公開日:2019年9月1日
私立高校の授業料が2020年4月より実質無償化になりますが、こちらは、残念ながらすべての方が対象になるわけではありません。
そのため、中学生以下の子供がいる世帯の方は、仮に、私立高校へ進学することになった場合や進学することも想定した上で、高校進学にかかる学費などについて事前対策を取っておくことが大切です。
本記事は、その対策方法の1つとして、私立高校の学費を中心に公立高校との違いや考え方について紹介します。
目次
はじめに、文部科学省が公開している平成30年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果より、私立高校の初年度生徒等納付金平均金額を年間ベースで紹介します。
学校の種別 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
私立高校
(全日制) |
399,152 | 163,272 | 168,562 | 730,986 |
私立高校に進学した初年度は、入学料も多くかかることになるため学費は割高になります。
実際のところ、私立高校に進学する学費が高いことは多くの人がご存知だと思われますが、どのくらい高いのかを知るには、やはり公立高校との学費を比較するのが分かりやすいでしょう。
そこで次項では、私立高校と公立高校の学費がどのくらい違うものなのか比較した一覧を紹介します。
学校の種別 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
私立高校
(全日制) |
399,152 | 163,272 | 168,562 | 730,986 |
公立高校
(全日制) |
118,800 | 5,650 | - | 124,450 |
私立高校と公立高校の学費の差は表を見ると明らかですが、私立高校の場合、進学する学校によって学費の違いが生じます。
なお、公立高校の場合、基本的に金額による違いがほとんど生じることはなく、お住いの都道府県のWEBサイトなどで、条例を確認すると公立高校の正確な学費を調べることができます。(公立高校の場合、差が生じたとしても数百円程度と思われます。)
高校へ進学し、卒業するまでの3年間にかかるお金は前項で紹介した学費だけではなく、様々な学習費がかかります。
そのため、子供の教育資金対策をあらかじめ行うためには、学費だけではなく学習費についても目安を知っておくことが大切と言えます。
そこで、文部科学省が公開している平成28年度の子供の学習費調査における結果概要を引用してポイントを紹介していきます。
高校の種別 | 私立高校
(全日制) |
公立高校
(全日制) |
---|---|---|
学習費総額(年間) | 1,040,168 | 450,862 |
学習費総額の内訳 | 私立高校
(全日制) |
公立高校
(全日制) |
---|---|---|
学校教育費 | 755,101 | 275,991 |
学校外活動費 | 285,067 | 174,871 |
年間合計 | 1,040,168 | 450,862 |
上記の金額だけでは全く意味が分かりませんので、次項では学校教育費および学校外活動費にはどのような項目が含まれているのか、統計データを簡単にまとめたものを紹介します。
学習費総額とは、学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計金額となりますが、高校では給食が支給されませんので、本記事における学習費総額は、学校教育費と学校外活動費の合計金額です。
なお、学校教育費および学校外活動費の項目は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
授業料 | 高校の授業料 |
修学旅行・遠足・見学費 | 修学旅行・遠足・見学を行うために徴収されたお金 |
学級・児童会・生徒会費 | 学級費・クラス会費として徴収されたお金および全校の児童・生徒を対象とする児童会・生徒会費として徴収されたお金 |
その他の学校納付金 | 学校に入学するための入学検定料・入学金・私立学校における施設設備資金・保健衛生費・日本スポーツ振興センター共済金などの安全会掛金・後援会費・冷暖房費・学芸会費などとして徴収されたお金 |
寄附金 | 学校全体として集まった寄附金(個人的な寄附金は除かれます) |
教科書費・教科書以外の図書費 | 授業で使う教科書や先生の指示などにより購入した必須図書などの購入費 |
学用品・実験実習材料費 | 学校の各教科などの授業で必要な文房具類,体育用品,楽器,製図・技術用具,裁縫用具などの購入費や調理用の材料購入費など |
教科外活動費 | クラブ活動(課外の部活動を含む)・学芸会・運動会・芸術鑑賞会,各教科以外の学級活動(ホームルーム活動)・児童会・生徒会,臨海・林間学校などのために,家庭が直接支出したお金 |
通学費 | 通学のための交通費・スクールバス代・自転車通学が認められている学校での通学用自転車購入費など |
制服 | 学校が通学のために指定した制服一式(標準服・ブレザー・ネクタイ・シャツ・ブラウスなど) |
通学用品費 | 通学のために必要な物品の購入費(かばん・雨傘)などの購入費 |
その他 | 学校の徽章・バッジ・上ばき・卒業記念写真・アルバムの代金など |
学校教育費は、進学した高校において、直接必要になる支出項目の内容で構成されていることが分かります。
寄附金以外の項目内容を確認しますと、高校生活において常態的にかかるものとそうではないものに分けられ、統計データよりも実際に支出するお金が少なく抑えられることも十分考えられます。
項目 | 内容 |
---|---|
補助学習費 | 予習・復習・補習などの学校教育に関係する学習をするために支出したお金 |
その他の学校外活動費 | 習い事や学習活動・スポーツ・文化活動などに要したお金で、たとえば、ピアノ、舞踊、水泳、野球、サッカー、武道、習字、英会話などにかかる月謝や物品購入費用 |
学校外活動費は、進学した高校の授業が終わった後の塾やスポーツクラブといった習い事の月謝や物品購入費用などで構成されています。
そのため、学校外活動費は個人差が大きい項目であり、統計データよりも多く支出する世帯もある一方、ほとんどかからない世帯もあることが考えられます。
本記事の冒頭では、私立高校の授業料が2020年4月より実質無償化になることに触れましたが、国や都道府県といった行政では、高校生などに対する修学支援として各種制度が確立されています。
これらの制度は、世帯状況やお住いの都道府県などによって制度の適用有無が異なりますが、ここでは国の修学支援制度について紹介します。
高等学校等就学支援金制度は、進学した高校の国公私立を問わず、高等学校などに通う所得等要件を満たす世帯の生徒に対して、授業料に充てるため、国が高等学校等就学支援金を支給する制度です。
なお、高等学校等就学支援金制度の適用を受けるための高等学校などに通う所得等要件は、在学要件、在住要件、所得要件といった3つの要件を満たす必要があり、詳細は以下の通りです。
高等学校等就学支援金制度の在学要件は、国公私立を問わず以下の学校に在学している人が対象となります。
余程特殊な事情がない限り、高等学校等就学支援金制度の在学要件は満たせていると推測することができます。
高等学校等就学支援金制度の在住要件は、日本国内に住所を有する人が対象ですので、こちらも何ら問題がないでしょう。
高等学校等就学支援金制度の所得要件は、世帯年収で約910万円未満である生徒が対象となります。
ここで言う世帯年収で約910万円未満とは、両親がいる場合、父親および母親の合算額となり、市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円未満である場合となります。
上記図は、会社員などの給与所得者に対して6月頃に勤務先から交付される市町村民税・県民税特別徴収税額通知書になりますが、図にあるコメント部分を確認することで対象になるかどうかを判定できます。
なお、自営業者の場合は住民税の決定通知書で確認できますが、いずれもわからない場合は、お住いの都道府県の担当部署に尋ねるのが確実でしょう。
私立高等学校授業料の実質無償化(新制度)とは、2020年4月より始まる高等学校等就学支援金制度のことを言い、前項で紹介した制度は旧制度、今後始まる制度を新制度と位置付けしています。
高等学校等就学支援金制度(新制度)では、私立高校などに通う生徒がいる世帯年収の目安が約590万円未満の生徒を対象に上限額が引き上げられることになるほか、高等学校等就学支援金制度の所得要件も地方税(住民税)の所得割額から課税所得が基準となります。
新制度によって、高等学校等就学支援金制度の所得要件が、地方税(住民税)の所得割額から課税所得へ変更になるということは、個々の節税対策が支給の有無や金額に影響を及ぼすことを意味します。
たとえば、家族を扶養している場合の扶養控除、医療費控除、ふるさと納税による寄附金控除、iDeCoに加入していることによる小規模企業共済等掛金控除などといった所得控除額が関係するため、新制度になってから子供が高校へ進学する世帯は、特に注意が必要と言えるでしょう。
高等学校等就学支援金制度(新制度)は、これまでの旧制度と同様に、学校を通じて申し込みを行うことになり、進学した高校より説明があります。
また、高等学校等就学支援金は国による授業料の支援となっており、いわば高校の授業料が免除される仕組みになっておりますが、新制度では、節税対策も含めた個々の工夫のほか、それぞれの都道府県が独自で行っている制度を賢く活用できるかどうかが、それぞれの世帯に大きな影響を与えることは確かと言えそうです。
私立高校の学費は公立高校に比べて高いため、卒業するまでの3年間で親が負担する教育費には大きな差が生じてしまうことになります。
また、高校を卒業した後に大学などへ進学することも踏まえますと、私立や公立でかかる教育費は、高校のみならず大学などへ進学する場合も含めて考え、対策を取っておくことが極めて大切です。
まとまったお金を短い期間で形成することはリスクが伴い、難しいこともあるため、やはり子供が小さい内から計画的な教育資金対策が効果的と言えるでしょう。
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