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事例から学ぶ遺産相続の基本と対策。知らなかったじゃ済まされない現実がそこにはある!

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佐藤 元宣

佐藤 元宣

佐藤元宣FP事務所代表、日本FP協会CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士。 税理士や社会保険労務士といった士業事務所経験と保険代理店を行った経験などを活かし、生活する上で避けて通れない「お金」の相談に幅広く応じている独立系FP。家計の収支状況と専門性を融合したプランニングを提供しています。

遺産相続は、亡くなった方の遺産を相続人と呼ばれる方が引き継ぐことを言いますが、ここで言う遺産には、現金や預貯金をはじめとしたプラスの財産や借入金などのマイナスの財産も含まれます。

そのため、相続において、私たちが最低限知っておかなければならない知識というものがあり、これを知らなかっただけに自分も含めた相続人の人生が大きく転機をむかえてしまう場合もあります。

本記事では、筆者が実際に相続実務で携わった相談内容を一部改編し、遺産相続で最低限知っておかなければならない知識と対策方法のポイントを紹介します。

相続の始まりを知ろう

私たちは、いつか必ず死と直面することになりますが、相続の始まりとは、被相続人と呼ばれる方が死亡したことをきっかけにスタートします。

これを専門的な表現で相続の開始と言いますが、民法という法律の下、相続にはそれぞれのルールが厳格に定められており、以下、相続が開始された時に最低限知っておくべきポイントを紹介していきます。

 

私は相続人になる?法定相続人について知ろう

相続が開始になりますと、誰が遺産を引き継ぐことになるのか確定させる必要があります。

具体的に、民法では亡くなった方の遺産を引き継ぐ相続人の範囲を定めており、この範囲にあてはまる相続人のことを専門的な表現で法定相続人と言います。

そのため、相続が開始になった時は、ご自身が法定相続人にあてはまるのかを確認することがとても大切であり、民法で定められている相続人の範囲は、以下の通りです。

  • 亡くなった方の配偶者:常に相続人となります

亡くなった方の配偶者は、常に相続人となり、遺産を相続する権利があるのですが、ここで言う配偶者とは、婚姻届を役所に提出して法律上、婚姻関係にある配偶者のことを指します。

そのため、事実婚や内縁関係の夫や妻は、原則として相続をする権利が発生しないため注意が必要です。

なお、配偶者以外の相続には、優先順位が設けられており、優先順位が高い人が優先して遺産相続できることになります。

以下、参考までに優先順位が高い方から順に表したものを箇条書きで紹介します。

亡くなった方との関係性が

  1. 子供
  2. ひ孫
  3. 父母
  4. 祖父母
  5. 曾祖父母
  6. 兄弟姉妹
  7. 甥・姪

仮に亡くなった方に子供がいた場合は、子供が相続する権利を持つことになり、下位順位の方々に相続をする権利が発生することはありません。相続には例外もたくさんありますが、最もオーソドックスなパターンは、やはり、亡くなった方の配偶者と子供が法定相続人になるパターンと言えるでしょう。

 

相続の方法は3つ!ただし、知っておかなければならない注意点も

仮に、ご自身が法定相続人になることがわかりましたら、遺産を引き継ぐかどうかの判断をしていかなくてはなりません。

この時、冒頭でもお伝えしましたように、相続をする遺産には、現金や預貯金をはじめとしたプラスの財産や借入金などのマイナスの財産も含まれるため、プラスの財産は相続し、マイナスの財産は相続しないといった虫のいい相続は認められていません。

実際のところ、亡くなった方の遺産を相続する方法は、全部で3つあり、以下、それぞれの相続方法と大まかなポイントを確実に押さえておく必要があります。

 

1つ目の相続方法:単純承認

単純承認とは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ相続方法のことを言います。

そのため、プラスの財産がマイナスの財産よりも多い場合は、特別の問題が発生しづらいものの、マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合は、法定相続人が、借金などの債務を抱えなくてはならないデメリットが生じます。

なお、相続の開始から3ヶ月以内に所定の手続きを行わなかった場合は、単純承認をしたものとしてみなされ、3ヶ月を過ぎてからの手続きは原則として認められていないため注意が必要です。

 

2つ目の相続方法:限定承認

限定承認とは、亡くなった方のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を負担し、結果的にプラスの財産が多かった場合に相続をする方法のことを言います。

ただし、限定承認をするためには、法定相続人が全員で手続きを行う必要があるため、法定相続人の内、誰か1人でも限定承認をすることに対して反対であれば、この方法を活用することができないデメリットがあります。

また、限定承認をする場合は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければならないと民法で定められており、3ヶ月以内に手続きをしなければ、限定承認をすることができないことになります。

 

3つ目の相続方法:相続放棄

相続放棄とは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない相続方法のことを言います。

相続放棄は、無条件に相続財産を放棄する相続方法であり、たとえば、亡くなった方の遺産に多額の借金が含まれていて、その借金を負うことを避けたい場合などに活用されます。

なお、相続放棄をする場合も相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければならないと民法で定められており、3ヶ月以内に手続きをしなければ、相続放棄をすることができないことになります。

 

亡くなった方に借金があるのかどうかを確認したい場合の方法

ここまで3つの相続方法について紹介しましたが、そもそも亡くなった方に借金があるのかどうかがわからないため、判断のしようがないといった方もおられると思います。

仮に、ご自身が法定相続人になることがわかり、亡くなった方に借金があるのかどうかを確認したい場合は、亡くなった方の個人信用情報を取り寄せてみましょう。

個人信用情報をざっくり説明しますと、個々の借入やクレジットカードの利用履歴といった信用情報にかかる内容のことを言い、以下紹介する3つの場所へ問い合わせて確認することが可能です。

  • 株式会社CIC
  • 株式会社JICC
  • 全国銀行協会(全銀協)

上記3つの機関に対して、それぞれ亡くなった方の個人信用情報を取り寄せて情報内容を確認することで、どのくらいの借金などがあるかを把握することができます。

 

実際にあった相続の事例から対策方法を学ぼう

これまでの相続知識を踏まえて、実際にあった相続の事例から対策方法を学んでいきましょう。

 

実際にあった相続事例

Aさんは、両親と兄弟姉妹を含む5人家族ですが、この度、父親が他界しました。

これによって相続が開始されましたが、法定相続人はAさんの母親(亡くなった父親の配偶者)とAさんを含む3人の子供を合わせて4人です。

ある日、1通の書類が届き、そこには、生前父親が投資していた不動産投資による多額の借金があったことが発覚し、その額1億5000万円。

母親は知っていましたが、3人の子供からしますと寝耳に水の状態です。

すでに、父親が亡くなってから3ヶ月以上の月日が経過しており、4人の法定相続人は、1億5000万円の借金を抱えなければならないことになりました。

 

相続の事例から具体的に取っておくべき対策方法とは

これは、筆者が実際にあった相続の相談事例を一部改編して紹介したものになるのですが、これまでの説明した内容さえしっかりと知っていれば、簡単に解決することができる相続問題です。

具体的には、以下のような流れで相続対策を取ることで事例の対応ができます。

  1. 自分が法定相続人になるのか確認する
  2. 亡くなった方の個人信用情報を取り寄せて借金があるのかどうかを確認する
  3. 3ヶ月以内に単純承認・限定承認・相続放棄から相続方法を選ぶ

1から3の手順を踏むことができれば、何ら問題なく相続の問題を解決することができたと推測することができ、少なくとも、事例の場合ですと、相続放棄の手続きを取っていれば解決できた問題となります。

重要なことは、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ限定承認や相続放棄の申述をしなければ単純承認したものとみなされるところにあり、知らなかったでは済まされないところにあります。

 

まとめ

相続の問題は、時として子供や孫の人生に多大な影響を及ぼすことがあります。

事例のような場合は、両親も子供もどちらも相続に対する知識や対策が欠けていたことが重大な問題を引き起こしてしまったことになりましたが、少なくとも、自分や自分の家族を守るための術を知っていれば防げた問題です。

質素倹約に人生を送ってきたAさんからしますと、大きな人生の転機が訪れ、それに伴って、ご主人や子供の人生も大きく変わることになったわけですが、コツコツ積み重ねたものが一瞬にして無くなる怖さは本記事を通じて伝わったのではないでしょうか。

 

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