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自己破産したらその後の暮らしはどうなる?生活面でのリスク・注意点をFPが解説!

自己破産したらその後の暮らしはどうなる?生活面でのリスク・注意点をFPが解説!

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手塚 大輔

手塚 大輔

FP2級、日商簿記検定2級、証券外務員

地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を担当。ファイナンシャルプランナーの資格を有する、100件あまりのフリーローン、住宅ローン数十件、その他に投資信託・個人年金・国債販売も取り扱う。 現在は、飲食店のオーナーを務める傍ら、金融ライターとして大手メディアに数多く寄稿。

この記事のポイント

  • 自己破産をすると20万円超の財産は没収される。
  • ほとんどの場合で会社にはバレないので、日常生活に影響はない。
  • 財産隠しは絶対にNG。

「自己破産をすると、生活をしていくことができない」と、何となく思っている人も多いのではないでしょうか?確かに自己破産をすると、財産は没収され、生活は変化せざるを得ません。

しかし、自己破産をしてもその後の生活を維持していくことができるようになっていますし、大抵の仕事はそのまま続けていくことができます。自己破産をした後は、生活にどのような影響を与えてしまうのでしょうか?今回は「自己破産のその後」について解説します。

 

自己破産をしたらどうなるか①|自己破産とは

自己破産をするとどうなる?

自己破産とは、「財産を換金して債権者に分配する」「借金を免責する(チャラにする)」という2つの手続きです。自己破産をすると保有している財産が没収されますが、没収される財産にはどのようなものがあるのでしょうか?

また、財産が没収されること以外にも自己破産をするといくつかデメリットがありますので、この点についても解説していきたいと思います。

 

20万円超の財産は差し押さえられる

自己破産をすると20万円超の財産は差し押さえられてしまいます。

預貯金などの金融資産、住宅、自動車など、20万円を超える財産は没収され債権者に配当されるので、自分の持ち家に住んでいる人は住んでいる家から出て行かなければなりませんし、自動車も失ってしまうことになります。

これまでのマイホームとマイカーのある生活を維持していくことは困難になるでしょう。

 

銀行口座やカードは凍結される

借金がある場合、その借金の返済に使用していた口座は凍結されます。また、借金がなくても、クレジットカードの口座引落に使用している銀行口座も凍結されます。

口座引落によって借金返済やクレジットカードの支払いをしている場合、口座を凍結しなければ、自己破産をしているにもかかわらず借金やクレジットカードの支払いができてしまいます。

自己破産は全ての債権者を平等に扱わなければなりません。口座振替によって特定の債権者に対してだけ弁済が行われることがないよう、借金返済用の口座とクレジットカードの引落し口座は凍結され、口座もキャッシュカードも利用することができなくなってしまいます

これらの口座と給料受取口座が同じ場合には、自己破産前に給与受取用口座を変更しておくことをおすすめします。

詳しくは後述しますが、給与受取口座が凍結されていると、会社に自己破産をしたことがバレてしまう可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

 

個人信用情報がブラックになる

自己破産を行うと、個人信用情報はブラックになってしまいます。

銀行などが加盟しているKSCという個人信用情報機関には、自己破産の記録が10年間保管されます。そのため、自己破産をしてから10年は銀行や信用金庫からお金を借りることは不可能になります。

また、その他の信用情報機関も、自己破産をすると信用情報にその旨が5年間記録されます。クレジットカードを作ることも消費者金融からお金を借りることも、5年間は不可能になります。

信用情報がブラックになることの弊害は他にもありますが、詳しくは後述します。

 

自己破産をしたらどうなるか②|破産宣告は仕事にも影響する?

破産宣告は仕事にも影響する?

裁判所が自己破産の許可を出すと、自己破産をしたことが会社にバレてしまったり、出世に響いてしまったりするという不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?結論を先に言えば、ほとんどのケースで自己破産をしても仕事には影響しません。

しかし、会社にバレてしまう可能性もゼロではありませんので、どのようケースで自己破産をしたことが会社にバレてしまうのか、しっかりと理解しておきましょう。

 

自己破産の情報は官報に記載される

まず最初に、自己破産をすると、自分の情報が「官報」という国のお知らせに掲載されるということを理解しておきましょう。

官報はインターネットで誰でも閲覧することができるので、自分が自己破産をしたということは誰でも知ることができるのです。

実際に官報を毎回詳細にチェックしている人はいないと考えられるため、官報に氏名が掲載されても周りにバレないケースがほとんどです。

ですが、官報に掲載されることによって、自分が自己破産をしたということを誰もが知ることができる状態になっているという点だけは理解しておいた方がよいでしょう。

 

自己破産をすると会社にバレる?

では、自己破産をする会社にバレてしまうのでしょうか?結論として、基本的にはバレるケースはほとんどないと考えて問題ありません。いくら官報に自己破産をした情報が掲載されると言っても、会社はいちいち官報の情報など閲覧していないことがほとんどだからです。

自己破産をしたことが絶対に会社に知られないようにする方法はありませんが、現実的には会社に自己破産をしたということが知られることはありません。

 

出世に響いたりクビになったり、人生に悪影響になることも

会社が官報から自己破産をしたことを知るケースは実際にはほとんどありません。しかし、以下のケースでは自己破産をしたことが会社が知ってしまう可能性もあります。

  • 自宅が差し押さえられ、会社に住所変更を届け出た
  • 給料受取口座が差し押さえられてしまい、会社が給料を入金できない

このようなケースで、会社から「なぜマイホームから借家へ住所が変わったのか」「なぜこれまでの給与受取口座が使えなくなったのか」ということを尋ねられた場合に、自己破産をしたということを会社に知られてしまう可能性があります。

会社に自己破産をしたことを知られてしまうと、自分の評価が社内で下がってしまうこともあるかもしれません。また、自己破産をしたということが社内で噂になってしまい、会社に居づらくなってしまう可能性もあります。

できる限り会社に自己破産をしたことがバレないためには、給料受取口座を事前に変更しておくことは絶対に忘れないようにしましょう。

 

 

自己破産をしたらどうなるか③|自己破産をした場合の生活への影響は?

自己破産をした場合の生活への影響は?

自己破産をした場合には、日常生活に様々な悪影響が及んでしまいます。しかし、自己破産をして完全に生活ができなくなってしまうことはありません。

そもそも自己破産とは、多くの借金を抱えて生活ができない人のための救済策ですので、自己破産をしても生活はできるようになっています。

しかし、自己破産をするということは信用情報がブラックになるということですので、普通の人であれば当たり前にできることができなくなってしまうのです。自己破産をすると生活にはどのような影響があるのか見ていきましょう。

  • 生活に必要な一定のお金は手元に残しておくことができる
  • お金を借りることができない
  • スマホを分割で買うことができない
  • 保証会社付きの賃貸住宅を借りることができない
  • 意味の分からないローンの勧誘が来る

 

生活に必要な一定のお金は手元に残しておくことができる

自己破産をしても、自己破産後に手元に1円もなければ、自己破産後に普通の生活を営んでいくことはできません。このため、自己破産をしたとしても20万円以下のお金であれば手元に残すことができます

自己破産をしても少しのお金は手元に残るので、無一文からやり直すことになる心配はありません。自己破産によって借金を返済する必要はなくなるので、手元に残ったお金からコツコツ生活を立て直していくようにしましょう。

 

お金を借りることができない

前述したように、自己破産をすると信用情報がブラックになるので、銀行や大手消費者金融からお金を借りることは原則的にできなくなります。

中小の消費者金融であれば、自己破産をしたブラックの人でも数万円程度のお金なら借りることができる場合もありますが、自動車や住宅などの大きなローンを組むことはほぼ確実に不可能です。また、クレジットカードを新規契約することもほぼ不可能になります。

 

スマホを分割で買うことができない

若い人にとって意外なダメージはこの点です。スマホの分割購入には審査がありますので、審査の中で個人信用情報をチェックした際にブラックであれば、スマホの分割購入の審査に通過することはできません

スマホが壊れて機種変更の必要性が生じた時も一括で購入するしかありませんので、まとまったお金がなければスマホを持つことすらできなくなってしまう可能性があります。

 

保証会社付きの賃貸住宅を借りることができない

賃貸住宅を借りる際に、保証会社の審査を経験したことがある人も多いのではないでしょうか?今は賃貸住宅は保証人を立てるのではなく、保証会社が保証する方法が一般的です。

保証会社は、借主が家賃を払わなかった場合に大家に対して家賃を保証するので、信用力がない人を保証してしまったら保証会社にとって大きなリスクが生じてしまいます。

このことから保証会社は必ず審査を行い、保証をしても問題がない人かどうかを判断するために個人信用情報もチェックします。

この際に信用情報がブラックであれば審査に通過することができないので、自己破産後に住宅を借りたいと思っても、その物件が保証会社の保証付であれば借りることはできません

 

怪しい業者からローンの勧誘が来る

前述したように、自己破産をすると官報にその旨が記載されます。この情報を見て、闇金などの意怪しい業者から勧誘が来るようになるケースが多いようです。

自己破産をした人というのは、どこからもお金を借りることができない人です。このような人を狙って、闇金は「審査なしで融資可能」「ブラックでもOK」などと謳い勧誘してきます。

自己破産をすると、ほぼどこからもお金を借りることができなくなってしまいますが、絶対に闇金からお金を借りてはいけません。

また、一度自己破産をするとしばらくは自己破産は認められなくなってしまいますので、自己破産後は「お金を借りる」という考えを捨てた方がよいでしょう。

 

 

自己破産をしたらどうなるか④|自己破産で申告漏れをしたら財産を隠しになる?

自己破産で申告漏れをしたら財産を隠しになる?

「自己破産をした後も現在の生活水準を維持したい」と、マイホームやマイカーを持っている人は誰もがそう思うところです。では、自己破産申立の際に財産を隠した場合には罪になるのでしょうか?

また、意図的でなくても申告漏れがあった場合にはペナルティがあるのでしょうか?

 

意図的な財産隠しは破産詐欺罪に

意図的に財産を隠して自己破産の申立を行なった場合には、破産詐欺罪になってしまう可能性があります。破産詐欺罪に該当するのは以下のようなケースです。

  • 自己破産申立の書類に嘘の記載をして財産を隠したり処分した
  • 財産を意図的に破損させ財産の価値を下げる
  • 財産を他人名義へ変更する
  • 自己破産をする予定なのに借金をする
  • 過去に一度も返済をしていない借金がある

このようなケースでは破産詐欺罪が適用されてしまい、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という非常に重い刑罰が科されることになります。

自己破産をするための費用がないといって借金をしてしまうと破産詐欺罪に問われる可能性があるので、いくらお金がなくても絶対に自己破産前には借金をしないようにしてください。

 

意図的でなくてもリスクは大きい

意図的に財産隠しをしなくても、自己破産申請の際に財産の申告漏れがあった場合には、免責許可決定が取り消されてしまうリスクがあります。

このため、自己破産申立の際には自分の財産をしっかりと把握し、申告漏れがないように注意を払うことがとても重要になります。

 

財産を残したい場合は他の方法を

ここまで説明してきたように、自己破産を行うと20万円超の財産は没収されてしまいます。どうしても残したい財産がある人には、自己破産は不向きな債務整理の方法と考えられます。

ですが、自己破産は数ある債務整理の方法の中の1つにすぎません。自宅を残したい場合には個人再生という方法もありますし、任意整理が上手くいけば、財産を失うことなく借金を減額させることができる可能性があるのです。

自分にどんな債務整理の方法が合っているのかということは、自分の財産や借金の状況や希望などを総合的に勘案しなければ分かりません。

このため、自己破産ありきで手続きを進めるのではなく、自分にはどんな債務整理の方法が合っているのかをプロに相談した方がよいでしょう。

法律事務所の中には相談だけでお金がかかる所もありますが、イストワール法律事務所などの債務整理に強い弁護士事務所では相談料無料で債務整理の相談に乗ってくれます。

また、債務整理の無料相談会などに参加してみるのもよいでしょう。

イストワール法律事務所公式サイトはこちら

 

自己破産とその後の生活に関するまとめ

自己破産をすると20万円超の財産は没収されますが、会社にバレるようなことはほとんどないので、これまで通りに仕事を継続して行くことができる可能性は高いと言えます。

自宅を没収されたり、給与受取口座を凍結された場合には会社にバレる心配があるので、この対策だけしっかりとしておけば仕事には支障はないでしょう。

財産をできる限り残したいと考えるのは仕方ないと言えますが、財産を隠したまま自己破産をすると破産詐欺罪という重い罪に問われるか、免責許可を取り消される可能性もあります。自己破産申立の際には自分の財産を確実に把握し、漏れのないよう申告しましょう。

財産を残したい場合には個人再生など他の債務整理方法も視野に入れ、まずは債務整理に強いプロに相談するのがおすすめです。

 

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