- 住宅ローンの名義変更はほぼ難しい。
- 親子リレーローン等商品によっては可能なものもある。
- 借り換えなどで名義を変える場合も要注意。
公開日:2020年2月15日
今回は住宅ローンの名義を変更できるのか?という疑問について解説していきたいと思います。住宅購入は人生で一番高額なお買い物であり、長い年月をかけて支払いを行っていかなくてはなりません。
返済中に何らかの事情が発生し、住宅ローンの名義を変えたい場合、そもそもできるのか、できないのか?できるのであれば、どんなことに気を付けなければいけないのか?疑問が次々に湧いてきますよね。
事例やポイントを分かりやすく解説していきますので、もし名義変更に直面していらっしゃる方はご一読下さい。
まず名義変更が出来るのか、出来ないのかという事について解説しておきましょう。結論から言えば「出来るけど、ほぼ無理」という回答になると思います。いきなりで申し訳ないのですが、出来る可能性は極めて低いと言うべきでしょう。
もちろん出来るケースも存在しますので、ケース毎の解説を後述する事にします。では何故出来る可能性が低いのか、その点の理由を先に解説します。
まず住宅ローンを借りる時を想像してみてください。誰が審査対象になり、誰の名義でローンを組むのか、また物件や土地の価値も調べられます。この時、ローンの名義人の返済能力については、年収や勤務先や勤続年数、個人的な借入、家族構成など細かくヒアリングされます。
年収が低ければ、融資額も低くなるか、融資が出来ないか、連帯保証人を付けるかなど条件があり、勤務先や勤続年数等、長期に渡って返済出来るかどうかも裏付け調査として調べられます。
この様に「融資対象者」について審査される事になりますので、銀行が「この内容であれば問題無く融資出来る」と判断した方へ、希望額の融資を実行します。つまり「返済能力有り」と判断される事になる訳です。
では債務者(住宅ローンを借りている人の事)を変えたいと申し出たとします。事例として、元々は夫でしたが、妻に変更するとしましょう。そして夫サラリーマン、妻パートだとします。これだけの情報であれば誰でも年収の比較はできますよね。
では皆さんが大事なお金を人に貸すと思って下さい。夫にお金を貸しました。「これからの返済は妻になりますけど、良いでしょうか?」と聞かれたとき、「OK」を出せそうですか?
人間関係があれば「OK」と言えるかもしれませんが、銀行はビジネスでお金を貸していますので、人間関係は全く関係なく、「返済能力」が有るのか無いのかの判断だけに特化します。
ここに事情があったとしても、貸したお金を返してくれる根拠が無くなるのであれば名義変更は認められないという事になる訳です。
冒頭では変更の可能性が低いと書きましたが、出来るケースと出来る場合の方法について解説します。
まず前提条件として、名義変更が認められるとします。すると、変更する際に引き継ぐ人が「その住宅に住む事」を条件に融資が下りる事になります。住宅に住んでいないのに融資はできないという事です。
では家族間での名義変更を題材に解説します。ここで想像して頂きたいのは、まず、夫婦間であればお互いに婚姻関係にありますので、同じ住居に住むことが考えられます。
次に親子間での名義変更ですが、同じ居住に住む事はあり得るでしょうし、引き継ぐ子供が居住する事、定職に付き返済能力があれば名義変更は可能です。この点に関しては後半の、親子リレーローン(親から子供へローンを引き継ぐ融資形態)のところで解説しますね。
最後に兄弟ですが、仲の良い兄弟でずっと同じ家に住み続けるのであれば出来ますが、どちらかが家を出るとか、どちらも出るといった事になるとお金のトラブルになるかもしれません。ここまでは関係性のお話でしたが、次に属性のお話になります。
金融機関の用語で「属性」という言葉を使う事があります。分かりやすく言うと、その人の年収、勤務先、勤続年数、家族構成、債務額等全てひっくるめたものを指します(私がいた金融機関はこう呼んでました)。
この属性が主債務者である方と等しい、若しくはそれ以上であれば名義変更は可能になると思われます。
前述した夫サラリーマン、妻パートの場合、どうしても妻の属性が弱くなる為、妻の属性がサラリーマンで夫よりも年収が高く、勤続年数も長いなど、審査に有利な判断材料があればという事です。
これは夫婦間、親子間、兄弟間でも同じ事が言えますが、引き継ぐ先の方の審査が待っていますので、同じく壁は高いと判断した方が良いでしょう。
では手続きと注意点について解説します。先に注意点からお話すると、原則ですが、住宅ローンなどの融資は「金銭消費貸借契約」に該当し、殆どの金融機関は名義変更に関する文言を入れており、「名義変更は認めない」と記載がある事が多い様です。
この文言が入っているかいないかで手続き出来る・出来ないが変わってきますので、契約書を確認しておいて下さい。記載が無い場合は上記の解説で属性がクリアでき、かつ単独融資の状況であれば変更は可能になってくるでしょう。
単独融資でなく、連帯保証人付き契約や連帯債務者での借入の場合は次の問題点が出てきます。
上記の問題点について少し私なりの見解を挟んでおきます。
非常に稀ではありますが、連帯保証人を変えなければいけないケースもあるでしょう。理由は、これこそ人間関係が絡んできますが、主債務者を信じて連帯保証人になる事になります。
しかし、主債務者が変わり、あまり人間関係が無いような関係性であれば引き続き連帯保証人になれるかどうかという点です。連帯保証人を必要としない単独契約に切り替わる事が出来ればそれで問題は解決しますが、この様な事例もある様に思います。
そもそもですが、お互いに住宅ローン控除を受ける目的で連帯債務者になっているという事であれば、名義変更する事はあまり無いでしょう。しかし、連帯債務者としての契約で融資が受けられる属性を考えると、恐らく夫婦合算年収などで希望融資額に届くものと考えられます。
つまり、属性として弱いけれど、2人なら融資可能という判断だと思います。
では属性変更が無いまま、どちらか一方の名義に1本に出来るのかというと、これは難しいでしょう。理由は先程の属性に大きな変化(単独融資が出来る様な年収、勤続年数、信用調査の結果)が必要になってきます。
変更が無い状況での名義変更は銀行も認めてはくれないと思いますので、この点は注意しておきたいところです。
では変更できるとして、手続きの方法について解説します。手続きは大きく2つあります。
この2つを変更する訳ですが、結構大変な作業になります。まず初めにやる事は銀行へ変更する旨を伝えなければなりません。ここで順序を誤って、先に所有権の変更手続きを行ったとします。
この時、銀行に名義変更の事実が判明すると、契約違反になりますので、必ず順序は守る様にしておきましょう。
本来は銀行の許可を得て、抵当権の設定をし直す必要があります。抵当権の変更などは抹消したり、新たに登録したりしなければならず、必要書類と司法書士の方がいれば手続きは可能です。但しそれなりにお金もかかりますので、少しお時間は掛かるでしょう。
抵当権とは、もしも返済が出来なくなった際に、他の債権者よりも優先して弁済を受ける権利の事を言います。住宅ローンでは抵当権を土地に設定する事が多く、融資条件として借入先の銀行が第1抵当権に入る事などがあります。
この抵当権は借り入れを債務者と債権者といった形で登記簿謄本に記載され、融資額、金利等も記載される事になります。物件の所有者が本来融資を受けている方なはずなのに、勝手に名義が変わるという事は、知らない人に貸している事になりますよね。
この様な契約のトラブルにならない様にしなければなりませんので、名義変更をお考えの方は、絶対に銀行に1番に相談する様にしましょう。
ここで一旦まとめておきます。まず住宅ローンの名義変更はまず困難であるという事がお分かり頂けたかと思います。審査が通るか通らないか以前に、名義変更できないのが通常の契約形態ですので、まず難しいと考えておきましょう。
ここから少し違った角度での解説をしていきます。どうしても名義を変更したい時、正攻法でいっても壁が高すぎるので断念するという解説は先程してきました。
確かに、かなり難しいのですが、では借り換えだったら変更できるじゃないか!と妙案をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。この借り換えのする際の注意点を解説しておきますので、安易な借り換え案には慎重になって下さい。
皆さんは贈与税について耳にしたことはあると思います。簡単に言うと、誰かから、誰かへモノやお金を渡す時にかかる税金の事で、一般的には1年間で110万円までであれば税金は掛かる事が無いようになっています。この贈与税の仕組みと借り換えがどんな関係にあるのか解説しますね。
例えばですが、夫の単独契約、若しくは夫婦の連帯債務者でローンを組んでいたとします。話し合いの結果妻にローン名義人になってもらうとなりました。この時、もしかすると、贈与税がかかるかもしれないんです。
どういう事かと言うと、借り換えは、A銀行の債務をB銀行が代りに一括して完済し、B銀行でローン返済が始まるという仕組みですよね。
この時ローン名義人である夫が単独契約だった場合、妻が新たに借りたB銀行名義の融資金額で、夫名義のA銀行を全額返済する事になる訳です。この場合、夫が妻から高額な返済資金の提供を受けたと税務署に見なされると贈与税の対象になる訳ですね。
では連帯債務者で借入をしていたとします。共に正社員でローン控除の為それぞれが借りたものとしておきますが、この時も同じく、夫の債務分を妻が返済する事になります。つまり妻からの贈与がありましたね?と言われる可能性は否定できないという事です。
もしも税金を支払ってまで名義を変えたければ、そうするしか方法は無いのですが、贈与税は110万円を超えると大きな税負担になりますので、あまり得策とは言えないです。原則住宅ローンは借り入れをした本人がしっかりと支払う事が一番良い様に思います。
前述の解説で少し触れましたが、親子で返済できる「親子リレーローン」という商品があります。これは先に親が主債務者となって返済を行い、定年等で返済が難しくなってきたら、子供に債務を引き継ぎ、子供による返済がスタートするというローン形態です。
この商品は親御さんと同居する事、予定がある方が前提の商品でして、子供による返済が始まったら名義変更が出来る商品です(金融機関によってできない場合もあります)。
注意点としては、持ち分の比率等が親50%、子供50%などですと、先に親御さんが亡くなった際に50%分に対する相続税が発生する事になりますので、組み方や持ち分比率には注意しておきましょう。
ご相談が多いのが離婚した時です。離婚すると、どちらかが家を出ていくか、2人とも家を離れるかなど話し合いが行われます。まず離婚した際の名義変更はできませんので、注意しておきましょう。
また夫の単独融資または夫婦連帯債務者での契約の場合で、夫が家を出ていく事になったとします。
妻は家に残り、ローンの支払い無く住むことが可能ですが、万が一、ローン名義人の夫の支払いが滞ったら、妻は家を競売にかけられる可能性もあります。私個人的な意見ですが、離婚する際は可能な限り売却するのが一番だと思っています。
今回は住宅ローンの名義人を変更できるかという事をテーマに解説してきましたが、変更するにはかなりハードルが高く、まず難しいでしょう。言えるのは、借りた本人が最後までしっかり返すという事が重要です。また事情がある場合は一度銀行に相談してみましょう。
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