- 住民税の支払いを放っておくと最悪差押えになる。
- 支払いが厳しかったり、支払い忘れがあった場合は直ぐに役場へ行く事が大事。
- 支払いを無視すると社会的信用を失う事に繋がるので注意。
公開日:2019年12月10日
今回は住民税が払えなくなった場合について解説していきたいと思います。これまでは住民税の仕組みや詳細等解説が主でしたが、実際に支払いに際した場合、うっかり忘れていたや、支払うお金が手元に無い等の諸事情もあるかと思います。
そんな時どうすればいいのか?どんなリスクが発生するのかを解説しますので、参考になればと思います。
なお、住民税の基礎知識に関しては以下をご覧ください。
目次
まずリスクについて解説します。住民税をもしも支払っていなかったらどうなるのでしょう?裁判になるのかな?凄い取り立てに遭うのかな?とネガティブなイメージが先行してしまいますよね。では具体的にどうなるかを解説します。
では具体的な流れについて解説します。まず前提として、住民税を支払っていなかったとします。すると、納付期限から10日以内に書面で未納の通知が自宅に届きます。
一般的にはこの段階で納付を忘れていたと気づき納付すれば問題はありません。しかし、その通知すら無視したとします。
次に届くのは「督促状」です。少し強めの言葉に変わって通知が届きます。また電話連絡も来ますので対応したいところですが・・・更に無視を貫いたとします。
次に届くのは「催告書」と呼ばれる督促よりも強い言葉になります。内容は先程とは異なり「法的措置」の文言が記載される事になります。「法的措置」という言葉に免疫が無ければ誰でも驚きますよね。
また最近の時流と言いますか、偽造された督促状などで詐欺を働く連中もいますので、身に覚えのない督促状は無視しましょう。ここで用語について解説をしておきたいと思います。
督促とは返済や納付すべき金額が支払期限を超え確認できない場合に、返済、納付を促す場合に使われる。ニュアンスとしては請求書に近いですが未納である事には変わりはありません。
催告とは督促と異なり、書面にする場合内容証明郵便にて送達される為、送付、受取の記録が郵便局に残ります。「書面を受け取っていません」といった嘘がばれる事は確実です。ニュアンスとして催促に近いです。
さて催告書まで無視したとします。次に行われる事は差し押さえです。いきなり差し押さえという事ではなく、「このまま放置すると、あなたの財産を差し押さえなければならなくなります」という通知です。
更に更に無視したとします。最終的には「差押え予告通知」が届きます。そこには納付期限が明記されていますが、これすらも無視してしまうと最終的に財産を差し押さえられる事になります。
最悪のケースで財産や給与等の差し押さえになりますが、差し押さえに至るまでは未納した日から最短で1ヶ月で実行に移すことが可能です。
とは言え、さすがにそこまで短い期間で差し押さえられる事はあまり聞いた事はありませんが、猶予は無いという事だけ憶えておいて下さい。
先程は督促状に始まり、全て無視した場合について解説しましたが余程の事情や鋼のメンタルが無ければ起こり得ない事です。
ここで少し余談を挟みますが、住民税は地方税に該当し行政が管理する事になっています。行政管理で言えば、国民年金や社会保険料も同じです。民間業者との取引ではありませんので、裁判などを経ることなく差し押さえに踏み切る事が出来る権限があります。
私が差し押さえられた訳ではありませんが、以前勤めていた会社が差し押さえをされた事がありました。法人であった会社は社会保険料や他税金を滞納し督促や催告を無視し続けました。
そもそもですが、無視する理由が分かりませんでした。結果、会社の売り上げが入る口座が差し押さえられてしまいました。
この時判明した事ですが、実は私の住民税も支払われていませんでした。通常サラリーマンであれば特別徴収といって給与から住民税が天引きされます。個人に代り会社が各自治体に納める事になりますが、約1年分近く滞納の事実が分かりました。
退職までに清算してほしい旨伝えましたが、数カ月分の未納を残し退職日となりました。退職後も役場へ確認しましたが、依然支払われてはいませんでした。
本来法人が納めるべき税金ですが、滞納の為恐らく差し押さえになっているのではないかと思います。中々出来ない経験でしたね。
ここまでは住民税の支払いを未納のままにしたらどうなるかという流れについて解説してきましたが、問題はその後です。差し押さえられて「ハイ!お終い!」とはいきません。どんなリスクがあるのか解説します。
住民税は個人、法人と納めなければならない税金です。最悪のケースで差し押さえとなった場合ですが、差し押さえに至るまで、財産や預貯金などの調査が行われます。
この時、HP等を開設していれば主要な取引先銀行や取引先等を記載している会社等少なくありません。これらを見た行政が銀行や取引先に押さえられる財産の照会を行う事になります。
当然照会された会社は「あの会社大丈夫かな?」と思いますよね。銀行預金などに金額が無ければ、売上が発生する元から差し押さえられる事もあります。そうなれば仕事での信頼関係は無くなり、取引停止になるケースもあります。
先程体験談で話した法人も、取引業者に照会が入り、結果全ての取引が出来なくなってしまいました。
ケースとしては珍しいかもしれませんが、転職した最初の年は給与天引きにならない事もあります。結果自分で納税しなければなりませんが、その際にお勤めの会社へ給与額等の照会をされる事もあります。
照会してはいけないルール等ありませんし、むしろ支払わない方が悪いので致し方ありません。この場合、会社の人事や総務に連絡が入る事になりますが、かなり心象は悪くなるのではないでしょうか。
お金を借りたり、CDやDVDレンタルした場合必ず返済や返却期限が決まっています。住民税も同じく納付の期限は決まっていますが、もし遅れた場合どうなるでしょう。
お金やレンタル等は延滞料金が発生します。住民税も同じく延滞金が発生します。では具体的にどれくらいになるのか触れていきますね。
延滞金の計算式は以下の通りになります。
※延滞の割合とは納期限から2ヶ月を経過しているか、していないかで税率が変わります。
上記の様に納付期限から2か月以内かそれ以上かで税率が変わります。ここで特例基準割合について少し解説しておきます。
特例基準割合とは日本国内の銀行における貸出約定平均金利として財務大臣が告示する割合に1%を加算したものです。本年は0.6%と告示されているため特別基準割合として年率1.6%となります。毎年変動する数値でもあります。
少しややこしいかもしれませんが、2か月以内の滞納であれば2.6%、2か月以上であれば8.9%という率が加わったものが延滞金として納税しなければならない金額となります。なるべく延滞はしない様にしておきましょう。
厳密に言えば住宅ローンを申し込む際の保証協会やフラット35を利用する場合に「納税証明」を取得しなければなりません。納税証明とはそのままの通り、納税を証明する公的書類です。
日頃はあまりお目見えする事はありませんが、住宅購入の様に証明を求められた場合は引っかかる可能性もありますので注意が必要です。
住宅ローン等はある程度話が煮詰まってきたら申込等に進みますが、納税証明で躓いては今までの話が台無しになります。購入をご検討の方は前もって役場で確認できますので、念の為取得してみてもいいかもしれませんね。
先程の体験談の続きですが、退職後も住民税に関して以前の会社は全く支払ってはくれませんでした。何かペナルティがあるのかと思い、役場へ確認しました。
役場の方は、あくまでも法人が支払う義務を負いますので、私には何のペナルティもありませんと回答して下さいました。しかし、先々納税証明を必要とする時が来たらその時は引っかかる可能性もありますとの事でした。
事実上倒産した会社に支払うだけの体力が無い事も分かっていましたので、数か月分は自分の身を助けると思い自身で納める事にしました。
特別徴収と信じ切っていましたが、隠れてこんな事になっているとも思わなかったので、何とも税金の大切さや信じた会社への不信感など複雑な心境だった事を思い出しますね。
ここからは未納になり易い又は見落としがちな方を解説したいと思います。通常サラリーマンであれば、余程の会社でない限り特別徴収で給与天引きになっているはずです。ですので見落とす事はまずあり得ません。ではどんな方が未納に陥りやすいのでしょう?
これは徴収の方法が普通徴収と呼ばれる方は未納になり易いのではないかと思います。(かくいう私も今は普通徴収ですが1日遅れた事がありました・・・)
個人事業主の方は確定申告と同時に住民税の計算まで完了します。その後忘れた頃に納付書が4枚送られてきます。納期は全てバラバラです。1期ずつ支払う場合、期間が開いてしまうと失念し易い場合もあります。
例えば結婚前まではバリバリに働いていた方や一旦退職してリフレッシュの為、少し仕事から離れた方等は未納になり易いです。
理由は住民税の計算の仕組みにあります。住民税は前年の所得に応じ計算され翌年納税する方法です。例えば平成30年12月31日を以て退職し、翌年からは仕事をしないとします。
このケースで言えば、平成31年(令和元年)の6月に納付書が送られてくる事になりますが、退職してしまっているので収入が無いですよね。ある程度の貯蓄があれば問題はないでしょう。収入が無い中での支払いは痛い出費となります。
この様に退職後の翌年は大きな出費が予想されますので、退職をお考えの方は住民税の事まで考えておいた方が良いでしょう。
実は住民税を支払わなかった場合、時効が存在する事はあまり知られてはいないかもしれませんので、ここで触れておきます。但し、現代のデータ管理において時効はまずあり得ませんので頭の片隅にでも憶えて頂ければと思います。
例えば未納が発生し督促状が届くとします。そこから起算して3年間何の音沙汰も無い(この場合督促状や催告書などが全く来ない事を指します)場合時効となります。
つまり行政からアクションが無ければという事です。しかし、現在はデータ管理され、自動発送等も完備されてあるでしょうし、アクションが無い事はまず皆無でしょう。
また催告書等が次に送られてきますので、到着した日から新たに3年とリセットされますので、憶えておいて下さいね。
さて今回の記事の最後になりますが、未納が発生した場合の対策を解説していきます。基本は支払う事が対策になりますが、どうしても厳しい場合は誰しもあるはずです。
その場合無視をする事ではなく、しっかりと役場に出向き理由を添え支払いの意思がある事をしっかりと伝える事が大事です。支払いの意思があるのか無いのかでは結果が全く異なります。
どうしても一括または4期に跨って支払いが難しければ分割して納める事にしてくれます。督促状や催告書等を変に捉え無視し続ける方が首を絞めてしまいますので、絶対に無視せず相談する事をお勧めします。
前述した私の以前の勤務先は、無視に無視を重ね1年後には差し押さえが実行されました。恐らくですが、悪質であると判断されたと推察します。意思も示さず、相談にも来なければ行政も然るべき措置を講じますので、何度も言いますが、絶対に相談に行きましょう。
特に失念し易いのが普通徴収の方です。自分で納付しなければなりません。この場合、指定の口座から引き落とす手続きも出来ますので、忘れてしまいがちな方は口座振替に変更する事で支払い漏れを回避できますので、対策としてお考え下さい。
今回は住民税を滞納してしまった場合等について解説してきました。金額の大小はあるかもしれませんが、「税金」である事に変わりはありません。また相手が行政である以上、逃げ切れる事は無いです。
国民の義務でもありますのでしっかり納税しましょう。どうしても困難だという事であれば、必ず相談しましょう。