- 自己破産をすることで家族の生活基盤を失うことがある。
- 自己破産が最良の方法とは限らない。
- まずはプロの弁護士へ相談すべき。
公開日:2019年7月7日
自己破産というと、「人生最後のリセットボタン」などとよく言われます。自己破産は数ある債務整理手続きの1つです。
資産は没収される代わりに借金もゼロになると一般的に考えられていますが、実際にはすべの財産と負債がリセットされるわけではありません。
まずは自己破産について少し詳しく解説していきましょう。
自己破産をすると、財産は没収され、債権者で没収された資産を分配することになりますが、ここで没収される財産は20万円超の財産になります。
自己破産後も最低限の生活を維持していくために、20万円以下の財産に関しては、自己破産をしたとしても没収の対象にはなりません。
20万円超の財産ですので、ほとんどの固定資産は没収されることになります。
自宅を所有している人は、自宅は没収されてしまいます。
マイカーを持っている人は、マイカーも没収されてしまいます。
例えば、住宅ローンを組んでいて、住宅が銀行などの担保に入っていたとしても、自己破産を行うと没収の対象になります。
マイカーローンを組んで購入した自動車も同様です。
このように、20万円超の財産は全て没収されますが、その反面、債務(借金)もゼロになります。
例えば、給料からは返済しきれない借金を抱えていても、数億円の債務の連帯保証人になり債権者から請求されたとしても、自己破産をすれば債務はゼロになるので、返済義務はありません。
自分が借りたお金の支払い義務からも、他人の保証をした借金の支払い義務からも免れることができます。
これを「免責」と言いますが、自己破産によって免責とならない債務もあるので注意が必要です。
自己破産をしても、税金や損害賠償の支払義務(債務)は免責の対象外となります。
借金を多く抱えている人は、税金を長期間滞納していることが非常によくあり、中には数百万円もの滞納となってしまっている場合もあります。
また、自己破産に到るまでに、取引先企業などとトラブルになり、損害賠償責任を負っていることも珍しいことではありません。このような債務は自己破産をしても免責にはなりません。
自己破産を行なうと、どこからもお金を借りることができなくなってしまいますが、その後に数百万円の税金を支払って行かなければならないというケースもあります。
自己破産をするかどうかは、このような免責にならない非免責債務がどの程度あるのかということと勘案して判断する必要があります。
自己破産は20万円超の財産が没収される代わりに、ほとんどの債務が免責となる手続きです。
メリットとデメリットが非常に大きな方法ですので、メリット・デメリットをよく確認しておくようにしましょう。
自己破産のメリットは借金がゼロになるという点に尽きると言えます。最近は総量規制が導入されたので、あまりにも多くの借金を個人が作ってしまうような心配はなくなりました。
しかし、所得に見合わないような高額の住宅ローンを組んだ場合や、複数のローンを借りてしまった場合、会社名義の借金の保証を行い会社が倒産してしまった場合などは、個人の給与所得では返済できないほどの借金を抱えてしまう可能性があります。
このような時には「自殺するしかない」などと良からぬことが頭をよぎってしまいますが、自己破産をすることによって、ほとんどの借金が免責となるので、返済できないほどの借金から解放されることができるのです。
自己破産をすれば、住宅ローンからカードローン、保証債務などほとんどの借金がゼロになります。
無計画に借金を作ってしまっても、自己破産をすることによって支払義務から解放されるので、まさに自己破産は国が用意した最後の救済策であると言えます。
メリットはこの点だけで、あとはデメリットしかないのが実情です。
前述したように、自己破産をすると20万円超の財産を没収されてしまいます。
何も財産がないという人であれば、この点はデメリットではないかもしれませんが、資産のある人にとっては生活の基盤となる自宅や自動車も没収されてしまうので、日常生活には著しく支障をきたしてしまうことになります。
自己破産をすると、国のお知らせである「官報」に氏名や住所が記載されることになります。
官報記載の情報は銀行などが加盟する信用情報機関であるKSCが、金融事故情報として10年間保管しています。
つまり、自己破産以後10年間は信用情報がブラックになってしまい、銀行や信用金庫などからお金を借りることは不可能になります。
自己破産をした後、真面目に仕事をしようと思っても、住宅ローンを組むことはもちろん、自動車ローンを組むことすらできませんので、地方都市では通勤することすらできずに、新しい仕事に就くことができないかもしれません。
前述したように、自己破産をすると、官報に個人情報が記載されます。
この個人情報を見た闇金は、どこからもお金を借りることができない自己破産者に対して、勧誘を行うことがあります。
何社からも勧誘があることが多く、かなりしつこく闇金から勧誘があり、実際に借りなくてもあまり気分が良いものではありませんが、毎日のように闇金から勧誘が行われたら家族への影響も甚大です。
なお、自己破産後に闇金からお金を借りることは絶対にNGです。自己破産から10年は、原則再度の自己破産は認められません。
自己破産を行うと、闇金から甘い言葉で融資の誘いがありますが、このような誘惑には絶対乗ってはいけません。
自己破産には弁護士事務所に支払うお金がかかります。
着手金や成功報酬として50万円前後が請求されるのが一般的です。
ただでさえ、お金がないから自己破産をするのに、自己破産をすることによってお金がかかるのですから、経済的にはダメージが少なくありません。
後述しますが、自己破産にかかる費用は後払いに対応している弁護士事務所も多いですが、自己破産後の生活の再建に必死な時に毎月数万円の弁護士への支払いを行うことは楽ではありません。
自己破産の概要、メリット・デメリットをご説明してきました。
しかし、自己破産によって没収される財産は自分だけのものではなく、家族みんなで使用していることが多いのが現実です。
では、自己破産をした場合には、家族や親族にはどのような迷惑が具体的にかかってしまうのでしょうか?
持ち家の場合には、自己破産によって自宅が差し押さえられてしまいますので、一定期間内に空け渡さなければなりません。
これは子供にとっては相当な精神的な負担です。自分の気に入っていた部屋や、家具なども失うことになってしまうためです。
また、自己破産後の住宅が今の学区から変わってしまう場合には、子供は転校も余儀なくされてしまいます。
自己破産によって自宅を失うことは子供にとっては精神的にかなり深刻です。
奥さんも、こだわって作ったキッチンなども失うことになりますし、先祖代々受け継いできた家であれば、先祖からの家も失ってしまうことになります。
自宅を失うことは、家族にとって深刻な影響があります。
前述したように、20万円超の財産は失うので、自動車も没収されてしまいます。
勤務先への通勤も不便になりますし、買い物にも不便になります。
子供を送っていくこともできなくなってしまうかもしれません。
親の自動車というのは、子供にとっても生活必需品であることが多いので、こちらも子供をはじめとした家族への影響は深刻です。
自己破産をすると、スマホの分割購入の契約が解除される可能性が非常に高くなります。
スマホの分割購入の契約も、携帯キャリアから「お金を借りている」という行為と同じだからです。
契約を解除された後は、自己破産者名義で携帯電話キャリアと契約することができなくなってしまいます。
奥さん名義で契約すればスマホを持つこともできますが、自分名義の携帯電話を持つことはブラックの状態が解消される10年後まで不可能になってしまいます。
また、子供が親の名義でスマホを持っていることも多いですが、この場合には、子供のスマホ契約も解除されてしまいます。
子供にとってスマホの契約というのは死活問題ですので、自己破産によってスマホ契約が解除されたら、友達を失ってしまうかもしれません。
自己破産によって自宅を没収されてしまったら、どこかに賃貸住宅を借りなければならないかもしれません。
しかし、信用情報がブラックになっているので、保証会社付の住宅を借りることができなくなってしまう可能性が高いのです。
保証会社は保証をする前に審査を行い、信用情報を照会します。
信用情報に自己破産が記録されているブラックの人はまず審査に通過できず、賃貸住宅を借りることもできなくなってしまいます。
今や、綺麗な物件にはほとんど保証会社がついていますので、もしかしたらボロボロの住宅しか借りることができなくなってしまうかもしれません。
自己破産をすれば、クレジットカード契約も解約されてしまいます。家族カードも発行している場合には、家族のカードの契約も切られてしまいます。
アプリの定額課金などはクレジットカードを通して行われていることが一般的ですので、クレジットカードが使用不能となってしまったら、家族のこのような支払いもできなくなってしまいます。
ETCカードの利用も停止されますので、高速でどこかへ家族で出かける場合にもETC割引を受けることはできませんし、ETC専用料金所を通ることもできません。
自己破産をすると地域では必ず噂になります。
仮に、自宅は妻名義などの理由で没収されなかったとしても、地域では自己破産が噂になるので、家族がその場所で住み続けることが難しくなってしまうかもしれません。
また、子供は学校でいじめられてしまうかもしれません。
このように、自己破産をすると、住宅、自動車、クレジットカード、スマホなどの現代人の生活に欠かすことができない、ありとあらゆるものが没収もしくは利用停止になるので、家族は生活の基盤を奪われることになってしまいます。
特に中学生から高校生くらいの子供がいる場合には、その影響は決して少ないものではありません。
自己破産をしても、親族が自分の借金の連帯保証人にでもなっていない場合には直接的な影響はほとんどありません。
先祖代々の実家を没収されたような場合には、線香をあげることができなくなる程度の影響はありますが、生活基盤を別にしている親族にはそれほど深刻な影響はないと考えても問題ないでしょう。
自己破産はデメリットが大きく家族への影響も深刻です。
本当に自己破産がよいかどうかということもケースバイケースで、他の方法で債務整理をした方がよい場合もあります。
このため、債務整理に強いプロへ相談して自己破産を行なった方がよいでしょう。
債務整理は自己破産だけではありません。住宅と住宅ローンを残し、借金を減額することができる個人再生という方法もありますので、持ち家を持っている場合には個人再生の方が向いているケースが少なくありません。
他にも任意整理で借金を減らすことができる場合もあるので、まずはプロへ相談するようにしましょう。
前述したように、自己破産には費用がかかります。着手金や相談料などが発生する弁護士事務所では、お金がない人は自己破産をすることができないのが現実です。
そのため、着手金や相談料が無料で、成功報酬は自己破産後に後払いかつ分割で支払うことができる弁護士事務所へ依頼することで、手元にお金がない人でも自己破産をすることができます。
無料相談会などを積極的に行なっている弁護士事務所は、後払いかつ分割に対応していることが多いので、まずは無料相談会などを活用するようにしてください。