- 住民税は納付書で払う普通徴収と給与から差し引かれる特別徴収がある。
- 住民税を滞納すると支払うまでの間延滞税がかかる。
- 督促状を無視していると、銀行口座などの財産が差押さえられる。
公開日:2020年6月14日
税金を納めることは国民の義務ですが、場合によってはお金がなくてどうしても払えないという状況に陥ることがあります。中でも甘く見ている方が多い税金が住民税です。
そこで本記事では、住民税が払えない場合にどうなるのか、そして払えない場合の対処法について詳しく解説します。
そもそも住民税と所得税の違いについて、よくわからないという方もいるのではないでしょうか。
住民税とは各地域の行政が行っているサービスなどを維持していくために負担する税金で、自分が居住している都道府県に支払う都道府県民税と、市町村に支払う市町村民税、特別区民税のことをいいます。
支払った税金は地域の公園の整備や、学校や図書館の運営など生活インフラとして必要不可欠な部分に使われるので、住みやすい街づくりのためにも絶対に納めなければなりません。
対して所得税は所得に対して課税される国税で、所得金額が高くなるにつれて税率も上がります。社会全体のために使われる貴重な財源であり、国全体のために使われるという点で住民税とは異なります。
住民税はその人の住んでいる住所地の自治体から課税される税金です。住民税はその人の所得に応じて課税される所得割と、定額が課税される均等割で構成されているので、収入が多い人ほど住民税の金額も高くなります。
所得税とは所得に対して課税される税金なので、そういう意味では同じです。
住民税の納税方法は本人が個人事業主か、それとも会社員かによって変わってきます。個人事業主など会社勤めではない方の場合は、自分自身で納税する普通徴収という方法で納税することになり、流れとしては次のとおりです。
2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う際に、住民税について書く部分に必要事項を書いて申告をする。
確定申告をするとその人の所得などの情報が、おおむね4月から5月くらいにかけて市町村にいきます。市町村はその情報をもとに住民税を計算します。
毎年6月頃になると市町村から住民税の納付書が届きますので、郵便局などに持ち込んで納税をします。住民税の納付書を紛失した場合は、直接役所に問い合わせることで再発行することも可能です。また、自治体によっては役場のサービスセンター窓口などで直接支払うこともできます。
このように住民税は基本的に自分自身で納税する必要がありますが、会社員の場合は給与から天引きされる特別徴収という方法がとられます。よって、給与の支払いを受けているということは住民税も自動的に納税されていることになるので、滞納の心配はありません。
正社員ではなくパートやアルバイトで勤務している場合、住民税はどのように支払えばよいのでしょうか。
パートやアルバイトであっても、前年に給与を受け取っていて当年の4月1日の段階で給与を受け取っている場合は、特別徴収によって納税することになるので、勤務先が住民税を差し引いて給与を支払います。
つまり、非正規雇用者でも継続して働いている方については、正社員と同様に住民税は特別徴収されているというわけです。ただし、次のケースについては例外的に給与から差し引かれずに、普通徴収によって自分で住民税を納税しなければなりません。
これらに該当する方は、給与から住民税が自動的に差し引かれて支払われていない可能性がありますので注意が必要です。
最近はアルバイトを掛け持ちしていて、住民税を天引きで支払っていると勘違いしているフリーターの方がときどきいますが、そのケースでは普通徴収になるので自分自身で納税する必要があります。
前述したとおり住民税は所得に対して課税される税金なので、仕事をしていなければ減免されると思うかもしれませんが、実はそうとは限りません。
住民税を滞納する方の中には、金銭的な事情で払えなくなる人のほか、本来納税義務があるにもかかわらず納税を忘れて滞納してしまうケースもあるのです。
仕事を辞めて転職活動をしている人は、その間収入はなくなりますが住民税は課税されます。なぜなら住民税は前年の所得に基づいて計算をされているからです。例えば、2019年に仕事を退職して求職活動中の場合、2020年の住民税は2019年の所得をベースにして課税されます。
就職している間については勤務先が特別徴収して納税しているので、住民税を滞納する心配はありませんが、退職している場合は特別徴収から普通徴収に切り替わっているため、納付書で納税しなければなりません。
結婚を機に会社を退職して専業主婦になる人もいると思いますが、この場合にも注意が必要です。結婚すると夫の扶養に入ることになるので、それによって住民税がかからなくなると思っている人が多いのですが、実はそうとは限りません。
先ほどの転職中のケースと同じように、住民税は前年の所得に対して課税される税金なので、専業主婦で無収入だとしても翌年については住民税が課税されます。
このように住民税は現在収入がある人はもちろんですが、無収入だとしても課税されることがあるので、中には支払いが難しく滞納してしまう人もいるようです。では、住民税を滞納すると具体的にどうなってしまうのでしょうか。
特別徴収の場合は、勤務先が勝手に差し引いて支払っているのであまり気にすることもないかもしれませんが、普通徴収の場合は自分で支払うので支払い期限について予め知っておく必要があります。住民税は年4回に分けて次のタイミングで支払います。
住民税の納付期限を過ぎた場合は、自治体から督促状が送られてきます。支払いが期限を過ぎてしまうと、遅れた日数分延滞税が課税されるのでより負担が重くなってしまうのです。
平成30年から令和2年の場合、納期限の翌日から1ヶ月までは年2.6%、納期限の翌日から1ヶ月を経過した日から納付日までは年8.9%の延滞税が加算されます。
役所からの督促状を無視し続けると、最終的には財産を差押さえられることになります。
通常、損害賠償請求などで財産を差押さえる場合は、裁判を起こした上で勝訴した後でなければ差押さえができませんが、税金の支払いは国民にとって最優先事項であり、支払うことは義務なので、裁判を経ることなくいきなり差押さえになるのです。
では差押さえされると、具体的にどうなるのでしょうか。住民税のケースでは、支払期限が過ぎてからおよそ20日以内に督促状が届くことになります。
この督促状が差押さえのシグナルです。国税や地方税は督促状が送られてから10日以内に支払いがされないと、いつ差押さえされてもおかしくない状況になります。
ただ実際は、差押さえすると本人にかかる負担が大きいので、10日が過ぎたとしてもいきなり差押さえがされるケースは少なく、まずは役所から電話などで督促されることが一般的です。場合によっては、役所の人が自宅まで来るケースもあります。
再三の督促も無視し続けると、最終的には役所から最終催告書といった書面が届きます。この書面は簡単にいうと「もう差押さえしますよ」という意味です。
役所も鬼ではないので、きちんと対応していればすぐに差押さえはしませんが、支払う見込みがないと判断した場合は差押さえの手続きに移行します。
差押さえが行われると、どの財産を差押さえるかによって変わってきますが、住民税の滞納で少額であれば銀行口座の差押さえになることがあります。銀行口座が差押さえられると、強制的に税金が差し引かれてしまうので注意が必要です。
差押さえとなると、納税者にとっては不意打ちのようになるので、役所としてもできるだけほかの手段で解決することを望んでいます。では、差押さえを逃れるためには具体的にどうすればよいのでしょうか。
一番よい方法は、督促状が来る前に一度役所に出向いて相談することが得策です。この際、突然アポなしで行くと迷惑がかかるので、事前に役所に電話をした上で指定された持ち物を持って行くとスムーズに対応してもらえます。
役所側は相手に支払う意思があるかどうかをよく見ていますので、自ら相談に出向くことでいきなり差押さえされる状況を回避できるのです。いくらでも待ってもらえるわけではありませんが、相談をすることで何らかの解決策が見えてくるでしょう。
住民税を払えない原因が借金にあるならば、弁護士に相談して債務整理を検討することも必要になってきます。場合によっては、自己破産も検討して生活の再建を考えましょう。
自己破産というとネガティブなイメージがありますが、税金以外の債務がチャラになる最終手段なので、税金の滞納がたまってしまう前に手続きを考えることをおすすめします。
また、住宅ローンの返済もある方は任意売却という手続きを利用できれば、自己破産を回避できる可能性もあるので、諦めずにまずは相談してみましょう。
住民税を甘く見ていると、いきなり銀行口座が差押さえられて強制的に徴収されてしまう可能性があります。また延滞税の額も大きな負担になるので、支払えない状況でも放置するべきではありません。
できる限り早い段階で、役所に相談することで分納に応じてもらえたり早期の差押さえを避けることができます。それでも厳しい場合は、弁護士に相談して任意整理や自己破産などの債務整理を検討しましょう。
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