- 個人事業主の方は個人名義と屋号名義2種類の口座を持つことが可能。
- 屋号名義の口座は事業の実態などについて確認されるため、口座開設に一定の審査がある場合がある。
- 現金決済よりも報酬を振込で受け取ることが多い場合は、屋号名義の口座の方が取引先に信頼されやすい。
公開日:2020年3月30日
個人事業主として仕事をするうえで必ず必要になるのが、専用の銀行口座です。私用の銀行口座をそのまま使う人もいますが、記帳がしにくくわかりにくい状態になるため、基本的には私用と事業用で口座は分けることをおすすめします。
ただ、個人事業主用の銀行口座の開設は、個人口座の開設よりも手続きが複雑な場合があるので注意が必要です。そこで今回は、個人事業主の銀行口座の開設方法や必要書類などについて詳しく解説します。
個人事業主の方が銀行口座を開設する場合、2つの選択肢があります。
すでに持っている銀行口座とは別に、個人名義の口座を開設します。この場合は、すでに口座を持っている銀行では開設できないので別の金融機関で口座を開設することになります。
口座開設の方法は個人の口座を開設する場合と全く同じなので、比較的簡単に開設することが可能です。
個人事業主の口座を個人名義で開設する場合、次の本人確認書類のうちいずれかを金融機関の窓口に持参して手続きをします。
これらにプラスして銀行印として登録する印鑑を持参しましょう。なお、印鑑のサイズについては特段の規定はないので、100円ショップで売られている印鑑でも登録すること自体は可能です。
ただし、シャチハタやゴム印については偽造などの恐れもあることから利用できません。通常は次のようなサイズが一般的とされています。
・男性用:直径13.5~15mm
・女性用:12~13.5mm
印鑑の印影は苗字だけ、名前だけ、フルネームの3種類がありますが、どのパターンでも銀行印として登録することが可能です。
私は以前に外国人の方の口座開設を手伝ったことがあるのですが、外国人ですから当然印鑑は持っていません。中国や韓国の方であれば同じ漢字の印鑑が売られていることはありますが、欧米の方の印鑑は特注しないと無理でしょう。
ただ、外国人の場合は特段印影と本名が一致していなくても登録することができるようです。私が手伝った方は中国の方でしたが、100円ショップで鈴木という印鑑を買って銀行に持ち込みましたが、普通に口座開設ができました。
個人商店や事務所など、法人ではないものの看板を掲げて商売をしている方については、個人名義の口座ではなくこうした屋号名義の口座を作りたいという人もいるのではないでしょうか。
屋号については法人のように明確な登録基準がないため、屋号名義の口座を開設する際には個人口座とは違い、開設するにあたって一定の審査が行われる場合があります。
屋号とはいわゆる店舗名や事務所名のことを指していますが、法人口座のように組織名だけの口座名義になるわけではありません。基本的に屋号名義の口座については、屋号にプラスして個人名義も列挙される形になります。
屋号名義の銀行口座はオレオレ詐欺などに悪用されることもあるため、銀行によっては審査が非常に厳しかったり、屋号名義の口座開設自体を受け付けていなかったりする場合もあります。
手続きをする際には事前に金融機関のホームページで確認することをおすすめします。
ここからは屋号名義の口座の作り方の流れについて開設していきたいと思います。
屋号名義の口座は個人名義とは違い、必要書類が別途必要になるほか一定の審査が入ることもあるので、申請したとしても開設できない場合もあるようなので注意が必要です。
屋号名義の口座開設に必要な書類は金融機関によって異なりますが、概ね先ほどの個人名義の口座開設に利用する本人確認書類に加えて、以下の書類のうち1つの提出が必要になります。
これらの書類の提出を求める意図は、事業の実態を確認するためです。先ほども言った通り、屋号名義の口座は詐欺に悪用されてトラブルになることがあるため、必ず屋号名義の事業の実態を金融機関側が確認します。
そのため、形式的に確認するというよりもこれらの書類を確認して営業実態があるかどうかを確認するので、例えば自宅で事業をしている場合に、自分で自分に賃貸している内容の賃貸借契約書を形式的に作成して提出しても審査は通りません。
このあたりについては、昔に比べて審査が非常に厳しくなっていますので十分注意が必要です。
私も数年前に屋号付きの口座を開設した経験がありますが、上記書類だけでは審査が通らず、事業をしている実態を示すために営業で使っているパンフレットなどを別途提出し、事業内容を説明したことで何とか口座を開設することができました。
このように、屋号名義の口座は個人名義の口座に比べて開設までのハードルが若干高いので注意しましょう。
では個人名義と屋号、個人事業主が口座を開設するとしたらどちらがおすすめなのでしょうか。
クラウドワークスやランサーズなどを活用して活動する、いわゆるフリーランスの方については簡単に開設できる個人名義の口座で十分でしょう。
むしろ屋号名義の口座だと、振込先として登録できないケースもあるため、フリーランスであれば個人名義の口座をもう一つ開設すれば問題ありません。
そのほか飲食店や個人商店など現金決済が主体の場合で、銀行口座に直接取引先から報酬を振り込んでもらうことがない業種業態については、個人名義の口座でよいでしょう。
個人として一事業を立ち上げて営業活動を行うケースについては、屋号付の銀行口座がおすすめです。取引先に請求書を発行する際に、口座名義が個人名義よりも屋号名義の方が相手に与える印象がよいです。
取引先にきちんと事業としてやっているんだな、ということをわかってもらえる意味でも、屋号名義の口座を開設したほうが信用度も高まるでしょう。
屋号名義の口座を開設する際、金融機関によっては通帳がないタイプのものとあるタイプのものがあり、迷うことがあります。どちらにするかは好みによりますが、基本的には通帳なしタイプの方がおすすめです。
通帳がないタイプでも、ウェブ上で入出金記録を簡単に閲覧できますし振込も簡単です。昔のように通帳と印鑑を銀行に持参して手続きをする機会はほとんどなくなりましたので、管理・保管が大変な通帳をわざわざ作らない方がリスク管理になります。
通帳がなくてもウェブ上から入出金記録を出力して印刷することも可能なので記帳に問題はありませんし、最近の会計ソフトであれば直接データを連動させて自動的に記帳することも可能です。
なお、通帳はなくてもキャッシュカードは通常通り発行されますので問題ありません。
屋号名義の口座を開設する場合、どこでも好きな銀行で開設できるわけではありません。基本的に事務所の所在地を管轄している支店の金融機関でないと申し込みを受けてもらえないことが多いです。
例えば自宅で事業を営んでいる場合、自宅周辺にある金融機関でしか屋号名義の口座が開設できない可能性が高いです。そのため、希望する金融機関があったとしても、必ずそこで口座が開設できるとは限りません。
まずは事務所周辺の金融機関を検索して調べたうえで、屋号名義の口座開設が可能かどうか一件ずつ確認していくことになります。
屋号名義の口座を開設するのにおすすめなのは、実体店舗を持たないネット銀行系です。ネット銀行系は手続きをすべてオンラインと郵送だけで完結できるため非常に簡単に屋号名義の口座を開設できます。
例えば楽天銀行のビジネス口座であれば、個人名義の口座を持っている場合、以下のいずれかを郵送で提出することで屋号名義の口座を開設することができます。
上記は個人事業を始める際に最初に提出するものなので、簡単に手に入ります。またスマホ上でも簡単に決済できますので、迷っている方はネット銀行で屋号名義の口座を開設してみてはいかがでしょうか。
屋号名義の口座を作るとして、どのタイミングで作るのがベストなのでしょうか。ネット銀行系であれば比較的審査が緩めなので、開業前で実績がない状態でも開業届を提出していれば開設することが可能です。
対して、都市銀行系などはある程度の営業実態がないと開設できない場合もあるので、まずは取り急ぎ細かな書類が不要なケースが多いネット銀行系で口座を開設しておいて、その後必要に応じて都市銀行系も開設して変更するといった形がよいと思います。
今回は個人事業主の方向けに、屋号名義の口座開設方法について開設してきました。
屋号名義の口座を持つと事業を始めたという気持ちが強く持てるため、できることなら開設することをおすすめしますが、個人名義の口座よりも開設するためのハードルが若干高くなります。
現金決済ではなく取引先から振込で報酬を受け取る業態については、個人口座と屋号口座では相手に与える印象や安心感が変わってきますので、長い目で見ればできる限り屋号名義の口座を開設したほうがよいでしょう。
ネット銀行系なら比較的簡単に開設できるケースもあるので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。