。
個人事業主の経費についての考え方や生活費の管理方法、法人化を検討する際のポイントなどお伝えしました。個人事業主は売上から経費や税金を差し引いたお金の中から生活費を捻出していかなければなりません。
全てを把握する必要はありませんが、本記事で紹介した内容を理解し、毎年ある程度税金の額と経費の額を想定したうえで、生活費を計算することをおすすめします。
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