- NISA口座を除き複数の証券会社の口座を持つことに法律上の制限はない。
- 複数の証券会社の口座を持つ場合は、それぞれの証券会社のサービス内容をよく理解しておくことが必要。
- 証券取引で重視したいポイントによって、どの証券会社の口座を組み合わせて保有したらよいか結論が変わる。
公開日:
資産運用を行うことのできる金融機関は無数にあるので、その中から1つ選ぶのは大変だと感じられる方もいらっしゃるかと思います。そのときは複数の金融機関で証券口座を保有し、使い分けていく方法も検討の余地があります。
そこで今回は、証券口座を複数開設するメリット・デメリットおよび使い分ける場合の運用方法について解説いたします。
まず、そもそも証券口座はいくつまで持つことができるかという点ですが、この点について制限はありません。たくさん保有することが税法上などで問題があるということはありません。
また、証券口座を保有するだけなら費用もかかりません。複数保有すること自体に問題はないので、メリットとデメリットの双方を勘案して複数口座を保有するかどうかを各自で決めていくとよいでしょう。
証券口座の中には運用益が非課税のNISA口座も存在します。このNISA口座に関しては同一年度に複数保有できません。通常の課税口座の口座開設に制限はありませんが、NISA口座では制限がありますので、この2つを混同しないように注意が必要です。
NISA口座の詳細に関しては下記の記事もご参照ください。
複数の証券口座を保有するメリットは主に以下の3点です。複数の証券会社の特徴などを研究し、積極的に使いこなす意欲のある方にはメリットが大きいといえます。
商品の品ぞろえに関しては当然ながら証券会社次第であり、投資する側で調整することはできません。そこで、投資したい金融商品が複数ある場合は、商品別に証券会社を使い分けることで、より効果的な資産運用を実践していく方法を取ることができます。
証券会社の提供するサービスはどの会社にも共通したものが多いですが、提供する投資情報等は各社によって異なります。
今後の経済の見通しに関して複数の証券会社のレポートを読み比べるなど、複数の投資情報を比較検討しながら資産運用を行いたい方にとっても、複数の証券会社の口座を保有することはメリットになり得ます。
金融機関、特にインターネット系の金融機関であれば、システム障害が発生すると取引ができなくなるタイミングがあります。そのリスクを減らすために、複数の証券会社の口座を保有することも可能です。
株式など短時間でも大きく価格変動する商品に投資をする場合には、特にリスク管理の観点で有効です。
複数の証券口座を保有するデメリットは主に以下の3点です。複数の証券口座を保有すればさまざまな手間がかかるため、そこを煩わしく感じる方にとってはデメリットが大きいといえます。
金融機関同士の競争は激化しており、同じ商品を同じくらいの手数料で購入できる場合も今や少なくなくありません。一方で各社細かいサービスでは違いがあります。
使い分けをしようと思っていても、それぞれの証券会社の特徴を理解していない場合は、複数口座を保有してもうまく使い分けができない可能性があります。
複数の証券会社を使って売買すること自体に問題がなくても、資産の管理が複雑になる点は否めません。
自分が今資産運用でどれくらい利益が出ているか、損失を出しているかという観点も投資判断に影響を及ぼす点の1つですので、シンプルに資産管理したい方にとってはデメリットのほうが大きいでしょう。
1つの証券会社で利益が出ていてほかの証券会社で損失が出ている場合、確定申告をしないと2つの損益を通算できません。確定申告をすると、その分課税所得が上がってしまい結果的に税金額が上がる可能性もあります。確定申告の要否の検討も含め、税金の手続きが煩雑になり得ます。
以上の証券口座を複数保有するメリットとデメリットを比較し、メリットが大きいと判断した場合は、実際にどんな組み合わせで複数の金融機関を選べばいいのでしょうか。
この点は、その方の投資スタンスによります。そこで、金融機関の中でもリスク性のある金融商品を専門に取り扱う証券会社のうち、主要な会社の特徴を簡潔に紹介いたします。そしてその後に、タイプ別に複数の証券口座を保有するおすすめのパターンを解説いたします。
証券会社は一般的にはネット証券がおすすめで、対面型の証券会社はあまりおすすめしません。そこで、ネット証券を中心におすすめの会社を紹介いたします。
ネット証券がおすすめである理由の詳細については下記の記事もご参照ください。
取扱商品の豊富さ、手数料の安さ、投資家向けの情報量と質いずれをとっても死角がありません。最近は法人ビジネスにも力を入れており、新規公開株式の取扱いもネット証券の中では豊富です。ですので、投資初心者からベテランの方までおすすめできる会社です。
なお、新規公開株式の詳細は下記の記事をご参照ください。
SBI証券と同様に取扱商品の豊富さ、手数料の安さ、投資家向けの情報量と質、いずれもほとんどそん色はありません。
SBI証券にないところでいうと、投資信託の積立をする場合に楽天カードから決済するとポイントが貯まりやすい点、楽天銀行と口座を紐づけすると預金金利が上がる点など、ほかの楽天サービスとの連携でよりお得に利用ができる点です。
取扱商品の豊富さでは上記2社には劣っており、外国株式の取扱いがない点はデメリットです。しかし国内株式であれば、1日の約定代金が50万円以下なら手数料無料と一番低コストで利用できます。また、サイトの作りがシンプルで見やすい点も特徴的です。
マネックス証券は米国株式の取扱い総数が他社と比べてとても多く、コスト面でも最安水準です。ですので、米国株を中心に取引を行いたい方には、特に利用する価値が高い証券会社です。
また、日本株に関しては銘柄スカウターという各企業の財務データを分析するツールがあります。細かいデータを参照しながら日本株の取引を行いたい方にとっても、おすすめできる証券会社です。
対面型証券会社ではありますが、ネット取引も充実しているため掲載しています。三井住友グループの会社であると同時に老舗の証券会社であることから、新規公開株式の主幹事となっている銘柄を数多く取扱っています。この点がほかのネット証券との大きな違いであり、特徴的なところです。
以上の証券会社のおすすめの組み合わせを、タイプ別に分けて考えてみました。ほかにもいろんな組み合わせがあるでしょうが、主な組み合わせについて書いてみました。検討する際の参考材料にしていただけると幸いです。
マネックス証券とSBI証券との組み合わせがおすすめです。マネックス証券は米国株式の取扱い総数が他社と比べてとても多く、コスト面でも最安水準です。また、SBI証券は米国株式以外の幅広い国の外国株式への投資が可能です。
これら2つの証券会社を組み合わせれば、幅広いバリエーションで外国株式のポートフォリオを組むこともできます。
SBI証券とSMBC日興証券との組み合わせがおすすめです。SBI証券の場合、ネット証券として死角がなく、比較的IPO銘柄の取扱いが豊富です。ただし、大手の対面型証券会社には劣ります。
そこで、インターネット取引も対面型証券会社の中では充実しているSMBC日興証券を組み合わせるとよいでしょう。この2社を組み合わせれば幅広いIPO銘柄への投資を狙うことができます。
株式投資でコストを抑えたい場合は、松井証券とマネックス証券との組み合わせがおすすめです。松井証券は、国内株式であれば1日の約定代金が50万円以下なら手数料無料です。また、マネックス証券は米国株式の取引コストが最安水準です。
株式以外に投資信託の取引も行いたい場合は、楽天カードで投信積立するとポイントが貯まりやすい楽天証券も利用するとよいでしょう。
ネット証券を利用していて怖いのがシステム障害です。このリスクを分散するためには、利用したいネット証券に加えて対面型証券会社のSMBC日興証券も併用するとよいでしょう。
対面型証券会社の場合、システム障害があってもコールセンターや対面などで取引が可能な場合もあり得ます。
複数の証券会社の口座を保有することに制限はありませんが、複数を使いこなすには、それぞれの証券会社の特徴を知ることが必要ですし、管理の手間もかかります。
まず1つの口座を使ってみて、慣れてきたら複数口座の利用を検討するのもよいでしょう。その際にはぜひ今回の記事の内容も参考にしてみてください。