- 外貨預金は国内預金よりも高い金利が期待できる。
- 外貨ベースでは元本保証だが、為替レートや手数料で損失になる恐れがあるので注意が必要。
- 複数の通貨に分散投資することや、積立投資で時間分散してリスクを軽減させるようにする。
公開日:2019年12月14日
国内では低金利が続いていて、大手都市銀行の定期預金は年率0.01%、100万円預金しても1年間で100円しか利息がつきません。ATMの手数料を1回支払っただけで1年分の利息が飛んでしまいます。
しかし、海外では預金金利の高い通貨があります。そうした通貨にお金を預ければ、ある程度のリターンも期待できます。海外での預金といっても、現地に口座を開く必要はありません。国内の銀行で「外貨預金」をすればいいのです。
この記事では外貨預金で失敗しないために、仕組みとメリット・デメリットについて解説します。
現在の日本経済は停滞し、預金金利も低い状態が続いています。円の価値が下がり、外貨の価値が上がれば、日本円だけ持っていると資産の価値は下がってしまうのです。
そこで、外国への投資や外貨預金に関心が高まっています。日本円に加え、外貨を保有しておけば資産の価値は変わらない、もしくは増えることがあるからです。金融機関も、そうしたニーズに応えるために、さまざまな外貨建て金融商品を揃えています。
その中でも手軽にチャレンジしやすいのが外貨預金。いつも利用している国内の銀行でも取り扱っていますし、「預金」という安心感があるからです。
外貨預金とは、アメリカの「米ドル」やヨーロッパの「ユーロ」など外国の通貨で預金することです。預ける通貨が異なるだけで、基本的な仕組みはほぼ日本円の預金と一緒です。
預金なので、株やFXのような専門知識はいりません。ただ、たくさんの国の通貨を管理したり、ブラジルや南アフリカなどの新興国の情報を入手したりするのは、多少手間がかかるので外貨預金に慣れてからにしましょう。
外貨預金には、「外貨普通預金」と「外貨定期預金」があります。
外貨普通預金は、預金の出し入れが自由にでき、「満期」という考え方はありません。また、金利が変動する「変動金利」が適用されます。出し入れが自由で利便性が高い代わりに、金利水準が外貨定期預金よりも低めに設定されています。
一方、外貨定期預金は満期日が決まっているので、出し入れが自由にできません。
ただし、利便性がよくない代わりに、外貨普通預金よりも高い金利が設定され、預入時の金利水準が満期まで適用されます。預入期間や最低預かり金額は金融機関によって異なります。
それでは、外貨預金のメリットについて確認していきましょう。
外貨預金なら自分の資産を分散できます。もし、大幅な円安(円の価値が下がる)が起こると、円建ての資産しか持っていない人は資産価値が大きく下がってしまいます。しかし、外貨預金をしていれば、為替差益を得ることができます。
食料や衣類など私達の生活に欠かせない品物の多くは海外から輸入されています。円の価値が下がると、こうした品物の調達コストが上がるので、国内の物価は上昇します。
米ドルやユーロなどの外貨を持っていれば、円安による為替差益を得られるので物価上昇の影響を和らげることができますが、日本円しか持っていなければ大きなダメージを受けてしまうのです。
円預金は利息にだけ税金が引かれますが、外貨預金は為替差益が生じた場合にも税金がかかります。利息にかかる税金は20.315%(所得税15%+地方税5%+復興特別所得税0.315%)ですが、分離課税なので源泉徴収されます。
一方、為替差益にかかる税金は、「雑所得」で総合課税の対象となるので、原則として確定申告が必要です。ただし、年収が2000万円以下の会社員で、為替差益も含めた給与以外の所得が20万円以下であれば申告しなくてもいいことになっています。
外貨預金はペイオフの対象ではありません。ペイオフとは、銀行などが破綻した場合に預金者を保護する仕組みのこと。1金融機関ごと、1預金者あたり元本1000万円までとその利息は保護されます。
普通預金や定期預金など大抵の預金がペイオフの対象ですが、外貨預金は対象外です。つまり、外貨預金をしている銀行が破綻してしまった場合、預金が戻ってこない可能性もあるのです。
こうしたリスクを避けるために、複数の金融機関で外貨預金を行っていると安心です。
外貨預金にも、国内の円預金と同じように「普通預金」と「外貨預金」がありますが、あくまでも預金なので「元本(預けたお金)」は保証されています。ただし、保証されるのは「外貨建ての元本」である点に注意が必要です。
円から外貨に交換したり、外貨から円に交換したりするときには為替手数料がかかります。また、為替レート(外国為替相場)次第では、円ベースでの「元本割れ」が生じることもあるのです。
それでも、外貨預金を選ぶ人が増えているのは、「円金利よりも高い金利が魅力」、「為替レート次第で利益が得られる」といったメリットや目的があるからです。
為替レートで外貨預金の価値は変化するので、為替の仕組みについても確認しておきましょう。為替レートは需要と供給の法則に従って、その通貨を買いたい人が多ければ価値が高くなり、その反対なら低くなります。
為替の動きに影響を与える要因としては、主に経済の状況や金利の変動、為替介入などがあります。それぞれ見ていきましょう。
まずは景気です。景気がよくなると株価や土地の値段が上がり、ビジネスチャンスも増えます。現在は米国の景気がいいので、外国からお金がどんどん集まって、米ドルが強くなっています。
反対に景気の悪い国からは、どんどんお金が逃げていってしまうので通貨が安くなります。ですから、景気の判断材料となるGDPや株価などの状況によって、為替レートは上下するのです。
次に金利について見ていきましょう。一般に金利の低いところから高いところへとお金が流れる傾向にあります。金利の低い通貨で預金するよりも、金利の高い通貨で預金した方が、よりたくさんの利息を受け取ることができるからです。
金利の高い通貨は人気が高くなります。ただし、新興国通貨などは国の情勢や物価が安定していないので、通貨安になることがあるので注意が必要です。米ドルなど、その国の情勢や物価が安定していることが前提です。
為替介入とは、政府が経済の保護のために売買を行うこと。日本のような貿易国の場合、急激な為替変動は特定企業だけでなく、経済全体への影響を与えかねません。
そこで、政府が大量の円を売買することで為替の動きを安定させることがあります。これを「為替介入」というのです。
政府による為替介入には、実際に売買を行うほかにも、「これ以上為替レートが変動すれば介入を行う可能性がある」といったコメントをする「口先介入」もあります。
外貨預金をする時は、金利の高さばかりに目がいってしまいがちですが、高い手数料を支払うと利息が台無しになってしまいます。
外貨預金には為替手数料がかかります。日本円から外貨への交換する際と、外貨から日本円に交換する際にかかります。為替手数料は金融機関によって異なります。従来型の銀行よりネット銀行の方が手数料は安い傾向にあります。
大手銀行の為替手数料は片道1ドル=1円ですが、ネット銀行大手のソニーでは15銭としているなど、大きな違いがあるのです。
為替レートによって利益が生じたり、損失を被ったりすることを「為替リスク」といいます。外貨預金は、外貨建ての元本と利息は保証されているものの、円高に進むと円ベースで元本割れになる恐れがあります。
また、通貨によっても値動きが異なります。米ドルやユーロなど先進国通貨よりも、ブラジルレアルや南アフリカランドなどの新興国通貨の方が為替レートの変動は大きくなります。
一般に、金利水準は新興国通貨が高いものの、為替リスクも高くなるということに注意が必要です。
為替リスクを軽減させるには、分散投資が有効です。分散投資とは、値動きの異なる複数の通貨を組み合わせる方法です(通貨の分散)。
先進国と新興国など、異なる値動きの通貨で外貨預金をしていれば、ひとつの通貨で損が出ても、他の通貨で利益が出たりして、損失を軽減させる効果があるのです。
為替レートは短期的に大きな動きを見せても、長期的に見れば戻ることがあります。ただ、一度にまとまった資金で購入すると、大きな損失を抱えてしまいます。短期的にまとまったお金を動かすのではなく、時期を分けて運用することで、為替リスクを軽減できます。
ただ、時期を分けて投資する時も、初心者の人が為替レートを見ながら自分でタイミングを考えて外貨預金するのは難しいでしょう。
ですから、時期を分けて運用するには「積立投資」がおすすめです。積立投資とは毎月一定額を購入しながら、外貨預金を積み立てていくことを指します。
また、円預金のように外貨預金にも「自動積立サービス」があります。すでに銀行に持っている円預金の口座から、毎月一定額を引き落として米ドルやユーロなどに交換していくのが、「自動積立型外貨預金」になります。
自動積立サービスを利用していれば、円安の時でも円高の時でも継続的に外貨預金を購入できます。そのため、購入する外貨レートを平均化できるというメリットがあるのです。
ただし、為替レートを平均化するといっても、元本が保証されているわけではありません。通貨の分散も行い、リスクを軽減させるようにしましょう。
外貨預金は常に為替変動リスクが伴います。為替レートの変動によって損失が出る恐れもありますし、外貨や円に交換する時に手数料がかかります。
元本が減る可能性があるので、外貨預金は必ず余裕資金で行うようにしましょう。外貨預金は最低購入金額が設定されているのが通常です。まずはその金額を確認して無理のない金額から始めましょう。
短期的な為替レートの変動に惑わされないよう、運用は長期で考えるようにします。また、自動積立投資を利用し、無理なく運用を続けるようにしましょう。
今回は外貨預金の仕組みとメリット・デメリットについて解説しました。円預金よりも高い利回りが期待できる外貨用金ですが、為替レートの変動や手数料などによって元本がマイナスになるリスクもあります。
通貨を分散させることや、積立投資を利用して購入タイミングをずらすなどして、リスクを軽減させながら、長期で運用するようにしましょう。