- 幼児教育等無償化は3~5歳は所得制限なしで対象となる。
- 0~2歳は、住民税非課税世帯が対象。
- これまでの高校無償化が拡充され、私立高校実質無償化も開始された。
- 大学などの高等教育無償化は「授業料の減免」「給付型奨学金」の2種類ある。
公開日:2020年7月19日
教育無償化、と聞くと、どのようなイメージがありますか?今、自身が置かれている立場での「無償化」について思い浮かぶのではないでしょうか。
小さなお子さんのいるご家庭では「幼稚園などの無償化」、中学生のお子さんがいる場合は「高校無償化」、高校生のお子さんがいる場合は「高等教育等の無償化」です。これらはどれも「教育無償化」です。
日本では少子化対策が顕著となっており、少子化対策として打ち出された制度が、この「教育無償化」です。制度全般についての解説や、メリット・デメリットなどについて掘り下げていきます。
教育無償化とは、大まかに3種類に分けられます。お子さんの年齢によって受けられる制度が違います。以下、3つの無償化について、それぞれの概要をまとめます。
令和元年(2019年)10月1日より、幼児教育・保育の無償化がスタートしました。具体的には、3~5歳の幼稚園・保育所等の利用料について、申請をすることで無償になるというものです。0~2歳のお子さんのいる世帯では、住民税非課税世帯のみが対象です。
幼児教育に関する教育無償化の対象となる施設は、幼稚園、保育園、認定こども園などです。
幼稚園にかかる一般的な費用については、こちらもご参照ください。
高校無償化は、3つの教育無償化のうち、実は一番早くに開始された制度です。その後、令和2年(2020年)4月から制度が改正され、私立高校は実質無償化となりました。
高校無償化の正式な名称は「高等学校等就学支援金」といい、返済義務のないお金です。高校無償化では世帯の所得制限がありますが、収入に応じた上限額も引き上げとなり、メリットの高い無償化制度であると言えます。
私立高校に関する費用は、こちらにまとめています。どうぞ参考になさってください。
大学などの「高等教育等無償化」は、年収に応じて全額支援から1/3程度の支援を行うものまで3段階に分けられています。教育費が足りないという理由だけで、高等教育を受けられないということを防ぐために、年収に応じた支援策を発表しています。
また、無償化の対象なる学校は大学だけでなく、短期大学、高等専門学校、専門学校も含まれます。
対象の学校は、文部科学省ホームページにて検索いただくか、入学を志望する学校に対象の有無を尋ねてもよいでしょう。
私立大学の学費について、こちらもご参照ください。
大学無償化のみ、さらに2つの制度に分けられます。ひとつは「授業料等の減免」と言う制度で、その名のとおり授業料などが減額または免除されるものです。
もうひとつは「給付型奨学金」です。大学などの高等教育などに進学した場合の、授業料ではなく「学生生活費」に関してサポートをする目的です。これは「奨学金」という名目ですが、実際は「給付型」なので、返済しなくてもよいお金です。
教育無償化とはいえ、子供にかかる学費のすべてが無料になるわけではありません。対象となるのは、最低限教育に必要な部分だけであると解釈しておくとわかりやすいでしょう。
幼児教育に関する無償化の対象は、「施設の利用料」です。高校や大学では「学費や授業料」などが対象です。教育にかかるすべての費用が無償になるわけではありませんので、各対象ごとに必ず確認しましょう。
また、無償化となる範囲を上回った額に関しては、自己負担となります。
教育無償化のポイントとして、申請は個人で行いますが、支援金に関しては個人へ振り込まれるわけではありません。対象となる教育施設へ、国からお金が入金される形になります。
無償化が適用されるには、以下の条件に該当する必要があります。時期や所得制限についてまとめます。
無償化の対象となる期間ですが、各ステージごとの対象条件に合致していれば、対象期間です。
3~5歳のお子さんを持つ世帯は、所得制限がなく無償化の対象となります。一方、0~2歳のお子さんを持つ世帯で、保育所などの利用に際して無償化の対象となるのは、住民税非課税世帯のみです。
この際の注意として、社会問題にもなっている「保育所不足」などの理由から、住民税非課税世帯であっても、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない場合は、月額42,000円までが支援される仕組みになっています。(超えた分は自己負担です)
国公立私立すべての高校に通う生徒をもつ世帯の「高校無償化」に対する所得制限は、年収910万円未満です。ただし、年収に応じて個別の世帯ごとに差があります。計算方法は複雑で、世帯収入に対する所得税額や課税標準額を基準として計算します。
私立高校の実質無償化の年収制限は、年収590万円未満の世帯が対象です。
住民税非課税世帯、または生活保護世帯が対象ですので、所得制限はそれに準ずるものとなります。住民税が非課税となる所得に関しては、お住まいの市町村によりますが、世帯収入がおおむね年収270万円前後の場合が多いようです。
すべて無償化となる場合、2/3の割合で支援される場合、1/3の割合で支援される場合の3段階があります。
3つの教育無償化に共通する最大のメリットは、「家計における教育費負担の軽減」です。
特に、お子さんがまだ小さくて幼児教育無償化の対象となる時期には、両親もまだ若く、結婚してから数年しか経っていない場合がほとんどです。ご両親がまだ10代や20代であることも多いでしょう。
限られた収入の中で少しでも教育費の負担が軽減されるように、教育費の無償または一定の上限が設けられていることで、少なくとも金銭的な心配がなく、安心してお子さんを育てていくことができる環境が構築されます。
教育無償化は、対象となるお子さんだけでなく、家計全体に好影響をもたらします。
高校や大学に進学するお子さんをお持ちのご家庭では、住宅ローンの支払いと教育費の出費が重なる場合もあります。無償化の対象とならない学校に通学している兄弟がいる場合なども、教育費の支払いが重なってしまうことも考えられます。
たとえば、高校生と大学生のお子さんをお持ちの場合、無償化になる前は大変な出費だったことが推測されます。無償化の対象となれば、教育費の負担が減り、ほかの出費に充てることもできるでしょう。
教育無償化のデメリットとして考えられるのは、主に幼児教育等無償化の場合です。無償化の対象となることで、これまでも問題になっていた保育者不足に拍車がかかることも考えられます。
保育にかかる費用が無償化となることで、幼稚園や保育園などの入園希望者が殺到し、それによって保育者不足が深刻となる場合も否定できません。
特に都心部では、保育者が足りないだけでなく、保育施設も不足していますので、本当に入園(入所)が必要なお子さんが入園できない場合もあるかもしれません。
無償化となる教育のうち、小学校・中学校を対象とするものがありません。幼稚園で無償化の対象となっても、小学校・中学校は無償化とはならないということです。
これは、公立の小中学校では「義務教育」とされていますので、授業料がかからないからであると推測されます。一方、私立小学校・私立中学校に進学した場合は、あくまで任意であるため事前に資金を準備しておく必要があります。
幼稚園から大学まで、小学校・中学校の義務教育期間を除いた期間すべてで、何かしらの教育無償化があることはお分かりいただけたと思います。
では、無償化になったからといって、教育費の備えの必要がなくなったかと言うと、そうではありません。お子さんの成長過程で、無償化の対象外となる費用では以下のものが考えられます。
幼児教育等の無償化の対象となり、保育料などが必要なくなったとしても、保育時間中ではない個人的な習い事に関しては、もちろん全額ご家庭での負担となります。
また、お子さんが小さいうちは月謝が手ごろであっても、長く続けていくと年代に応じて月謝が値上がりする場合がほとんどです。長期的に見て、先々も払える月謝であるかどうか、事前にわかる範囲で調べておくと安心です。
高校や大学、専門学校などに進学した場合、必ずしも自宅から通学できるとは限りません。自宅から通える範囲であればよいのですが、スポーツの部活で進学した高校などで、自宅を離れて寮生活をしなければならない場合もあります。
一番イメージしやすいのは大学進学で、親元を離れて一人暮らしする場合です。家賃、生活費の仕送りなど、毎月必ずかかる費用もそうですが、大学進学時に一人暮らしの部屋を決める際の入居費用や、引っ越し費用もかかります。
無償化の対象外の費用に備えるため、早い段階から預貯金などで対策をしておくことをお勧めします。通常の貯金とは別に、教育費名目でしっかり貯めておきましょう。名前を付けて、目的をもって貯金をすることで、成功率がグッと上がります。
また、お子さんがまだ小さい場合は、学資保険に加入し、満期金をしっかり受け取ることで教育費対策になります。
学資保険は、預貯金と違って、契約者(一般的には親)が万が一死亡した場合には、それ以降の保険料の払い込みは不要となります。しかし、加入時の保険契約は期間中有効ですので、満期金なども契約どおりに受け取ることができます。
お子さんのための貯金と、親の万が一に備える意味では、学資保険加入での教育費対策は合理的であると言えます。
本記事で紹介したように、現在は大きく3つの無償化があります。子供の成長に合わせて、その時々に必要な無償化について調べて活用していくとよいでしょう。
これらの制度はまだ始まったばかりで、ともすると今後なにかしら変更が生じる場合も考えられます。その時点での最新情報を活用するように心がけましょう。
「保険チャンネル」は、リクルートが運営するサービスで、お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に「教育費」はもちろん、「保険の見直し」「家計」「老後資金」「子育て費用」について無料で何度でも相談できるサービスです。
大手企業が運営しており安心して利用できますのでぜひご検討ください。